マナは厚みのあるカーペットを踏みしめながら歩く、

一歩、さらに一歩、、

何の為に、目的が定まらない、、、

でも、マナは歩みを止められなかった、

(アスカに遭って、何を話すの、、、いや、それ以前に遭ってくれるのか、、)

何度も思考を繰り返す、

それが無意味である事を理解できても、、

心の奥底から湧出る何かを押さえる事はできなかった、、

そして、1006という部屋の前に立った、

(マナ、、どうするの、アスカに何を話すの、、いったいアタシは何をしてるの、、

このドアを叩いたら、、もう二度と後には引けないわよ、、)

思考のループにマナは嵌っている、

そのループを立ち切るには、このクリーム色に染まったドアをノックするしかなかった、、

(、、、、、、、行くしかない、)

マナは自分を鼓舞し、心臓から血液が無くなって行く感覚に多少吐き気を憶えながら、

数回ドアのノックした、、

コン、コン、、コン、コン、、、、

返事は無い、

だが、数秒後、ドアがゆっくり開いた、、

「誰かね、」

ドアチェーンを架けたまま中年男性が顔を出した、

そして、脂肪が付きすぎて首が何処にあるのか解らない中年男性は、

間違い無くアスカと共にこのホテルへ来た男性だった、、

「誰かね君は、」

怪訝さと苛立ちを露わにした男性の言葉にマナは更に緊張感を高めた、

「あ、、あの、、アタシ、、、、」

「何か用かね、」

「あ、、あの、、、、」

マナの口からは言葉は生まれなかった、

心臓の余りにも大きな鼓動が体を振るわせる、

自分の耳にすら、心臓の音が大音量で鳴り響く、

それでも、必死に言葉らしきものを探し、口の中に溜める、

「アタシ、、、あの、、、、」

「早く用件を言いたまえ!私は忙しいのだよ!」

当然の如く、男は怒りを露わにして叫ぶ、

「ご、、ごめんなさい、、、、アタシ、、、友達を、」

「友達?」

「えぇ、、、この部屋にいると、、、思うのですが、、」

「、、、、、、、、」

必死なマナの言葉に、多少男の態度が変化する、

「そうか、、、君はあの女の友達か、、」

「、、、、、、だと、思います、、、」

小さく呟く様に答えるのがやっとだった、、

「そうか、、まぁ中に入りたまえ、」

「え、、、、」

その言葉に驚きと同時に、何か違和感を感じ、マナの体は大きく痙攣した、

「友達に遭いに来たのだろ、、中にいるから、さぁ、入りたまえ、」

「え、、中に、、、、ですか、、」

「そうだよ、彼女に何か用事があるのだろ、さぁ、入るのなら早くしたまえ、」

「は、、はい、、、」

男はチェーンを外し、ドアを大きく開け、マナの前に部屋への道を広げた、

そして、マナはその部屋へと、、、、一歩を踏み出した、

 

 

 

 

 

 

 

その頃、

レイは、、、

走っていた、、

「はぁ、、はぁ、、っくぅ、、、はぁ、、、くっそ!」

日頃の不健康さを恨みながら、レイは必死に駅からホテルまでの道を走っていた、

(マナ、、まさか、、、、アスカの部屋まで行こうなんて、、、まさか、)

レイの予想では、マナは一人で泣き、そして辛い現実に打ちのめされながら、

一人でバスでも乗って帰るだろう、、、そう思っていた、

だが、その予想は一気にある人物によって砕かれた、

そう、、自ら愛人と名乗り、人間らしくない瞳の輝きを持った妖艶な女、

越智 里美というレイが吐き気を感じる様な甲高い声で笑う女によって、

一気に予想は砕かれ、その倍の不安を感じていた、

(マナ、、アスカの部屋まで行くのは危険だよ、、、絶対に、、危険だ、、)

そう思いながら走るレイは、越智 里美のとの会話を思い出していた、

“不思議とね、、、その身近な人間が死ぬのよ、、、”

“そんな噂、、信憑性無いわ、、、”

“あら、、、アタシが嘘を言ってるとでも?”

“信じられないって云ってるだけよ、、、、”

“あら、まさか綾波さん、、、、あの店に入る時、、あっちの世界に繋がったの”

“、、、、答える義務はないわ、”

“そうね、でも憶えといてね、アタシは一応忠告したからね。後でアタシを恨まないでね、”

“、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、”

“走れば、、、まだ、間に合うかもね、、、ふふふ、、、、”

嫌な笑みと笑い声だった、、、

(あいつ、、知ってるんだ、、アタシとマナがアスカ達を尾行してた事も、

昨日アタシがあの店に入る瞬間、異次元的な奇妙な空間に陥った事も、、

アスカが売春してる事も、、、

知ってる、、、アタシが知らないことを、、多く知ってる、、、、

くそっ、、、、、でも今はマナが馬鹿な行動をとっていない事を確認するほうが先、、)

“お友達、死なないといいわね、、、、”

駅のホームから走り去るレイの後ろから越智 里美がそう声をかけた、、

その言葉がどうしても耳から離れなかった、

レイは必死にホテルへと走った、、

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの女の友達なのかい、」

バスローブ姿でソファーに座る男はタバコに火をつける、

「、、、、、、、はい、」

その前に座るマナは小さく答えながら、周囲を見回す、

思ったより高級感溢れる家具が下品な雰囲気を醸し出す、

それなりに高い金額を支払わなければSTAYすら出来ないと思われる広さを持つ部屋

その広さは余計にマナが一人である事を感じさせた、

そして、マナの視線は恐らく寝室がへと通じるのであろうドアへと向けられてた、

「あの、、、アスカは、、」

「あぁ、、あの子、アスカって云うんだ。私には咲江って名乗ったがな、」

「あっ、、、、」

失敗した、、、そういった表情を全面に出すマナを可笑しそうに男は眺める、

「はは、、大抵コールガールは実名を名乗る事はしないものなんだよ、

年齢も名前も、会話も全て、、、、客には嘘を教えるのが鉄則なんだよ、

まぁ、お嬢ちゃんの様な子供には解らないかもしれないがな、はははは、、」

馬鹿にした様な笑いにマナは多少苛立ちを憶える、

「と、、とにかく、、遭わせてください、、」

「構わないよ、、あの部屋のベットにいるよ、彼女は、」

「え、、、か、構わないのですか?」

「あぁ、、君が後悔しないならね、、、」

嫌らしい笑みを浮かべて話す男は何処か余裕を見せ、マナを見下している、

その醜く歪んだ脂ぎった表情がマナの苛立ちを一気に加速させた、

「後悔なんか、しません!」

意志を決め、立ち上がるマナ、

そして実質距離は数メートルの距離を、とても長く感じながら、

一歩一歩、寝室へのドアへ向かって歩き始めた、

一歩、、

歩く度に、心臓から血液が無くなっていく感覚が襲う、

貧血で倒れる、ギリギリのラインを保ちながら、マナは歩く、

そして、最後の一歩を終え、一度男の方を振り向いた、、、

「後悔しないね、」

「、、、、、、、、、、しません、」

はっきりと言い切ったマナだが、顔面は蒼白だった、、

だが、マナは震える体を必死に押さえながら、ゆっくりとドアのノブを握り、、

「アスカ、、、、入るわよ、」

そう云って、ドアを開けた、

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっき、アタシと同じぐらいの女の子が来なかった!」

「は、、はぁ?」

「友人が泊まってるとか、そんな事云って、部屋の番号を聞出さなかった!」

「え、、えぇ、、そのお客様なら、1006号室へとご案内しましたが、、」

「1006号室ね!サンキュー!」

レイはホテル内に入ると同時に、フロントへ走り込んだ、

そして体中に流れる滝の様な汗を拭く事も忘れ、受け付けの男に叫んだ、

そして一気にエレベーターに乗り込んだ、、、、

(くっそう、、、まさか、本当にマナの奴、、、、、生きてる?)

汗を拭いながら、両手で両膝を握り、前屈姿勢のまま地面を見つめるレイ、

(アスカ達の部屋に行っても、、何も変らないのに、、、まったく、、

でも、、、こんな事にどうしてなったんだろう、、、アタシが転校して来た為?

アタシがやっぱり死を招くの、、、また、、また身近な人が死んでしまうの?

マナ、、、お願いだから、、、、死なないで、、、、)

レイは必死に子呼吸を整え様としている、

そして、エレベーターが10階に近ずくのを確認した、

その瞬間、、

 

ガタン!!

大きな音と共にエレベーターが止まった、

「なっ!」

レイは一気に消えたエレベーター内の電気に声を上げて驚く、

そして、その次の瞬間、天井が開き、黒い影が二つ舞い降りた、

「だ、、誰、、、」

そう叫んだつもりだったが、その声は二つの影によって遮られる、

一人がレイを押さえつけ、一人がレイの鼻と口にガーゼを当てる、

「ふぐぅぅ、、うぐぅ、、、、、ううんんん、、、、」

嫌な匂いと共に、レイは意識を失っていった、、、

そして倒れるレイを担ぎあげた二つの影は、エレベーターの天井から

レイの体を引き上げ、そして、再び闇へと消えて行った、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加持、どう?」

「大体予想はついてる。もしあいつがダブルスパイだとしたら、、、あのビルが怪しい。」

「労働運輸省が管理するビル、、、」

「あぁ、、しかも外国人労働規制部だけがビル一つ、完全に使用している。

労働運輸省の中でも完全に独立してる部だ、、、、元々難民系から不法労働者の失踪事件

にはこの部署が絡んでいる可能性が高いと裏世界では有名な話しだがな、、」

「じゃぁ、、やっぱりヨーロッパ系への人身売買を斡旋してるのは、、」

「間違いない、、、如月 礼二だろう、、、」

加持の言葉を予想していた事とはいえ、ミサトは厳しい表情を浮かべたまま

表情を変えずにいる。同様に加持も複雑な表情をしたまま、言葉をつなぐ、

「如月 礼二、、官僚としては労働運輸省だけではなく、建設省、財務省でも豪腕を

発揮してきた男、、、政治家との繋がりは勿論、国内外の企業との繋がりも多く持つ、

彼にしてみれば子供達を売買する事なんて、サイドビジネスの一つでしかない、、」

「子供の売買が、、、サイドビジネスか、、、立派な人物ね、、」

「勿論、彼一人で出来る事じゃない、、恐らく碇司令はその上層部の連中を既に

目をつけて捜査をしていたのだろう、、、その結果、、、」

加持は言葉を止める、、

そして、ミサトも言葉を止め、過去の出来事に思いを馳せる、、、

辛く、、悲しい、、、、胸が絞め付けられる感覚を憶えながら、、、

あの時の出来事を思い出す、、

「、、、、、結局、シンジ君とアスカに頼ってるのね、、」

「本人達が望んだ結果だ。君の所為じゃない、」

「でも、、、、今も危険な状態に、、一歩間違えれば、、」

「大丈夫、彼らはそんな迂闊な行動はとらない。それに、カオル君も側にいる、

今はミサトは全体の指揮をしっかり取る事だ。舵取りが迷ったら船は難破するぞ、」

「、、、、、、うん、、」

「外労規制部のビルの構造、システムは今りっちゃんが探ってる。

マナとアスカの事はシンジ君に任せよう、、、」

「そうね、、加持、、、、、今晩は外労規制ビルで決戦よ、」

「あぁ、、俺達も準備しなくちゃな、」

ホテルの側に停車していた大型車がエンジン音を一気に上げる、

そして2人を乗せた大型車は何処かへと消えて行った、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ア、、アスカ、、、、」

その世界はマナには信じられない世界だった、、

いや、信じられないというよりも、何が起こっている世界なのか、

マナの常識、価値観外の世界、マナの認識可能な世界ではない、

淫欲の底を流れるヘドロの様な異常な世界が広がっていた、、

「な、、、、なんなの、、、」

暗い部屋の真中にアスカが浮いている、、

両腕、両足、腰部、全て拘束され、天井のパイプから伸びた皮製の紐が

アスカの体を宙吊りにしている。

そして、あの虚無的な蒼い瞳を浮かべた表情、

いや正確には瞳より下の部分は皮製のマスクで覆われている為瞳だけが、

人形の様な印象を与える、、恐らくマナでなければアスカだとは思わないだろう。

その宙吊りにされた人形は決して全裸ではないが、

着ていた服は乱雑に切裂かれたままで身体に纏わりついているといった感じだ、

苦しそうに蠢くアスカの体は、音を立ててゆっくりと揺れ動いた、、、、

「アスカ!」

走り出そうとするマナの前にある女性の影が立ちはだかった、

「なっ、、、、、」

女性、外見で一瞬そう判断したのだが、、、

マナを制止し迫ってくる女性の容姿を真似た生物は、

中年男性がカツラを被り、化粧をし、女性の下着を身に付けた、

間違い無く異世界の生物だった、、、

「い、、、い、、いあぁぁぁぁ!」

悲鳴を上げ、後ずさりするマナ

そのマナをバスローブを着たあの中年男が、後ろから両肩を掴む、

「素敵な時間を邪魔しおって、、、」

「い、、、あぁ、、、」

余りの出来事にマナは言葉を失い、瞳は自我を失っている、

「アタシ達の優雅な遊びを邪魔する子は、、、、、特別なお仕置きよ、、」

バスローブを着た中年男性の言葉使いは、女性言葉へと変化している、

不気味な笑みを浮かべる男は、マナの眼前でバスローブを取り、

そして、、、、

マナの眼前に、現れた男の裸体は、、

女性用の下着を身につけた、醜い脂肪だらけのおぞましい姿だった、、、

 

「いやぁぁぁ、、いやあああああ!!!!、、、、、、、、あっ、」

泣き叫ぶマナの声は、当然の衝撃で途切れる、

「まったく、困った子よね、」

「そうよね、あの豚女の友達っていってたけど、、、、」

スタンガンを握った男は宙吊りのアスカを見る、

だが、アスカはマナの事など関係ない、といった瞳で、

ただ、首を多少捻りながら、起こった出来事を呆然と眺めていた、、、

「まったく、、これだから女って豚な生物は、、、」

カツラを被った女装した男が鞭を握ったままアスカに近寄る、

「本当に、愚かな豚よね、、、生きてる価値ゼロって感じっ!!」

数発、アスカの体に鞭が入る、

革のマスクの下から同時に野生動物の叫び声の様な悲鳴を上げる、

「ほほほ、、、そうよ、そのくぐもった声が素敵なのよ、、、

お前達女どもも甲高い、気色の悪い声なんてこの世界には必要ないのよ!」

狂った様に笑い、自分の性器を握りながら、再びアスカの体に鞭をいれる、

「この豚が!!私達高等生物の邪魔ばかりして、、、女王様のお仕置きを受けなさい!」

何度も、何度も、狂笑を浮かべながらアスカ鞭を入れる、

そして、その度に女性用下着に包まれた自分の性器を撫で回す、

「あぁ、、、最高、アタシってやっぱり、最高の生物よね!」

そんな生物の鞭を受け、苦痛の瞳と輪郭の無い曇った悲鳴を上げるアスカは、

倒れたマナともう一人の男の様子を伺っていた、、

「えぇ、、、今捕獲しました、、は、予定通りの行動でした、、、はい、、

解りました、、、、えぇ、今からビルに運びます、はい、、、、後で、」

携帯電話を終えた男は、マナをそのままにして入り口のドアを開ける、

そして、同時に数名の黒スーツ姿の男が部屋と進入してきた、

「後は頼むぞ、我々は先に如月さんの所に行く、おい、お前も行くそ、」

「もう、、今良い所だったのに、、、、じゃぁ又後でね、アスカちゃん、、

あ、、そうそう忘れてた、、アタシね、、遺体を犯すがね一番好きなのよ、

今晩は楽しみよね、、、、、いったいどっちの豚が相手をしてくれるのかしら、

ひゃぁぁぁああ、あはははは、、ぎゃがぁぁあああはは!」

気色の悪い叫び声なのか、笑い声なのか解らない奇声を発し、

女装した男は2人部屋を出ていった、

そして、残されたアスカとマナは用意されたトランクに無造作に詰め込まれる、

無表情のまま、淡々と仕事をこなすスーツ姿の男達はアスカ達を生物として見てない、

単なる淫欲の塊の権力者達の、異常性欲を満たす道具としてしか見てない、

そんな連中がアスカとマナを積め込んだ大きなトランクを、部屋から運び出した、

まるで、単なる作業の一環として、、、

だが、その男達の作業を冷静に眺めている瞳もあった、、

天井から小さく空けられた二つの穴から、下の様子を冷静に見ていた、

紅い瞳、、その紅い瞳はいったい何を思っていたのか、、

誰にも解らない、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、、うん、、、」

レイは朧気な視界を必死に視点を合わそうとする、

「う、、、、ん、、どこ、、、?」

中々意識がはっきりしない、

だが、周囲には誰かがいる、

そして、何か会話をしている、、

それだけは解っていた、、、

“アスカの身に何が起ってからじゃ遅いんですよ!”

“シンジ君、落着いて、”

“マナも一緒に捕らえられてるんですよ!落着いてなんていられませんよ!”

“今、突入してもただ死にに行く様なものよ!”

“彼女達が死んでからじゃ意味ないんですよ!”

“だからって、今慌てても仕方無いでしょ!”

(誰か、、、、叫んでる、、、、、誰だっけこの声、、、、シンジ、、あれ、、、)

夢の様な感覚の中を泳いでるレイは、思考が混乱してる、、

“シンジ君、今は作戦準備をしてる段階だ。君が冷静にならなければ、

その作戦も無駄になってしまう、、僕達の最終任務を思い出せ、“

“、、、、、でも、、アスカが、、マナが、、”

“大丈夫、、アスカは冷静に対処してるよ、君が救出してくれる事を信じてね、”

(なんだ、、、、こいつら、、、何そんなに熱くなってるんだ、、、)

次第に視覚が戻って来たレイは、声がした方を見つめる、、

そして、レイが標準を合わせて見た世界は、、

 

 

 

「やぁ、綾波 レイちゃん、おはよう、」

同じ紅い瞳をした、綺麗な顔をした少年のドアップの唇だった、

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

レイの叫び声が車内に響いた、

 

第十話へ続く



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