虹が見えない国があった、昔々のお伽話し、

何時も幸せそうな奴隷たちが笑う、

死ねる自由がある森に生まれた話、

突然現れた恐竜が、幼い王子を噛殺した、

街を焼き、人々を焼き殺した恐竜が、

始めて虹をもたらした、、

テンガロンハットを被った女の子、

ブーツで豚を踏み付ける、

そんな話しをママから聴いた時から、

嬉しくて眠れない夜が続いてるんだ、、、

今でもその虹は消えることなく、

何処かの国に掛っているらしい、

その虹を見た子供は、、、

全員殺されるらしい、、、

 

 

酸性の雨がコンクリートを溶かす、未来の素敵な話し、

自由を満喫した人間は殺し合いは日常、

子供を殺す権利も認められ、

女の子にはレイプされる自由もある、

恐竜の再降臨は期待できないね、

ココナッツバターを塗ったペニスに

しゃぶりつく少女の綺麗な瞳、

太った警官も片目の市長もお気に入りさ、

誰もが不眠症の夜には時計はいらないのかも、

今でも虹は消える事なくあるんだ、

灰色の狂乱雲に覆われたこの国の何処かに、

その虹を見て恐竜を呼んだ少年は、

全てを無に戻せるんだってさ、、

 

 

 

 

「ふ〜ん、、誰が作った歌なの?」

「一応、、アタシ、、、ごほ、、ごほ、、、」

咳込むレイは伊達眼鏡は外しているが、マスク姿のままで布団上に

横になっている。その横には何故かマナの姿がある、、

「えぇ〜、だってレイ、歌詞にぺ、、、ぺ、、×××とかあるし、、、」

「へへ、、、マナ、結構過激な歌詞でしょ、サウンドも過激だからね、、

それに、、ごほん、、、こほん、、、詩は感じたままに、溢れる言葉を描いた

方が、、、こん、こん、、、、良いからね、、」

「へぇ、、、羨ましいなぁ、作詞なんてできて、、、」

怪しい瞳のマナがレイに近寄る、

「、、、、、ごほん、、あ、、マナ余り近寄ると、風邪がうつるよ、」

「そう、、大丈夫よ、」

宿泊のホテル、当然マナ、ヒカリ、アスカ、レイの四人部屋(お決まりだなぁ、、)

温泉とかに興味の無いレイとアスカは自室でシャワーで済ませる。

濡れた髪をタオルで拭きながらレイはTシャツに短パン、アスカもラフ

なシャツにジーンズ姿で寛いでいる。ヒカリは委員長会議に出ている為、

今は居ない、、、そんな部屋での小さな出来事なのだが、、、、

「ねぇ、、マナ、、、どうしたのその姿、、」

「え、、別に普通のパジャマだよ、」

「そ、、そう、、」

マナは一人、パジャマ姿に着替えていた。しかも、パジャマにはハートマークが

敷き詰められ、ピンクの下地が見えなくなる程の模様だった。

「へへ、、今日の為に新たに買ったんだ、、、」

マナは布団の上でハートまみれになりながら、更にレイに寄る、

「余り、、、寄らない方が、、、いいよ、、、」

「そう、、でもレイの風邪ならうつっても平気だよ、」

「それは、良くないよ、、、ごほ、、ごほん、、」

態とらしい咳込みをアスカは苦笑いしながら見てる、

「ねぇ、他人にうつした方が直りは早いんだって、、」

マナはレイの顔に手を伸ばす、

「そ、、そ、、そんな説あるの、、、、」

「そうよ、レイ、マスクなんて外してさぁ、、」

「は、、は、、外して、、、、」

「もっと、近くで、、、、可愛い顔見せてよ、、、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、嫌、」

その言葉から数秒後、レイは一気に部屋の外へと逃亡していた、

 

 

 

 

 

 

Nothing like the Moon

Episode 4

 

 

 

 

 

 

 

 

「あははは、、それで逃げてきたの?」

「碇君、、、笑い事じゃないよ、」

「だって、マナに迫られたなんて、、、何だかなぁ、」

飛び出したレイはシンジ達の部屋に逃げ込んでいた、

「兎に角、なんか着るもの貸して、」

レイは短パンからシンジのシーンズに履きかえる、

シンジも細いがレイよりは太いため、多少大きめの感じになる、

「な、、なぁ、、シンジ、、、ちょっと、」

「え、なに?」

シンジは同室の仲間に呼ばれ、部屋の隅で男三人固まって密談を行う、

「シンジ、、、まさか、綾波さん、、泊めるの?」

「いや、、ある程度時間が経ったら自室に戻すよ、」

「あ、、あと、どのくらいだ、」

「え、、、、」

「あと、どのくらい綾波さんはこの部屋にいるんだ、」

「え、、、ど、どうだろう?レイに聴いてみないと、」

「シンジ、、出来るだけ引き伸ばせ、」

「は、、、はぁ、、でもどうしたの?」

「さっきの黒焦げ女達なら別に興味はないが、、、綾波さんが来たとなると

話しは別だ。頼む、シンジ、できるだけ綾波さんを引き止めてくれ、

こんな千載一隅のチャンス、、、逃したら末代までの恥だ、」

「いいけど、、、そんなにレイって人気あるの?」

「貴様はアスカという恋人がいる上に、霧島さんとも幼馴染だ、

お前には俺達の気持ちは絶対に解らない。せめて、綾波さんだけでも、、」

「、、、、、、、、そうですか、、」

シンジは喜び、狂乱する同室二人の仲間の言葉を冷静に受け流す、

(まったく、、、本当は結構恐いのになぁ、、、レイは危険だよ、、)

そんなシンジの思いは別として、レイを囲んだ小宴会が始まった、、

どこからか、酒が持ち出され、レイもシンジも飲み始める、

 

「僕、睦野といいます。あの時以来話してないけど、憶えてます?」

まずは、割と明るそうな感じで、好感のある少年がレイに話しかける、

「え?あの時以来って?」

「やっぱり忘れられてるんだ、、、僕も一応軽音楽部の一員なんですよ、

「あぁ、、そういえば、(完全に忘れてるなぁ、、)あの時、いたわよね、、」

「憶えてくれてます?あの時、綾波さんと一緒に飲めて嬉しかったっすよ!

あの時話したこと、憶えてます?カートコバーンの自殺の話しについて、」

「そ、、そんな話しだっけ?(やばい、、完璧に忘れてる、、)」

「あれ、忘れたんですか綾波さん、あの時、、、、」

何処からか仕入れて来たビールを片手に睦野という少年がレイに迫る、

「睦野、、同じ話しを繰り返すなよ、オヤジじゃないんだから、、」

そう言いながらもその少年は、睦野とレイの間に強引に入り込む、

多少影があるが、寂しげな笑みを優しそうに見せる少年が今度はレイに話しかける、

「風邪ひいてるみたいだけど、大丈夫?迷惑じゃなかった?」

「ううん、、飲んでる方が早く治りそう、」

笑いながらバドワイザービンを飲み干すレイは嬉しそうだ、

「ほんと、良かった。俺、、大樹、睦野と同じバンドで、、、、その、、、あの、」

「軽音楽部で、あの時一緒にいたと?(あ、こいつ覚えてる、)」

「そう、、でも、俺あんまり綾波さんと話してなかったから、、」

「憶えてるわよ、確か、、、奈良 美智の話しをしたよね、」

「憶えてます?嬉しいですよ。俺、印象薄いから忘れられたかと思って、、」

「ううん、、憶えてる、アタシも奈良 美智の絵好きだもん、」

「うわぁ〜、嬉しいです、本当に嬉しいですよ、」

レイの笑みに大樹という少年は恥ずかしそうに微笑みを浮かべる、

「こら、大樹、卑怯だぞ、俺が綾波さんと話してたんだぞ!」

「なんだよ、お前より俺の方が印象に残ってたんだから、俺の方が優先権

があるんだよ。」

「憶えてたのは、お前じゃなくて、奈良 美智の絵の話だろ!」

「なんだと!」

「なんだよ!」

苦笑いを浮かべ、レイは事の成り行きを見守っている、

だが、言い合いをする二人を仕方がないといった感じでシンジが止めに入る、

「まぁ、、二人とも、、、そんなに奪い合わなくてもレイは逃げないよ、」

「そうだな、、、でも、綾波さん、、余り回りくどく聴くのは好きじゃないんで、

単刀直入に聴きますが、、、、今、、、、、、いるのですか?」

「はぁ、、、、何が?」

レイはビールを飲みながら、睦野の質問に適当に返事をする、

「だから、、その、、、特定の人は、、、」

「あぁ、、彼氏?いないよ、そんなの、」

「ホントですか!!」

「うん、、アタシみたいな女の子、好きになる男なんていないしね、、」

「「そんなことはありません!!!」」

猛烈な勢いで二人が叫ぶ、

「そ、、、そ、そう?」

その勢いにレイの目が点になる、

「当然じゃないですか!クラス違うけど、僕は綾波さんのこと、、ずっと、、」

「ちょっとまて、何勝手に告白しようとしてるんだよ、」

「いいだろ別に、気持ちを伝えるだけなんだから!」

「なんだよ、じゃぁ、俺だって伝えるよ、綾波さん、、僕と是非、、」

「ちょっと、、、二人とも、、」

多少騒ぐ睦野も大樹にレイは多少不機嫌そうな声を漏らす、

すると直ぐに二人とも自分を取り戻し、反省の色を浮かべる、

「あ、、すみません、、、」

「ごめん、、、」

だが、しつこくもなく、レイの言葉を素直に受け入れる少年二人の姿勢は、

レイは何故か気に入っていた。

「まぁ、折角一緒に飲んでるんだから、楽しくやりましょうよ、ね、」

「はい、、」

「それに、別に同じ歳なわけだし、もっとフランクに話してくれて大丈夫よ、

別にアタシなんて、ただの酒飲みのベース弾きの、歌うたいなんだから、」

自嘲気味に笑いながら、レイはポテトチップをかじる、

だが、その言葉に大樹は今までの表情を変え、無言で俯く、

「そんなことないよ、、、本当に、、それは、、」

大樹が真剣に、さっきとは違った表情で呟く様に話す、

「どうして?」

「俺は、、、男女の関係では近くの存在になりたいと思ってるけど、、

正直、、、音楽では綾波さんを、、、、、ライバルだと思ってる、、」

「はぁ?ライバル?」

「シベリアで数回ライブやったでしょ、、、

俺、シンジが組んだ新しいバンドだからって、見にいってたんですよ、、、

でも、同じヴォーカルとして、、同じバンドマンとして、、嫉妬しました。」

「はぁ、、、嫉妬ね、」

レイは然程気にせずに答えるが、今まで黙っていたシンジが口を開く、

「まってよ、、大樹君、、大樹君と睦野君のバンドって雑誌でも取り上げられてるし、

集客もできるし、自主CDも売れてるし、、メジャーデビューの話しもあるんだろ、」

「そんなの関係ないよ、、、でも確かに、俺は睦野の創造する音楽が最高だと思ってた。

睦野の作るサウンドは、とても主張があって、ギターのリフも、ベースラインも

全て睦野の色が込められてる。くだらない化粧コピーバンドじゃない、乱暴なだけの

パンクバンドでもない、、本当のロックだと思ってる、、、、、」

大樹は一瞬睦野を見るが、睦野の方は笑って肩をすぼめるだけだ、

「正直、、、俺には自信があった、、、俺が歌いたい世界に睦野のサウンドがあれば、

絶対に文句の無いロックンロールができると思ってた、、、、、だから、自主CD

ソールドアウトしても、ライブハウスが満席になっても、、、俺には関係なかった、、

俺はただ自分の自信に従って、本能のまま詩を歌えば良かった。ところが、、

同じ歳のバンドで、俺を嫉妬させたり、悔しがらせるバンドは一つもなく、周囲は

くだらない化粧バンドばかりだった、、、、、、つまり、俺は自己満足の世界で止まって

しまっていて、その事が俺自身をとても苦しめていたんだ、、、自分の揺るぎ無い自信

が知らない間に、自分を閉じこめてたんだ、、、」

大樹は一旦言葉を止めて、ビールで喉を潤す、

その間、レイがシンジに質問を振る、

「ねぇ、、シンジ、、そんなに良いバンドなの?」

「うん、、、僕が知ってるアマチュアバンドの中では、最も野太いサウンドだし、

構成も歌詞もすばらしいよ、、、本当にロックって言葉以外では表現できない

本物のロックバンドだよ。ロッキン・アウトって雑誌でも絶賛されてたしね。

もうすぐメジャーとも契約するって噂だし、、、」

「まぁね、、でも迷ってる。」

睦野は大樹とは違い、笑いながら答える。

「どうして、契約すればいいじゃない?」

「俺は別にいいんだけど、、、肝心のこいつがね、、」

指差す先には大樹が難しそうな表情で俯いていたが、

ビールを握りしめながら、ポツリ、ポツリと話し始める、

「、、、、、、俺も、、、いいと思ってるけど、、、、今は嫌なんだ。」

「どうしてだよ、、メジャーっていっても、短にライブハウス周りを

他人の金でするだけだろ。アルバムも創れるし、、、」

「マイナーが素晴らしいなんて思ってないけど、、、、、

でも、、今の気持ちのままじゃ嫌なんだ。

正直、俺は自分の詩にもバンドのサウンドにも自信があった。

単なる、うぬぼれから来る無意味な自信じゃない、

それなりに、結果を出してきたし、その手応えもあった、、

でも、、、どうしても心に燃える物が見えなかった、、、

多分、ある程度の段階まで一気に駆け上ってしまった為だと思うけど、

ふと、、気がつくと、心に燃える物がなにも無かったんだ、、」

「、、、、、、、、そうなの?」

レイは話しが見えていないが、なんとなく自分が絡んでる話しなので、

一応相槌をうちながら適当に言葉を流す、

「うん、、、、特にここ最近は何も創造できなかった、、、

でも、、、、、シンジ達のバンドを見て、、嫉妬したんだ、、

手に汗をかいて、、、震える心臓を抑えながら、必死に泣きそうなのを抑えて、

自分への自信を根底から崩され、自分の才能の鍍金を剥された、、、

そんな衝撃を受けたんだ、、、、悔しくて、嬉しくて、哀しくて、幸福で、、、、

全ての感情が一気にリフィニッシュされた感じだった、、、、

世間一般でいうカタルシスってやつかもしれない、、、」

「カタルシスって?」

「浄化作用っていうんだけど、、心に詰っていたものが一気に流れた時にも

そう表現するらしいんだ。」

「ふ〜ん、、」

「綾波さんのステージは、、何も無いんだ、、派手な照明も、アクションも、

奇抜な化粧も、歌謡曲的な計算も、、、何も無いんだ。

でも、その何も主張しない姿こそ、、なんて云うのかなぁ、、、

無こそ、最大の主張であるって、、、そう強烈に感じさせるステージなんだ、」

「なんで?アタシ、単に爆音で騒いで、叫んで踊ってるだけだよ、」

「それこそが、全てなんだど思うんですよ。

僕達はそれまで或意味、規定の概念の中で音楽を創造してたんだと思うんです。

ロックという表現方法に囚われ、自分の壁の内での世界で表現してたんだ、、、

でも、綾波さん達のステージは、形はあるけど、全てが感覚で本能的なんですよ、

うん、、本能を揺さぶる世界なんですよ、、、」

「はぁ、、、、、本能ね、でもそんなに、たいした事してないけどなぁ、、、」

「そう、、綾波さんは全てが自然なんですよ。自然と溢れる何かをステージで

発散している。だから化粧も必要ない、派手なアクションも、ギミックも一切

必要としてない。まさに、、、あまりにも純粋な石で突然殴られた様な感覚なんです。

そのあまりにも、本能的で自然過ぎるステージを見た時、、

とてもショックでした。でも、それはとても良い意味でです。

正直、あの時契約してても、僕は愚かなままステージで歌ったままだったと思うんです、

今は、僕の創造力を刺激する同じ歳のバンドマンがいてくれて、、

本当に嬉しいです。だから、、、だから、、、、」

「だから?」

「僕の恋人になって欲しいんです!」

レイはその言葉にビールを吐出す、

「っぶ!!な、、なんでそうなるのよ!」

「音楽ではライバルでも、そんな女性が僕は好きなんです、お願いします!」

「ちょ、、ちょっと待ってよ!」

レイは多少逃げ腰で下がっていく、

「ちなみに、僕はライバルとは思ってないけど、僕も彼氏候補にして欲しいです、

いや、、、絶対に僕の恋人になって欲しいです。僕も綾波さんの才能に惚れてます!」

そのレイを更に追う様に、睦野も一気に迫る、

「ちょ、ちょっと、碇君、、、ちょっと、どうにかしてよ!」

「はは、、レイ、良い機会だから両方OKしちゃえば、

最初はお友達からって事にしてさ、」

焦るレイをおかしそうにシンジは笑ってみてる、

「碇君、笑ってないで、、助けてよ!」

「綾波さん、お願いします!」

「いえ、僕こそ綾波さんと共に、、」

「ええい、うるさい!!!!!」

レイは迫る少年二人をレイは張り倒し、部屋を逃げる様に出て行った、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加持君、、、どう状況は、」

“そうだな、、、雑魚の相手はそれほどでもないが、如月達クラスが

登場してないのが、不気味だな、、、、“

「でも、明かに空間の歪みは広がってるんでしょ?」

“あぁ、、南極へ派遣した調査団の報告では、あと数ヶ月後には、

完全に次元反転現象が起こるそうだ、、、“

「その前に決着をつけないとね、、、」

“あぁ、、新たな状況が発生したら連絡する、そっちはどうだ?”

「うん、、、まぁ今の所は大丈夫、、、」

“そうか、葛城、君もあまり無理するなよ、”

「うん、、、じゃぁ、」

無線を切った、ミサトは複雑な表情をする、

その空間を見つめる様な瞳が何を見てるのか、誰にも解らない、

だが、決して曖昧な明るい未来を見てる事だけは決してなかった、、

「あと、数ヶ月ですか?」

「そう、、それが、10から12なのか、それとも1から2なのか、、

アタシ達の科学技術では解らないわ、」

「科学の限界ですか、、その限界をもっと早く知るべきでしたね、、」

「そうね。ところで、レイの方は?」

「今、シンジ君達の部屋にいます。」

「そう、、じゃぁ、一応安心ね、、」

「えぇ、、」

カオルは浴衣姿で、ミサトの後ろでテレビを見ながら寛いでいる、

金髪を濡らしながら、ビールを飲む姿は何処か普段と違い人間らしかった、、

「そうしてると、、人間みたいね、」

「そうですか?」

「しかし、不思議ね、、、同じ容姿を持っているのに、、、違う生物だなんて、」

「人間社会でもそうじゃないですか。主義、主張が違えば、国が違えば、

互いに生物同士である事すら忘れ、殺しあう。」

「そうね、、最も残酷な生物だもんね、、人間は、、」

ミサトも笑いながらカオルの側に座り、ビールを飲む、

「ねぇ、、、カオル君、聞いていい?」

「どうぞ、」

「人間の体と同化すると、、、どんな感じなの?

人間は元々細胞の結合体で構成されている。なのに、自己保有している細胞以外の

他人の細胞とは結合できない。同じ組織を持っているのに、遺伝子が違うだけで、

他人として触れ合う事すらできない、、、、、

でも、カオル君は違う、、、肉体を持たない変りに、人間の思惟で構成されている、

概念の存在、、、だから、私達人間と誰とでも同化できる、、、

その、、つまりね、、、、、、」

「同化した瞬間、他人と心が溶け合う瞬間は気持ちいいのかって事?」

「、、、、、、、、、そうね、、それは快楽なの?それとも苦痛なの?」

「はは、、快楽は苦痛だし、苦痛は快楽ですよ。自虐は加虐なんですから、」

「そうね、、でも、どんな感じなの?他人と一つになるって?」

「そうですね、、、あまり気持ち良いとは云えないですね。

でも、感覚じゃないんですよ。つまり、1+1=2って世界じゃないって事ですよ、

現象として表現できる事じゃないんですよ、」

「つまり、、、言葉で表現することではないと、」

「そうです。言葉で表現していても、音楽で表現していても、それ以上の何か

を感じる時があるでしょ、、、人間の本能を感じ過ぎる瞬間、そんな感じに近いかも、」

今一つ理解できないカオルの言葉と、綺麗な笑顔のギャップに戸惑いながら、

苦笑いを浮かべながら、ミサトは一気にビールを飲み干す、

「なんだか、、、良く解らないわね、、」

「そうですね、、、よく解ったら大変ですよ、

その瞬間に狂人として殺されるか、僕みたく意識だけの存在になるか、、

越智や如月の様に、反動の世界の住人になってしまいますよ、」

「反動の世界の住人か、、、、、、でも、何時から彼らは存在してたんだろ?」

「恐らく、世界が言葉で主張を始めた瞬間だと思いますよ、

言葉での主張は最終的に明確な輪郭を持った世界を創造できない、

どんなに律令や戒律を創っても、そこには曖昧さが存在し、反動が生まれる、

彼らは、、、そんな表歴史の反動で生まれた裏生物なんですよ、、」

カオルはテレビの中の水着姿の女性が数人で踊る、女性アイドルグループを見ている、

笑ってはいるが、実に冷めた瞳で、死に行く生物を見守るかの如く見つめる、

「、、、、、、、言葉による主張があらゆる権利と主義、自由を生み出した、、

その瞬間から、それら全てに反動する世界が生まれた、、、、

神様が必死でカーテンで覆っていた世界だったんだけどね。

ところが、今、彼らはその世界に神をもたらし、その世界こそ真実の世界にしよう

と行動を起し始めた、、、、、今の価値観、道徳観、倫理観を覆そうとね、、、

全ての真実の反動から生まれた彼ら、、、、、やっかいな敵ですよ、」

テレビではお笑い芸人が水着に顔を寄せながら、笑い声を上げている、

ミサトにはその姿が今の社会を象徴している様に思えるのは何故だろう?

「ねぇ、、、、カオル君、、、」

「何ですか?」

「そんな連中に勝てるのかなぁ、、、アタシ達?」

「、、、、、さぁ、仮に勝っても良い事無いかもしれないですよ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、そうね、」

ミサトは苦笑しながら再びビールを一気飲みした、

 

第十八話へ続く



Rudyさんの部屋に戻る/投稿小説の部屋に戻る
inserted by FC2 system