「ブーツを脱いで、寛いでたら、、」

 

 

 

シンジは呆然と現場に立っていた、

さすがにシンジも尋常な心ではなかった、

自分がとても許せない、できる事なら今すぐ碇シンジという人間を殺したい、

何故、、、あの電話をもらった時、すぐにトウジとケンスケの所へ行かなかったのだろう、

あの言葉から何処かおかしいと思いながらも、後回しにした自分が、

どうしても許せなかった、、、、

(何故、、、どうして、、これもレイの仕業?ネルフが起こしたテロ行為なんだろうか?

だとしたら、、何故、トウジとケンスケが、、、)

シンジの心は何も結果を導けなかった、

通常の感覚を全て無くし、ただ呆然と立ちつくすだけのシンジは、

涙を流す方法すら忘れていた。

「おい、シンジ、、、」

同じチームの仲間が心配して話しかける、

「止めとけ、今は放っておけ、」

「しかし、隊長、」

リュックも現場での検証に来ていた、

「アスカはどうした、」

「死亡者の内の一人に恋人がいたらしくて、その恋人に連れ添って病院へ、」

「そうか、、、友人までがなぁ、、」

リュックはシンジとアスカの気持ちを考えていた、

友人を二人一度に無くした、

しかもその友人を殺したのが、昔の自分の恋人かもしれない、

そんなシンジは、、

今、どんな気持ちでいるのだろう、

「シンジのやつ、、もう使えないかもな、」

「あいつがチームから抜けるのは痛いですね。狙撃に関しては、天才的な奴ですからね、」

「だが、このままでは、、、」

リュックは呆然と立ち尽すシンジの後ろ姿を見ていた、

 

(最低だ、、、僕は、、、

何が特殊ポリスだ、、何が狙撃率ナンバーワンだ、、、、

友達すら守れないなんて、、、

僕が昨日引鉄さえ引いてれば、、、こんな結果にはならなかったかも、、

いや、今朝の時点でトウジとケンスケと合流してたら、、

いったい、、僕は、、、、何をしてたんだ、、、、

最低な人間だよ、、、、僕は、、、)

ただ、シンジは全てが黒くこげたマンションの一室、友人が住んでたはずの見なれた一室で、

呆然と立ち尽していた、、、

「なに、本当か!」

「えぇ、間違いないと思います、」

「おい!シンジ!」

リュックがシンジの肩を掴む、

「おい、シンジ、発見された二つの死体、お前の友人の遺体じゃないかもしれないぞ、」

「え、、、」

シンジの瞳に生気が一気に戻る、

「遺体は丸焦げになってたから外見だけでは判断できないが、どうも歯科医のカルテと検死医がコンピューターで照合したところ、相田ケンスケ、鈴原トウジの物とは一致しないそうだ。」

「じゃぁ、、」

「あぁ、あの二人の死体じゃない事は間違いない、」

「本当ですね!二人は、、生きてるんですね、、」

「おい、シンジ、まだ生存を確認したわけじゃないんだ。そんなに喜んで、、」

「生きてますよ、絶対に、生きてます。二人はとってもしぶといんですよ、殺したって死にやしない!」

シンジは自分に言い聞かせる様に叫ぶ、

そして一気に体中から生気を溢れ出す、

「目撃証言は?鑑識結果は?何か情報は集まってますか?後で僕のポケットに流してください、」

シンジは胸から簡易ポケットコンピューターを出し、セッティングする、

「おい、シンジ、」

「今すぐ二人を探しに行きます。二人が隠れそうな場所、数件知ってます、」

シンジは急にスイッチが入ったロボットの様に動きはじめる、

「おい、、、、アスカに報告してやらなくていいのか、」

「隊長からしてあげてください、僕はすぐに二人の捜索に向かいます、」

「あぁ、分ったよ、、」

「それじゃぁ、必ずメールで情報送ってくださいよ!」

シンジはゴーグルを付け、階段を駆け下りる、

そしてバイクにまたがり一気にエンジンをかける、

「待っててくれ、トウジ、ケイスケ、、、、、もう二度と僕は大切な人を失ったりしないんだ、」

そしてバイクの前輪を少しウィリーさせて、一気に発進させる、

暖まっていないエンジンが少し悲鳴をあげているが、今日はシンジは無視する、

少しでも、一秒でも友人達の無事を自分の手で確認したかった、、、

 

「良かったですね、これでシンジをチームから外さずにすみますね、」

「あぁ、、二度も大切な人を失ってたら、シンジの奴二度と立ち直れなかったかもな、」

「二度っていうと、、」

「あいつの両親、、、今回と同じ様に爆弾テロで死んでるんだよ、」

リュックは思い出したくない過去を思い出していた、、、

 

 

 

 

アスカはリュックからの連絡を受け、その言葉に喜び、友人同士で抱き合った、

ベットに寝かされたままのヒカリ、アスカはそのベットの脇に座っている、

「よかった、、、アスカ、よかった、、」

「でも、まだ生存は確認されてないんだよ、」

「そうよね、、、、」

「大丈夫よ、あの二人は殺したって死にやしないわよ。今、シンジが二人が隠れそうな場所を捜索に行ってるみたいだから、すぐに見つかるわよ。相田のやつ意外と自分の家が吹き飛ばされた事すらしらないんじゃない。」

「ふふ、、そうかもね、」

やっと笑った友人にアスカは一応安心する。さっきまで死の淵を自分の意志でさ迷っていただけに、生きる希望を持って微笑む友人に一旦は胸をなでおろす、

「ヒカリ、アタシそろそろ戻らないとだめだから、」

「うん、ごめんねアスカ、」

「何言ってるのよ、、」

「本当は、、、アスカも、碇君もとっても辛かったのに、、あの時も、、私何の力にもなれなくて、、」

「ヒカリ、良くないよ自分を否定的に捕らえるのは。ヒカリはね、アタシに唯一希望を見せてくれる存在なんだから、」

「希望?」

「そう、、ひょっとしたら、全てが、、あの時の事件も、レイの事も、全てが嘘で、、、真実はどこか別の場所にあるんじゃないかって、そう希望を持たせてくれる存在なんだよ、」

「アスカ、、、」

「本当はママもパパも生きていて、、どこかでアタシを見てくれてる、、そんな気がするんだ、、」

「アスカ、、、、、、、きっと、ううん、、死体が見つかってないんだから、絶対に生きてるわよ、何処かで、」

「そうね、、、でも、シンジの両親は、、、」

「、、、、、、、、、、」

二人はそのまま黙り込む、、

だがアスカはその空間を嫌い、無理に笑顔を作って立ち上がる、

「じゃぁ、見つかったらすぐに連絡するから、」

「うん、アスカ、、」

「何、、」

「未来は想念で作られてる、、想い描く力が全てを決めるんだって、、」

「ありがとう、アタシもその言葉信じるわ、じゃぁ、」

笑顔を振りまき出て行くアスカ、その後ろ姿にヒカリは何かを感じていた、

(アスカ、、、あの事件をまだ受け入れられないんだ、、、そうよね、、自分の両親と碇君の両親が、、、

まさかレイに殺されたなんて、、、そんな事実、受け入れられわけないわよね、、)

 

 

 

 

アスカはヒカリの部屋を出てから病院の受付の前を通った、

そして、ポケットコンピューター“EPC”のスイッチを入れる。

“はい、こちらS2”

「シンジ、あんた今何処?」

特殊電波による通信機能が装備された小型コンピューター、結構便利な物です、

“、、、、、、、、、、A2、ちゃんとコードで呼ばないと、また怒られるよ、”

「そんなことはどうでもいいから、今何処?」

“今、ブロック3104、ダンスホールの側、”

「今からアタシもそこに行くから、待ってなさい。」

“えぇ、、アスカも来るの?”

「何よ、アタシが行ったら問題があるっていうの!」

“アスカ、来るのは良いけど、一般市民に危害を加えるのは止めてよ、”

「アタシがいつ危害を加えたのよ!」

“いつも、、、常時、、、、どんなケースでも、、、そして始末書は僕が書く、、、”

「男が細かいこと言ってるんじゃないわよ!今から行くから、そこで待ってなさい!」

“もう、、、我侭なんだから、、”

「ふふふ、、、、あんた、今度徹底的に虐めてあげる、、、」

“え、、いや、アスカ様が来てくれるんだ、、う、嬉しいなぁ、、アス”

プチ、という音と共に通信は切れる、

そして不気味な笑みを浮かべるアスかは、どうやってシンジを虐めるか、思い浮かべながら歩く、

(想念が未来を作るか、、、シンジ、、あんたの未来はアタシの手の中よ、ふふふ、、、、、)

アスカ、そういう意味ではないわよ、とヒカリの突っ込みが入りそうだった、、

 

 

 

 

そしてアスカは駐車場へと向かう、鼻歌まじりで歩くアスカはどこか楽しそうだった、

病院の裏にある広い駐車場、そこに駐車した自分の車の前に立ち、周囲に人間がいないことを確認する、

「アタシね、ストーカーまがいの人間って大嫌いなの。それに他人の会話を盗み聞きするやつもね、」

アスカは誰を見るわけでもなく、大きな声で話す、

「病院じゃ騒ぎを起こしたくないと、」

数メートル離れた場所で背の高い女性が答える、

「まぁね、一般市民を巻き込むわけいかないから、」

「いつから気がついてたの?」

「ヒカリの病室での会話を盗み聞きしてる時からかなぁ、、」

「そう、、」

髪の長い女性、、

紺のスーツに白いシャツ、黒のミニスカートからは綺麗な肌色のストッキングに包まれた足が伸びている、

明らかにアスカより年上の女性だが、それほど年齢を感じさせない外見だった、

「サングラスぐらい外したら、それとも目尻に小じわがありすぎて外せない?」

「ううん、、あなたより魅力的な瞳で男が放っておかないから、隠さないとだめなのよ、」

そう言いながら、女性はサングラスを外す、

「ふん、たいした事なんじゃないの、おばさんの若作りはみっともないわよ、」

「いつまでも子供のままでいたいのね、、アスカちゃん、」

余裕の笑顔なのか、怒りの笑顔なのか、二人は何故か堅い笑顔を浮かべる、

アスカは左内ホルダーからゆっくり銃をとりだす。

ハンドガン、、“ESSP”専用の特殊なガンだ、

「それで、、アタシを付け回した理由は、」

「友達になりたいから、、て言っても信じてくれないわよね、」

「そうね、」

「シンジ君の居場所が知りたかっただけ、」

「シンジの?」

「そう、でもさっきの通信からシンジ君の発信源、だいたい分ったから、もういいわ、」

「そんなことが出来るなんて、、、まさか、」

「そう、アタシはネルフの人間よ、」

“ネルフ”その言葉にアスカはすぐに反応する、

エレクトリックトリガーの反応が、プライマーに伝わる、そしてパウダーがメタルジャケット部を飛ばす、

その間、一秒とかかっていない、

だが、アスカも女性も瞬時に車の影に身を隠す、

「待って、アスカ!私は、」

その言葉が続く前にアスカが攻撃をかける、

数発の弾丸が女性の隠れる車のすぐ脇を貫く、

アスカは訓練された動きで、銃を両手に構えながら進む、

だが、相手も同じ訓練された者、同じ場所に同じ留まってはいない、

瞬時に身をかがめ、複数の車の下から相手の場所を探る、

(いない、、、)

女性の位置が確認できない、

「アスカ、私はあなたと話しがしたいだけなの!」

何処かから声がする、だが、その声の方向に相手がいないことはアスカにも分る、

(どこだ、、一人じゃない、仲間がいたんだ、、)

そう感じとったアスカは車が多く駐車してるこの場所での戦闘は不利と判断し、

一気に駐車場の外にでようとする、

その瞬間、

「銃は必要ないのよ、必要なのは想念よ、」

上を見上げる、

アスカはその光景が信じられなかった、、

「私達はあなたを必要としてる、、」

空中に浮かんだ女性、、

瞬時に影を確認するが、、、確かに実態がある、、

そう判断した瞬間、アスカは再びトリガーに反応を送る、

だが、弾丸が届く前に、その女性の姿は消える、、

そして残ったのは、、、灰色の特殊フィルターに覆われた空の色だけだった、

「な、、何なの、、、今のは、、」

アスカはしばらくその場から動く事ができなかった、、、

 

 

 

 

「まいったなぁ、、アスカが来るといつも騒ぎになるんだよな、、」

そう言いながらシンジは地下へと続くコンクリートの階段を降りる、

壁は古びた張り紙が破れた跡、訳の分らない絵や様々な叫び声の落書きで埋められてる、

「この入り口は十年前と変わっていないなぁ、」

呟くシンジは昔のダンスホール、ディスコと呼ばれていた頃、この階段のさきにある店を思い出す、

(よく、みんなでパーティーを開いたよなぁ、、、

アスカはもっとオシャレな場所がいいと言って不満気だったっけ、、、、

洞木さんは店の雰囲気が恐いって脅えていた、、、、

トウジが横で笑いながら大丈夫ってなだめてたなぁ、

ケンスケはやたらと興奮してた、こんな怪しい場所、絶対に銃の密売人がいるってさけんでたっけ、、、、

でも、、僕とレイの好きな場所だったんだ、、

レイはここでよく踊っていた、、激しいリズムとビート、誰も見た事のないダンスを、、

とっても素敵な笑顔で踊っていた、、

僕にその素敵なダンスを見せるんだって、、、とても張切っていた、、

そんな日々もあったんだよなぁ、、そんな記憶、まだ僕は忘れないでいたんだ、、

笑っちゃうな、、)

シンジは自嘲気味に笑う、

そして、今は潰れている店の扉を開ける、、、といってもすでに破壊された扉を蹴り飛ばすのだが、

シンジはホコリが舞う闇の中を進む、、

左の肩に簡易ライトをつけ、両手に“ESSP”専用のハンドガン、アスカのと同じ銃だが、シンジのガンはカスタマイズされている。

シンジは過去にある記憶に添って、ホールを、カウンター前を進む、

「ケンスケ!トウジ!いるなら答えてくれ!」

(誰もいないなぁ、、、この場所が万が一の時、一番隠れやすい場所なんだけどなぁ、、)

シンジは事件現場から走る間に考えた、、

現場に残された人物はトウジとケンスケを襲った人物だと推測される、

だが、二人にその人物を殺せるわけがない、、二人は銃所持は許可されていないし、

ケンスケもトウジも今まで一度も人間を刺したり、撃った事はないはずだ、、、僕とは違って、、

それに自分の部屋をわざわざ爆弾で吹き飛ばす必要はない、

だとしたら、二人を襲った人物は誰か第三者に殺された、

その人物が部屋を爆破した、、、目的はわからないが、第三者がいる事は間違いないだろう、

恐らくその人物と同行してるか、その人物から逃げる為に姿を隠したか、、

もし自分の意志で同行してるのなら、シンジに必ず連絡してくるはずだ、、、

だとしたら、、、

そう思ったシンジは二人がいつも話していた秘密の場所、

数年前に閉鎖した地下のこの店のことを思い出した、

(いないのかなぁ、、、この場所じゃないのかも、、)

 

そう思った瞬間、シンジは暗いカウンターに気配を感じる、

「くうっ!」

すぐさま気配に向けてライトと銃口を向ける、

「まぁ、そう気を張らずに、ここで一緒に酒でも飲もうぜ、」

「さすがですね、、結構気配を感じるのは得意なんですけど、、」

「俺は気配を消すのが得意なもんでね、碇 シンジ君、」

「そうですか、、まぁ僕の方がかなり若いから仕方ないですかね、、、加持 リョウジさん、」

シンジは銃口は向けたままゆっくりと進む、

加持と呼ばれた人物は背を向けたまま動かない、

それでもシンジは銃口を一瞬たりとも加持の背中から外さずに進む、

「今日は銃抜きの話しにしたいんだけどなぁ、」

「生きるか死ぬかは一瞬だ、敵と判断した人間を絶対に信用するな、そう教えてくれたのはあなたです、」

「そうだな、、だがもう一つ教えたはずだが、」

「敵に撃たれる前に撃て、言葉は必要じゃない、最後に立ってる人間だけが言葉を選べると、、」

「なぜ撃たない、」

「今は二人の居場所を知ることが最優先です。戦場や作戦中じゃありません。」

「ふふ、、ずいぶんと成長したもんだな、、俺の元に始めて来た日からは想像できないなぁ、」

「あれから5年経ってます。僕も少しだけ成長しました、、、、」

シンジは加持の座る席から一番遠い席に座る、もちろん銃口はそのままだ、

「そうか、5年も経つのか、、、早いもんだなぁ、、」

加持は目の前にあるグラスにウィスキーを注ぎ、グラスを口に運ぶ、

「今でも一匹狼だって聞いてましたけど、今は依頼された行動中ですか、」

「あぁ、そうだが、」

「今回、僕に接触してるのは依頼の一部に含まれてるのですか、」

「いや、だが必要だと判断したから接触してる、」

「トウジとケンスケも関係してるんですね、」

「依頼内容はシークレットだ。それ以外の会話をしようぜ、」

「今回の依頼主は、、、、、、“ネルフ”ですか、」

「依頼主はトップシークレットだ、知ってるだろ、」

「僕は二人を失うわけにはいかないんです、、、、絶対に、」

シンジの指先があと数ミリ動けば、エレクトリックトリガーに反応する、

だがシンジの指も見ない加持は、グラスを片手にカウンターの奥の壊れた棚を見てる、

「“ネルフ”とはなんだろうな?」

「、、、、、、時間稼ぎですか、」

「ネルフの存在を何処まで知ってるんだい?敵を知ることが生き残る最良の手段だと教えたはずだが、」

「、、、、、一年前に現れた謎の組織、“G”と呼ばれる人物が結成したテロ行為を目的とした組織、その目的、思想、理念は不明、、、、過去に国会爆破、XXX党本部爆破、その他各地でテロ行為を行ない、全てに声明文を送っている、しかしその内容は犯行を認める内容のみ、要求、要請は一切無し、」

「そして、全ての現場で共通に発見されている人物、綾波 レイの存在、、、、、それだけだ、」

「何が言いたいんです?」

「いや、もう一度よく考えるんだな、」

「何をです?」

加持はその問いには何も答えず、グラスのウィスキーを一気に飲み干す、

「トウジ君とケンスケ君の職業はカメラマンとジャーナリストだったねぇ、」

「過去形で言わないでください、」

「これは失礼、二人ともなかなか正義感が強く、熱血らしいね、」

「それが今回の事件の原因ですか?」

「彼らはある物を発見した、エジプトでね、」

「新しい王の墓でも見つけたんですか、」

シンジが皮肉交じりで答える、

「はは、、シンジ君、君の勘は鋭いねぇ、」

「まさか、、、」

「そのまさかさ、彼ら二人は新たな王の墓を発見した。だが、その王は人間じゃないんだがね、」

「人間じゃない、、、」

「神様の墓だったのさ、」

シンジは笑いながら銃口に視線を送る加持の言葉に、多少の心の揺れを感じる、

「説明してください、、、」

「さぁね、それ以上は君の手で探ることだね、」

「どうしても、と言ったら、」

「俺もどうしても断るだけさ、」

 

反射的に二人は暗闇に飛ぶ、

シンジは肩のライトを消し、すぐに別の場所に移動する、

闇のなかで光を発する事は自分の位置を教える事になる、

加持はその数秒の間で、銃を構え、闇に気配を消す、

そして、二人は広いダンスホールの闇に姿を、気配を消す、、、

(確かに、加持さんが一度気配を消したら、感覚で捕らえるのは難しいなぁ、、この場では不利だな、)

シンジはこの場での加持への接触を諦める、

いや、目的を変更する、

生き残る、、、

それが、この場での最大の目的だった、

 

 

 

 

「カタ、、、」

小さな音だった、

その小石が起てた小さな音にシンジも、加持も同時に反応する、

だが、反射速度は同じでも、明らかに標準物が違っていた、

シンジはその小石を投げたと思われる人物、誘導を掛けた人物の場所を予測して銃口を向ける、

だが、その先には加持の姿はなく、シンジの横に気配をあらわした加持は正確にシンジの左腕を、

そして正確に銃を落とす程度の傷を負わす、

「ちっ、」

シンジは痛みと同時に右手でナイフを取る、

そして、銃声がした方向にナイフを投げる、

だが、手応えは堅いコンクリートに当たった音だけだった、

「どうした、俺が教えてた頃はもっと反応が早かったぞ、」

加持の言葉にシンジは唇を噛み締める、

(このまま闇の中では不利だ、、)

そう判断したシンジは何か闇を切り裂く方法を考える、

 

だが、その方法が思い浮かぶ前に、別のことが頭に浮かぶ、

(あれ、僕、笑ってる、、、、、、)

自分が死ぬかもしれない、そう思う気持ちがシンジに笑顔を浮かべさせる、

何故だか分らないが、シンジは笑顔で右手にサバイバルナイフを握っていた、

そして、一気にカウンターの中へ走る、

その影を正確に銃弾が追いかける、

シンジは数発の傷を負いながら、カウンターの中に飛び込む、

(あった、、、昔のままだな、、)

カウンター下の床に隠し扉があり、その中には非合法のアルコール類が隠されていた、

その中にはアルコール度が強過ぎて、飲酒にはむかない種類の物もあった、

シンジは闇の中、夜目でそのビンを選び、カウンター越にホールに投げる、

そしてビンが地面につき、割れる前にジッポライターを投げる、

ホールが一気に炎で明るくなる、

だが、その瞬間、、、

シンジはカウンターの上に立つ加持の姿を見る、

「昔より、腕が落ちてる、、、、」

「でも、感情は壊れてますよ、、、あの頃より、」

「そんなことでは奴らと戦えないぞ、」

「“ネルフ”とですか?」

「いいや、、、、、、敵はもっと強大だ、」

「え、、、、、」

カウンターの上から見下ろす加持の後ろで、アルコールを燃焼した炎が消えて行く、

「シンジ君、次に君と会う時は、敵か見方かわからない、、、」

「今は敵じゃないって言うんですか、」

「そうわ言わない。だが、見方でもない、」

「、、、、、撃たないんですか、」

「君を救う様なことはしないよ、君はまだ生きなければいけない人間だ、」

「ふふ、、冷たいですね、」

「アスカが哀しむぞ、」

そう一言いった加持はカウンターを飛び降りる、

そして、完全に燃焼しきった炎の後に訪れた黒い闇に加持は消えていった、、

(生きなければいけない人間か、、、、、嫌な言葉だ、)

シンジはその場で何故か笑い続けた、、、

 

 

第三話へ続く



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