「星はニセモノで、夜はニセモノ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは片手をジャンパーに突っ込んだまま歩く、

雨が何時もの様に降っている、

いや、雨季を人工的に作っているこの都市では、天候など無意味なのかも、

殺人的な紫外線を防ぐ為、巨大なフィルターを空に貼りつける様に浮かばせた、

その技術は素晴らしいものかもしれないが、人間の愚かさを証明してる気がする、

二度と蒼い空は望めない、二度と素敵な雲の流れ、朝日に染まりゆく空、

失望と忘却を繰り返す夕日、季節毎の星座は消えてしまった、

昔、人間がいつも思いを馳せた蒼い空は、数年前に死んだ、

全ては人工的な存在、

人間の欲望が作ったもの、

こんな街、壊れてしまえばいい、、

レイがよくそう言ってた事を思い出す、

(まさか、本当に破壊するなんて、、レイらしいかもな、、、)

シンジは雨にぬれたまま、ビルの谷間の薄暗い裏路地を歩く、

“シンジ、何か変化はある?”

「いや、まだ何もない、、」

“敵はシンジの方を察知してる可能性は高いわよ、”

「充分承知の上さ、」

何もない、そう答たシンジだが、明らかに異変に気がついていた、

後ろから三人、裏路地に入ってから自分の歩幅に合わせ、一定の距離を保って尾行してくる人物に、

シンジはすでに気がついていた。

 

スラム街と呼ぶには綺麗すぎる、いわゆる低所得者用の政府が用意いた居住区、

当然犯罪の頻度も高く、闇に蠢く出来事も多い、

そんな地区に逃げ込む犯罪者、逃亡者、失踪者は後を断たない、

当然第七東京は多国籍都市として、経済都市として世界でも有数の都市である、

その都市に夢や、絶望、様々な思いを馳せながら、異国の人間が流入してくる、

シンジ達は、その地区の中でももっとも危険と言われてる“竜紅地区”に潜入していた、

中国系マフィアが仕切るその地区では、日々当然の様に人間が消えて行く、

在る時、この地区で潜入捜査を行なっていた刑事が消息不明になった、

そして、三日後に、全身の皮を剥がされ、口から鉄の槍を突き刺され、串刺しになった死体で発見された、

そんな事件が当然の様に起きる、

その地区を、シンジは一人、歩いていた、、、

 

 

 

 

シンジは両面をビルで囲まれた道を歩く、

その後ろを三人の男も歩く、

そして、その男達も誰かと連絡を取っている様だった、

シンジはブロックの切れ目で、左に曲がる、

その瞬間、数メートル前でシンジの目の前で塵の収集をしていた作業員二人と視線が合う、

そして、一秒掛からない内に、シンジの左手はガンホルダーの銃を掴む、

相手も塵の中からマシンガンを取りだし、シンジに向ける、

だが、横に飛びながら左手一本で二人に向け発砲するシンジ、

同時に右手で始めからポケットの中で握っていた銃を抜き、

両手を九十度に交差し後ろを付けていた三人に発砲する、

シンジはコーナーの角の所で、同時に二箇所の敵に発砲する、

敵も銃を抜いてはいる、それなりに訓練された動きだ、、

だが、、、、

どちらも、シンジの弾丸の方が遥かに早く到達した、

照準を合わさせる事もなく、シンジのクロスした腕、その右手と左手の先に握られた銃は、

正確に、敵の数だけの弾丸を打ち込んでいた、

シンジはすぐに身を起こし、周囲を確認する、、、

そして敵の存在が無いことを確認すると、右手に銃を握ったままポケットに手をいれ、

左手でガンホルダーに銃をしまう、

そして何事も無かったかの如く、再び歩き出した、、、

シンジはこの数秒の間も、表情一つ変える事無く、無表情でいた、、、、、

 

 

 

 

“見たか、、今の、、、”

“あぁ、、敵がしかけるタイミングを明らかに読んでいた、”

“しかも、後ろの敵と前の敵を同時に、、、”

“恐らく前後への射撃では無理と判断し、わざとブロックのコーナーで仕掛けたんだ、”

“自分の視界範囲内、九十度内の敵なら同時に認識判断できる、、”

“そして同時に両手でシューティングできる。”

“左右ばらばらにだぞ、、そんな事が、、、”

“訓練して出来る技じゃないぞ、あれは、、、”

“可能なんだよ、あいつには、、、だから、特別扱いで”ESSP“に入隊したんだよ、”

“碇 シンジ、、、、、、厄介な奴だな、、、”

「ここへ連れて着なさい、私に用があるようですね、、、」

暗闇で監視カメラのモニターを覗き、会話をしていた老人達がその声に、瞬時に反応する、

「し、しかし、、、竜紅、、やつは、、、」

「恐らく目的は我々への潜入、捜索ではない。」

「ですが、奴は危険すぎます。」

「奴を仕留めるには、大勢の兵力を必要とします。

もしそうなれば、彼らの本体が突入する口実を作ることになります。」

「しかし、、竜紅の身に何かあったら、、」

「大丈夫です。それに、、、」

「それに?」

「あの男、、、、懐かしいわね、、ふふ、」

 

 

 

 

 

“シンジ、大丈夫?”

「あぁ、かすり傷一つないよ、」

“そう、あんまり無茶しないでよ、”

「あぁ、、と言いたいが、あちらさんの使者がやってきた、」

“まさか、、駄目よシンジ、勝手に行ったら!”

「交戦が目的じゃないみたいだし、大丈夫だよ、」

“シンジ、私もすぐに行くから待ってて!”

「いや、一人で大丈夫。それじゃぁ、無線は切るからね、」

“ちょっと、、シンジ!シン、、、、、、”

アスカは“竜紅地区”の側に駐車した車にいた、

「まったく、すぐに無茶するんだから!あの馬鹿!」

アスカ・オリジナル・マシンガンを手に取り、車のドアを蹴っ飛ばし、

シンジとおそろいのジャケットを上に着ながら、アスカもブロック内へと潜入していった、

 

 

 

 

 

「ようこそ、“竜紅地区”へ、」

暗い電球の無い部屋にシンジは通された、

「招待頂き、光栄です。あなたが、竜紅さんですか?」

港に面した窓が一つだけあり、その窓から刺し込む日差しが、陰と陽を作る、

「そうよ、碇 シンジ君、、、」

シンジは陽の部分に達、竜紅と呼ばれた女は陰に立つ、

だが、シンジもすぐに陰の部分に立ち位置を変える、

「どうして僕の名前を?」

「ふふ、、私達の組織力を甘く見ないでね、、、、国連が世界的なテロ行為、犯罪組織に対抗できる行政、司法、立法全てから独立した特殊機関“ESSP”、その特殊機関に特別入隊した人物がいると聴けば、誰だって知りたくなるわよ、」

「そんなに有名人ではないと思ってますが、」

「そうね。でも私があなたに会うのは始めてじゃないのよ、」

「え、、、、、」

シンジは暗い陰に埋れていた女性の顔をじっと見つめる、

「どう、思い出した?」

「あの時の、、、」

シンジの過去のある部分が、一気に蘇る、

「上海領事館長の暗殺依頼の時は、まだ18歳ぐらいだったわよね、シンジ君、」

「いえ、17歳でしたよ、」

「そう。加持 リョウジとは接触してないの?彼、この都市にいるみたいだけど、」

「昨日さっそくコンタクトがありましたよ。」

「そう。それにしても、随分と凄腕になったわね、」

「昨日負けましたよ。加持さんに、」

「彼は特別よ。でも、あと数年の経験であなたも同じぐらいに成れるのに、」

「もう、闇の世界には戻りません、、」

「そう、残念ね。私達が依頼できるスナイパーが減るのは残念だわ。

しかも、敵に回るとなると、、早めに処分した方がいいみたいね、」

竜紅と呼ばれる女性、

一族の長として、数十年君臨してきた女性、

すでに60歳は越えているのだろう、、、

だが、その瞳の奥に眠る残酷性、シンジの知らない無数の悲しみが刻まれた皺、

シンジほどの人物でなければ、普通に呼吸して立つ事もできないほどの威圧感、

そんな初老の竜紅と呼ばれ続けた女性が、珍しく微笑んでいる、

「大丈夫ですよ。僕は今別の目的で動いています。」

「そう、、、、、いいわよ、教えてあげても、」

「ある程度、今回の事件の情報を掴んでるんですね、」

「まあね。でも、、、交換条件があるの、」

「僕に出来る事ですか?」

「えぇ、逆にあなたにしか出来ない事かもしれない。」

「なんですか?」

竜紅は小さな指輪をシンジの前に置く、

「これを、あの人に渡して欲しいの、、、」

「加地さん、受け取らないと思いますよ、」

シンジは苦笑する、

「ふふ、、大丈夫。実はね、昨日私の所にも彼から接触があったの。その時にね、頼まれてた物が、、、」

「この指輪ですか、」

「そう、、、、頼めるかしら?」

「わかりました。」

竜紅は何処か遠い過去に自分の視線を向ける、

だが、シンジはその視線の先を聞く事も、覗く事も望まなかった、

シンジにとっては、敵として存在してる女性の気持ちと同化することは決してしなかった、、、

 

「ネルフは、確実に存在してる。世界中でね、」

「でも、レイ以外は全て概念的な存在でしかない、」

「ふふ、、シンジ君、レイがネルフの一員だなんて、誰が決めたの?」

シンジは無表情のまま、竜紅の言葉を見つめる、

「、、、、レイは、、、」

「全て、“ESSP”の情報部、政治家、報道機関が捏造した情報かもしれないのよ、」

黙ったまま鋭い視線で見つめる男のまえで、彼女はおどける様に笑う、

「始めに、レイの存在を確認した方がいいんじゃない。シンジ君がレイの件を深く調べる事はしないと知っている人物達が、あなたの気持ちを利用してるだけかもしれないわよ、、、、」

「テロ行為の現場で目撃されてるレイは、、、僕の知ってる綾波 レイじゃないと、、、」

「ふふ、、、一つだけ、真実を教えてあげる。私も最近知ったんだけど、、、綾波 レイは一人ではないわ、

あなたを愛した綾波 レイ、テロ行為を行う綾波 レイ、全てが本物の綾波 レイ。でも、全てが贋物の綾波 レイなのよ。」

「、、、、、、どういう意味ですか、」

「さぁ、自分で考えなさい。それと、ネルフの目的は少し観点を変えればすぐにわかるわよ、」

「、、、、、、加持さんにも、同じ様な事言われた、」

「そう。じゃぁ、内部捜査はしてるのね、」

「えぇ、」

「でも、それだけじゃ駄目よ。あなたが一番見なければいけないのは、、、、、」

 

 

その瞬間だった、、、

 

 

小さな港に面した窓だった、

その窓へ向け、一発の銃弾が発射された、

そして、その弾丸はシンジの目の前に存在していたはずの女性の額を打ちぬく、

瞬時に、身を屈め銃を抜く、

弾道の元を探るシンジ、

第二弾が来ない事から、恐らく目的は果たされたのだろう、

シンジはゆっくりと立ちあがり、額から赤い液体を流し続ける女性の死骸を見つめる、

「竜紅!!」

ドアの向こうで待機していた数人の男がなだれ込む、

「貴様!」

「よせ、止めろ!」

竜紅の死骸に逆上した男がシンジに銃を向ける、

だが、他の男に制止され、留まる、

一方シンジはそんな男達には興味無さそうに、弾道が残る窓を眺めていた、

「この窓は、、、特殊防弾ガラスだ、、、この窓を撃ち抜くには特殊な弾丸を使用しないと、、

しかも、この弾道から狙撃したとなると、、、、あの灯台からだな、、、だが、500m以上は距離がある、

この強風の中、この距離を撃ち抜ける人間が、、、、」

シンジは小さく呟く、

「いたなぁ、、、、一人だけ、このぐらいの狙撃なら簡単に出来る人間が、、、」

 

「貴様の所為だ!貴様が来なければ、竜紅は死なずに済んだんだ!」

駆けつけた組織の人間がシンジを罵倒する、

その声は次第に膨れ上がり、感情的になっている、

「じゃぁ、僕は返ります。」

そんな連中に何の感情も見せずに、シンジはその部屋を立ち去ろうとする、

「待て!貴様、、」

数十名の男達が銃を抜き、ドアの前に立つシンジの背中に銃を向ける、

「このまま帰れると思っているのか!」

シンジゆっくりと振り向き、銃を構えてる男達に視線を送る、

「思ってるよ、、、」

「なんだと!ふざけるな!」

 

その言葉と同時に激しい爆音が鳴り響き、天上の壁が崩れ落ちる、

「うわぁ!」

男達の叫び声と、崩れたコンクリートの粉塵が部屋を充満させる、

「畜生!どうなってるんだ!奴はどこだ!」

視界がまったく利かない中、銃を構えた男達は各々騒ぎ立てる、

そして、数秒後、やっと粉塵と爆弾の煙が消えた時には、シンジの姿は消えていた、

「探せ、まだ遠くには行っていないはずだ!」

崩れ落ちた瓦礫の上を走り回る男達、

だが、シンジ達は既に車に辿り着き、逃走していた、、

 

 

「まったくいい加減にしなさいよ!馬鹿シンジ!」

「いやぁ、助かったよアスカ、ありがとう、」

シンジはさっきまでの無表情とは違い、嬉そに笑っている、

「何笑ってるのよ!この大馬鹿野郎!あんた私があの場に到着してなかったら、死んでたのよ!」

「大丈夫だよ。」

自信たっぷりにシンジは答える、

「何が大丈夫よ!自信過剰もいいとこよ!いくらあんたでも、あの人数相手に勝てるわけないでしょ!」

「知ってたのさ、アスカが上の階に居る事をね、」

鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔、そんな顔がどんな顔か確認した事はないが、

アスカはそんな表現が似合う表情をする、

「な、、、、、、なんですって!」

「アスカ、爆弾仕掛けるとき、もっと静かに仕掛けたほうがいいよ。あれじゃぁ、上の階に居ますって

教えてる様なものだよ。それから、設置場所と間隔は、、、」

「あんた、いい加減にしなさいよ!!!!!」

アスカがハンドルを握るシンジに殴りかかる、

二人を乗せた車は、蛇行運転を繰り返しながら、居住区を後にした、、、、

 

 

 

 

 

 

「計画は順調に進行しています。」

「この分ですと今度の国会審議で修正案は可決されると思います。」

「では、その後の関連施設への通告および、準備機関の設置の方を手配します。」

「うむ、私は日本倫理調査協会の連中を抑えとく、」

「では、私の方で提供者募集を政府広告として放映できるように、各メディアへ、」

「あまり、早すぎてもいかん。」

「大丈夫です、適当なタイミングを見計らって行動します。」

「またネルフの連中に邪魔されるわけにはいかんからな、」

「今回は国会の警備に軍隊も参加します。法案が可決するまでなら、なんとか持ちこたえるでしょう、」

「そうだな、急がねば、世界が神の存在に気がついてしまう。」

「それでは、今度こそ上手くいく事を祈りながら、」

多種回線電話が一斉に切れる。

 

 

高層ビルの何階かわからないが、数える気にもならないほどの階にある、

広い部屋に、迫り来る夜の空に背を向け、大きな椅子に座っている男がいる、

「意識の座を知る必要はあると思うかね?」

「答える事も、依頼内容に含まれてるんですか?」

狂った様な夕日が、荘厳な装飾を施された壁が広がる、空間照明だけの暗い部屋の窓から刺し込む、

その壁には人類が歩んできた歴史を示す、数々の絵画が掛けられている。

「いや、依頼内容とは別だ、」

「俺にとっては、他人の意識の座を奪う事が重要なんでね、」

「そうだったな、、、だが、意識の座とは実に無意味な物だとは思わないかね、」

「興味ないですね、」

加持はその男の対極にある壁を背にして立っていた。

「意識、罪の意識、倫理、全てが曖昧になっているこの世界で、自由な不規則な意識を持つ事が人間にとって、良い結果になるとは思えない。一部の優勢遺伝子保持者以外の意志など、人類が進化して行く上で弊害になる以外の何物でもない。」

「弊害ですか、、」

「そうだ。意識の座など、各自に必要はない。その時代を未来へ導く有能な指導者の元、群集はただ従えばそれでいいのだよ。」

「コントロールされてる事すら知らずに、生活することが、未来への道だと、」

「未来への道を歩むことが出来るのは、優勢遺伝子を持った人間だけだ。劣勢遺伝子しかない愚民どもは我々がまいた餌をむさぼり、怠惰で緩慢な人生を歩めばよい。現に、彼らはそれを望んでいる。多少の快楽と多少のドラマ性、多少の幸せで他の苦痛を忘れられる。日々を享楽的に過ごせれば、それでいい。まったく我々には都合のいい人間だよ、彼らは、、」

「俺にそんなくだらない思想を聞かせる為に呼んだのなら、帰らせてもらうぜ、」

「ふふ、、すまない。依頼内容はこの男を狙撃して欲しい。」

加持は手元に差し出された写真を見る、

一瞬だけ表情が変わるが、直ぐにいつものポーカーフェイスに戻る、

そして不機嫌そうに部屋を出ようと、体を動かす、

「俺は、この手の冗談は、好きじゃないもんでね、、じゃぁ、」

「待ちたまえ!」

暗い夕暮れの僅かな光が、圧倒的な闇に奪われた部屋で男の声が響く、

「私も、、冗談は嫌いだ。特に、この手のな、」

「死体を狙撃する事はできない、」

「死体じゃなければ、狙撃できるのかね、」

加持は、降りかえる、

そして椅子に座ったまま、加持を見つめる瞳を睨む、

男の後ろは全てガラスになっている、

夕日が沈みきらない内は、背後から狂ったオレンジ色降り注いでいたが、

今は果てしない無限の闇が男を包んでいた、

その闇に浮かぶ、白い瞳が異常なほど血走っている事にきがつく、

「いつもの口座に五千万ドル降り込んである。」

「解った、確認しだい仕事に取り掛かろう、」

そう言い残し、加持は部屋から去って行った、

だが、その暗い影に浮かぶ血走った瞳は、いつまでも宙を見つめていた、、

いつまでも、、、

いつまでも、、、

 

 

 

二人は小さな酒場の二階の部屋にいた、

一階が酒場に成っていて、二階は娼婦とお客が金で関係を持つ部屋が幾つかある、

荒くれ者、肉体労働者、浮浪者が酒を浴びている、

淫靡な踊りを披露するダンサーが、自分の価値を求めて腰をふり、夢を落とし続ける、

そんな一階とは反対に娼婦が男の体を舐める、

その部屋の隣に、アスカとシンジは身を隠していた、

 

「まったくシンジのせいで、普通に部屋に帰れないじゃないの、」

「まぁ、たまには隠れ家もいいじゃない、」

シンジは機嫌が斜めになりすぎて、視界まで捻じ曲がってしまったアスカを宥める、

「なんですって、、、、、」

その一言が余計にアスカを逆上させる、

「い、いやぁ、、、アスカ様もたまには、、、こんな場所で過ごされては、、、いかがかと、、、」

「そうね、エアコンもない、シャワーもない、ベットも冷蔵庫もない、素敵な場所よね、ここは、」

「い、いやぁ、、全部壊れてるだけで、、元々は、、、」

「使えなければ同じなのよ!この大馬鹿者が!!」

アスカの怒りの叫びと共に、シンジは身を屈めていつもの暴力から避難する、

その身を屈めたシンジを、アスカは冷静な目で見下ろす、

「なにで、私の拳から逃げるのよ、、、」

「え、、、だって、、、、当ったら、、、、痛いじゃない、、、」

「当然よ、殴るんだから、、、逃げるんじゃないわよ、」

「え、、そ、、そんな、、」

「あんたには、私の拳から逃げる自由なんてないのよ、」

「そんなぁ、、、」

「問答無用!」

「ま、、待ってよ、、アスカ、、」

迫り来るアスカ、

シンジは後ろに後ずさりするが、壁に背中が当る、

「お、、落着いてアスカ、、、」

アスカは妖しい瞳を輝かせながら、一方の口元を吊り上げて不気味に笑う、

「いいわよ、、、じゃぁ、選択肢をあげる、、」

まともな選択肢じゃない事は分っていたが、それでも一応聞いてみる、

「、、、、、どんな?」

「一つは、ここで私の気が晴れるまで、殴られ続けるか、、、

「、、、、もう一つは?」

アスカの両手がシンジの顔の後ろの壁を叩きつける、

「私の奴隷として????や????とか????をするか、」

「ア、、、、アスカ、、、、、」

余りの伏字に、シンジは耳まで真っ赤になる、

「どっちがいい〜、シンジ〜、、、私はどっちでもいいのよ〜、、」

(駄目だ、、、完全にイッテル目つきだ、、、、やばいなぁ、、、)

シンジは迫り来るアスカの瞳に、危険な未来を見た、

 

その時、一階から二階に通じる入り口の扉が開いた、

シンジとアスカは一瞬にしてその気配を感じ、戦闘モードに切り替わる、

互いに離れ、部屋の明りを消す、

銃を握り、身を屈め、目つきと感覚を変える、

ブーツのナイフと、予備弾丸を確認し、相手の気配を探る、

「アスカ、、、、この歩き方、、」

「プロじゃないわね、でも、」

「客と娼婦の歩き方でもない、、、、」

シンジとアスカが潜む部屋へ通じる廊下を歩く、謎の人物を二人は気配を消して待つ、

その人物が敵であれ、見方であれ、素敵な未来を持ってくる事は絶対無い、

そう思っていた、、、、

 

 

第五話へ続く



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