「忙しく動く矢印に、」
「別に楽しいからいいじゃん、って感じ、」
「ちょ〜、面白いんだよ、同じ歳の連中って、子供だし、」
「そうそう、やっぱ単純な大人の意見もむかつくし〜、」
「3千ドルぐらい、体売れば簡単に手にはいるし、真面目に働くなんて、馬鹿みたいじゃ、」
「そうよね、勝手に親父達が求めて、言い値で払ってくれるんだから、」
「別に〜、カツアゲしてるわけじゃないし、寧ろ寂しいオジさんを慰めてるんだから、偉いよ、私、」
「政治家なんかより、よっぽど偉いよね私達、きゃははは、、」
(下品な笑いだなぁ、、、)
シンジはテレビの画面を呆然と眺める、
楽しいことがそんなに必要なんだ、
この子たちには、楽しいことが必要なんだ、、
そうか、、、
じゃぁ、現実の世界では生きて行けなくて当然だな、
死ぬしか、、、ないのかも、、
可哀想な生物だ、、
「ちょっと、シンジ、、、、」
「なに、、」
「なにじゃないわよ、、、」
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ、、、、」
「そんなに不満なの?」
「不満なんてもんじゃないわよ、」
「仕方ないじゃないか、」
「仕方がないだなんて、、、よく言えるわね、シンジ、」
「で、、でも、、、、」
「あんた、、絶対に????してもらうからね、」
「そ、そんなぁ!どうしてだよ!」
「問答無用!今ここでさせてもいいのよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよアスカ!」
迫り来るアスカにたじろぐシンジ、
「二人とも、眺めてないで、助けてよ!」
「、、、、、、助けろといわれてもなぁ、、、、」
「せやなぁ、、わいらが止めたら、欲求不満のアスカに殺されてしまうしなぁ、」
完全に傍観者としてシンジを助ける意志のない二人は、
アスカに犯されそうになっているシンジを見て笑っている。
「シンジ、、、いい加減観念しなさい、」
「い、嫌だよ、、こ、、、こんな場所で、、」
「こんな場所に連れてきたのは、あんたでしょ!!」
アスカの叫び声がマンホールの壁に反射した、
話しは数時間前にさかのぼる、
シンジとアスカが戦闘態勢で相手を伺っている、
暗闇の部屋の中、ドアの側にシンジが身をかがめる、
そして、ドアの正面にある壊れたベットの影にアスカが身をかがめる、
二人は呼吸を出来るだけ小さくして、相手の歩調を感じ取る、
敵か、、それとも、味方か、、
単なる娼婦と客では無い事は、一歩一歩ゆっくり歩く音から判断できる、
シンジの予想通り、足音は部屋の前で止まる、
二人の緊張感は一気に高まる、だが、逆に体の体温は一気に下がる、
(また、、、、殺すのかなぁ、、、)
そう思う二人はアイコンタクトでタイミングを計る、
そして、、、ドアノブが回る、だが鍵がかかっている事に気がつき何やらガチャガチャ音を立てる、
ぎこちない動き、どう考えても素人の動きだ、
だが、緊張感を無くす事無く二人はドアを開く瞬間を待つ、
例え、素人と思われる行動であっても、敵である可能性を含む相手は、、
殺すまで、安心はできない、、、
そして、古い鍵を刺し込むタイプの鍵が開く、
シンジはドアが開くタイミングを計り、侵入する相手に銃口を向ける、
ドアが開き、、、、、、侵入者がゆっくりと一歩を踏み入れる、
「、、、、シンジ、、」
「動くな!」
侵入者のこめかみシンジのリボルバータイプの銃口が突き刺さる、
「シ、、シンジ、、」
「シンジ、、わしらや、わしら、、、」
「動くなって言っただろ、下手に動くとベットの後ろから鉛の玉が飛んでくるよ、」
しっかり後ろの人間に照準を合わせたアスカが、獣の瞳で睨みつける、
「お、俺だよ、、、ケンスケだよ、、」
「誰でも関係ないよ。ゆっくり部屋に入れ、後ろの奴も、動くな、」
「なんやと、シンジ、わしらに銃口を向けるとは、、」
「今度勝手に話したら、二度と話せなくするよ、」
シンジも獣の様な瞳でトリガーに力をこめる、
そに二人の態度にケンスケとトウジの二人は、ゆっくりと無言で部屋に入る、
「ベットに手をつき、床に膝をつけて座って、」
アスカも機械的に二人に命令する。
暗闇の中、命令通りに行動した二人に銃口を向けたまま、シンジがドアを閉める、
そして、部屋の電気をつける、
「アスカ、」
「わかってる、」
アスカは片手で小さな検査器具を取りだし、二人の体に近ずける。
ピー、という発信音が二人の体を駆け巡る、
終止無言で行動する二人は同じく無言で固まっている二人を冷たい瞳で見下ろす、
「爆弾反応なし、盗聴機反応もない、体内での特殊薬品反応も、、、ない、」
「じゃぁ、後は二人が本人であるかどうかだね、」
「なんや、わしらを疑って、、」
トウジの言葉を遮るようにアスカが叫ぶ、
「あんた達が!本物かどうか、それが解るまでは、、、、」
「敵でない事がわかるまでは、全てを疑わないと、、生き延びれないんだよ、例え、親友でも、」
「そういう事、あんた達が変装してない証拠はないからね、」
そう言いながらアスカは二人の顔の表皮に手術の痕跡がないか、調べる。
「質問、鈴原には彼女がいるわよね、」
「委員長の事か、、、、元気か?」
「彼女とのファーストキスは、」
「な、、なんでお前にそんな事いわなあかんのや、」
「答えなくてもいいけど、シンジのトリガーとても軽いわよ、」
「、、、、、、、、、16の冬、、」
「まぁ、一応合ってるわね、次、」
「シンジの恋人は誰?」
「、、、、、、、総流、答えて良いのか?」
ケンスケの取り調べを機械的に作業を進めるアスカは無言でトウジを睨む、
「わいの中では、、、今でも、、、、、シンジの恋人、、シンジが愛しとるのは、、」
「はい、そこまで。つぎ、エロメガネの方、」
「エ、、エロメガネだなんて、、失礼だな、」
「私のお気に入りのショーツは?」
「赤のストライプ柄と、黒のTバックタイプ、それと勝負に出るときは、、、ぐぁ!!」
答えの途中でアスカの拳がケンスケの側面に入る、
「エロメガネじゃないのよ、、、」
「卑怯だなぁ、、、自分が聞いたんじゃないか、」
「次、、、、私のこと良く知ってるみたいだけど、、、じゃぁ、私が一番殺したい思ってる人物は?」
「そ、、、総流、、、、、、」
「どうしたの、答えられないの、」
ケンスケは振り向きこそしなかったが、後ろでリボルバー式の銃を構える青年を思い浮かべる、
「、、、、、答えたくない、、」
「答えなきゃ、殺すわよ、」
「それでもいい。適当に綾波だって答えても、殺されるんだろ。でも、、、真実を答えるくらいなら、、、、
この場で殺されても、、いいよ、」
「どういう意味よ、」
「総流、、、、、いい加減にしろよ。もう俺達が本物だってわかってるんだろ。
後ろで立って聞いてる奴への嫌味は、、止めてやれよ、、」
「、、、、、、、ごめん、、」
アスカが小さくつぶやく、それと同時に、シンジはトウジの背中に飛びつく、
「トウジ!」
「うわぁ、、、な、、なんやシンジ、、」
飛びつかれたトウジも驚く、
「よかった、、、、よかった、、、、、生きてたんだ、、、よかった、、、」
「シンジ、、、、、」
異常なまでの殺気に満ちていた数秒前とは違い、迷子になっていた子供が母親を見つけた様に声を上げる、
「ごめん、、、僕が、、僕が、、、、もっとしっかりしてれば、、、、、」
「馬鹿言うな、、、自分の命ぐらい、自分で守れるわ、なぁ、ケンスケ、」
「そうだよ、シンジ。俺達だって、今まで何度も戦火を潜り抜けて来たんだぜ、
もっとも、兵士としてじゃなくて、カメラマンとジャーナリストとしてだけどな、」
「ケンスケ、、、」
シンジは今度はケンスケを抱きしめる、
「ごめんよ、、疑って、、、、でも、、でも、、」
「気にするなよ、俺もお前に久しぶりに会えて、本当に嬉しいよ、」
「せや、あの時は電話だけやったしな、再開は2年ぶりぐらいやな、」
「そうだね、、、久しぶり、、だね、、、」
「あぁ、、、まだ生きているんだぜ、、俺達、」
「不思議だな、、、生きてるんだ、、三人とも、、」
男三人、、むさくるしい再会のシーンだが、何処か、普通の再会シーンとは違う、
互いに生きて遭えたこと、今も生き延びてる事、そして、手を握り絞められる事、
誰か一人くらいは死んでいても不思議ではない、そんな気がする、
全員死んでいてもおかしくない、、そんな感情を持った三人が、再会を喜びあっていた、、
生きている事に哀しみを抱きながら、死ねない自分たちを卑下しながら笑う、、、
「馬鹿みたい、、」
アスカは小さくつぶやいて、リボルバーをガンホルダーに仕舞った、
ピアノの調律は狂っている、
その狂った音階で、狂った曲を弾く、
狂った音楽は、自分を狂わせる、
狂人として、聞く音楽は、世界で一番気持ち良い、
どんな薬より、どんなセックスより気持ち良い、
FとEの間に存在する音を探す私は、
神様の股間を期待してる、、
そんな背徳的な歌が好き、
どんな苦痛も哀しみも、私が弾くピアノには勝てない、
白黒の画面から流れるCMに写るには、口が無い、鼻がない、
黒い革で覆われた私の顔、何処にも皮膚が存在しない、
黒く輝くこの肌に、あなたの欲望をかけて欲しい、
黒い液体に溺れて死にたい、、
「そんな詩、止めなさい、」
「どうして、、、」
「もうすぐ詩の無意味さが世界を覆う。誰一人歌う事など忘れる。」
「、、、、、哀しい世界になるのね、」
「哀しい?ははは、、、おかしい事をいうね君は、」
男はコンクリートで四面を覆われた部屋に座っている少女に話しかける、
「哀しみなんて、狂人には必要ないものなんだよ。所詮、全ては優秀な遺伝子を残す為の行為なんだから、」
「、、、、、劣勢生物は塵だって事?」
「いや、塵ではないよ。単なるスペアーだよ。我々のね、再利用の価値は充分あるよ、」
「、、、、、、、、、嫌な言い方、」
「事実は神経を逆なでするものだよ、レイ、」
窓がない、
暗い世界というより、絵の具で黒く塗りつぶした世界、
何処からが闇と自分の境目か解らない世界、
無限と有限を認識できない世界、、
その中で、綾波 レイは存在している、
そう、、、ただ、存在してるだけで、、、何もしていない、、
ただ、、時々聞こえる、嫌らしい声に、生理的に不快な声に、反応するだけだ、、
それ以外は、、、何もせずにただ座っている、、それが床の上なのか、壁の上なのか、天井なのか、
彼女自身わからない状態で、ただ蹲っている、、
しかし、、何故かレイは突然歌いはじめた、、
レイ自身にも理解できないが、何故か歌い始めた、
聞いたことのない詩、経験した事がないメロディーを、突然歌い始めた、
恐らくレイを観察していた人間も驚いたのだろうが、それ以上にレイ自身が驚いていた、
(どうしたんだろう、、、急に詩なんて、、この5年間ぐらい歌なんて存在すら忘れてたのに、、)
暗闇の中、自分の体を、頬を、髪を触りながら闇から自分を隔離する、
触り続けないと、自分も闇に同化してしまう、そんな不安に潰されそうになっていた、
(碇君、、、、、よく歌っていた、、あの詩、、、、まだ、憶えてるのかなぁ、、、
無理ね、、、忘れてるわよね、、、、きっと、、私の事も、、、、、、、全て消去されてるんだろうな、、)
「レイ、次の仕事だよ、」
「はい、、」
暗い闇の中、レイはゆっくり立ち上がった、
「シンジ、、、、」
「なんだい、トウジ、」
二人は下水処理浄化場の地下にある汚水蓄積タンクの側にいた。
実はトウジとケンスケは例の事件後、地下下水道を通って密かに都市郊外にある下水処理場にもぐり込んでいた。もちろん、その下水処理場に正面からもぐり込んだのではなく、汚水と共にダクトを抜けて侵入したのである。今は全てがシステム化され、通常のダクトに生物が侵入するとセンサーが反応し、警報が鳴るシステムになっているのだが、トウジとケンスケは特殊なフィルターに身を包み、汚水に潜りながら侵入した。そして、無人化してる下水処理浄化場で身を潜めていた。
その、オートメーションの機械音だけが響くなか、
トウジとシンジはタンクに寄りかかる様に立っていた、
「こうやって、話しをするのは、、、久ぶりやなぁ、」
「そうだね、一年振りぐらいだね、」
「せやな、、お前がESSPに入隊した時以来だなぁ。どうや、一年間の特殊部隊勤めは?」
「あんまり、いいもんじゃないよ、、、」
「なぁ、、シンジ、」
「何?」
「お前、、、何で、入隊したんや、」
「あの時に言ったじゃないか、確信犯的テロリストとして生きる自信が無くなったからだよ。僕はもうすでに、数え切れないほどの殺人を犯してきてるけど、、加地さんみたくなれないってわかったんだ。」
「、、、、、、、嘘やな、」
トウジがシンジの心を突き刺す様に見つめる、
「ど、、、どうしてだよ、」
シンジもその瞳に、後ろめたさを感じ、言葉を詰まらせる、
「どうして、僕が嘘を、、」
「本当は、綾波が生きてる事を知ったからだろ、」
その一言はシンジの瞳を色を大きく変化させる。
口を小さく開けたまま、シンジは瞳を震わせる、
否定もできず、肯定もできず、ただ、震える瞳でトウジを視界に移す、
「な、、、ど、、どうして、、、」
「ネルフが犯罪組織として始めてテロを行ったのが一年前ぐらいや。まぁ、その前にもネルフの犯行を思われるテロ行為はあるが、、綾波の存在が確認されたのが、一年前ぐらいや、」
「よく、、知ってるね、」
「まぁな、新米ジャーナリストやけども、ケンスケと一緒におるとかなりの情報は知ることができる、」
「その情報がそうだって、言ってるの?」
「そや、わいの推測でもあるがな。綾波の存在を知ったお前は、綾波との接触を目的として、ESSPに入隊したんやないのか?本当は、一生殺し屋、スナイパーとして生きても良かったんじゃないのか?入隊すれば、綾波と遭う事ができるから、、一度すてた社会的生活に復帰したんやないのか?」
「、、、、、、、、、、、、、」
シンジは答えない。
いや、答えられないのだろう、
自分の心は否定してる、だが、トウジの言葉が真実でないと言い切れる自身もなかった、
「確かに、総流もESSP日本支部に入隊していた事もある、せやけれど、お前が入隊することで本当に求めていたのは、、、、綾波の存在を自分で確認する事、、、、違うか、、シンジ?」
「もし、、そうだとしたら、、」
「おまえ、総流のこと、どう思っとるんや、」
「アスカの事、、、、、」
「そうや、シンジ、いい加減過去を引きずるのは止めてやれ、」
「過去を引きずる、、」
「せや、わいはなぁ、シンジ、総流とお前が二人で一緒におる姿、さっきが初めてみたけれど、、
総流の表情が、、、まともに見れへんかった、、、」
「どうして?」
「あまりに、悲し過ぎてなぁ、、、、胸に響くんや、、、」
シンジが特別扱いで入隊して以来、アスカはパートナーとして殆ど一緒に生活している。
だが、確かに、二人の関係は幼馴染の頃の様にはいかなかった、
まずは、シンジが世界的テロリストのパートナーとして、殺人者になっていた事、
アスカも特殊部隊の精鋭として、すでに他人を殺害していた事、
そして、互いに体だけを求める、割り切った感情しか持っていなかった事、
様々な価値観が変化し、すでに二人はあの素敵な瞳の色を失っていた、
「総流、明らかに無理しとる表情や、瞳の色がまったく蒼くない、」
「そう、、、なの?」
「昔のあいつは、生意気で、高飛車で、最悪の正確やったけど、、、瞳の奥にある輝きは、無茶苦茶綺麗な少女やった。まだ、夢や、愛や、将来を信じとったんや、、、」
「でも、、、その全ては、、」
「あぁ、、綾波によって消されてしもうたがな。あいつの大切な家族も道ずれにな、」
その言葉にシンジは体を小さく震わす、
「シンジの愛を奪っただけじゃなく、家族も夢もすべて奪われたんだ、、、」
「、、、、、、、」
「なのに、お前は総流を捨てて、自分一人闇の世界に逃げたんや、、」
「、、、、、、、、、、トウジ、」
「総流がESSPに志願した理由はな、お前が加持 リョウジの元で犯罪者としての道を進むって知ったからや。入隊すれば、いつか、お前を犯罪者、テロリストとして撃ち殺せるかもしれないからや、」
「、、、、、、止めてよ、、トウジ、、」
「なのに、お前は綾波の存在が浮上したと同時にESSPに入隊した。しかも、総流がいる日本支部へな。
殺したいと思っていた最愛の人物が、再び最も身近な人物として現れる。あいつからしてみれば、天国と地獄を一緒に味わう事になった様なもんやな、、」
「、、、、、、、、、、、トウジ、、止めて、、」
「しかも、その最愛の男は自分を抱きしめて、体を満足させてくれる。でも、愛情は自分が最も憎んでる女性に注いでいる。それでも、総流は、お前を慰め、包み込み、お前安らぎをあたえる、」
「トウジ、止めてくれよ!」
「シンジ、そんな総流をお前は都合良く利用しとるだけや!いい加減、総流を解放してやれ!」
二人の声が無人のコンクリートの空間に響く、
互いに、もうすでに十四歳の少年の様な瞳、表情はしていない、
それだけに、厳しい、悲哀の篭った表情と、大声で叫ぶ、
互いに、ハートを絞めつける結果になると解っていても、
それでも、、叫ばずにいられなかった、、
「、、、、、、止めてくれよ、、」
「シンジ、わいが言いたい事はわかるよな。お前が総流を愛してやれないのなら、ESSPのまま綾波を追うのは止めろ。もし、本当に社会的生活を送りたいのなら、、綾波を忘れろ。そして、総流を幸せにしてやれ、、、、総流にとって、シンジを撃ち殺す事が最上の幸せなら、、、」
「別に、、、いつ撃ち殺されてもいいよ、僕は、、」
「お前を殺したら、、あいつもその場で自殺するはずや。だから、違う形で幸せにしてやれよ、、」
「、、、、、、、、、無理だよ、」
「なんでや、シンジ。お前と総流は幼馴染やし、性格も互いに合っとる。わいが言うのもなんだが、充分幸せになれるはずや。」
「でも、、、トウジが知ってる僕達二人は、、十四歳の頃の話しだろ、、、」
「もちろん、、あの事件以降、おまえらが変わってしまった事はわいにも充分解る。せやけど、おまえも総流も、気ずいておらんようやな、、」
トウジはポケットから、小さなシケモクを取り出し、100円ライターで火を付ける、
「何を、、」
「お前ら一緒におるときなぁ、、、笑っていても、瞳が死んどるんや、、、、」
呆然と見守るシンジを前に、少しは優しくなったトウジが煙を吐きながら、哀しそうに話す、、
「死んでる?」
「死骸の瞳なんや。笑いたくもない、、、怒りたくもない、、、ただ、、互いに縋ってるだけの存在なんや、」
トウジがシケモクを、濁水がパイプから滴り落ちて出来た水溜りの中に投げ入れる、
その濁水を吸い込んだシケモクから、さらにニコチンが流出され、水が完全に死んだ、
「おまえも、、この水みたく、、汚れきってしまったんか、シンジ、」
「、、、、、解らないよ、、」
シンジは狂笑を浮かべて笑う、、、
自嘲的な笑みでもなく、、
哀しみを処理できない、、
神様から哀れみをうける事すら許されていない生物の、、
悲惨な笑みだった、、
「あんた、、、まだ、生きてたの?」
「あれ、冷たいなぁ。あの時は激しかったのに、」
「ベットと仕事は混合しない主義なの、」
「目的は、、、、シンジ君かい、」
「そうね、あなたの依頼内容も、シンジ君でしょ、」
「いや、今回は違うなぁ、」
「じゃぁ、邪魔しないでね。私にとっては大切なお仕事なんだから。失敗したら、給料カットなのよ、」
「とても、犯罪組織の人間の言葉とは、思えませんね、」
「ネルフは、犯罪組織じゃないわ、」
「じゃぁ、新興宗教かい?碇 ゲンドウ教かい?」
「死人を崇めるつもりはないわ、」
「、、、、、死人じゃなければ、崇める価値のある男だと?」
「否定はしないわ。でも、、今は指令が死人だろうが、狂人だろうが、私には関係ないわ。」
「地球の平和が最優先だと、」
「そうね、、、、空が、、この宇宙がもうYESって言うのを止めるまえに、人間を絶滅させるのよ、」
「恐いねぇ、、、葛城は、、」
「あんたも、その内の一人なのよ、加持、」
狂った様な朝日を全身に受けながら、三十半ばの男と女が、都市を見下ろせる道に車を止め、
そして、狂人が住む、狂った都市を哀れみの瞳で眺める、
その瞳が捕らえる未来は、、、
神様が忘れた愛に満ち溢れていた、、、、