「何かしら愛を感じた、」
第3新東京、国会議事堂では様々な議題が論議されている、、、わけではなかった。
殆どの議題がスーパーコンピューターによる判断が自動的に可決されるだけで、
昔の様な議員が怒鳴りあったり、大騒ぎしたりする事もなくなった。
だが、その反面、代議士といった名前だけの脂肪の塊の様な豚が居眠りをする場所として、
このままスローターハウスとしても稼動できるぐらいに太った豚が適当に暖をとれる場所として、
議事堂内は既に憩いの場所となっていた。
だが、今日だけは普段と何かが違っていた、
物々しい警戒体制の中、軍隊までが投入されて周辺警備が行われていた、
地上の周辺のビル、人、車は当然とし、空、地下も全て警備対象に入っていた、
それほどまでに、警戒体制を取る理由は、今日の審議内容にあった、
そう、今日の法案化として提出されている議題は、コンピューターが決められる内容ではなく、
人間でも決められる内容でもなかった、
そう、、まさに、神のみが判決を下せる議題内容だった、、、
「これは人間の人工培養ではないのかね、」
「いえ、あくまで生物の培養です。器官のスペアーを人類が保持すると考えていただきたい、」
「だが、その事で人間のコピーを創造するとは、倫理的に認められないのでは、」
「では、倫理とはなんですか?」
「倫理かね、、倫理は何だといわれても、、、」
「人間が今後生きていく為には、身体器官の移植が必要になるのです。人が生きる為に行う行為がどうして倫理に反するのです。」
「だが、、君、臓器移植なら脳死の判定を受けた人物から臓器を提供してもらえばいいが、、君が提唱してる案は、、、、つまり、、、殺人を合法化することに、、」
「殺人ですと、、失礼な発言ですね。見てください、彼らはクローンです。意志も持たず、思考も持たない単なる細胞の塊なんです。人間と同じ器官を兼ね備えただけの、肉の塊なんですよ。」
「だが、容姿は人間の女性そのままじゃないか、」
「偶然、クローニングしたのが女性だっただけですよ。遺伝子を提供していただいた女性は普通の女性ですし、今も一般的な生活を続けています。今、皆さんの目の前に存在してる女性は、単なる我々の為の臓器のスペアーでしかないのですよ、しかも、移植先の人間を選ばず、全ての人間に適応できる世界で最も最高級のスペアーなんですよ、」
「だが、、君、その少女は、、、、生きてるのでは、、」
「当然ですよ、人間と同じ器官と細胞機能を持っているわけですから、」
「それは、人間という事ではないのかね、、」
「人間?この細胞の塊がですか?笑わさないでくださいよ、言葉も話さない、意志も思考も持たない、
そんな延命機能以外は全て止まっているこの肉の塊を、どうしたら人間だと言えるのですか、」
「しかしなぁ、、、」
「いいですか、皆さん。私は普通に精子と卵子が受精し、両親の元で生まれた子供をスペアーとして考えてるわけではないのです。我々は、長い日々の研究の結果、完成した特殊技術“サルーン”によって人間と同じ細胞機能を持つ塊を創造したのです。脳波、血液の体内循環、臓器の正常機能を持つが、意志を持たない細胞の塊を創造することに成功したのです。たまたま結果的にその塊が人間の容姿を持っているだけで、この生物はけっして人間という概念にあてはまる物体ではない、」
そう力説してる
40歳後半と思われる男は、自分の横に立つ物体に視線を送る、そこには、全裸、そう表現していいのか解らない、彼の言葉から視覚的判断をすれば、単なる人間に相似した生物が体毛も衣服もなく皮膚を露出してるだけの、生物。
だが、頭部は全体を黒革で覆われているため、余計に物質的な印象を与える、
そして本当に意識がないのかわからないが、瀬戸物で出来た人形の様に動かない、
「我々はこの生物を
Puddingと呼びます、」
この審議は公開されてはいない、
だが、議事堂地下のコンピューター管理ルームでこの会話を聞いていた数人の人間がいた、
「
Pudding、、、、、腸詰めって事?」「でも、英語圏では普通は、愚か者、太った小柄な退屈な人物を注すんじゃない?」
「まぁ、、、無意味な生物だけど、、」
「偉いと思い込んでる人間には、臓器のスペアーを持ってる生物、」
「あれが、生物なの?単なる臓器の貯蓄用冷蔵庫じゃない、」
「でも、あの人の言葉がそのまま真実だとしたら、、、」
「冷蔵庫よ、生物じゃないわよ、」
「自分の体の一部に腫瘍が出来て、正常な
DNAからmRANが造られなくなったら、、」「その冷蔵庫の腹を切裂いて、必要な部分を切り取るんだ、、、、、」
「酷い話しだね、、、」
「でも、確かに今のままじゃ、あの無意味に熱いだけの惑星から降り注ぐ、悪魔の紫外線に人間は絶滅させられるだけよ。何事にもスペアーは必要よ、」
「でも、そんな現実にしたのは、人間なのにね、、」
シンジとアスカは暗い配線とダクトが交差し、冷却装置の音が無気味に響く場所で、
盗聴用のヘッドフォンを掛け、管理室に送られる審議の映像を盗受信したモニターの画面を見つめている、
この審議の警備にESSPとして正式な警備を要請されてたわけではないが、
シンジとアスカはネルフによるテロの可能性があると予測し、今回の警備に参加していた、
「ねぇ、シンジ、あんたや相田の推測どおりだとしたら、」
「間違いなく、今度も来るはずだよ、ネルフは、」
「でも、、変じゃない、目的がこの法案可決を無くす事だとしたら、どうして、デパートや公共施設へのテロ行為を行ってるの?」
「その辺もケンスケとも話したんだけど、、最初の国会議事堂爆破事件、調度一年前だけど、その時、審議されてたのが今の法案の基となる原案だ。その時には死者はなしだった。一ヶ月後に爆破されたXXX党は今の法案に賛成の立場を取っている唯一の党だった。今では当然の様に各議員は賛成の立場を取っているけど、、、、随分と裏金が動いたらしいけどね、、」
「つまり、ネルフの狙いは、その法案の可決阻止って事?」
「いや、、、そんな単純なもんじゃないだろ、」
「単純とはなによ!!あんた、私の事、今、単なる馬鹿扱いしたわね!シンジ!あんたね、、」
アスカは鬼の様な形相でシンジの胸座を掴み、怒りマークを額につけて怒鳴る、
「ア、、アスカ、、落ち着いて、、、、アスカ、、」
「私だってね、そんな簡単な組織じゃないって事ぐらい解ってるわよ!
次のテロ行為が、、、、、ネルフ以外の組織によるものだって事もね、」
アスカは小声で、話す、
真剣な表情だが、どこか背筋に寒気を感じてる、
その感じてる物が思わず無気味な笑顔を浮かべる感覚に耐えられない、
瞳を大きく剥き出し、唇に不気味な笑みを浮かべて話す、
「つまり、、、、ある組織にとってはネルフの存在を絶対悪にする必要があった、
そして、その為には、大量の無差別テロ行為が必要だった、
世論、警察、全てがネルフを憎む様に仕向ける必要があった、
そんな組織が、存在してる、、」
シンジはアスカの涌き出る不気味な笑みを冷静に眺める、
何処までも大きく見開かれる瞳、蒼い、透通った瞳、
子供の頃から知ってる、素敵な瞳に狂気が溢れてる、
そんな事実から目を逸らす事が出来ずに、シンジは哀しそうに見つめる、
「その組織の目的は、、、」
アスカの言葉にシンジも答える、
「今、上の議事堂で審議してる法案の可決、」
シンジもアスカの瞳に感化され、大きく見開き始める、
「
Pudding計画を実現すること、」アスカは口元を吊り上げながら、不気味に笑う、
「莫大な費用が掛かる為、法案が可決されれば、正式に税金を受けとれる、」
シンジもその口元を真似する様に笑う、
「人類を救う、未来を照らす夢の臓器冷蔵庫生物を税金で人工培養できる、」
「素敵な計画だよね、、、、、」
シンジの呟きにアスカも苦笑を漏らす、
「ねぇ、シンジ、、、、どうしてこの審議って極秘なのかしら、」
「そうする必要性を演出したからさ、」
「つまり、ネルフに狙われた夢のプラン、そのプランの審議、可決を公に行うと、またテロ行為で邪魔される、そう国会議員連中に知らしめるに第三の組織がネルフの行為に見せかけたテロ行為を行ったと、」
「そう、、何十人もの死者を出してもね、」
「じゃぁ、、、、やっぱり、」
「僕とケンスケの意見は、、ネルフって組織は存在する。確実に。でも、目的はテロ行為じゃない、あきらかに今審議されてる“
Pudding”計画に関係している事は間違い無いことだと思う。そして、この計画を可決しようとする組織が、何らかの形で存在していて、ネルフと対立してる事も確かだ、、」「そして、、予想では、、」
「もうすぐ、、ネルフの行動があるはずだ、」
その瞬間、、
凄まじい爆発音と重低音による強烈な振動が二人を襲った、
コンクリートの壁、天井、床、全てが揺れる、、
激しい振動により、コンピューター制御室の画面に全てノイズが走る、
通常照明が消え、非常用の赤い照明に切り替わる、
警戒心を煽る非常サイレンが鳴り響く、
「状況は!」
「解りません!モニターの全てがノイズしか写りません!」
「上の議事堂との回路が全て遮断されてます!」
「なんだと、コンピューターの非常用回線はどうなってる!」
「ハッキングを受けてます!しかも、強力なスーパーコンピュータータイプです!」
「こんな時に!上の状況はどうなってる!」
「かろうじて音声回線だけが残ってますが、、、」
「変です、議事堂の防御壁が全部降りてます!」
「馬鹿な!じゃぁ今議事堂は、、、」
「完全に密室状態です!警備隊も軍隊も防護壁に阻まれ、侵入できません!」
「なんてことだ、、、、、」
制御室長と思われる中年の男が呆然と立ち尽くす、
目の前で起こった出来事に自分自身が付いて行かない状態で、
対処に追われる職員へ適切な指示も出せず、ただ自失呆然としている、
「コンピューター回線を全て遮断して!」
アスカが大きな声で叫ぶ、
「し、しかし、、、それでは、、」
「大丈夫、ハッキングも電気がなければ進行を遮断できるし、同時に赤外線警報も全て止まるはず、」
アスカは無能な男に後ろから蹴りをいれ、強引に室長机に自分が位置取る、
「警報を止めたら、、、」
「今さら赤外線警報を止めても、鳴らしても同じよ!すでに、議事堂は完全に封鎖された状態になってるんだから、今は外部から潜入できるルートの対侵入者用の赤外線警報を強制的に解除するほうが先よ、」
「つまり、、、侵入者自動排除システムを止めるって事ですか?」
「そうよ、早くしなさい!ハッキングスピードから考えると、今すぐ遮断しないと完全に議事堂への道が塞がれてしまうわよ!シンジ!そっちはどう!」
「う〜ん、、、まぁ、何とか行ける道を見つけたけど、、」
シンジは部屋の脇で職員から図面をもらい、制御室から議事堂までのルートを検討してた、
「じゃぁ、急ぎましょう!」
アスカは予め用意していたバックを背負う、
「でも、、、、アスカ、、」
「何よ!時間が無い事ぐらい知ってるでしょ!」
制御室をかなりの勢いでアスカは出口に向う、
「うん、、、その侵入ルートの最適な入り口がさ、、、、」
「問題でもあるの?」
「いやぁ、、、、、女子更衣室なんだよね、、、」
「、、、、、、、、、、、、、、、、、」
シンジの困った表情に、アスカは無言のまま細めた瞳で答える、
「でね、、、、調度、、着替え中の女性社員が、、、、沢山いるらしいんだ、、、」
「、、、、、、、、、、、で、」
アスカの醒めた瞳から、一言だけ言葉がこぼれる、
「行っても、、、良いのかなぁ、、、」
「別に、大丈夫よ、、、、、その代わり、、、後でしっかりお仕置きするからね、、」
「、、、、、、、、、、、、はい、、、」
可哀想なシンジもバックを肩に掛け、アスカと共に制御室から走り去って行った。
議事堂は激しい地響きの後、防護壁が自動的に降り、完全に外部と遮断された空間となっていた、
脂肪の塊の豚どもは、突然陥った事態に慌てふためき、自分の生命安全を確保する事で必死になっている、
だが、電波も遮断され、外部との連絡も取れない中、豚どもはパニック状態に陥っていた。
だが、、その中でたった一人、
普段と変わらぬ表情で、事態の成り行きを笑いながら見ている男がいた、
先ほどまで独演会かと思える勢いで話していた男、
国際生物進化研究所(IBD)代表の桜木 宗司という男は、
慌てふためく豚どもを、まるで塵くずでも見るかの如く、つまらなそうに見ていた、
「まったく、、、今回も可決はさせてもらえないのかね、」
「そうね、、今後も未来永劫、その法案可決は阻止させてもらうわよ、」
いつのまにか、ある女性が桜木の後ろに立っていた、
その女性の登場を当然といった感じで、後ろを振り返ることも無く話す、
「いい加減諦めたらどうだい?君達がテロ行為を繰り返せば繰り返す程、世論は君達が悪の組織だと思い込んで行く事になるぞ、」
「あら、テロ行為で一般市民を数十人殺した人間の言葉とは思えないわね、」
「知らないなぁ、、そんな事は。」
「勝手にネルフの行為にしないでよね、」
「ふふ、、それは僕には関係ないことだよ。ところで、今回は随分と警備を厳重にしたんだけど、よく入り込めたなぁ、」
「まぁ、結局メインコンピューターを乗っ取ってしまえば、こっちのもんだしね、」
「そうか、、リツコ君が今回は、、、、、相変わらずハッキングに関しては天才的だな、」
そう言いながら、桜木はタバコを咥え、100円ライターで火を付ける、
「じゃぁ、この子達は貰っていくわよ、」
「それは、勘弁してくれよ、せっかくの試作品なんだから、」
「試作品ですって、、、」
その言葉に女性は過剰に反応する、
「あぁ、、さっきも言ってただろ、これは単なる臓器を持った感情のない物体だ。人間じゃない、」
「あんたが、始めから感情を壊したんじゃないのよ、、」
怒りを抑えた、奥歯を噛み締める様に低い声で話す、
「壊した?失礼な、この
Pudding達は、臓器提供を待ち続ける患者達の為に存在させたんだ。人間として生活してもらう為に存在させたんじゃ、、」
「ふざけんじゃねぇ!あんた何様のつもりよ!」
後ろを振り向きもせず、タバコを吸い続ける桜木の胸座を掴み、
女性は大声で叫ぶ、
「嫌だなぁ、、ヒステリーを起こした女性は嫌いなんだよ、、」
「あんたに好かれたら、私もお終いよ、」
「加持ならいいのかい?」
「関係ないでしょ、あんたには、」
爬虫類の様な瞳の桜木と、怒りの溢れる黒い瞳の女性が、にらみ合う、
「俺達は人類を救う為に動いてる、なのに、何故邪魔をする、人間を絶滅させたいのか、」
「私は、人類の未来が同族による殺戮の結果で開くなんて思わないわ、」
「カースト制度は必要だよ。無意味な劣勢遺伝子を未来に残す必要はない、」
「あんたが劣勢遺伝子保有者かもしれないのよ、見方を変えれば、」
「そうかもね、その事を照明する為に、ゲンドウが動いてるんだろ、」
「特別に教えてあげる。碇指令はもっと別の事を考えてる、あんたみたいなクソ野郎とは違うは、」
「自分の息子を超A級スナイパーにする事が、素晴らしい父親の姿なのかね、自分の息子に犯罪者の仲間入りさせて、何人もの命を奪わせる事が立派な父親の姿なのかね、」
「そうよ、、、最低の父親でも、、、未来を現実化させられるたった一人の人間よ、」
「そうかい、、、じゃぁ、、シンジ君は僕達がいただくよ、」
「そうわさせない、絶対にね、」
「ふふ、、あの娘が僕達にいる限り、シンジ君は絶対に僕達の見方さ、」
「レイは、、、、そんなこと望まないは、」
「関係ないね、人間の望みや希望なんて、誰かに植付けられたものだからね、」
「そんな未来を創る、あんた達を私は絶対に許せないのよ、」
「僕も、僕の計画を邪魔する君達が許せないなぁ、、」
“カチッ”
桜木の片手に握られた小さなスイッチが押される、
その瞬間、人形だった
2体の人形が、一気に動き始める、同時に女性を襲う、
だが、女性も瞬時に身を屈め、人形の攻撃を俊敏にかわす、
殴りかかる
2体の腕を避けながら、ガンホルダーから銃を抜く、そして、
1体の後ろに回り、下腹部に数弾発砲する、崩れる人形と、攻撃する人形、
どちらも、頭部を革の様なもので覆われているため、表情は見えない、
だが、流れてる血は、真っ赤な色だった、、
「どうだい、葛城君、僕の試作品は、なかなか素敵な血の色だろ!」
「単なる試作品じゃないわけね!」
「あぁ、君達ネルフ用に開発した戦闘タイプの
Puddingだよ!」桜木の声を聞きながらも、葛城と呼ばれた女性は残った
1体の攻撃を受ける、肘で、上腕で、接近戦をする葛城は、人形の腕をへし折る、
その瞬間、
「痛い!」
そう人形が叫んだ、
その声に葛城は一瞬の隙を生む、
まさか、人形が感覚を表現する声を発するとは思えなかったからだ、
だが、その一瞬の隙をつき、人形が残った腕で葛城の腹部に拳を埋め込む、
「フグゥッ!」
続けて顔面、側頭部が殴られ、腹部に再び蹴りが入れられる、
崩れる葛城、
その葛城の銃を奪い、銃口を頭部に付きつける人形、
迷わずトリガーを引く、
「待て!」
引き切る前に、桜木の声が響く、
葛城も痛みに歪んだ表情を上げ、銃を付きつける顔の見えない人形と、桜木を見上げる、
「葛城君、、、、最後に聞きたいことがあるんだけど、」
「ふっ、、エヴァの事なら何も教えないわよ、」
不敵な笑みを浮かべ、死への恐怖を隠す葛城だが、明らかに冷や汗が流れる、
「そうか、、、残念だな、じゃぁ、別の質問を、、、」
「、、、、、、何?」
「今でも、僕のプロポーズを受ける気はないかい?僕の気持ちはあの時のままだが、」
「、、、、、残念ね、、」
桜木を睨みつけて、葛城は言う、
「私の体は、売約済みなのよ、、、加持君にね、、」
口の端を大きく釣り上げ、憎憎しく笑う葛城を冷たく見下ろす桜木は、小さく呟いた、
「殺せ、、、、」
葛城は目をつぶる、
そして、銃声が議事堂に響いた、
だが、、、
(あれ、、、私まだ生きてる、、、、)
そう思い、再び瞳を開けると、
腕を折られた人形が、血の海に沈んでいた、、
「まったく、馬鹿じゃないの、これだからオバンの自信過剰は問題だっていうのよ!」
その声の方を振り向く、
そして、そこに立っていたのは、、、
「取合えず、二人とも動かないでね、」
アスカが立っていた、
「これは“ESSP”さんの登場じゃないですか、でも、今回の警備は担当外のはずじゃ、」
「越権行為とでも?でも、ネルフが起したテロ行為に対しては正式に対処行動ができるは、」
「まだ、ネルフの行動だと決まってないのに?」
「そうね、、でも、その女と、あんたには聞きたいことが沢山あるからね、」
アスカは葛城と桜木がら視線を外す事無く、また構えた銃口も逸らす事も無く、
一歩一歩近ずく、
「どこから侵入したの?」
落着いた表情で葛城はアスカに質問する、
「あんたと同じ所よ、」
「女子更衣室から伸びる、空調ダクト?」
「そう、赤外線警報機が反応しない様にそだけプログラムが変更されてた。ハッキングはその変更を誤魔化す為にしてたわけね、」
「そうよ、、まぁ、お陰で助かったは、ありがとう、」
「あんたに礼を言われる筋合いはないわ、」
アスカは葛城に銃を向けたまま、ある程度の距離を保つ、
「もうすぐ、軍隊が防御壁を破って突入してくるわ、」
「そうね、あと一分後ぐらいかしら、」
「聞きたい事は山ほどあるけど、まぁ、後で聞くとして、、、、、、今重要な事だけ先に聞くわ、、」
「私に答えられる事ならね、」
葛城の瞳も真剣みを帯びる、
アスカの瞳も、直ぐにでも相手を殺せる様に、獣の瞳に変化している、
「ネルフ、、、、、、目的は?」
「人類を、ううん、地球を救うこと、アスカも含めてね、」
「テロ行為で?」
「無差別殺人を行ってるこは、この人達の組織、ネルフは関係ないわ、知ってるんでしょ、アスカも、」
「それともう一つ、、、」
「何?」
「エヴァってなに、」
アスカの指先に力が込められる、
その答えを否定すれば、瞬時にトリガーを引ける、そうアピールした行為だった、
当然葛城もその意味をわかっている、
「、、、、そうね、、、エヴァの意味を知りたいの?」
「どうして、相田や鈴原を襲ったの、、、」
「それも、ネルフの行為じゃないわ、」
「相田と鈴原が偶然手に入れた、あの水晶の石は、、、エヴァってなに、」
「それを知ったら、、あなた、、、、もう一生逃げられないわよ、」
「構わないわ、、、、、今でも充分狂ってるんだから、、、」
「そう、、じゃぁ、、教えてあげる、、エヴァはね、」
アスカの額に汗が滲み出る、
何か、とても緊張させる空気が何処からか流れる、
嫌な匂いが、背中に流れる冷たい汗が、
アスカの心を震わせる、
「エヴァはね、、、、人間を原子組織に戻せる神様の石なのよ、」
その瞬間、防御壁が爆発し、
大音量と黒い煙の中、軍隊が突入してくる、
そして、流れ出る代議士達、まるで豚の群れの様に一気に流れ出る、
「原子組織、、、?」
「そう、、こんな風にね、」
葛城の体が崩れて行く、
いや、色素が分解していき、実態が融解していく、
身体を構成している器官が全て、細かい、ミクロの単位に分裂していく、
いわゆる体が全て素粒子に分解され、
消えるといった、現象がアスカの目の前で起こった、
呆然と銃を構えたまま、その現象を見ているアスカ、
体の震えを止める方法は、今は忘れてしまった、
「、、、、、、そ、、そんな、、ことが、、」
トリガーを引くことすら忘れたアスカが小さく呟く、
「現実に起こってる事なんだよ、アスカ君、」
桜木がアスカの肩に手を置いた、
そんな国会議事堂の屋上に一人の少女がいた、
無機質に、風との会話を楽しむ少女は、
蒼い髪が頬に当る感触を楽しんでいた、
下の喧騒には自分はまったく関係ない、そんな感じで一人佇む、
少女の赤い瞳には、黒い雲で覆われた空、
赤外線遮断特殊フィルターが生み出す、贋物の空、
人工的に管理されてる空だけが、写っていた、
「空、、、もうあの時見た、夕日は、二度と見れないのね、」
「あぁ、、学校の屋上で、一緒に見た夕日は、二度と見れないよ、、」
「碇君、、あの時、真っ赤に染まった空と、オレンジ色の雲をみて、世界の終わりみたいだって、」
「よく憶えてるね、、、」
「うん、、、私も、そう思ってた。でも、、本当の世界の終わりは、これから起きるのよ、」
「世界の終わりなんて、、僕には関係ないよ、レイ、」
「そうね、碇君には、関係無いもんね、」
その少女の後ろに立つ、
碇 シンジは、今、綾波 レイの存在を確認していた、、、