「“それがどうかしたのか”と尋ねられたら、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ、発進するわよ!」

車から駆け降り、アスカ、ケンスケ、トウジの3人は小型機に乗り込む、

その間、アスカの車が蹴散らした戦自に向かい、シンジの正確な射撃が援護する、

そして、リツコも小型機に乗り込む、

シンジも自動小銃を連射しながら乗り込む、

特殊ジェットヘリ“SD−203”に乗り込んだシンジは、ドアを少しだけ開けてそこから戦自向けて発砲する。ケンスケ、トウジも訓練を受けてはいないとはいえ、搭載された自動砲で援護射撃をする。まったくの威嚇射撃の二人の発砲に対し、シンジの弾丸は確実に兵士の額を打ちぬく。

まるで神業の様に、スコープも無しで、正確に死体を生産していった、、

 

 

「ちょっと、オバさん!ゲートを開ける方法は!」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、今、何が言った、」

リツコは運転席に座ったアスカの後ろで呟いた、

「だから、上のゲートを開けないと飛びたてないでしょ!」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、だから、今、何て言ったの?」

振り向こうと思ったアスカだが、その前にアスカの首筋に何か冷たい物が巻付く、

その余りの冷たさに背骨が凍結したのではないかと思われた、

「、、、、、い、いやぁ、、、あのね、オバさん、、」

「、、、あなた、、、何故アタシの手が首に絡まってるか、解って無い様ね、、」

一気に首が絞まっていく感覚にアスカもさすがに気が付く、

だが、その手から流れ込むあまりの殺気に、体が動かない、

「ぐぇ、、苦、、、苦し、、、、、、、、」

「別に運転だけなら私でもできるのよ、、あんたがここで死んでもね、、、」

アスカは殺気を確実に感じ、体から流れ出す油汗を抑えるのに必死だった、

「い、、いやだなぁ、、、、冗談ですよ、、、」

「あら、何が冗談なの?苦しいのが冗談なの?」

更にリツコの指が首に食い込む、

「ぐぁ、、あ、余りに、、、若く見えたから、、、」

「見えたから?」

笑顔で一向に力を抜かないリツコ、必死に言葉を搾り出すアスカ、

「、、ちょっと、、、冗談を、、、言ってみた、、ぐぁ、、ぁぁ、、」

「そう、、じゃぁ、一つ憶えといてね、」

「ぁぁ、、、がぁ、、、、、、」

アスカは口を大きく開け、必死に呼吸をする、

「私のこと、“オバさん”とよんだら、今度は細菌注入するからね、、、」

「はがぁ、、、、あい、、、、」

「あなたには、天然痘菌とか似合いそうね、、ふふふふ、、、、」

不気味な笑みを浮かべながらリツコはアスカの首を解放する、

「はぁ、はぁ、はぁ、、、、、、」

アスカは震えた体で、大きく呼吸をする、

ますで蛇に睨まれた蛙が、九死に一生を得た感じだった、

「そこの、赤いボタンを押して、上のゲートが開いて発射できるわ、」

リツコはそんなアスカの背中に冷静に声を投げかける、

「早くしないと、シンジ君もそろそろ限界よ、」

「わ、、解ってるわよ、、はぁ、、はぁ、、、、」

操縦桿を再び握りしめながら、アスカは額に浮かんだ汗をふく、

(まったく、、、本当に年増の婆のくせに、、、いきなり私の事呼び捨てにして、

でも、、、、、、凄い殺気と力ね、まったく行かず後家にわなりたくないわね、、、、)

「あとね、アスカ、」

「はっはい、」

「結構、私他人が何を考えてるか解るから、注意してね、」

「、、、、、、、はい、」

再び脂汗が流れる感触に襲われるアスカだった、

そして、その光景を見ていたトウジとケンスケは、二度とリツコには逆らわない事

を心に堅く誓っていた、

 

 

 

「アスカ、発進急いで!」

一人で戦自の応戦をしているシンジが叫ぶ、

「解ってるわよ!馬鹿シンジ!」

アスカは赤いボタンを押す、

そして上空のゲートが徐々に開き、黒鉄色の雲と無限の豪雨が降り注ぐ空が見えてくる、

「行くわよ!」

ジェットエンジンを搭載した垂直上昇発進可能なSD−203が徐々に離陸していく、

SD−203は8人乗りのジェトヘリを基本としているが、リツコが機体の外装防壁を全て特殊な金属に変えてある為、通常の弾丸は全て弾き返す、

だが、さすがにバズーカー、ミサイル等は危険な為、シンジはそれら重火器系を持ってる兵士を優先して狙撃していく、、、、

「シンジ、一気に加速するから、捕まって!」

夜中の暗さが暗鬱な気分にさせるのか、それとも空は本来こんな色だったのか、今ではもうわからないが、アスカは何一つ見えない暗闇に向かい一気エンジンを全開にする、

同時に、夜の闇の中で号音と爆音を轟かせながら燃え上がる「赤木研究所」の建物、施設を、豪雨が窓の上を滝の様に流れながら視界をぼやけさせる中、リツコは無表情に眺める、

「さよなら、、母さん、、、」

アスカの耳にも、その呟きは明確に聞こえた、

 

そして、シンジ達を乗せたSD−203は暗闇の空に消えていった、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧北海道区と呼ばれた今は無国籍地帯、

1時間ほど前には湿原地帯だった場所、

だが、今は爆心地の後の様に地面を削られ、

全ての草木、花々、透通った水、全てが消えている、

その湿原の側にあった古い木で出来た家も無くなっていた、

今は直径500mほどの爆心地に流れ込む水だけが、そこが湿原だった事を思い出させる、

「司令、目的は今だに発見できませんが、」

「そうか、、あと30分捜索しても発見不可能な場合はここを引き上げる、」

「はい、しかし、、、」

「一時間以上捜索しても発見できないのなら、他の場所の可能性を考えた方が早い、」

「あの爆撃で消滅してしまった可能性は、、」

「あれは、そんな軟な石ではない、、、、、」

「解りました、それでは30分後、また、、」

か細い、ショートカットの少女が司令と呼ばれた男の前から去っていく、

暗闇の中、次第に剥き出しになった土が泥に変わって行く中を去って行く、

その後ろ姿を眺める司令と呼ばれた男の後ろに、一人の男の影がさしかかる、

「それにしても、ここまでやる事はなかったのでは、」

白髪の初老の男が話しかける、

「どの道、彼らが生き残る道はこれしか無かったのだ、」

司令と呼ばれた男は、無感情に答える、

「他のE遺伝子を強く保持してる人物の処理は、全て終ったそうだ、」

「そうか、、、、」

「残るは、綾波 レイと碇 シンジ君だけだな、」

「それでいい、後は彼ら二人の融合が自然と世界を、いや、宇宙の有限化を塞いでくれる、」

「しかし、この数時間の間で12人が死んでる。なんとも嫌な気分だ、」

「嫌な気分?」

男が振り返り初老の男を見る、

「12人しか死んでいないのだぞ。もし、彼らが今のまま計画を進行させ、真の“Pudding計画”を発動させたなら、犠牲者は12人から12億人に一気に膨らむのだぞ、もし、彼らがエヴァを手に入れたなら、、、」

「宇宙が有限化し全てが数字上で証明され、真実と呼ばれる嘘が宇宙を、地球を、生物を支配する様になり、、」

「最後には、楽園という地獄を生んでしまう、」

「いまでも十分地獄だよ、」

二人の足元も爆心地に流れ込む周囲の水の所為で、泥沼化し始めている、

「まぁ、それだけは阻止しなくては、それが最低限人間の義務だ言うのも解る、

だがなぁ、碇、」

初老の老人はフィルターのない黄金の星座で所狭しと埋め尽くされた夜空を見上げ話す、

「無限の象徴であるこの星空を守るために、余りにも我々は同族を殺し過ぎたのではないか、、、、、今回の“紅眼の種族”にしても、皆殺しにしなくても、、」

「彼らは裏の世界と繋がっている。鈴原 トウジの純真さに付け込んで、彼らを騙した上でエヴァの石を手に入れ、その石を狙っていた竜紅一族と取引をしようとしていた、

たいしてエヴァの石の意味も知らないままな、、、」

司令と呼ばれた男はそう言い残し、その場から闇に向かって歩きはじめる、

決して満天の星空を見上げる事はなく、寧ろ地面を睨みつけながら歩く、

「あぁ、そうだ、碇、こっちにシンジ君達が向かってるそうだ、」

その言葉に一瞬だけ歩みを止めるが、再び無言のまま闇へと歩んで行く、

「まったく、今度も、遭ってはやらんのか、、、、、碇、」

碇 ゲンドウ、彼はただ一人で、闇へと歩んで行った、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運転席と助手席、その後ろに細長いスペースがあり、左右に3人掛けの長椅子がある、

シンジはその堅い3人掛けの長椅子に横たわっていた、

「おい、シンジ大丈夫か、」

片腕で両目の上を覆い、口で大きく息をしてるシンジは何も答えない、

「おい、シンジ、聞こえるか、」

「鈴原君、静かにして、」

リツコがシンジの片方の腕に注射を打つ、

そして脈を計りながら、シンジの心臓の音を聞く、

「ま、まさか、、細菌の注射じゃ、、」

「そんな訳無いでしょ。シンジ君は異常な疲労で少し熱が出ただけよ、今解熱剤を打ったから後は栄養のある食事を取れば大丈夫よ、、、」

「そうですか、、、」

鈴原は心配そうに倒れ込んだままのシンジを見つめる、

「まったく、情けないわね。自己管理が出来て無い証拠よ、」

アスカはさっきまでは何一つ言葉を発しないでリツコの動きをじっと見ていたが、

症状が明確になり安心したのか、やっと言葉を発した、

「自己管理不足の為じゃないわ、」

そんなアスカの言葉をリツコは否定する、

「なっ、じゃぁ何だって言うのよ、」

「あなた、常に一緒に行動してるのに解らないの?」

アスカはむっとした表情でリツコを睨む、

「シンジ君、さっきの格納庫での戦闘中、威嚇射撃だけじゃなく大型重火器を持った戦自の連中を正確にシューティングしていった、」

「そんな事知ってるわよ、シンジは狙撃に関しては天才なんだから、」

「でも一人で20人近くの軍人を狙撃したのよ、しかもあの短時間で、」

「でも、、シンジなら、、、」

「シンジ君ならば、当然だと言うの?」

「当然とは言わないけど、、、今までのシンジから考えれば、、、」

「あなた、シンジ君はスーパーマンじゃないのよ。短時間であれだけのシューティングを行ったのよ、しかもスコープも無しに、正確に相手の額を打ちぬいていったのよ、」

「でも、シンジは今までもそれぐらいの事なら、、、」

「アスカ、はっきりと言うわ。シンジ君の狙撃の命中率は異常よ。

あの状態であそこまで正確にシューティングを行えるなんて人間技じゃないわ。

何度も見てる貴方には当然のことかもしれないけど、常識の範疇ではないのよ、」

「じゃぁ、一体何だって言うのよ!シンジが人間じゃないとでも言うわけ!」

「そうかもね、、、」

「、、、、、、、、、、、、」

リツコの言葉にアスカは言葉を無くす、

「、、、、、、、どういう事?」

「今の言葉、そのままの意味よ、」

「、、、、、ねぇ、今更だけど、あんた何者なの?」

「私は赤木 ナオコの娘よ、」

「それは知ってる。それだけじゃないでしょ、、」

「それなりに薄々感ずいてるんでしょ。直ぐに銃口を向けないのは、シンジ君が私を敵と判断せずに一緒に行動してたから?」

「そうよ。でも、、、、、あんた、あの女と同じ匂いがするのよね、」

「あの女って、」

「髪の長い、あんたと同じ歳くらいの、ネルフの手先の女よ、」

アスカはゆっくり銃を抜き、リツコに向ける、

リツコもその銃口から逃げる事も無く、真正面から見据える、

「どうして、シンジを狙うの?」

「さぁ?」

「ネルフの目的とあの“Pudding計画”の関係は?」

「さぁ?」

「、、、、、、、、、綾波 レイとの関係は?」

「さぁ?」

 

「いい加減にしなさいよ!」

アスカがリツコに殴り掛かろうとした瞬間、シンジがアスカの服を掴んだ、

「シンジ、、、、」

「ア、アスカ、、、、、」

「シンジ、どうしたの?どこか痛いの?」

「アスカ、、、後で、ゆっくり話そう、、、、今は、、、リツコさんも、疲れてるし、

僕達に直接危害は加えないよ、、、」

「でも、シンジ、この女は敵なのよ、」

「ち、違うよ、、、、、それに、リツコさん、さっきお母さんを殺されたんだ、、、」

「え、、、、」

アスカはリツコを見る、

だが、リツコの表情は何時もの無表情なままだった、

「だから、、、、今は、、、、、、、、アスカ、お願いだよ、」

「う、うん、、」

アスカはそのままシンジの腕を掴み、シートの側に座り込む、

「お、俺達、運転席にいるから、、、トウジ、行こう、」

「せ、せやな、、なんかあったら直ぐに知らせるさかい、、、」

二人は運転席へと去って行く、

リツコは反対側の長椅子に座り、シンジとその側に座るアスカをじっと眺めていた、

「、、、、あんた、これからどうするの?」

「さぁ、」

「、、、、、、、私達は今、旧北海道地区に向かってるけど、」

「私も旧北海道地区に用事があるのよ、」

「そう、、、、これも仕組まれてた事かしら?」

「ある程度はね。でもね、アスカ、旧北海道地区に着いてからは、誰も予測できないわ、」

「そこで、、、、何かが起こるわけ?」

「それは、、、貴方達次第よ、、、、」

「そう、、、じゃぁ、、、それまでは、安心してて良いわけ、」

「約束するわ、」

「、、、、、、、、ありがとう、、、、、、、」

そう一言いうとアスカも、シンジの胸に顔を埋めて眠りについた、

まるで恋人同士の様に、幸せな二人の様に、小さく寝息を立てて眠りについた、、

「この子達を犠牲にしなければ、手に入れられない未来、、、

そんな未来に本当に価値があるの、、、母さん、、、、、、、、、、、、、」

そう呟いたリツコも、一人涙を流しながら、知らぬ間に眠りについた、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い雲の奥で朝日が光り始めた時間、

ある超高層ビルの数十階の廊下を二人の男が歩いていた、

「戦略自衛隊、1個師団がほぼ壊滅か、、、、、」

「あの研究所には、様々な仕掛けが施されていまして、、、」

「言分けはいいよ、それより僕は結果が欲しいんだ、」

「今、ジェットヘリを追跡してますが、、、、」

「上空での戦闘は目標を生きたまま捕獲できない可能性があるので避けてください、」

「そうですか、、それじゃぁ、」

「目標の目的地は旧北海道地区です、」

「じゃぁ、数時間前に起こった原因不明の爆破と、」

「当然関係あるでしょう、、、、」

桜木は戦略自衛隊の人間と面倒くさそうに会話する、

「今すぐ、旧北海道地区への便を用意してください、それと、、」

苛立ちながら話す桜木に一人の男が近寄る、

「すみませんが、、」

「なんですか、今忙しいので後にしてくれませんか、」

「申し訳ないのですが、私こういう者です、」

その男が見せたバッチには“ESSP”という文字が刻印されていた、

「、、、、、、、、、“ESSP”が何か?」

「始めまして、桜木 宗司さん、お会いできて嬉しいです。

私、「対ネルフ特殊対策本部」のリーダーを務めますリュックと申します、」

「“ESSP”が何の用だね、」

さっきまで桜木の機嫌を伺っていた戦自の官僚が態度を変えて、リュックと桜木の間に立ちはだかる。だが、桜木とリュックは互いに視線を逸らす事もなく、睨み合っている、

「実は、多少お助け願いたいと思いましてね、」

「私に何を?」

「桜木博士、いや、桜木高官は昨日起こった国会議事堂でのネルフによると思われる妨害テロの被害者でもありますし、目撃談ではネルフの人間と思われる人物と接触してる様ですので、是非お話を伺いたいと思いましてね、」

リュックと桜木は薄笑いを浮かべながら互いを牽制しあう、

「君、桜木博士は今忙しいのだ、任意同行を強制するならば裁判所から、、、、」

ハゲた頭がリュックの前に立ちはだかる、

しかしながらリュックの身長は2メートル以上、桜木の身長も180センチ以上ある、

ハゲた頭をシークレットブーツで高く見せても165cmが限界だった、

「まぁ、下の方から異論が聞こえますが、、」

「僕は構わないですよ、でも、旧北海道まで行かなくてはいけないもので、」

「ほう、何しにですか、観光ですか?」

「いえ、大切な湿原地帯で爆発ががあったらしいので、」

「そうですか、じゃぁ、僕もその地までご一緒してよろしいですか?」

「えぇ、どうぞ、」

不敵な笑みを浮かべる二人は一緒に廊下を歩きはじめる、、

その後ろで叫んでいる人物を完全に無視して歩きはじめた、、、

「そういえば、内の隊員とも接触されたとか?」

「あぁ、、、あの茶色い髪の蒼い瞳の少女の事ですか?」

「アスカの事、よく記憶されてますね、確か後から受けた報告では、ネルフのテロ行為により人形が暴走して、逃げるのに必死だったと、、」

「いやぁ、僕は美人は絶対に忘れない自身があるものでね、」

「そうですか、じゃぁ、ネルフの女性工作員も忘れて無いですよね、」

「、、、、、、、、、、、、、、どういう事ですか?」

「あれ、昔同じ大学でお友達だった方ですよね、葛城 ミサト、彼女と赤木 リツコ、貴方と同じ大学で友人関係だった方ですよね、」

「彼女達がネルフの工作員だと?」

「えぇ、いい加減本当の事を教えてくださいよ、僕も大事な部下を二人も無くすつもりはないものでね、」

「はは、、そうですか、、じゃぁ、もう一人の“友人”のことも調査済みなんですね、」

「えぇ、最近、日本にいるらしいですね、」

「そうなんですか、、、久しぶりに会いたいなぁ、、加持のやつ元気かな、」

二人は可笑しくもないのに、薄笑いを浮かべながら歩いて行った、

 

第十一話へ続く



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