「自殺を進める以外手が無くなる、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、どれだけの子供を殺せば満足するのかしら、、、」

ミサトのコルトガヴァメントの銃口は、一人の政治家の額に向けられている、

「子供?子供だと思っているのかね、あの虫けらどもを、」

周囲は無数の死体で埋められている、

ボディーガード、政治家秘書、企業家、数え切れない死体の数、

「虫けらねぇ、、、、」

ミサトはその政治家の言葉をゆっくりと繰り返す、

「そうだ、この資源が枯渇していく中、人口増加を抑制しなければならない世界情勢を無視し、挙句の果てに親にも社会にも捨てられて犯罪者となり一般市民を脅かす存在にしかならない、そんな連中を通常の子供として考えるのかね、君は、はは、、はは、、、は、」

油汗を厚みのある脂肪の上に大量に浮かべ、その男は乾いた笑い声を上げる、

そして、ミサトの瞳を生気の無いガラス玉で見つめる、

「、、、、、、、、、、、、、」

無言でその狂った瞳を見下ろすミサトは、異常な程自分が醒めている事に気がつく、

「君は、あの生物が生きて行く為には今より183倍のエネルギー消費量が必要となる事を知っているかね、森林を無知に焼き尽くし原子力発電所を今の10倍必要とする事を君は知っているのかね、彼らの両親は暇つぶしに彼らを生んだのだ、その彼らを子供として君は認められるのかね、君の将来を潰す子供に似た生物を、、、、、」

 

プス、、、、

小さな音と主に、政治家は話しの途中で前向きに倒れる、

「それでも、あんたが実験材料にしていい理由はないはずよ、」

ミサトは冷たい瞳で、今、自分が撃ち抜いた豚を見下ろし、

冷たく言葉を捨てて去って行った、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木とリュックはまだ機上の人となっていた、

「もうすぐ、旧北海道地区に到着します、」

桜木に軍人が報告する、

「そうか、、、、」

つまらなそうに答える桜木だが、これから起こる出来事を想像すると、

多少自分の心臓が震えている事を数分前から気ついでいた、

「あぁ、、、そうか、、全員死亡したか、、、そうか、わかった、」

その震えを感じてる桜木の横でリュックが携帯電話のスイッチを切る、

「いやぁ、桜木さん、困ったことになりましてね、」

「何がですか?」

「貴方を逮捕する為には、各方面の偉い方を逮捕した上で証拠を固めてからと思ったのですけどね、、、、その証言してもらえるはずの政治家さん、企業家さんがですね、、、」

「全員殺された?」

にやけた表情で話す桜木に、リュックは冷静な瞳で答える、

「えぇ、、、良くご存知で、」

「まぁ、推測の範囲内の出来事ですからね、」

「予定の行動だったと?」

「いえ、本当に殺害は僕の予定内の出来事ではないですよ。あくまでも、あの組織が本気になれば彼ら全員を殺害するぐらい平気でやるだろうなと思ってですね、」

「ネルフがそこまで強引な手段に訴えでる理由が無いでしょ、

彼らの目的は計画の阻止であって、、、、」

「はは、、本気で計画阻止だけが目的だと思ってるのですか?」

桜木はリュックを馬鹿にした様に笑う、

「彼らの目的はあくまでも、エヴァによる人類の浄化ですよ。その為にはこの現世の欲望に塗れて、地球より自分の生命が重いと思ってる連中を殺すぐらい当然の行為ですよ、」

「エヴァによる人類の浄化ね、、、あなたの“Pudding計画”とは違うのですか?」

「僕の目的はエヴァによる人類の進化だ。

エヴァもコンピューターを生命も、すべてより良い人類が未来永劫生きて行く為の手段でしかない。人類の未来は進化の延長上に在るはずだ。人類の歴史の線が一度切れてしまったら喩え、その先に時間的未来が存在していても、人類の未来ではない、、、、

それは、宇宙の未来であって、、、、、人間の未来ではない、、、、」

「ネルフの求める宇宙の未来、、あなたが求める人類の未来、、、

どちらも、大量の血と魂を失わなければ到達できない未来なのですか?」

「人類の過去も、現在も、大量の血と魂は失われている、残酷な現実としてね、

だが、このままではもっと大量の非人道的な行為を繰り返さなければ未来は生まれない、」

「その為にエヴァを使うと?」

「あぁ、、、未来を手に入れる為なら、エヴァでも神でも悪魔でも利用するさ、、

単なる進化の道具としてね、人間という高等知能動物、全生物の頂点に君臨する人間を進化させる高価な玩具としてね、、、、、」

「玩具ね、、、、、」

2人はそのまま大きなシートに身を沈めながら、暫しの沈黙を守った、

暫くジェットエンジン音だけが微かに聞こえる中、数分後リュックが口を開く、

「エヴァとは神なのですか?それとも悪魔なのですか?」

「、、、、、、、どちらでも無いでしょう、敢えて言えば、、」

「言えば?」

「弥勒菩薩の様なものですね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、シンジ君、もういいの?」

「えぇ、お陰で熱も一気に下がりました、」

シンジが運転席の後ろに現れ、その姿にリツコが声をかける、

「もうすぐ、目的地よ、」

「そうですか、、、、って、僕はまだ目的地を聞いてないんですけど、」

シンジが皮肉っぽく笑いながら言う、

「そうだったわね、、目的地は、」

「旧北海道地区ですよね、この辺、」

素早く測量計と方位レーダーをチェックするシンジ、

「そうよ、それも、旧網走地方、」

「網走ですか、、、確か湿原地帯になってたはずで、最古の刑務所跡地ぐらいしか、、」

「無いわよ、きっと、、、、今は湿原も跡地も、、、、何も、」

「でも、確か昔のアイヌ民族的生活をしている人々が、、、」

シンジがケンスケとトウジの方を見る、

「せや、わしらが取材に行った時は、綺麗な湿原と温かい部族の人達が、、」

トウジとケンスケが答えるが、その答えにリツコが冷たく言い放つ、

「えぇ、、1時間前ぐらい前まではね、、、、、、でも、もう何も無いのよ、、何も、、」

そう言って、リツコは後ろの部屋へと去っていった、、、

 

 

 

暫く後、、、

 

 

 

「ケンスケ、目的地まであと何分?」

「もう、あと15分ぐらいだ、直ぐに着陸体制に入った方がいいかもな、」

「そう、じゃぁ、運転変わるよ、」

「あぁ、、」

ケンスケとトウジが運転席、助手席をシンジとリツコに譲る、

PC−20から12まで下降、エンジン出力20%ダウン、、、、、、、」

リツコが計器を読み上げる、

シンジは操縦桿を握りながら、闇の中、暗視レーダーを見つめながらの着陸体制に入る、

「そうだ、ケンスケ、」

「なんだい?」

「アスカ、まだ後ろで眠っていると思うから、起してくれないか?」

シンジは手際良く計器を見ながら操縦桿を操る、

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、嫌だ、」

「じゃぁ、トウジお願いだよ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、勘弁してくれ、」

2人は俯いたまま、腕を組み動こうとしない、

「どうしてだよ、呼べば起きるはずだから、頼むよ、」

シンジは闇の夜空を見ながら、気軽に話す、

だが、、後ろの二人は堅い意志をもって答える、

「「嫌だ!」」

「どうして?」

多少怪訝そうに振り向いたシンジに二人は真顔で言う、

「「、、、、、、、、、、、、、死にたくない」」

シンジは思い出した、

(そういえば、、2人は知ってるんだよな、、、、、アスカの、、、寝起きの機嫌の悪さを、、、、、、、

目が覚めたとき、自分にとって不快な存在が側にあったら、、、、アスカ、容赦なく破壊行動に移るからなぁ、、以前それで殺されたストーカーがいったっけ、、、、)

シンジはそんな事を思いだしながら、苦笑した、

「大丈夫だよ、3メートルぐらい離れて、棒か何かで突っつけば、」

笑いながら話すシンジに対し、

「、、、、いや、総流ならば、3メートルじゃ攻撃範囲内だね、」

「、、、、前に殺されたストーカーは、有無も言わさず射殺されたそうじゃないか、」

トウジとケンスケの2人は動こうとはしない、

「せや、せっかく生き延びた大切な命をあの殺人的に寝起きの機嫌が悪い、

根性腐れ女に奪われたたまるかいな!」

「そうだ、シンジは慣れてるかもしれないけど、僕達一般市民にとっては妖怪みたいなもんだからね、アスカは。まったく、あんなに自分勝手に他人を殴れる女は妖怪だよ、」

「せや、せや、あの女だけは本当に近寄りたくないな。普通の可愛い女の子だったら、喜んで起こしに行くけど、あの女の寝顔だけは見たら石になりそうな気がするわ、」

「本当だね、アスカの寝顔を見た人間は全員石にされてしまうんだよ、

そして、蛇女アスカは、石になった人間を冷酷に打ち砕く、、、、、、、、、、」

ケンスケの言葉は後ろから発する異常な冷気によって中断させられる、

そして、隣に座っていたはずのトウジが床に血の海に沈んでいる事に気がつく、

「私が、、、、寝起きの機嫌悪いって、、、、知ってるわよね、」

地獄の底から聞こえてくる擦れた声が、ケンスケの後ろから聞こえる、

「い、、いいえぇぇぇ、、、何の事でしょうか?」

「起きてみたら、、、、、私のことを妖怪とか言ってるやつがいたんだけど、、」

「は、はは、、誰でしょうね、、そそ、、そ、、そんな、、馬鹿な事言う奴は、、」

「そう、、、、あんた、、、、知らないんだ、、、」

「え、、、えぇ、、、僕は、、、」

隣で倒れているトウジの後頭部からは、永遠と紅い液体が流れ出ている、

その液体がケンスケの足元に辿りつく、

「、、、、、そう、、、、、、、、、、、知らないんだ、、、」

一気に脂汗が滲み出でいるケンスケの後ろで、不機嫌の塊の様な瞳で立ち尽くすアスカ、

毒蛇よりも恐い瞳でケンスケを見下ろすアスカの手には、トウジを殴ったと思われる、

血に塗れたスパナが握られていた。

「そう、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、じゃぁ、教えてあげるわよ、」

言葉と共に一気にスパナを振り下ろすアスカ、

恐怖のあまり声を上げることも出来ないケンスケ、

大きく開いたままの瞳は既に瞳孔が開いているのかもしれない、

トウジと同じ血の海に沈む、、、、

そう思った瞬間、

 

「アスカ、ちょっと側に来て!」

シンジが真剣な声で叫ぶ、

「、、、、、、、、、、、っち、命拾いしたわね、」

あと数ミリで頭をカチ割る、といった所まで振り下ろされたスパナを止めて、

アスカは冷酷な瞳のままシンジの側に向かった、

 

(た、、、、った、、、、助かった、、、、、、、あぁ、、、生きてるって良い事だなぁ、、、、、、、

でも、、、あの腐れ妖怪女、いつか、、、きっと何時の日にか、、、復讐を、)

そう意志を込めた瞳でアスカの背中を涙目で睨む、

(きっと、、、いや、絶対に、、、、、い、、、、、、、)

ケンスケの思考は振りかえったアスカの視線によって停止させられる、

そしてケンスケの視線を跳ね返すには十分過ぎるほどの眼光で、睨み返す、

「あんた、、、、なんか文句あるの、」

アスカの血の匂いがする言葉にケンスケは思わず漏らしそうになる、

「い、、いえ、、、何もありません、アスカ様、」

「、、、、、、、、、そう、、そうならいいけど、私に復讐しようなんて思ってたら、、」

「お、、、思っていたら、、」

“ゴクリ”と音を立てて、生唾を飲む、

「さっきの100倍の恐怖と苦痛を与えてあげるわよ、、、ふふ、、ふふ、、ふふふふふ、、」

「はは、、、は、、、そ、、、そうですか、、、、はは、、は、、、」

ケンスケの乾いた笑い声だけが機内に響いていた、、

 

「アスカ、あんまりケンスケ達を困らせないでよ、」

「なによ、あんたあいつらの味方するわけ!」

「そうじゃなくて、アスカも“ESSP”の一員なんだから、一般市民に危害を加えるのは、

止めた方が良いって事だよ、」

「はん!勝手に私がいない事をいいことに、妖怪呼ばわりしてるあいつ等が悪いのよ!」

「だからって、スパナで殴る事ないだろ、」

「大丈夫よ、あいつの事だから数分後には普通に戻ってるわよ、」

「まぁ、、、僕もトウジはスパナで殴られるぐらい、大丈夫だと思うけど、」

2人は血の海に沈んだままのトウジを心配する事なく、勝手に判断していく、

「それより、何よ、」

「あぁ、そうだ、アスカ、この暗視レーダー見てよ、」

「見てよって、、、、、、何も反応無しじゃない、」

「いや、本当は数十人のアイヌ系民族の人達が住んでる場所なんだけど、、」

「生命反応は無しって所ね、、」

「あぁ、どうやら、リツコさんが言ってた通りだね、」

「でも、それがどうかしたの?」

「この別の反応見てよ、」

シンジは不思議な色に染まった小さな点を指す、

本来人村があったはずの場所から1kmほど離れた場所の反応をシンジは指差す、

「この色って、、、、、紺色?」

「そう、紺色って事は、少なくともマイナス温度のポジションが存在してるって事だろ、」

「でも、、この常夏の国、日本では、」

「そう、考えられない。しかも、その場所は湿原地帯で本来人はいないはず、」

「そうね、、、、、あっ、、消えた!!」

アスカとシンジの見ている目の前でその反応が消える、

「シンジ、、、」

「うん、、、、何か特殊な反応だろうね、、」

「ふふ、、面白くなってきたわね、」

アスカもシンジも笑う、だが、その笑みには嬉しさよりも、哀しみ、避けられない運命的な被虐さが込められている。

 

そんな彼らを乗せたジェットヘリが、旧北海道地区に着陸したのは、僅か数分後だった、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弥勒菩薩?何ですか、それは?」

リュックは多少馬鹿にした様に笑う、

「人類を、いや、この宇宙を浄化し、更に全ての苦しみ、哀しみから、全ての生物を救う神様でもなく、悪魔でもない存在ですよ、」

桜木は対照的に、穏やかな、諭す様な口調に変化する、

「ほう、日本の“仏教”というやつですか?」

「まぁ、あんた達キリスト教徒には解らない世界の存在ですよ、エヴァはね、」

「どうしてですか?」

「あなた達西洋人は、エヴァを神か悪魔かとしか捕らえられない、

しかし、エヴァは人間の心の中に存在し、宇宙の中に存在し、そして宇宙の外にも存在する。色即是空って感じですかね、」

桜木の表情から次第に薄笑いが消えていった、、

「でも貴方も、そんなエヴァを人類の進化の手段、つまり機能的存在として捕らえてるわけですよね。寧ろ、ネルフの方が色即是空の思想に近いのでわ?」

「そうですね。でも、僕は貴方達の様に外概念として超越した存在を崇拝していません。

エヴァは内概念、いや、人間の精神の中に実際に実存する存在として考えています。

貴方達の様に科学的証明で物事を捉えてはいません、」

「はは、、科学者の言葉とは思えないですね、」

リュックが皮肉を込めた笑いを漏らす、

「確かに、アインシュタインの相対性理論から量子力学、その後の進化は科学的証明を持って宇宙の原理を明確にしてきた。そして、ダーウィンの進化論からEM細胞の発見まで生物の存在も科学的証明を持って進めてきた。だが、それは科学的に証明できない世界を同時に否定する結果になってしまった。」

「事実精神世界も全て科学的に証明できるじゃないですか。潜在意識、トラウマ、催眠、マインドコントロール、全てフロイト、ユング以降の結果は素晴らしいものだったじゃないですか。」

「そう、確かに素晴らしい進化だった。様々な実験を行い証明をしてきた。人間の精神をね、、、、、、だが、所詮、脳の3分の1程度しか使えない猿が、同じ猿を理解したに過ぎないのですよ。禅やヨガ、断食、禁欲修行等により高められた精神を持った人間が感じる世界には到底及ばない世界なんですよ、」

「その世界にエヴァは導いてくれると?」

「えぇ、、僕はその道を開く事で新人類を創造したいのですよ。」

「ネルフの目的もそうなのでは?」

「いえ、ネルフの目的は人類、宇宙の浄化により新世界を創造することです。

だが、その世界には僕や貴方、個人、人間、神、悪魔、、、そんな概念は存在していないのかもしれない。つまり、今の概念が全て通用しない世界、まったくの新世界の可能性があるんですよ。でも、僕が目指す世界は、人間自らの手で、同じ新人類を作りたい、、、」

そのまま桜木は黙って、闇に包まれた下界を窓から見降ろす、

「新世界の創造と、新人類の創造、、、、、まったく素晴らしい目的で、」

そんな桜木に、リュックが更に皮肉を込めて話す、

「ふふ、、、貴方達西洋人にはわからない世界ですよ。

無の中にこそ真実があり、

真実は無である、

全てが空であり、

空こそが全てである、、、」

そして、そのまま2人の間には長い沈黙が流れ続けた、、、

 

 

そして、、、

桜木とリュックを乗せた軍用機も旧北海道地区の網走地方に数分後、到着した、、

 

第十三話へ続く



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