「ウォーターベットのチラシ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(弾丸が見えるかい、

 君なら見えるよ、

 ナイフにキスしてる姿、

 とっても格好いいよ、

 唇を切ったっけ、あの時、

 その唇を僕が舐めてあげたんだよね、

 そうさ、、僕達のファーストキスは、血の味がしたんだよね、)

 

シンジの頬を弾丸が掠める、

多少の痛みに嬉しくなる、

流れて出る血が紅い事がちょっと気に入らないけれど、

シンジは闇の中、嬉しそうに笑った、

 

 

 

(アタシの胸、誰もが触れる胸、

 アタシの体、誰とでも寝る体、

 汚れていたい、汚してみたい、

 永遠に落ちて行く為に、クリーム色の朝を迎える為に、

 でも、貴方を愛した事実は消えなかった、、

 その事が許せない、、だから、血の色を青色に変えたのよ、、、)

 

レイの左腕にはナイフで切られた傷口から血が溢れ出ている、

シンジと同じドクロの刺青が紅く染まっている、

その紅いドクロが大声をあげて叫んでる、

殺せ、、殺してやれってね、、

 

 

 

 

レイが闇の中、銃を両手に握り進む、

ドクロが示す、シンジの居場所に向かって、

出来るだけ呼吸を抑えながら闇を進む、

泥が脚もとの感覚を狂わす、その泥状の土壌から1メートル程ある花草が邪魔をする、

(、、、、近くにいるはず、、)

 

 

 

その瞬間、左後方からシンジのナイフがレイの脇腹を狙う、

レイは瞬時にかわし、その腕を左手で掴み右手で銃口を向ける、

シンジもその右手を掴み銃口を地面に向ける、

そして、そのまま互いに組み合い、睨み合う、、、、

「久しぶりね、、碇君、、」

「あぁ、、、7年ぶりぐらいだよね、、」

レイとシンジは手先を何とか相手の体にむけ様とするが、

互いに体制を入れ替えたり、力で抑えたりして反発する、

「随分と、、、手荒な再会ね、、、」

「君のコピーには何度も苦しめられたけど、、やっと遭えて嬉しいよ、」

互いに顔を近ずけ、キスでも出来そうなくらいの距離で狂笑を浮かべながら話す、

「私も、、、すごく嬉しいわ、、、これで、やっと過去からにげられ、、る!!!」

レイの右足がシンジの脇腹に食い込む、

「ぐぁ!!」

シンジの表情が一瞬曇る、

間髪入れずにレイが引鉄を絞る、

ズキュン!!

「クッ!!」

左足を掠めて地面に突き刺さった弾丸、

第二弾が更にシンジの腹部を襲う、

だが、シンジも銃とレイの右手首を瞬時に握り、手首を捩じ曲げる、

「きゃぁ!!」

レイは手首が折れたかと思えるほどの激痛に悲鳴を上げながら銃を落す、、

そしてシンジは掴まれていた右手でレイの腹部を傷つける、

「ツッ!!!」

苦痛に歪んだレイの表情、

そしてそのレイの心臓を狙って再度シンジがナイフを突き刺す、

瞬時に避けるレイ、

そのレイを狙うシンジ、

「あっ!」

レイが泥に脚を取られ転倒する、

すぐさまシンジが心臓を抉ろうと迫る、

だがその瞬間、レイはブーツに装着していたハンドガンを抜き、シンジに向けて発砲する、

ズキュン!ズキュン!

2発の内の一発の弾丸がシンジの左肩に当る、

「うがぁぁぁ!!」

大声を上げるシンジは瞬時にレイにナイフを投げつける、

「くっ!」

レイはそのナイフを傷ついた右手で受け止める、

「あがぁぁぁ、、、、、」

じわりと後から追ってくる鈍い痛みにレイの動き、視界が一瞬停止する、

直ぐに気を振り絞り、周囲を見ると、シンジの姿は消えていた、、、

(ちっ、、、、逃げたか、、、アタシは右手と腹部、シンジは左足と左肩、、、、、

まだまだ互角か、、、、、でも、何故銃を使わない、、、、、弾切れ?)

レイは気配を消しながら、再び場所を移動し始めた、、

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、、」

アスカ達はシンジと別れた後、洞窟を進んでいた、

「何処までこの洞窟は続いてるのよ、」

リツコの先導で既に30分程度進んでいるにも拘らず、未だ闇の中にいた、

「まさか、あんた私達を、、、、」

「最初に云ったでしょ、味方ではないって、」

リツコは皮肉っぽく笑いながら答える、

「そう、、、じゃぁ、、」

レイは前手錠のままのリツコに銃口を向ける、

「、、、、、単純ね、敵でもないのに、」

「味方じゃないなら、殺すまでよ、」

アスカが冷静に引鉄を弾こうとすると、ケンスケが止めに入る、

「そ、総流、、ちょっと待てよ、」

「そや、総流、殺すことはないやろ、」

2人が止めに入るがアスカは銃口を下ろす気配はない、

「総流、止め、、」

「じゃぁ、条件があるは、」

アスカはリツコをじっと睨みながら云う、

「、、、、、、、、、7年前の真実?」

「それだけじゃ無いわ、あの事件以前からの事、全部教えてもらうわよ、」

「いいけど、シンジ君と二度と遭えなくなってもいいの?」

「シンジは絶対に帰って来る、レイに勝って帰って来る、、」

「シンジ君が愛してるのがレイだって事、あなたも知ってるんでしょ、」

「、、、、、、、、、、、レイを殺したがってる事もね、」

リツコとアスカは互いに睨み合う、

互いに胸に秘めた思いを揺らしながら、悲壮でもあり残酷でもある瞳で睨み合う、

アスカにも解っていた、

真実を知れば、シンジと二度と遭えなくなるかもしれない事を、

だが、今レイと殺し合っているシンジが、レイを殺して戻ってきた時、

その真実を無視する事はできな事も知っていた、、

シンジを受け入れる為には、、、

全てを受け入れなければならなかった、、、

そして、暫くの沈黙の後、

「、、、、、、、、、、貴方達が子供の頃、、エヴァという石の存在を発見した、」

リツコが静かに口を開いた、

「子供の頃?」

「そう、何処にあるかは解らなかったけれど、私達は発見したの、、」

「“私達”?」

「私達親子と、碇夫婦、あなたのお母さんキョウコさんと、、、、、桜木君とね、」

「桜木って、あの“Pudding”を提唱してる奴?」

アスカが露骨に嫌そうな顔をする、

「彼と私は同じ大学で特待生として碇教授の研究施設に入ったの。

始めは調度国会で臓器移植基準法案が通過した所為もあって、

研究課題は細胞特有の免疫を解消する事に集中していた。

その頃、、、、

特に人口過剰の国では免疫抑制剤の開発により、人身売買が盛んになっていた、

子供を売る、、、、二束三文で貧困地帯の子供を買う、、、、

そして、、、政治家、芸能人、企業家、、、つまり資本主義の豚たちに売っていた、、

しかも、、、ある程度合法的にね、、、、

死んで行く子供達は何も知らずにね、、」

思い出しながら無表情に語るリツコ、

だが、その仮面の下には当時の情勢への激しい怒りが含まれていた、

「国連は何をしてたの?」

アスカも不機嫌そうに聞く、

「そんな事業が当然の様に闇の世界で行われている事への不満の声は当然上がっていたわ、

そして、ユニセフや国連も大きな問題として捉えていた、、

でも、その当事者達が子供の臓器を移植してたんですもん、、

人身売買が無くならないわけよね、、、」

トウジとケンスケはその辺の話はジャーナリストとして詳しく知ってる様で、

辛そうな表情を浮かべて聞いていた、、

「子供の人身売買を止めるには、、、臓器を人工的に作れる、

そして、その臓器が免疫を持たずに、どの人体にも適応できる事を証明しなければ、

そう思った碇教授を筆頭とした私達の研究チームは研究に没頭していった、、

毎日、細胞遺伝子パターンを組替えてどの細胞にも適応できる遺伝子を捜していた、」

リツコは静かに近くの岩場に腰を下ろした、

「でも、、人間から人間への臓器移植で免疫を無くす事は無理だった。

そもそも人間自体免疫を持つ事で他の生物から隔離して自己を創れたのだから、

免疫を無くす事は人間の形や自己を破棄してしまう事だった、、、」

アスカも銃を下ろす事なく適当に座る、

それを見たケンスケとトウジもその場に座る、

暗闇の中、蒼白く見える視界の中リツコの声だけが響いた、、

「研究が進むにつれ、私達の研究は免疫を持たない細胞など存在しないのでは、、

そう思う気持ちが日々強くなっていった、、、、

そうよね、、人間はエイズにしても天然痘、ペスト、エヴォラにしても、

外部から体内に侵入する他のウィルスを防ぎ、そのウィルスにたいする免疫を強める事ばかり研究してきたんですもの、、、、その免疫を無くす方法など存在しない、、、、

そう思う気持ちばかりが増幅していった。

ところが、ある日、、、、ある人体から信じられない血液が採取されたの、、、」

「ある人物って?」

「彼は肺の手術をする患者だった、、、、、12歳の少年を執刀する医師は彼の両親だった、、

そして、何気なく息子の血液細胞を検査した母親は、、、、自分の息子の特異性に気がつき、

愕然としたの、、、、、、、その母親が碇 ユイ、、、、そして、、その息子は、、、」

リツコは一旦話しを止める、

そして、暗闇に包まれたアスカの顔をじっと見つめる、

「シンジ、、、、、、、ってこと?」

「そう。通常人間の遺伝子配列はA,G,C,Tの配列になってる、、

その単純な組み合わせにより、全ての遺伝子が記録構成されている。

ところが、シンジ君の遺伝子にはもう一つの情報を持つ“E”という要素が含まれていた。

通常の人間以外の何かが彼の体には組み込まれていたのよ、、、、

そして、、それこそが私達が求めていた物に、近い存在だと気がつくのに、

それほど時間は掛からなかった、、、、、、、」

「シンジは、、、、人間じゃないの?」

「人間よ、、、、でも、人間以上の生物なのよ、、、、」

「その“E”要素が遺伝子配列に加わっていると、どうなるんですか?」

ケンスケが質問を云う、

「まず、全てのDNA形式の細胞を取り込める。

簡単に言えば、、仮にシンジ君が右腕を失ったとしても他人の右手を付ければ、

その他人の右手全てを自分の組織に変える事ができるの、、、

つまり、免疫アレルギーという次元の話ではなく、他人の器官を侵食できるのよ、」

「そんな事、、、、、」

ケンスケには信じられないといった感じだった、

「その“E”要素があれば可能なのよ。」

「どうして、、シンジに、、、」

トウジもケンスケも信じられない、

だが、、、アスカには、、

アスカだけは、その事が自然な事の様に思えた、

確かにシンジは人間離れしてると思える瞬間がある、

その瞬間はさっきも感じていた、、、

アスカが自衛隊の兵士を殺すのに人数の数倍の弾丸を要したのに対して、

シンジは射殺した数の弾丸しか使っていない、

そんな事、、、人間技ではなかった、、、、

「その発見から私達の研究は別の方向に向かっていった、、

いったい“E“要素とはなんなのか、、、日々の研究は”E“要素解明に注がれていった、

そして、紀元前2000年頃に書かれたエジプトの「瞋恚の書」に答えを見つけたの、」

「瞋恚の書?」

「そう、古代王達の墓に遺体と共に埋められた謎の石版に刻まれた古代呪文、、、

それが「瞋恚の書」と呼ばれる謎の石版だった、、、」

「瞋恚って、何やねん?」

トウジの質問にアスカが小さく呟いた

「瞋恚の炎、、、、、、、」

「え、、炎???」

「仏教の言葉で三毒十悪の一つで、激しく人を恨む事ね、、、」

「そうよ、アスカ。まさに、その石版に刻まれた呪文には、人間の怒り、妬み、恨み、

そんな事ばかりが刻まれていた、謎の古文書、、、紀元前2000年の古文書にも拘らず、その内容は更に数億年前から伝えられた内容と書かれていたの、、、」

「「数億年前?」」

トウジもケンスケも飽きれた表情を浮かべる、

だがアスカにとっては何年前の話でも関係なかった、

「その石版が“E”と何の関係があるの?」

「その石版に刻まれていたのよ、、、瞋恚の炎を消す方法が、、」

「方法?」

「そう、、、その方法こそ、、、人間に“E”要素を組み込ませる事だった、、

そして、その“E”は“エヴァンゲリオン”と呼ばれていたの、、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイは再び闇の中を歩いていた、、

(碇君が銃を使わない理由は、、、、ただ一つ、、)

相変わらずドクロの刺青がシンジの居場所を教えてくれる、

その痺れる感覚を頼りに、動かない右手をぶらさげながら、湿原を歩く、

(この先、、、、、いる、、、)

1メートル近い雑草の向こう側をじっと見つめる、

「碇君!無駄よ、私にストーキングでは近ずけないわよ!」

レイは叫んでも闇に消えそうな空間に向かって叫ぶ、

「残りの弾丸、全てアスカに渡してきたんでしょ!

ナイフだけじゃ私には勝てないわよ、碇君!」

(くっそ、、、読まれてたか、、)

将にその通りだった、

銃弾の消耗が激しいアスカの為に、予備弾の殆どをアスカに渡していた、

シンジと違いアスカは普通の人間だ、

仮に戦自やネルフと交戦したとき、できるだけ弾丸が在った方がいい、、

そう判断したシンジは去り際に自分の予備弾を殆ど渡していた、

全てではないが、レイとの交戦の間にシンジの銃には弾丸が無くなっていた、

 

「碇君!そろそろあの時の決着をつけましょ!」

レイは叫びながら草を掻き分けながら慎重に進む、

「あの時、殺しそこなった人間がここにるのよ!さぁ、出で来なさいよ!」

 

(殺しそこなった?、、、、、、、、誰が?、、僕が?)

シンジはレイの言葉に疑問を持つ、

だが今は痛みを抑えながら気配を消すことが最優先だった、

今、シンジは数メートルの幅がある河水に身を沈めている、

湿原の中を流れる河川は透明な冷たさを体中に感じさせる、

(レイ、、あと数歩でこの河川際にでるだろう、、、

どうする、、ショートキルが無理ならば、銃が必要だが、、、、)

 

シンジは身を切る河水の中で冷静にこの後の事を考えていた、、

 

そのシンジの待つ河川際にレイが現れるまで、数秒といったところだったかもしれない、

「碇君、、あの時の決着、いま、ここでつけましょ!」

シンジは身を静め、レイの姿を見つめる、

(かなり距離はある、でも、可能性はある、、、、もし見えなければ、、アウトだけどな、)

意を決したシンジは素早く河川から身を起こす、

その姿をレイは即座に認識し、左手に握っていた銃をシンジに向ける、

ズキュン!ズキュン!

距離はある、

だが、レイが外す距離でもなかった、、

レイはシンジの心臓付近に確実に打ち込んだ実感を得ていた、

シンジは反対側の河川際に倒れている

(やったか、、、いや弾丸が食い込んだ感触が少し違う、、

人間の肉体に食い込んだ感触ではない、、、だとすると、、)

レイは銃を構えながらゆっくりとシンジが倒れた場所に向かう、

シンジは動かない、

だがレイは安心できない、、

(そうよ、、、首と胴体を切り離すまで、、、安心できない悪魔なのよ、、)

河川を渡り切り、シンジが倒れている水際まで来た、

それでも気を抜かず、慎重に近寄る、、、

「死んだ振りしても無駄よ、碇君、、、」

一気にシンジが起き上がっても対処できる距離に離れてレイが叫ぶ、

「もし、本当に死んでいても構わないけどね、、

首を切断してあげるから、、、、待っててね、、、、、、」

レイが一歩一歩近ずく、

だが、シンジは反応しない、

暗闇で良く見えなが、うつ伏せに倒れたシンジから大量の血液らしい液体が流れている、

(この出血の量じゃぁ、、、、、死んでる可能性が高いなぁ、、、)

近ずく、、、一歩一歩、、、慎重に近ずく、、

(ダメだ、、これ以上近ずくと危険だ、、、あと残りの弾丸は2発、、、打ち込むか、、、、、)

銃口をシンジの後頭部に向ける、

距離的には3メートル程度、決してミスる距離では無い、

だが、それでも銃口を頭に突付けないと不安だ、、

だが、これ以上近寄るのは、、、、

(撃て、、撃ち殺して、、全ての過去と全ての愛に、終わりを告げるんだ、、、、)

 

 

 

 

 

レイの指先が引鉄を弾く、

 

 

そして、暗闇の中、2発の銃声が響いた、、、、、、

 

第十六話へ続く

 



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