「冷えたチキンスープ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リツコの話しは、一旦止まる、

アスカも、ケンスケも、トウジも、、、

全てが止まっていた、、、

時間が?

言葉が?

いや、、存在が止まってしまった、、、

暗闇しか存在しない中、僅かな明かりが周囲の岩肌を露わにする中、

人間としての存在、固形化した姿を捨てた、、

気体化した様な気分が三人を包んでいた、、

 

 

 

「シンジ君は、、、いや、シンジ君の中に宿るエヴァンゲリオンは、

人工的に操作された遺伝子の影響を受けていた、、、

そして、、その影響の結果、、、、、凶暴な面と純粋な面のバランスが崩れ、、

一気に残酷さだけが支配した生物になったのよ、、」

リツコの言葉をアスカは聞いているのか、

それとも他の事を考えているのか、、

アスカ自身にも解らなかった、、

「そして、、、シンジ君は、いや、エヴァンゲリオンは正常な機能を失い、、

一気に暴走したの、、、、、、、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7年前、、

レイは学校を休んだシンジを見舞いに、碇家を尋ねる途中だった、、

(碇君、、どうしたんだろう?学校を無断欠席して、、、、

やっぱり、アタシに告白した事、後悔してるのかなぁ、、

それとも、アスカと何かあったんだろうか?)

不安に思いながらも、レイはシンジが自分を受け入れてくれた事、

アスカよりも自分を選んでくれた事に刹那な幸せを感じていた、、

レイは12歳以前の記憶は殆ど無い、

どうしてシンジ達と一緒の学校に通い、

シンジ達とどうして友達になったのか、

自分自身解っていない。

だが、、シンジと接すれば接する程、レイの中には不思議な感情が増幅していった、

恋、、、、、そんな概念的な嘘の存在ではない、

もっと、何か別な、、、人間的な根底で共鳴する何かが、

シンジと一緒にいると増幅していった、、、

(嬉しかった、、碇君がアスカより、、アタシを選んでくれて、、、、

アスカには悪いけれど、、、私には、、、私には、、、、、、)

 

 

レイは様々な事を思いながら、碇家の前に達、呼び鈴を押す、

「ピンポーン、」

だが、中からの反応はまったく無い、

(如何したんだろう、、、誰も居ないのかなぁ、、、)

そう思いドアノブを回すと、鍵は開いていた、

(あれ、、、開いてる?靴もあるなぁ、、、中に誰か居るみたい、、、、)

「今日は、、、綾波と申しますが、、誰か居ますか、、、、」

レイは開けたドアから首だけを覗かせる、

「誰か居ますか?」

夕方にも拘らず、真っ暗な室内に何か嫌な雰囲気を感じる、

その雰囲気が不快で、レイはもう一度大声で叫ぶ、

「すみません!誰かいますか!」

「綾波なの?」

キッチンの方からシンジの声が聞こえる、

「碇君!」

シンジは姿は見せないが、声は間違いなくシンジ本人のものだった、

「綾波、上がってきてよ!」

「う、うん、、、」

声に誘われるまま、、レイは、暗闇を真っ赤に染めた夕日が注し込む部屋へと進む、

電気もついていない、暗闇を狂気に似た紅い部屋に、レイは足を踏み入れた、

「碇君、どうしたの?具合悪いの?学校無断欠席し、、、、、っ!!!」

 

 

 

 

シンジの声がした部屋、、真っ赤に染まった部屋、

紅く染めているのが夕日ではなく、大量の人血である事が解る部屋、

その部屋の光景を見た瞬間、、

レイの紅い瞳は正常な機能を失った、、、

いや、破壊されたとでも言うべきなのだろうか、

現実を視覚から情報として認識する自分と、

その現実を決して受け入れたくない自分、、

その相反する感情が、一気にレイを困惑させる、

「やぁ、綾波、、グットタイミングだよ、、今、終わったところなんだよ、、、、、」

笑いながら血だらけの腕とシャツで入り口に立つシンジ、

そのシンジの右手には不気味な色に染まったジャックナイフが握られていた、

そして、レイの足元には、、、

凄惨な姿に変わり果てた、ユイとキョウコの遺体が転がっていた、、

「っぁ、、、、ぁ!!、、、、、、!!」

2人の遺体は数カ所、何度も刺された結果、肌は全て血の色に変わっていた、

その遺体を目の前にしたレイは、、完全に言葉も記憶も、

レイが期待していた地球の色も、全てを失った気がした、、

「いやぁ、やっと終わったところなんだよ、、流石に胸が痛いねぇ、自分の母親と幼馴染の母親を刺すのは、、ホント、自殺したくてしょうがないよ僕は、、ははは、」

笑いながら、シンジがゆっくりとレイに近寄る、

「い、、いやぁ、、、碇君、、、」

泣いている、、

何故だか、解らないが、、余りにも残酷な光景と現実に、

レイはひたすら涙を流していた、

「レイ、、必要な事なんだよ、、、、」

笑いながら、シンジはナイフを床に投げる、

「ど、、どうして、、、何故、、」

「狂気と絶望こそ、、、未来と希望を生み出すテイストなんだよ、、」

笑いながら迫るシンジ、

そのシンジから逃げることを忘れ、涙を流しながら硬直するレイ、

「いや、、こ、、こないで、、」

「残念だけど、、ダメだね、、」

「いやぁ、、碇君、、た、、たすけて、、、、」

「僕は碇 シンジじゃない、、、、、

僕は人類の歴史を表現し凝縮した物体だよ、、、

だから、狂気、背徳、そんな人間性を一気に表現してるだけなんだよ、、」

シンジはレイを一気に押し倒す、

そして、乱暴にレイの服を破きはじめる、

「そして、狂気の果てにある純粋な白い無から、未来を創造するんだ、、、、」

 

「いやぁぁぁぁぁぁあ!」

レイがやっと叫んだ瞬間、、

シンジは無表情に、事務的に、、レイを犯し始めた、、

「綾波、、僕は碇 シンジではない、、、

僕は、人類の歴史を一気に体験しなければならない、、、狂人なんだよ、

でも、同時に、未来を指し示す人間でもあるんだよ、、

神様ですら殺し、母体である地球を破壊しても資本主義に拘る人間達を

代表しなければならない、、、、そんな生物なんだよ、

だから、、、、この世界の哀しみ、憎しみ、残酷さ、、醜さ、愚かさ、、、

全てを、三毒五悪を嫌というほど経験しなければならないんだ、、、

その結果、、四諦を極め、八正道へと進み、、

心無罫礙を得て、、、、、

遠離一切顛倒夢想を進み、、、

究境涅槃へと、、、、」

 

シンジは何か独り言を呟いていた、、、

だが、信じられない程の腕力で、レイを殴り、恐怖を与えながら犯し続ける、

レイの泣き叫ぶ声など、まったく気にせずに、、

ひたすら、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ!、、、、げぇ、がぁ、、、、、」

アスカは一気に胃液を吐き出す、

リツコの言葉に、、その現場を想像した結果、

アスカは強烈な嘔吐感を感じた、

「うげぇ、、げぇ、、、げっ、、」

必死に口を押さえても、痙攣する胃と背中を走りまくる悪寒を止める事はできなかった、、

「気持ち悪いでしょアスカ、」

リツコは不気味な笑い声を浮かべる、

「自分の母親を殺した相手に、貴方は抱かれていたのよ、、

自分の友達を散々犯した男に、貴方はキスをしていたのよ、、

どう、、、気持ち悪くて、、自殺したくなるでしょ、、

はは、、あははぁ、、あはははは、、、」

リツコの悪魔的な笑い声が暗闇の洞窟に響く、

アスカには既にそんな笑い声など、どうでもよかった、、

呆然と暗闇を見つめるケンスケ、トウジは、

リツコの笑い声と、押さえられない嘔吐感に翻弄されるアスカ、

その2人を眺めながら、地獄が生まれた瞬間とはこんな感じだったのだろう、

そう思っていた、、

だが、リツコは発狂した様に笑いながら、事実を叫ぶ、

「あははは、アスカ、、どう、この事実、、

たまらないでしょ、ずっと自分が愛してた男が、

自分の母親を殺したのよ、貴方の運命も性格も、未来も、

全てを破壊したのよ、、本来なら経験するであろう青春も、

女としての幸せも、体も、、全て破壊されたのよ、、

シンジ君に、、あなたが世界で唯一信じていた人物が、、

貴方の未来を根底から壊したのよ、、

おかしいでしょ、、

自分の愚かさが、、

自分の体の汚さが、

自分の心の、、、、、、、、、あっ、」

 

笑いながら話すリツコの叫びが、小さく鳴った、

「はぁ、、はっ、、、、はぁぁ、、は、、はぁ、、」

肩で息をしながら、アスカは握り締めた銃を片手に、

一発の弾丸を発射した、

その弾丸が、リツコの額を打ちぬいた、

そして、狂人は暗闇に倒れた、、

「はっ、、はは、、、あははははは、、、あはははぁぁ、、」

アスカは笑いながら自分の右目に銃口を向ける、

そして、なんの躊躇いもなく、引鉄を引いた、、

冷たい乾いた鉄心の音が闇に響いた、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは洞窟の入り口にさしかかっていた、

(思い出した、、、、、、僕はアスカを愛してたんだ、、、

全てを、思い出した、、、、、

何故、、母さんを殺したのか、、キョウコさんを殺したのか、、

レイを犯したのか、、、、、、

全て、、、、、世界を始まりに戻す為だったんだ、、、、、、)

シンジは傷だらけの体を引きずる、

腕を押さえながら、脚を引きずりながら、必死に歩く、

アスカが待っているはずの、洞窟に向かって、、

レイとの戦闘を終え、過去の記憶が完全に戻ったシンジは、、

アスカに遭い、さらに、その後の目的を果たす為、

歩き続ける、、、

(そうだ、、あとは、、アスカだけだ、、、

アスカを、、アスカを僕の手で、、殺さなければ、、

アスカを殺さないと、、

あの時の約束を果たさなければ、、、

二度と取り返しがつかないんだ、、、、、、)

 

あの時の約束、、

シンジは7年前に交した約束を思い出していた、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日が沈み、暗闇だけが残った部屋で、

レイはシンジの姿を呆然と見ていた、

自分を無表情で犯し続けるシンジ、、

哀しみも、優しさも、温もりも、冷酷さも、何も感じない、、

行為として犯しているシンジを、、

真っ赤な涙が枯れた瞳で、レイは眺めていた、、

シンジは愛情を持って犯していない、

性欲が支配してるわけでもない、

ただ、単純に、自分を物体として捕らえてるだけだ、

当然の行為の様に、空気を吸う事と同じ感覚で、、

レイを犯していることを次第に理解していた、

そして、愛情も、性欲も、支配欲も、何も存在しない、

そんなレイプが最も傷つく事も、、理解していた、、

 

そして、レイは悟った、、

碇 シンジが自分の人生を破壊した事を、

もう二度と、普通の幸せを求める事ができない事を、

碇 シンジを殺さななければ、、、

自分は生きてる存在が無いって事を、、

 

 

 

 

 

「どうだい、物体として扱われた気分は?」

シンジは表情を捨てたまま話す、

「、、、、、、、、、、、、、、、、、最悪ね、」

「そうだろ、いやぁ、そう思ってもらえて嬉しいよ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、アタシは、嬉しくないけどね、」

「そう、じゃぁ、自殺しないかい?なんなら今すぐ殺してあげてもいいけど、」

ナイフを握り締め、自分の足元に人形の様に横たわるレイを見下ろす、

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、遠慮しとくわ、」

うつ伏せのまま、レイは小さくつぶやく、

本当は自殺でも他殺でもどっちでもよかったレイだが、

窓から身を投げ出す感覚を知りたくて、シンジの誘いを断った、

「でも、死にたい気分だろ?でも、人間はこんな状況を好むのだろ?

人間は大勢の生物を当然の様に殺した、

大勢の植物を絶滅させた、さらに同胞ですら当然の様に残酷に殺す、

そして、地球の層まで破壊した、

自分たちが欲望を満たすためにね、

そんな生物に僕の力を与えたくないよ、

僕の力を受け取るには、人間はあまりにも愚かな生物すぎる、

だから、、、、だから、、、」

 

 

「だから、善悪のバランスが崩れ、自我崩壊を起した人間でなければ、

自分の力を与えられないのか、」

後ろからある人物の声がした、

レイは第3者の突然の声にも驚きはしなかった、

当然シンジも、、、

 

「母を殺し、

隣人を殺し、

自分の愛した女性を犯し、殺害する、

そんな残酷な経験をした、狂人、

すなわち100%純粋さに支配された狂人にしか力を与えられないのか、」

シンジはその第3者の言葉に嬉しそうに答える、

「はは、そうだよ、

でも、、でも、、、なんか、この碇 シンジって少年はまだ壊れないなぁ、

肉親殺し、隣人殺し、恋人を犯しても、結構この少年は狂わないなぁ、」

狂笑を浮かべてるシンジ、いやエヴァンゲリオンは不思議そうに笑う、

「あぁ、、、、、シンジにはまだ本当に好きな少女が残っているからな、」

第3者は冷静に、低い声で答える、

「えっ?レイって子じゃないの?この物体が恋人じゃぁ、、」

「いや、、、シンジが心から愛してる子は、、、、アスカだけだ、」

シンジは多少不機嫌そうな表情を浮かべる、

そして、瞳を細めながら苦笑を浮かべる、

「そうか、、、解ったぞ、、、遺伝子操作をしたんだ、この少年に、、、

はは、、可哀想だな、この綾波って物体は、

本当は愛されてはいないのに、、、俺に犯されて、

しかも、贋物の愛の為に利用されてただけだなんて、

はっ、、はは、、、あははははははは、、」

腹を抱えて笑うシンジ、、

そのシンジを無言で睨む碇 ゲンドウ、

その間にうつ伏せになっている綾波 レイ、

世界でも最も不思議な光景だった、、、、、、、、、

 

第十九話へ続

 



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