「人間だらけ、、、、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“この世界の終わりを想像してみよう、”

そんな質問を子供達にした事がある、

世界の終わりは、何を意味するのか、

世界が終わることは人間が終わることなのか、

生物が全て死に絶えても、世界は続くのか、、

そんな事を質問した事がある、

そして、もし終わる時、

自分はどんな運命を辿るのか、、

想像してみよう、、

そんな会話をした事がある、、

 

「子供達は、、、、、なんて答えたの?」

 

子供達の答えは、、、、、

自分が終わった時が世界の終わり、

そう答える子供ばかりだった、、

つまり、自分の存在が世界の中心であり、

自分の生死が世界の生死である、

そういった志向が強い答えだった、

 

「つまり、、自分の世界と他人の世界は共有できないって事?」

そうだ、、

我々は欲望を持って生まれる、、幸か不幸か解らぬが、

そして、その欲望の根源は、自分の遺伝子を未来に残す事だ、

性欲、食欲、睡眠欲、物質欲、自己顕示欲、征服支配欲、、、

全ての欲は遺伝子を未来へ、他の遺伝子より有利に継承していく為だ、、

我々は欲からは逃れられない、、

 

「それが、どうかしたの?」

 

ところが、人類は欲を制限することを美徳としてきた、

神を作り、悪魔を作り、楽園を地獄を、戒律を経典を、

欲望をコントロールする事が、より良い世界を導くと志向してきた、

だが、そんな表向きの美徳を利用し、人類は殺戮を繰り返してきた、

残酷極まりない、誰もが目を背ける方法で、、、、

人種差別、民族紛争、宗教戦争、、、

悲惨という文字を無意味化するほどの凄惨さを持って、

人類は人間同士で殺し続けた、

 

「そんな悲しいことばかりじゃないわ、、、、歴史は、」

 

そうだ、、誰もがそう思い、人生に楽しみを見出そうとした、

そして生まれたものが、、、、資本主義経済と呼ばれる、、真の地獄だった、

神や悪魔を無意味化する事で、新たな信仰対象として生まれた資本主義、

金銭を崇拝する信者達は、使徒が数百年やって成し遂げた行為を、

数ヶ月で行っていき、世界中を金銭崇拝者で染めて行った、

だが、それだけでは済まなかった、

信者どもは、金銭の力で殺戮兵器を大量に生み出し、

本来人間が犯してはならない、この地球の生命に関る領域まで踏み込んだ、

ダイオキシン、フロンガス、二酸化酸素、、、

余りにも多くの有害物質を世界中にばら撒き、地球自体を自殺に追い込んだ、

地球が蒼かったのは昔の話し、、、

今では灰色に覆われた死の星になってしまった、

それに気がついた資本主義の豚どもは、必死にシェルターを買い漁った、

それだけじゃなく、地球自体を科学の力で人間が制御できるコロナに変え様とした、

愚かな話しだ、、、、

 

「生物は、、、皆愚かなのよ、、、、」

 

いや、人間だけだろう。

現に同族を欲望の為だけで平気で殺すのは、人間だけだ、

コンピューターゲームと現実の区別がつかない愚かな子供達は、

必死に妄想の中で恋愛を組みたてる、

そのシュミレーション通りに事が進まないと、

恋人を殺して、次の恋人を探す、、、

そんな子供達の未来を地球は否定する事に決めたのだよ、、

 

「それが、、、シンジなの、、、」

「そうだ、シンジの体に宿るエヴァンゲリオンはもうすぐ起動する。

あのエヴァ石は箱舟にすぎないのだよ、」

アスカの側には、碇 ゲンドウが立っていた、

「箱舟?」

だが、アスカは不思議に思う事無く、死んだはずのゲンドウと会話をしていた、

「そうだ。エヴァンゲリオンが起動するには、エヴァを宿した人間の精神が完全に崩壊する必要がある。心と体のバランスだけではなく、善悪、生死、全てのバランスが崩れた瞬間、狂人になった瞬間にエヴァンゲリオンは起動する、、」

「その為に、、、、おばさんも、ママも、レイも殺されたわけ、、、

そして、、、、アタシも、、、、、殺されるわけ?」

 

アスカは既に自分一人では立っていられなかった、

仰向けで闇の中、夢を見ている様な瞳で、ただ闇を見ていた、

側にはリツコの遺体があった、

アスカが撃った額からは綺麗な血が一筋流れていた、

ケンスケとトウジも、、、誰かに撃たれたのだろう、、

側に遺体となって横たわっていた、

誰が、、、、、

もうアスカにはどうでも良い事だった、、

もう、アスカが望んでいる事は、

シンジに殺される事だけだった、、、

「そうだ、、、、君を殺した瞬間、シンジはエヴァンゲリオンと同化できるのだ、」

暗闇に立つ、碇 ゲンドウはそう呟いた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは暗い洞窟の中を必死に歩く、

激痛を感じながらも、必死に歩く、、

そして、思い出していた、

7年前の、あの時の出来事を、、、

 

「うわぁぁぁ、、がぁぁ、、はがぁ、、がぁ、、、わぁぁあああ!」

レイはその場で何度も痙攣を繰り返す、

自分の過去を呼び起したわけではないが、

体中から涌き出る不快感に、信じられない程の痙攣を繰り返す、

公害汚染された水を飲んだ猫の様に痙攣を繰り返すレイを、

シンジとゲンドウは冷静に眺めていた、、、

「どうだい、お前達人間の科学力とやらの結果が、これだぜ、」

痙攣を繰り返すレイを面白そうに、馬鹿にした目でシンジが見下ろす、

「誰にでもミスはある、」

「そのミスで、お前は妻を失い、隣人すら失い、自分達の未来を背負わせた少女は、

この通り発狂寸前だぜ、、、、、おまけに、自分の息子が引き金だなんてな、、、

まったく資本主義の豚も科学全能主義の蛆虫も、どうして自分達の愚かさに気がつく事ができないんだろうな、」

「解っている、、、人類の進歩、文化の発展が生物としての本能を無くし、退化させている事も、差別や迫害を助長してる事も、、、、解っている、、、、」

「解っている?笑わせるなよ!

それでも、俺の体に遺伝子操作して、綾波という仮想恋人まで作って、

俺の特殊な細胞能力を摘出しようとしたんだろうが!

それが、この結果だ!

徐々に破壊されるべき精神バランスが一気に暴走して、

残酷さだけが表面化した結果がこれだよ!」

叫ぶシンジ、、

その叫びはエヴァンゲリオンの叫びなのか、

それとも、シンジ自体の叫びなのか、、

その言葉は誰が発したものなのか、誰にも解らない、、

勿論、ゲンドウにも解らなかった、、

「人間がバランスを崩すのは、何時も突発だ、

徐々に狂って行くことなど稀なケースだけだ、、」

「はは、、言い訳するなよ、オヤジ、

勝手に石版を解釈し、その解読法を誤っただけでなく、

お前達が自然の法則を破ってまで事を進めた結果がこれだ、、、

もはや本来のエヴァンゲリオンが起動することはない、、、

もう人類と地球は絶滅する以外の道は残されていない、、」

吐き捨てる様にシンジが云う、

「そうか、、、絶滅するのか、、、、」

ゲンドウも小さく呟く、

「あぁ、、だが、絶滅が終わりではないぜ、」

「、、、、、、、、、、、、本当か、」

多少ゲンドウの表情が変わる、

「事と次第によっては、絶滅が再生の瞬間になる事がある、

発狂した人間が、最も純粋な生物に為る様にね、」

「どうすれば、、、、」

「この少年にもっと、更なる世界中の哀しみを与える事だ、

この少年の純粋さ、優しさが精神を占める率は大きい、

通常の人間よりも、はるかに大きい、、

確かに今、俺が少年の心と体を支配している、

だが、通常の人間なら完全に発狂しているはずなのに、

この少年の心は精神崩壊寸前だが、、狂人にはならない、、、」

「シンジが真に崩壊し、狂人に達すれば、、」

「あぁ、その時、本来のエヴァンゲリオンが発動する事はないが、

、、、、、、、、、、箱舟に人類が乗ることはできる。」

「箱舟?」

「そうだ、、、全てを始まりに戻す、、、、箱舟がこの地球の何処かに存在する、」

「それを発見すれば、、、、」

「あぁ、人類は進化することは無い。だが、退化する事でさらなる未来を持つ事ができる。」

「どうすれば、、、」

「そんな事自分で考えろよ!

俺はお前達のくだらない遺伝子操作の後始末をしなければならない、

こいつの体の遺伝子を元にもどさないとな、、、

少なくとも数年はかかるだろうがな、、、

じゃぁな、また遭えるかどうか解らないが、

それまで地球と人類が消滅して無い事を祈ってるよ!」

 

 

 

そう告げたシンジはその場に倒れ込んだ、、、

そして、そのまま動かなくなっていた、、

 

「あはぁ、、、ははぁ、、、はは、、、」

やっと痙攣が治まったレイが今度は一人、笑い続けている、、

「レイ、、」

ゲンドウが手を差し伸べ様とした瞬間、

「触らないで!」

強烈に拒絶する、

憎しみだけが紅い瞳に宿っている、

その瞳でゲンドウを睨み続ける、、

深い、深い憎しみ、憎悪を持って睨む、

「レイ、、、、」

憎しみの余りレイの方が発狂したのでは、そう思える程の狂気に満ちた瞳で、

ゲンドウとシンジを睨みつける、そして、睨みながら、狂笑を繰り返していた、、

暫くそんな行為を続けていたレイだが、ふと、行動を全て止め、

小さく呟いた、、、

「、、、、、、アタシ、、賭けてみる、、」

「何をだね、」

「ここ五階よね、、五階から飛び降りて、、生きてられるかしら、」

「さぁな、、、」

「もし、、、生きてたら、、、絶対にアンタ達に復讐してやる、、、

本当は、、もう自殺するしかないって思ってたんだけど、、

絶対に、、絶対に、、、絶対に許さない、、、、アンタ達を、、、」

「あぁ、、是非、私達を殺しに来てくれ、、、、

待ってるよ、、、レイ、」

そうゲンドウが呟いた数秒後、

レイは全裸のまま、体を窓から投げ出した、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その後、、、、

「その後、、、どうしたの?」

アスカが呟いた、

「私は、、、もはや生きる気力を失っていた、

たとえ、その場で人類の未来を示唆されようが、

箱舟がどこにあろうが、

シンジが狂人になろうが、、

もはや、、、、どうでもよかった、、

私は自分達の愚かさを呪った、

自分では資本主義の連中とは違う、崇高な目的の元で動いてる、そう思っていたはずが、

知らぬ間に目的の為にあらゆる人間や自然を破壊していた事に、、

その結果が、、、ユイを失い、、キョウコ君も失い、、レイという生物を発狂させてしまった、

人類の未来を優先するがあまり、、、私は取り返しのつかない行為をしてしまった、、

そんな自分が許せない、、、、、絶対に許せない、、、

そんな気持ちと同時に、生きて行く力など残っていなかった、、

私はレイがどうなったか、知りたくもなく、知ろうとも思わなかった、、

ただ、、、ユイやキョウコ君、シンジの側で生物としての終わりを迎えたかった、、

そして、、、ガスの栓を全開にし、、、数分後、、、最後のタバコを吸った、、、」

ゲンドウは暗闇の中、昨日の出来事の様に思い出し、話していた、、

「それが、あの爆発なわけね、、、、」

「そうだ、、だが、神は私達が行った行為を、消滅という形では許してはくれなかった、、

私が再び目を開けた時、私の側には赤木親子の姿があった、、

赤木博士はクローニングの研究で第一人者であった事もあり、

私の脳以外は全てクローンで再生し、遺体から脳だけを摂取し、私を再び蘇らせた、、、、

私は奇跡的にあの爆発の中で身体はバラバラになったが、脳幹と頭部は無傷だった、

それゆえ、別の身体を持って再生することができたのだ、、

だが、、望ましい事ではなかった、寧ろ、死ねなかった事を後悔した、、

神ではなく、人類は私に最後まで、自分の責任を取らせる為に、、、

再び私をこの世に蘇らせたのだ、、」

「そう、、、でも、どうして、シンジは無傷だったの?」

「シンジは既に体がエヴァと共有している状態であった為、ATフィールドと呼ばれる

壁が、爆風や炎から彼の体を守ったのだ、、、、、、」

「、、、、、、その時、シンジも一緒に死んでれば、良かったのにね、、、」

苦笑を浮かべながら、アスカは微かに笑った、、

「そうかもしれぬ、、、

だが、シンジはその時の記憶を無くしていた、、

その為、マンションから飛び降り、血だらけになりながら逃走するレイが

犯人として扱われる様になり、シンジも君もそれを信じた、、

だが、事実は、、、、、、」

そこでゲンドウの言葉は途切れる、

アスカも敢えてその続きを聞かない、

もう、真実も偽りも2人にとっては無意味な事だった、

そして暫くの無言の後、アスカが小さく呟いた、

「レイは?レイはどうなったの?」

「レイは逃走後、桜木に保護された。

私もユイもキョウコ君も死んだ直後、彼はレイを監禁した、、、

全ての真実を知らない彼は、レイからエヴァ細胞が得られる、

そう信じて自分の研究を進めて行った、、、、

その行為が、資本主義の連中を喜ばせる結果にはなったのだが、、

結局、エヴァ細胞を完全にする事は、、、不可能だった、、」

「それで、Pudding計画なんて推奨してたんだ、、」

「そうだ。

一方で私は、自分たちの行為の後始末をするための計画を練り、

着々と計画を進めて行った、、、そして、、ネルフを誕生させたのだ、、」

 

全てがつい此間の様な気がする、

元々時間なんて概念は存在していなかったわけだが、

今は特にそう感じる、、、

アスカは何故だか解らないが、湧き出る可笑しさを押さえる事が出来なかった、

「ふふ、、、ふふふぁ、、あはははは、、

ふ〜ん、、、あはは、、、、、そんな事実だったとわね、、、、

ふふ、、、でも、、、もうどうでもいい事だわ、、、

私には、、、もう、、関係ないしね、、ふふ、、、ふふふ、、、あはははは!!」

仰向けになりながら、泣きながら、アスカは最後の涙と笑いを体験していた、、

「そうか、、だが、一言だけ謝罪させて欲しいのだが、、」

「勝手に謝罪すれば、、もう何も変わらない訳だし、、、」

「そうだな、、、しかし、、アスカ君、、

すまなかった、、、、、、っつ!!!」

その瞬間、

ゲンドウの額に弾丸がのめり込む、

頭部が破裂し、瞬時に脳が吹き飛ぶ、、

ゲンドウはアスカの側に倒れ込む、、

その姿も、アスカにとっては何故かとてもおかしかった、、

そして、、

「待ってたわよ、、シンジ、、、」

闇の向こうにいるはずの人物にアスカが話し掛ける、

「アスカ、、約束通り、帰ってきたよ、、、」

暗闇の中、シンジが傷だらけの体を引きずって、アスカの側に寄る、

「約束の、、、キスをしようよ、、」

「うん、、、、、、」

2人は、何も必要としない、何の意味も持たないキスを、

永遠と思われる程長く続けた、、、、、、、、

 

第二十話へ続く

 



Rudyさんの部屋に戻る/投稿小説の部屋に戻る
inserted by FC2 system