Star Children 第一部

「そして、宇宙(おおぞら)に / Fly me to the stars」





第二話


  「魂を継ぐもの」






「どうだ、碇。帰りにウチに寄っていかんか。」
「あら、よろしいんですの。冬月先生。」
「ああ。ちょっと折入って話したいことがあるんでな。」
「では、お邪魔するとしましょうか、アナタ。」
「ああ。そうしよう。」

打ち上げが行われたカリマンタン島からの帰りの飛行機の中、であった。
飛行機は今、関西国際空港に到着しゲートが接続するのを待っていた。
正確には新関西国際空港と言うべきか。
先代の関空があった場所に、セカンドインパクト後に再度作られた人工島に、それはあった。
関空から京都まではリニア特急「はるか」でノンストップ20分たらずである。
第二東京に行くためにはどちらにせよ京都で乗り換える必要があった。

「ちょっと歩かんか、碇。」
「ええ、いいですよ、先生。」

新京都駅は五条通りの地下にあった。
冬月の自宅には、ここからバスに乗り変えるのである。
が、彼らはバスには乗らず、雑踏の中を歩きはじめた。
ほどなく、新京極の繁華街にたどり着いた。

「新京極か、久しぶりだな。」
「京都にいた、あの頃以来か、碇、ここに来るのは。」
「ああ、そうなるな。この街はあまりにもユイとの思い出が多かったのでね。
 あれ以来、来る気がしなかった。」
「あらやだ。このヒトったら、そうでしたの。」

「この街も変わったよ。いや、戻ったと言うべきか。」
「学生の頃を思い出しますわね。」
「ああ、そうだな。」
「あの頃もよく二人で歩きましたわね。」
「ああ。」
「実験を抜け出して、映画を見に行ったり。」
「ほーう。それは初耳だな。」
「この人ったら、デートの時に手も握ってくれなかったんですよ。
 会話もいつも私ばっかしゃべっていて。
 返事も『ああ』とか『うん』しか言わないし。」
「いや、あれは、だな、その...。」
「そう言えば、あれも今ぐらいの季節でしたわね。二人で加茂川を歩いていて..」
「ユイ、その先は..」
「いきなり..」
「言わな..」
「初めて..」
「ユイ!」

いきなりの大声に回りの人間がびっくりして彼らを見た。
例によって、眼鏡の位置をなおして、何も問題ないふりをする。

「あ、いや、何でもない。気にしないでくれ。」

その横ではユイがキャラキャラ笑っている。

「まあ、いいわ。この話は今度にしますわ、冬月先生。」
「ユイ!」

(相変わらずだな。)

「さて、そろそろいいだろう。気づいているか、碇。」
「あいつらのことですか。」
「そうだ。何者だか知っているか?」
「いや、全く。」
「ウチの周りも最近になって見張られましたのよ。政府機関の連中でしょうか?」
「いや、違う。実はわざわざここまで来たのはその話が目的でね。」
「あら。じゃあ、さっきのはまずかったかしら。目立っちゃったわね。」
「関係ないさ、ユイ。どうせ最初から監視されているのなら。」
「ああ。そうだ。歩きながら話そう。」

「先生は彼らの正体をご存じなんですの。」
「ああ知っている。もっとも、つい最近のことなんだがね。
 連中の組織の名は『ハイリッヘ・ノイモント』。
 最近、ヨーロッパを中心に力をつけてきた政治結社だよ。
 既に欧州議会と北米連合はやつらに押さえられている。
 他の地域もどうやら時間の問題だな。」
「ほう。」
「碇。驚かないのか?」
「ああ。いずれまた、それに類する組織が出てくる事は予測していた。
 しかし、やりたいのなら勝手にやらせればいい。
 今となってはもう彼らに人類を変える力は無い。」
「そう思うか?
 彼らの目的は単に国連を支配して政治的に人類を支配するだけではなさそうだぞ。
 どうやらフォースインパクトを起こしたいらしいな。
 主体は仕事にあぶれた軍人と商人。
 インパクトで神を否定されたと考える狂信的な宗教家もからんでいるな。」
「ヴァチカンも動いてますの?」
「ああ、恐らくはな。法王庁は公式には否定しているようだが。
 それにかつてのゼーレの科学者達も一枚かんでいるという話だ。」
「一度進められた時計の針は、元に戻せない事がわからないらしいな。」
「ああ。どうやらそうらしい。
 だが、事がフォースインパクトとなると話は厄介だぞ、碇。」
「しかし、フォースインパクトは起こることは絶対に有り得ない。
 地上にはもうエヴァも、リリスもいないのだからな。」
「ああ。地上にはな。」

ここで、意味ありげに間を置く。

「どういうことですの?」
「そうか。君たちは聞いていなかったのだな。」
「何をですの、先生。」
「2年前のことだ。ニューメキシコの天体観測所がアレを発見した。」
「アレ?」
「ああ。ことが大き過ぎて公にはされなかったらしい。
 たまたま太陽の黒点異常を観測中だったのだそうだ。
 その時に、アレが横切って行くのが見えたそうだ。あの、黒き月がな。」
「黒き月...か。」
「ほんとですの、先生。」
「ああ。私もつい最近知ったばかりだがね。
 一部の学者たちを除いてずっと極秘にされていたらしい。」
「それで?」
「そういうことだ。狙いはわからんが、何か『月』と関連があるのは確かだろう。」
「Heilige Neumond。英語ならHoly Moon。すなわち『聖なる新月』ね。」
「しかし、『月』をどうしようというのだ。」
「さあな。そこまではわからんよ。
 それともう一つ、重要な情報がある。
 O計画にも奴等は食い込んでいるようだな。それもかなり深い所まで。」
「あなた! シンジ達は...。」

ユイは動揺を隠せずに、声を少しだけ高めた。
しかし、ゲンドウは顔色一つ変えずに先を続けた。

「そうか。だが、それでも事情は変わらんよ。
 例え『月』が彼らの手に落ちたとしても、な。」
「ああ、そうだ。私も最初はそう思った。
 だがな、碇。成算も無しに行動を起こすような奴等では無いだろう。
 何か我々の知らないことがあるのかもしれないぞ。」
「そうかもな。彼らについて、わかっていることは?」
「今のところ、主導しているメンバーの4人の名前だけだ。
 ユーリー・ボリソフ。
 ミシェル・ド・ブラン。
 ラフィニア・ロンバルド。
 最後に、ガビー・ロックフォード。」
「そうそうたる顔ぶれですわね。」
「ロシアン・マフィアに、フランスの軍人貴族。
 イタリアの至宝に、アメリカ最後の財閥当主か。
 だが、彼らをつなぐ縦の糸がよくわからないな。」
「ああ。もう一人、首脳がいるらしいのだが、まだわかっていない。
 どうも、そいつが真の黒幕、という気がするのだがな。」
「冬月。これは全部お前が調べたのか?」
「いや。全て青葉君からの情報だよ。
 彼の所にも接触してきたのだそうだ。勿論、即座に断ったそうだ。
 だがどうも各地の軍の上層部はもう押さえられているようだな。」
「そうか。彼は今は極東司令部にいるのだったな。」
「ああ。今のところはこのあたりは大丈夫な筈だ。
 だが、ネズミが入り込むのは防ぐことはできんからな。」
「ゴキブリとネズミはどこにでもいるからな。」
「どうだ、碇。そろそろ現役に復帰せんか。」
「私は現役の喫茶店のマスターだよ。
 ユイがいて、レイがいる。
 今はこれでいい。」
「そうか?
 ああ、ちょうどバスが来たな。続きは後で話そう。」





翌日、第2東京へ帰るリニアの中でも、二人はこの話はしなかった。
駅につくと、まず車で近所の鈴原家に、二人の娘を迎えに行った。

「レイ、いい子にしていた?」
「うん、ママ。レイ、いい子だったよ。」
「アイちゃんも、いい子でちたかー。」
「うん、おじいちゃん。」

「ヒカリさん、ほんとにありがとうね。」
「いえ、おばさま。二人ともほんとにいい子ですね。
 私たちも、こんな子が欲しいわ、ってトウジと話してたんですよ。」
「お、もう帰っちまうんか。」
「トウジおじちゃん、さようなら。」
「バイバイ、おじちゃん。ペンペンもバイバイー。」
「クェ。」





二人がようやくこの話を始めたのは、夕食も終わって子供たちが寝たあとだった。

「いったい、どういうことなんでしょうねぇ。」
「わからん。何にせよ、情報が少な過ぎる。」
「集めなければ、いつまでたっても少ないままですよ、あなた。」
「ああ。だが、私は動く気はない。もう、な。」
「冬月先生に任せっきり、ってわけですか、あなた。」
「冬月は心配性だからな。こういう事には向いている。
 それに奴も色々考えることがあった方が、ボケないでいいさ。」
「あなた!」
「いや、とにかくだ。私が出ていってどうなるという事態ではない。
 むしろ、かえって事態が紛糾するだけだろう。
 それに私は人類の未来に悲観はしてないよ、ユイ。
 たとえ一部の者が暴走しても、人はそれを修正し正しい道を選んできた。」
「だからといって、次も大丈夫だという保証は無いわ。
 フォースインパクトを起こして、それで終わりだったらどうするの?」
「その時は、その時だ。」

ここで、ゲンドウは食卓から立ち上がった。
洗い物をしているユイの方にそっと歩み寄る。

「しかし、何もわからずに影でひっそりと殺されるのは御免だからな。
 それなりの防護手段は取るつもりだ。
 ユイが心配する必要はない。」
「あなた。」

「シンジ達は大丈夫かしら。」
「心配はない。昆崙の司令は信頼できる人物だ。」
「あら、ご存じですの。」
「ああ。昔、ネルフで一緒に仕事をしたことがある。
 キレる男だった。」
「そう。あなたがそういうのなら、大丈夫でしょうね。」





半月後、彼らは再び京都の冬月邱を訪問した。
直接会って最新の情報を手に入れるためである。
電話は明らかに盗聴されており、他の手段もあてにはできなかった。

「どうなんだ、冬月。」
「ああ、状況はあまり変わっとらんよ。
 水面下では色々動いているようだが、表立って変化はない。
 連中も慎重なようだな。
 が、何か事を起こすとなれば、まず我々が狙われる。
 それは間違い無いのではないかな。
 それも、そう遠い日の事ではないようだな。」
「何か掴んだのか。」
「ああ。『月』の軌道をマヤ君に計算してもらった。
 一年後に再び地球に接近するという話だ。
 正確なデータが得られないので日付までは特定できなかったがな。」
「一年か。もうあまり時間は残されていないな。」
「だが、しかし、フォースインパクトで何をするというのだ?
 そこのところが今一つ、わからんのだ。」
「人類補完計画。そうではないのですか?」
「今更、何を補完するのかね。
 むしろ彼らの組織構成からみれば、表向きのプロパガンダ通り、
 『真の神の御国』の復活、ということになるんだろうが、
 本気でそんなものを信じているとは思えん。
 大多数の信者達はともかくとして、少なくとも首脳部の連中はな。」
「お金のため、ではないでしょうか。」
「ああ、それも考えた。
 たしかにあの4人を結びつけているのは金と権力、だろう。
 だが、どうも気にかかるのだよ。残りの一人がな。」
「そいつが、真のブレインだということか。」
「ああ、そうだ。」
「ふむ。だが、連中の目的をここで議論していても始まらんな。
 それよりも今大事なのは連中に何ができるのか、だ。
 そしてどうすればそれを妨げることができるか、ではないか?
 彼らは『月』を利用できる。では、他に何を持っている?」
「何も。だが、彼らはできる、と考えているようだな。」
「初号機は、リリスは今、どこにいる?ユイ。」
「さあ。うんと遠くにいるのはわかるのですけれど、どこでしょうね。」
「こっそり地球に戻ってくる軌道ではないのだな。」
「ええ。それは間違い無いわね。」
「なら、いい。」
「初号機はそれでいいが、だからと言ってやつらにエヴァが無いとは言えんぞ。」
「どういうことですの?」
「アダムの細胞。使徒のサンプル。フィフスのダミープラグ。
 すべて回収されたことになっているが、取りこぼしがあったのかも。」
「しかし、リリスは複製できん。」
「ああ。それはそうだが...。」
「では心配しても仕方がない。
 もし見落としがあるのなら、いずれ全てがわかる時がくる。」
「ああ。ところで、シンジ君達は大丈夫なのかな。
 連中とO計画とのつながりもわからないのだが。
 金星に何かある、という記述、死海文書にはなかったと思うが?」
「ああ。私も記憶にはないな。
 だが、我々が知りえたのが全てとは限らんからな。
 シンジ達に関して言えば、今ごろはもう『昆崙』に着いている頃だ。
 奴等が手を出すにはちょっと遠いな。」
「関係者に連中の手の者がまぎれ込んでいることは?」
「『昆崙』は大丈夫だ。司令はあの『シェン少佐』だよ、冬月。」
「ああ、彼か。なら大丈夫だろう。」
「宇宙開発を名目に、禁断のエヴァ・テクノロジを手に入れること。
 そのへんがO計画に彼らが関与した目的かもしれませんわね。」
「うむ。そうかも知れない。」
「宇宙ステーションも手に入れたかもしれないわね。
 他には何を手に入れたのかしらね。」
「さあな。」
「どうだ、碇。まだ動く気は無いのか。」
「ええ。身にかかる火の粉は振り払います。
 だが、それ以上のことはするつもりはありませんよ。
 多くの人間を傷つけ苦しめてしまった。もう充分でしょう。」
「だが、そのおかげで人類は救われた。」
「わたしの力ではない。シンジですよ。」
「もういいでしょう、冬月先生。
 もし本当に必要な時がくれば、この人は動きます。
 イヤと言っても私が動かして見せますから。」
「そうか。」
「だから、それまで、先生、お願いします。」
「いい加減、年寄りをこき使うのは勘弁してほしいものだな。」





ちょうどそのころ、そこから100万km以上離れた宇宙では、アマテラスUが昆崙との邂逅を果たしていた。

「アマテラスU艦長、惣流アスカ・ラングレーです。」
「副操縦士の碇シンジです。よろしくお願いします。」

艦橋で、二人は昆崙のスタッフと対面した。

「この遠征隊の司令を勤める、シェン・ツォリンだ。こちらこそよろしくな。」
「副官のリー・レイファです。よろしくね、アスカさん。」
「どうだ、美人だろう。」
「えっ。はぁ。」
(シンジ!何、見てんのよ!)
(べ、別にいいだろ、ちょっとぐらい。)
「ちょっと前までは、間違いなく半径100万km以内で一番の美人だった。
 今でも、変わらんとは思うがな。まだ独身だし。」
(シンジ、わかってるわね。)
(わ、わかってるよ、アスカ。)
(ちょっとでも色目を使ったらオシオキよ。)



続けてスタッフ全員の自己紹介が始まった。

「航法コンピュータ担当のロン.フェイいうネ。ついでに料理長も兼ねてるアルヨ。」
(作注:↑は広東なまりのきつい英語を喋ってると思って下さい。)
「中華4千年の食文化をこの航宙で堪能できるぞ。」
「まっかせなさい。毎日いやと言うほど食べさせてあげるヨ。」

奥の部屋にはパーティー料理が用意されているようだ。

「な、なんでこんな物があるのよ。ここは宇宙よ。非常識よ。」
「伝統あるネ。食は大切ね。昔から中国人、旅しても食に手、抜かない。
 宇宙食、だめ。栄養あるけど不味い。これ、だめ。力、でない。
 中華料理、美味くて身体によろし。医食同源。以食活人。」
「だ、だけど、どうやって料理するのよ。無重力で。」
「問題無いアル。けど、秘密アル。」

「通信主任のパイ・ツェロンです。」
「こいつはな、まだ18才。このチームで唯一君たちよりも年下なんだ。」
「へー。そうなんだ。」
「わが国期待のホープなんでな。君たちもかわいがってくれよ。」
「よろしくお願いします。シンジさん、アスカさん。」
(キャー。かっわいー。)
(ア、アスカ。よだれがでてるよ。)
(えっ。)
(冗談だよ。けど、最近ミサトさんに似てきたよ、アスカ。)
(ウソッ。ヤダ。)





あっという間に、二人とも最初からチームの一員だったように溶け込むことができた。

(よかったね、アスカ。みんな好い人達みたいだね。)
(ええ、そうね。でも、あのシェン司令って、どこかで見たことない?)
(うん。見た事は無いと思うけど。なんか懐かしいっていうのかな。)
(誰か、知ってる人に似てるのかな。)
(ああ、わかった。加持さんだ。どことなく加持さんににてるんだよ。)
(えー加持さん。全然顔が違うわよ。あんなに目が細く無かったしー。)
(顔じゃなくて、雰囲気だよ。)
(うーん。そうかなー。そうかもね。
 あとさあ、シンジ。司令とレイファさんの関係って、どう思う?)
(えっ、どうって?ただの司令と副官じゃないの?)
(んーもう、ほんとアンタってお子様ね。
 あれはどう見ても、できてるとは思わない?)
(んー。そうかな。そうかも知れないね。)
(そうかもって、アンタね。.....あ、これおいしい。
 いい、シンジ。この航宙で、中華の極意をマスターするのよ。)
(なんで僕が。たまにはアスカも....わかったよ。
 わかりました。マスターします。)
(よーっし。わっかればよろしい。) 



そうこうしてる間にも、『昆崙』は宇宙の暗闇を進んでいく。
一路、金星を目指して。





暗い会議室に一つ一つ明かりがともる。
円形に並べられた5つの机。
そこに人の姿が現れていく。
無論、実像ではなく、3次元ホログラフィック映像である。
5人目は、しかし、人の形をしていなかった。
黒いモノリス。例の『Sound Only』の字が見える。
音声も、イコライザーを通して加工してあった。
男とも女とも区別がつかない。

00 「彼らが『昆崙』に到達した、と言う報告を受けた。」
03 「計画通りだ。」
00 「そうだ。遂行に遅れは許されない。」
04 「『昆崙』に手の者を送り込めなかったのは痛いな。」
02 「アレは、中国のプロジェクトだったからね。」
00 「だがそれは問題ではない。彼らにはどうすることもできない。
    シナリオが進行するのを見ているだけだ。」
01 「ええ。『エンタープライズ』は問題ないわ。協力するそうよ。」
04 「『イワン雷帝』もだ。」
03 「『ワルキューレ』は完成が少し遅れるようだ。
    だが、計画には間に合わせる。」
00 「『E2』はどうだ。『月』には間に合うか。」
02 「なんとか、5体はいけるわ。」
00 「それだけあれば、当面は良い。あとは『月』の回収が問題だな。」

00 「ところで、碇ゲンドウに監視を放ったのは誰か?」
01 「私よ。何か問題でも?」
04 「寝た子を起こすようなことになるのではないかな?」
01 「我々の前任者は彼のせいで失敗した。
    危険要素は早めに取り除いておくのが最良の手段よ。」
03 「我々は彼らとは違う。彼らは老人だった。
    計画の遂行を第3者に依存し、獅子身中の虫を作ってしまった。
    エヴァも、アダムも、リリスも奴が持っていた。
    今の奴は何も持っていない。恐れる必要はない。」
01 「だけど、潜在的にあの男は危険だわ。」
00 「まあいい。この件は君に任せるとしよう。
    恐れる必要が無いのなら、仮に失敗しても影響は無い。
    逆に危険な男なら、取り除いておくにしくはない。」
02 「彼が危険な男で、なおかつ排除に失敗したら?」
00 「その時はまた改めて問題に取り組めば良い。
    しかし、それは取り立てて大きな問題ではない。
    今回は彼らはただ指をくわえて見ていることしかできないのだからな。
    自分達の息子が新世界のための生贄になるのを。」

『ブンッ』と音がして、全ての映像が消える。
部屋には一人の女性が残っていた。

「父よ。あなたは私に父親らしい事は一つもしてくれなかった。
 しかし、最後に一つ、すばらしいものを残してくた。感謝します。
 私は『遺産』を使って『神』になりましょう。
 あなた方『ゼーレ』の成しえなかった『人類の革新』のために。」

ガチャン
ドアが閉じられた。
今、その部屋にあるのは深い暗闇だけであった。








次話予告




『うーん。まだハードSFからは遠いかな。』

「せやな。どっちかっつーと、ポリチカルスリラー、って感じやな。」

「うん。私もそう思うわ。だいぶ話も動き出してきたけど、SFらしくはないわね。」

「少なくとも”ハード”やないな。魂があらへん。」
(それを言うなら、”ハート”だろ。)

『第1部はプロローグの続きみたいなもんだからね。
 一通り人物を出してから第2部で話を進めようと思ってるんだ。』

「ところで、このシリーズ。わいの見せ場はあるんやろな。もうやられ役はごめんやで。
 しばかれとうなかったら、きちっと活躍させるんやで。」

『わかってるって。次号ではまだ無理だけど、君は今後大活躍する予定だよ。』

「ねえねえ、私は?」

『うーん。君は普通の主婦を想定してるからな〜。なるべく善処してみます。』

「相田ケンスケ。相田ケンスケをお忘れなく。」

『......。ま、いっか。』



次回、第三話

「情報を制するものは」




「相田ケンスケ。相田ケンスケをお忘れなく。」





第三話を読む


目次に戻る


投稿の部屋に戻る
inserted by FC2 system