時は2年前の第壱高校入学式前日−−−−−

街中を一人の少年が歩いていた。
名前は若槻タツヤ。
明日の入学式でめでたく第壱高校の生徒になる少年である。
彼はこれから始まる学園生活に思いを馳せていた。

そしてそこへすれ違う様に少年と思われる人(少なくともタツヤは少年と認識していた)が現れた。
思わずハッとしてしまう様な横顔を見ながらタツヤはすれ違う。
どことなく幼さを残した様な顔、そして中性的な顔立ちと自分より低い身長から、年下の子だろうと勝手に推測する。
便宜上、以後その者を 『彼』 と呼称します。

ふと気が付くと足に何かが当たった。
「ハテ何かな?」 とタツヤは足元を見ると財布が落ちていた。
そう言えばと思いだし、さっき 『彼』 とすれ違った時に何か物音が聞こえた事を思い出した。

(ひょっとしたら今の人が落としたのかな? いや、多分そうに違いない)

そう結論着けると財布を拾う。
そしてタツヤは 『彼』 向かって言った。















「お兄さん、財布落としましたよ。」















タツヤは開口一番にその言葉が出た。
親切心からであり、タツヤには悪気は微塵も無かった。
誰が見てもそう思うだろうが、先程の 『彼』 にはそうは聞こえなかった。

ツカツカとタツヤの元へと近づいて行く。
『彼』 の表情は俯いている為に見る事は出来ない。
そして 『彼』 はタツヤの目の前で止まった。
次の瞬間、タツヤは信じられない体験をする。















バッチーン!!
「アタシは女だ!!!」
















タツヤは信じられない事実と想像を絶する痛みを経験したのだ。
周りに居た通行者達も同じであった。
『彼』 が女であったという事に驚愕し、ある者は呆然と立ち尽くす。
『彼』 いや 『彼女』 はタツヤから自分の財布をひったくると怒りながらその場を去って行った。
哀れタツヤはその場に固まったまま取り残されてしまった。
四月、季節は春だと言うのにその日は寒く、タツヤは翌日の入学式にカゼをひいて出席したと言う。

だがしかし、話はここで終わらない。
なんの因果か 『彼女』 とはその翌日の入学式の時に再会してしまったのだ。
そう、タツヤにとって今日の出来事は運命的な出逢いだった。
彼女との決して忘れられない出逢い−−−















―――――それが古川アユと若槻タツヤの初めての出逢い―――――






















大切な人への想い

第弐拾六話 過去の想いと今の想い











場所は保健室−−−−−
その部屋のベットに一人の女生徒が静かに眠っていた。

名前は須藤ミズホ。
彼女はこの保健室の常連さんだったのだ。
生まれつき体が弱く、しばしば病気や貧血などでココのお世話になっていた。

校医のマヤはそれを心配そうに看ている。
つい先程彼女は運び込まれたのだ。
彼女を連れて来たのは3年生の男と女、マヤはその二人の事は知っていた。
二人とも彼女の親しい友人、タツヤとミドリだった。
しばらくの間二人は彼女の傍に居たのだがタツヤはマヤの説得によりクラブ活動に戻り、ミドリは用事があり今はここに居ない。
今保健室にはマヤとミズホの二人だけだった。

「...ぅ...んん...」

さっきまで聞こえていた寝息が途切れ、彼女は覚醒する。
元々体力が無いのか、それとも回復しきっていないのか、その為に目覚める速度は遅かった。
そしてミズホは辺りを確認すると自分が何処に居るのかが分かった。


「大丈夫ミズホちゃん?」
「...マヤ先生...私...また...」
「軽い貧血よ、心配しないで。」
「ハイ...」


ミズホは 「またなの...」 と思い自己嫌悪に落ちる。
自分の体が弱い為に周りの人に迷惑を掛けるのが嫌なのだ。
そしてミズホの考えはいつも悪い方向へと自己完結してしまう。
マヤはそんなミズホの事を、彼女が入学してからずっと見て来たので、今何を考えているのか手に取る様に分かる。


「ミズホちゃん、何もアナタが悪いんじゃないわ。」
「でも...結局私の所為でみんなに迷惑を...」
「またいつもの悪い癖が始まったわね。
 そうやってネガティブに考えると、直るモノも直らないわよ。」
「ハイ...」


返事はするモノの、矢張り彼女の考えは悪い方向に向かっている様だった。
マヤはこのままではマズイと思い、切り札を出す事にした。


「若槻君だって絶対に迷惑だなんて思って無いわよ。」
「.........」
「好きな人がいる。
 それってとても素晴らしい事なのよ。
 その人の為を想うだけで頑張りが利くからね。
 だからアナタは彼の為に頑張って元気になりなさい。
 それがアナタに出来る事なんだから。」
「若槻君の為...」
「ええ、そうすれば彼は喜んでくれるわ。
 アナタの為に笑ってくれる。
 だから...ネ。」
「マヤ先生...ありがとう...」


ミズホにとってマヤは姉の様な存在だった。
何度も保健室のお世話になり、自分の体質の事でも親身になり相談に乗ってくれた。
いつしかいろいろな相談や悩み事を聞いてもらい、今の様な関係になったのだ。
その為マヤには隠し事が出来ず、自分の想い人の事まで話してしまったのである。

なんにしても、そのマヤのお陰でミズホは立ち直る事が出来た。










☆★☆★☆











「「「ありがとうございましたー!」」」


時間は少し経ちクラブ活動が終わる時間となった。
野球部もまたその例外ではなく終了となった。
そして終了の合図と共に急いでその場を離れるモノが居た。


「スマン。
 リュウスケ、後を頼む。」
「ごゆるりと、タツヤ。」


タツヤはリュウスケの言葉を最後まで聞かずにグラウンドを去って行く。
彼の目的はもちろん保健室で待っているミズホである。
なにしろ部活に出る途中にミズホとミドリに会い、3人で話していた時にいきなり倒れたからである。
その事が気になり今日の練習は上の空であった。
そして保健室に向かう途中でシズカに呼び止められた。


「コラタツヤ!
 廊下を走るんじゃない!」
「オウ、シズカか...あれ? アユのヤツはどうしたんだ?」


アユがいない事に気付きタツヤは尋ねた。
さっきの様にタツヤの事を注意するのは大抵アユの役目なのである。
そのアユがいない為、なんとなく調子が狂うタツヤだった。


「ああ、アイツは体調を崩して今日は休みだ。」
「ふ〜ん、アイツがねぇ。」
「.........」
「.........」
「.........」
「ど、どうしたんだよ、黙っちまって?」
「ふ〜んってオマエ、それだけなのかよ?」
「それだけって...なんだよシズカ?」


シズカの言わんとする事が読めない鈍感なタツヤは、キョトンとした表情で聞き返す。
彼の周りには ?マークがいくつも飛んでいる。
それを見たシズカは呆れ果ててため息が出てくる。


「ハァ...なんでアイツはこんなヤツなんかを...」
「何言ってんだよ?」
「もういい! とにかくアユのヤツに電話でもしてやれ!」
「な、なんでオレが?」
「いいから電話しろ!
 憎まれ口でもなんでもいいから、アイツの話し相手になってやれ!」
「わ、分かったからそんなに怒鳴るなって。」


あまりのシズカの剣幕にタツヤは電話の約束をしてしまった。
シズカはそれを聞き、多少気が晴れたのか落ち着きを払う。
その為タツヤが走っていた事を思い出した。


「そう言えばオマエはなんで走っていたんだタツヤ?」
「そうだ!
 保健室に行く途中だったんだ!」
「保健室って...もしかしてミズホか?」
「ああ、オレが部活に行く途中に倒れたんだ。
 つー訳で、じゃあなシズカ。
 アユにはちゃんと電話しとくから。」
「あ、オイタツヤ!......って行っちまった。」


その場に残されたシズカは、やれやれと言った表情で走って行くタツヤを見送った。










☆★☆★☆











「...落ち着いたアユ?」
「ウン...ありがとう、レイコお姉ちゃん...」


あれからアユは姉の胸を借りて泣き尽くした。
そのお陰で幾分落ち着きを取り戻し、いつも通りとまではいかないが立ち直る事が出来たのだ。
そして彼女の中で何かが吹っ切れた様だった。
ある種の決意を彼女は胸に秘めていたのだ。


「レイコお姉ちゃん...私、タツヤの事が好きだったんだ...」
「そう...」
「アイツとの出逢いは最低だったんだよ。
 だって私の事を男と間違えるんだもん、ホントバカなんだから...それがアイツの第一印象。
 けど、アイツと話してみてアイツの事を見ていたら、どんどん変わって来た。
 一生懸命で、友達思いで、責任感が強くて...何よりアイツの考え方が新鮮だった。」


アユはタツヤとの思い出を語る。
その顔は笑っていたがどことなく寂しさが伝わる。
レイコにはアユが涙は流さないが、まだ泣いている事が分かった。

タツヤと言う人物の事は知っていた。
アユが機嫌が良い時に必ず出てくる名前だった。
そして自分の妹に何があったのかが分かった。


「アイツの印象が変わっていった時、多分その頃から私はアイツの事が好きだったと思う。
 ...けど私はバカだった、アイツと話していると楽しいのに、一緒に居られると嬉しいのに...私はいつもアイツと喧嘩ばかりしてた。
 怖かったと思う、アイツとの関係が崩れると思うと凄く不安になったの...
 だから私はそのままでいいって思って、ずっと喧嘩友達って言う関係を続けた...」
「アユ...」
「逃げてたのよ私...だからバチが当たったの。
 アイツが私とは違う、他の女の子に笑っていた...それを見ちゃったの。
 そこで笑っていたアイツは...私が知っているアイツじゃなかった。
 その女の子にだけ見せるアイツだった。
 ...結局伝える事は出来なかった、私の想い。」
「...アユはそれでいいの?」


アユは自分の恋が終わった事を告げた。
レイコは自分の妹が、気持ちすら伝えられないのかと可哀相に思えた。
だからなんとかして妹の気持ちを伝えてあげたかった。
だがアユは姉の気持ちを断り、身を引く事を話す。


「いいの...それでいいの。
 相手の女の子...私の親友なの...だから...」
「アユ...」
「アイツが幸せだったら...それでいい...」










☆★☆★☆











その頃野球部の面々は後片付けも終わり、それぞれの帰路に着こうとしていた。
そしてシンジはレイの事を待つ。
結局フジオとの一件が終わって以来、二人は一緒に帰っていたのだ。
最近はからかわれる事が少なくなったが、矢張り下校時間に待っていると必ずからかわれる。


「ようシンジ君、今日も彼女を待っているのかい?」
「か、加地先生までそんな事を...」
「ハハハ、いいじゃないかシンジ君。
 これも幸せ者の宿命だ、我慢するんだな。」


加持は諭す様に話す。
しかしシンジはいつもの加持と違う事に気付いた。
いつもと違う、と言うよりげっそりとしている。 それが印象だった。


「あの、加地先生、大丈夫ですか?
 なんかやつれている様に見えるんですが...」
「...やっぱりそう見えるかい...
 ま、これも宿命ってモノとオレは諦めている。」
「???」


シンジには何を言っているのか理解出来なかった。
ミサトとリツコにかかわった事、それが加持の命運を決めてしまったのだ。
彼女達二人の好意を断った後に起きる惨劇、それを身を持って経験した加持だからこそ言える言葉だった。
ミサトカレーとリッちゃん特製のお薬、それを加持は食べたのだ。 そして信じられない事に生還を遂げた。
加持は 「ひょっとしてあの二つのモノに対する抗体ができたのかな?」 と真剣に悩んだ。

その時シンジは妙な視線に気が付いた。
そして辺りをキョロキョロと見渡す。


「あれ?」
「どうしたんだいシンジ君?」
「...最近視線を感じるんです。
 なんか...こう...いつも見られているって言うか...」
「ふむ、それは嫉妬している男共の視線かな?
 ...もしくは女の子の視線かな?」
「違うんです...なんて言うか...観察されている様な感じの...」


シンジはまだ辺りを見渡している。
彼の言う視線とはもちろんMAGIシステムの監視カメラだった。
カメラを使っているのは言うに及ばず碇ゲンドウ。
シンジの行動は全て記録されていたのだ。
加持とシンジはこの学校の理事長がそんな事をしているとは微塵も思っていなかったと言う。










☆★☆★☆











「須藤さん大丈夫?」
「ありがとう、心配してくれて...
 でももう大丈夫だから。」
「.........」
「? どうかしたの若槻君?」
「いや...なんでも無いんだ。」


タツヤは目の前に居るミズホがいつもと違う事に気付いた。
いつもの彼女だったら真っ先に謝っていたのに、今回はそうではなく自分に笑いかけてくれた。
その笑顔に思わずドキッとしてしまい、言葉を失ってしまったのだ。
その心の変化を促したマヤはそんな二人を見て微笑んでいる。


「さ、ミズホちゃん、騎士様がお迎えが来たんだから帰る準備をしてね。
 若槻君もちゃんとお姫様を送って差し上げてね。」
「伊吹先生、なんですかその騎士様とお姫様ってのは...」
「あら、私には二人がそう見えるんだけど。
 儚いミズホ姫を案ずる騎士の若槻君ってね...それとも王子様の方が良かった?」
「マ、マヤ先生!」
「フフ、冗談よミズホちゃん。」


マヤはミズホをからかい喜んでいる。
彼女が元気になってくれた事、そして考え方も前向きになってくれた事、それが嬉しかった。
自分の妹の様な存在のミズホが、目の前に居るタツヤに想いを寄せている。 その事を応援したかった。
一方タツヤは先程のマヤの発言が恥ずかしいのか、顔を赤くして固まっている。
この手の話しは恥ずかしくて苦手な様だった。
ちなみにミドリは二人の事を思ってココにはいない。 彼女はヨウスケの所へと向かっていた。


「若槻君、早くココを出ましょう。
 このままココに残っていると、マヤ先生にからかわれちゃうわ。」
「そ、そうだね須藤さん...ハイ。」
「...あ、ありが...とう...」


ミズホは目の前に差し出されたタツヤの手を取ってベットから降りる。
多少不自然ながらもしっかりとその手を握っていた。

(若槻君の手って大きいな...)

ミズホはそんな事を考えながら、じっとタツヤの手を見ている。
タツヤはミズホにそんな事をやられているので、手を離せない。
そして二人は互いに繋いでいる手を見て固まってしまった。


「ハイハイ二人共、ずっとそのままでいる気なの?」
「あ、ゴ、ゴメン!」
「ゴメンナサイ!」


そんなラブコメな空気を更に増幅させる様にマヤが言うと、二人は慌てて手を離してお互いに謝る。
その二人の顔は既に真っ赤になって俯いていた。
「な、なんて初々しいのかしら。」 などとマヤは涙を流しながら見ている。
保健室は花も恥らうラブコメの空間へと変貌してしまった。

そして彼ら二人が帰る頃にはとっぷりと日は暮れていた。
もちろんタツヤは責任を持ってミズホを家まで送って行ったと言う。










そしてその帰り道でタツヤとミズホの二人を目撃した者達がいた。
彼らの親友であるススムとシズカだった。
彼ら二人が何故一緒だったかと言うと、下校時間に偶然を装い帰る事にしたのだった。
だがそれは二人がそう思っているだけであり、周りの連中にとってはベタベタな展開だったのだ。


「あれ、タツヤだ。」
「ホントだ、なんでこっちの方向に来てるんだ...じゃなかった、来てるのかしら。」
「シズカ、無理して言い直す事ないよ。
 キミの良さは僕が良く知っているから。」
「麻生...君。」


勝手に二人の世界を創り出すススムとシズカだった。
だがタツヤと一緒に歩いている人物を見て、ススムは現実の世界へと帰還する。
それを見たススムは、さも当然の様に納得した。


「なんだ須藤さんか。」
「ホントだ。
 そう言えばタツヤはミズホを迎えに保健室に行ったんだっけ。」
「ふ〜ん、相変わらずなのか須藤さん...
 ま、タツヤと一緒なら心配無いか。
 ...それにしてもあの噂って本当なんだな。」
「噂って?」
「シズカは知らないのかい?
 タツヤと須藤さんが付き合っているって話を。」


そのススムの発言を聞いた時、シズカの目の前は真っ暗になった。
自分の親友であるアユの想い人には既に付き合っている人が居る。 しかもその相手もまた自分の親友であった。
よりによって自分の親友の二人が、同じ人に惹かれているとは思わなかったのだ。


「どうしたんだシズカ?」
「...ウソ...
 麻生君、それってホント!? タツヤがミズホと付き合っているって話は本当なの!?」
「ああ...本人からは聞いていないけど、周りの人の話を聞くとそうだし...
 実際、二人が一緒に居る事って最近多いんだ。」
「そんな...
 じゃあアイツは...アユはどうしたらいいんだよ...」
「な、なんでそこに古川さんの名前が出てくる...
 ま...まさか...彼女も...」


そこまで言ってススムはある結論に達し、答えを求める様にシズカを見る。
嫌な予感、そんなモノしか浮かばなかった。 はずれていて欲しいと思っていた。
しかしシズカは静かに頷いて答えた。


「...アユも...アユも若槻タツヤの事が好きなんだ...」
「そ、そんな...古川さんも...
 タツヤは...タツヤはその事を知っているのか? 気付いているのか?」
「気付いている筈ないよ...」


ススムにとってアユは友人で、自分の恋人であるシズカの親友である。
ミズホは中学時代からの友人である。
その二人が同時に自分の親友であるタツヤの事を好きになった。
どちらかが幸せになれば、どちらかは不幸になる。
タツヤがアユとミズホのどちらかを選んだとしても、決して上手く行くとは思えなかった。
アユとミズホの性格を知るものにとって、事の結末は火を見るより明らかだったのだ。










☆★☆★☆











タツヤとミズホの二人は須藤家の前にいた。
一緒に居ると時が経つのが速く感じられるモノで、二人にとっては 「あっという間」 に着いてしまった。
「ここで別れなければ行けない。」 タツヤはそう思うと寂しさを感じた。
ミズホもまた同じであった。 そしてそのまま二人は別れてしまうのがいつも通りだったが、今のミズホにはある種の決意があったのだ。
ミズホはありったけの勇気を出して、その決意を実行に移す。


「若槻君、今日は本当にありがとう。」
「いや、お礼なんてそう改まって言われると...恥ずかしいな。」
「やっぱり変わってないね。」
「え? 変わる?」
「そう...覚えているかな...私達が初めて交わした言葉も同じだったんだよ。
 私がお礼を言って...若槻君が照れながら話したの。」


ミズホはタツヤとの初めて交わした会話を思い出す。
そしてその顔は幸せそうに笑っていた。
自分のあの時の想いを懐かしむ様に話していた。


「私は友達を作るのって苦手だったけど、その事があって若槻君とはすぐに仲良くなったよね。
 私が倒れた時、若槻君が保健室に連れて行ってくれた...今日と同じだね。
 それに若槻君だけは違ったんだよ...それが嬉しかった...」
「違うって...何が?」
「周りの人は私の事を心配ばかりしていたの...
 それは嬉しいんだけど...その頃の私にとっては負担だったの。
 自分の所為で周りに迷惑ばかり掛けてたから...
 けど若槻君は私の事を励ましてくれたわ。 応援してくれた。
 貴方を見ているだけで...変われそうな気がしたの。」
「須藤さん?」
「若槻君...あの時の私の気持ち...今も変わってないよ...」


ミズホは自分の心臓が高鳴っているのが分かった。
自分の鼓動がひょっとしたらタツヤに聞こえてしまうかと思い恥ずかしくなって行く。
しかしミズホの決意はそれよりも強かった。
意を決してミズホはタツヤの目を見詰め、自分の想いを伝える為に口を開く。






























「好きです...中学の時からずっと貴方だけを見てきました...タツヤ君...」
「須藤...さん...」



第弐拾六話  完

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