「アユ!」


タツヤは自分の想い人の名を呼びながらアユを追う。
今ここでアユを捕まえられなかったら、何処か遠くへ行ってしまうと思えた。
そして自分の本当の想いをアユに告げたかった。
今まで気付かないで居た時間、気付かないフリをしていた自分と別れる為にアユを追う。


「アユ!」


タツヤは今一度、自分の好きな名前を叫ぶ。
陸上部のアユに追い着ける筈が無いとは考えずに、ただがむしゃらに走った。
そしてようやく彼女の細く柔らかい手を掴む事が出来た。
タツヤはその手を引き、アユを自分の元へと引き寄せる。

アユは暴れていたが男の力には勝てず、その腕の中にすっぽりと収まってしまった。
力強い腕に抱かれ、タツヤの自分に対する想いが伝わり、アユはタツヤの腕の中で泣いていた。


「バカ...バカだよ、タツヤは。
 せっかくミズホが...ミズホだって勇気出して言ったんだよ。
 苦しかったんだよ、きっと...」
「だけど、オレはアユが...アユが好きなんだ...」
「タ、タツヤ...バカ...バカだよ...」


ただ泣きじゃくるアユを、タツヤはぎゅっと抱きしめていた。











大切な人への想い

第弐拾八話 Yesterday once more











タツヤ、アユ、ミズホ、この3人のそれぞれの想いは一つの結末へと向かって行った。
だがそれは偽りの想いであり、いつそのバランスが崩れ去ってもおかしくはない。
それでも3人は偽りの想いを貫こうとする。
アユは二人の為に自分の想いを閉じ込め、タツヤはミズホの支えになる為、そしてミズホは自分の想いの為に。

その偽りのシナリオを演じ、表面上は上手く進んでいた。
3人のクラスが別々だった事も手伝って、いつも通りに時は流れて行く。
偽りの仮面を着けたままに...



しかし他人の目は誤魔化せても親友の目は誤魔化せない。
アユの一番の親友であるシズカはそれを見破ったのだ。
親友だからこそシズカはアユの事を理解していた、そして気に掛けていたのだ。
誰も居ない屋上に二人は居た。


「...タツヤとミズホ...付き合い始めたんだってな...」
「うん、そうみたいね。
 ...お似合いよねあの二人、見ているこっちが恥ずかしくなる位にね」


普段と何も変わらない会話が続く。
しかしアユの言葉には隠された想いがある事にシズカは気付いていた。
アユの性格からして想いを告げる事無く、身を引いた事に気付いていたのだ。
だからこそシズカはアユに問う。


「...アユはそれでいいのか?
 自分の気持ちも伝えられなくて...それでいいのか?」
「いいの...
 二人の気持ちは知ってたから...だからこれでいいの...
 私が出れば却って二人の関係をギクシャクさせるだけだから...」


アユは寂しそうに笑みを浮かべていた。
最早何を言っても無駄である事はシズカには分かった。
しかし好きな人に好きだと伝えられない事には納得が出来ない、自分の想いすら打ち明けられない事に怒りを覚えた。


「なんでだよ...なんで自分の気持ちを伝えないんだよ...
 好きなんだろ、タツヤの事が。 だったら伝えてもいいじゃないか。
 自分の気持ちすら言えないなんて、納得出来ないぞ!
 そうやっていつもの様に一人で背負い込む気なのか?」
「...しょうがないよ...
 幸せそうだったんだアイツ...だから言えなかった。
 だって相手はミズホなんだもん...ミズホだったら...諦めが着くよ...」
「アユ、オマエ...」


シズカは全てが終わっている事を理解した。
逆にアユが自分の気持ちを伝えたとしても、傷つくのはタツヤであり、ミズホであり、そしてアユ自身だということが簡単に予想できた。
シズカは自分の親友すら救えない事に苛立つ。
アユもまたシズカの事を理解していたので、今の彼女の思いが分かった。


「...私ね、タツヤを好きになった事...後悔してないよ。
 だってアイツのお陰で今の私があるんだから...
 本当のアイツを知るまでは男の子なんて、がさつで、Hで、単純で...ってバカにしていたわ。」


アユはタツヤの事を好きになった頃を想い出す。
それは今から2年前の夏休みだった。










☆★☆★☆











夏の炎天下の中をアユは、只ひたすらに走っていた。
一秒でも他人より速く走る為に−−−
その頃のアユの頭にはその事しかなかった。
他人の力を借りずに自分一人の力だけで、自分の存在を示す為にひたすらに走っていた。
走っている時のアユは他人を寄せ付けない壁を作り、そのお陰で他の部員達からは遠ざかっていた。

しかしそれでもアユの事を気に掛けて話し掛ける部員も居た。
シズカもその内の一人で、彼女の事を理解する数少ない部員であった。
こうした理解のある仲間のお陰で、アユは陸上部の中で孤立する事は無かった。


「相変わらず張り切ってるなアユ。」
「...なんだシズカか。」
「やれやれ、可愛げの無いセリフだこと。」


アユはぶっきら棒に言い放つが、そんな事はいつもの事なのでシズカは気にする事無く話し続ける。
その話の内容は最近のアユの練習についてだった。
ここしばらくのアユは鬼気迫るものがあり、誰が見てもオーバーワークである事は分かっていた。
それでもアユは止めようとはせずに走り続けるので、シズカは心配になって話し掛けたのだ。


「...やり過ぎなんじゃないか?
 最近のオマエ、ちょっと変だぞ...」
「何? シズカも私に説教するの?
 さっきは日向先生で、いいかげんウンザリだよ。」
「アユ、そんな言い方は無いだろ。
 みんなはオマエの事を心配してるんだぞ。」
「なんだ? アユを説教してるのかシズカは。」


いきなり横槍を入れて来る者が出てきた。
二人がその声の主を見るとそこには見慣れた顔があった。
シズカにとっては中学の時の同級生で、アユにとっては一番の天敵で、野球部所属の若槻タツヤだった。
アユはタツヤの姿を見ると、あっという間に戦闘モードに入る。
そしていつも通りの口喧嘩の火蓋が切って落とされる......筈だったが、ちょうどその時に野球部のキャプテンがタツヤを見付け、2・3発殴ってから野球グラウンドに強制連行して行った。


「いい気味ね。
 タツヤのヤツって練習サボって何考えてるのかしら。」
「.........」
「? どしたのシズカ?」
「あ、いや、何でも無いんだ。」


シズカは慌ててその場を言い繕ったが、アユからピリピリとした緊張感が抜けて、いつも通りになっている事に気付いた。
先程までの鬼気迫る表情は消えて、普通の高校生の顔になっていたのだ。
ひょっとしたらタツヤのお陰で−−− そう考えるとシズカは可笑しくなって笑った。
アユはそんな自分の親友を見て、何がなんだか分からない顔をしている。


「ど、どうしたんだよシズカ?
 いきなり大笑いなんかして...恥ずかしいぞ。」
「あ、なんでも無い、なんでも無いんだ。
 しっかしアイツも役に立つもんだな。」
「???」


シズカが大笑いする中、アユは頭の周りに?マークをいっぱい着けてきょとんとしている。
その頃のアユには、タツヤの存在がどんなモノなのかに気付いていなかった。

アユ自身が普通の高校生でいられる為の存在に...










そして時間は流れ、部活の時間が終了して下校の時間となった。

多くの生徒が自分の家への帰路に着き、アユもまた自分の家へと帰ろうとしていた。
その時、野球グラウンドに一つの人影を発見した。
その人影には見覚えがあり、すぐにタツヤだと分かった。
アユは笑いを殺しながらタツヤの後ろの方に近づき驚かす。


「わ!」
「うわぁ!?」


アユの作戦は見事に決まり、タツヤは驚きのあまり飛び上がる。
タツヤが恨めしそうに後ろを振り返ると、彼の予想通りの女の子がお腹を抱えて笑っていた。
そしていつも通りの口喧嘩が始まる。


「やっぱりオマエか、アユ!」
「可っ笑しいー 「うわぁ!?」 だって。
 まったく一人黄昏ちゃって何考えてんだか、似合わないから止めたほうがいいぞ。」
「そんなんじゃねーっての!
 ったく脳天気なヤツはいいよな〜 悩みなんか無くってよ。」
「な、バカなヤツにそんな事を言われるとは思わなかったよ。
 そんなアンタの悩みだから、たいした事じゃないんだろ?」


タツヤはその言葉を聞いた途端、真顔になってアユを見る。
アユはその迫力に押されて黙り込んでしまう。
普段は見せない迫力が今のタツヤにはあったのだ。
しかし次の瞬間にはその迫力は消え去り、アユの知っているタツヤに戻った。


「...そうだよな、オマエには関係の無い事だからな...
 アユ、オマエは夏と言ったら何が思い浮かぶ?」
「夏? 夏と言ったら...やっぱり海かな?」
「バカなオマエに聞いたオレが悪かった...」
「バカにバカって言われたくないよ! このバカ!
 そーゆーアンタは何が思い浮かぶんだよ!」
「...甲子園だよ。
 今、甲子園では各地区の代表が闘っている。
 オレ達は今回は駄目だったけど、いつか必ず行ってやるさ...」


タツヤは優しく笑いながらその言葉を紡ぎ出す。
その声は透き通っていて、アユの胸に優しく響いた。
それは夢を持った者だけが言える想いだった。
アユは普段のタツヤじゃないタツヤを見て、胸が高鳴った。


「...分かる...わかるよ、その気持ち...
 タツヤも持ってたんだね、自分の夢を。」
「め、珍しいな、オマエがオレの言う事に同意するなんて。」
「ひ、人がせっかく誉めてやってるのに!
 ...やっぱりバカだコイツ...私にだって夢があるんだからバカにすんな!」
「へへ、悪かったな。」


アユの夢という言葉を聞いてタツヤは笑う。
だがそれは不快な笑いではなく、心を交わした者達の笑いだった。
夢というのは自分の目標であり、自分を高める為の最高の手段である。
だからタツヤは自分の夢を大切に想っていた。
しかしアユにとっては絶対的なモノであり、その事は彼女の練習から嫌でも分かる。
鬼気迫る想い、そして必ず果たさなければならないモノ、それがアユにとっての夢だった。
そしてタツヤにとってはその事が気掛かりだったのだ。

もしアユの夢が絶たれた時、彼女はどう変わってしまうのだろうか。 或いは夢を果たした後はどうなるのか。
夢が果たされた時、もしくは夢が潰えた時、夢はそこで終わりではなく新たにそこから始まる。
タツヤにはアユがそう考えていない事が分かっていた。
だから聞いてみる事にした。


「なあアユ、オマエは走っていて楽しいと感じた事あるか?」
「何言ってんだよタツヤ...そんなの決まってんじゃないか。
 楽しいに...決まって...」


タツヤの問いにアユははっきりとは答えられなかった。
突然投げられた疑問にアユは困惑した。
そのアユを見た時、タツヤの予想は確信へと変わる。


「...やっぱりそうか...」
「な、なんだよ。 別にいいじゃないか、私がどう思っていたって...」
「じゃあオマエは走れなくなった時はどうする?
 自分の夢が終わった時にどうなるか考えた事はあるのか?」
「それは...その...
 だ、だったらタツヤはどうなのさ?」
「オレか? オレはまた次を探すさ。
 夢はそこで終わる事は無いからな、夢なんか何処にでも転がってるさ。」


その言葉はタツヤが自分の夢を軽く見ているとアユには受け取れた。
そしてタツヤに対して怒りを覚えた。
自分にとってとても大切なモノを汚された様に感じたのだ。
だからアユは怒りを露にしてタツヤに抗議をした。


「ハン! タツヤの夢ってやっぱりそんなモノじゃない。
 けど私は違うんだから、アンタみたいなバカとは違う!
 絶対に叶えるんだ、誰にも否定なんかさせない!」
「...バカはオマエだよ。
 俺が言いたいのはそんな事じゃない。 大切な事は、立ち止まらない事だ。
 オマエは夢の果てに何を見ているんだ? 自分の夢以外の自分を見た事があるのか? 走る事を辞めた自分を...
 だからオマエはバカなんだよ。」
「.........」


アユは何も言い返せない。 それ程にタツヤの言葉は衝撃的だった。
そしてタツヤの言葉通りの事が自分に起きた事を考えると、言い様の無い恐怖を覚えた。
歯を食いしばって涙を堪えようとしていたが、彼女の意思とは裏腹に流れ落ちる。
アユは俯き、手を握り締めて涙を流した。

タツヤはそんなアユの肩をそっと抱き、引き寄せた。
自分が泣かせてしまった事への罪悪感からでは無く、目の前で泣いている女の子の為に抱いてやらねばならなかった。
例え己に力が無かったとしても、タツヤはそうしたかった。


「ゴメンなアユ、最近のオマエを見ていると心配だったんだ。
 練習を見ていると、まるで自分には走る事しかないって感じだったからな...
 走る事を辞めたオマエを考える事は出来なかった、考えられなかったんだ。
 けど、いずれはそんな時が来るかもしれない...その時オマエは全てを失ってしまう...
 だからこそ気付いてほしいんだ、走る事以外のオマエが居るって事にな。」
「ゥウ...ゥグ...」
「すまなかったな、アユ。」


アユは喧嘩ばかりしているタツヤが自分の事を心配しているとは思わなかった。
こんなにまで優しくされるとは信じられなかった。
そして自分がとても小さな人間だという事に気付いた。
自分の事を優しく抱いてくれている人に気付かされたのだ。

だからアユはタツヤに笑顔を向けて感謝の言葉を伝えた。
その瞳からはまだ涙が零れているのに無理矢理笑顔を作る。
それが今の彼女に出来るたった一つの事だった。


「ありがとう。」










☆★☆★☆











「...そうだったのか...
 じゃあやっぱり、あの時はタツヤのお陰で...」
「うん。 普段のアイツからは想像出来ないけどね。
 すごく頼もしかったの、だからアイツを好きになった事を後悔はしてないよ。
 結果として振られちゃったけど...でもアイツが幸せならそれでいい。」


シズカにはアユが今でもタツヤを好きだという事が痛いほど分かった。
それでも一途な想いを閉じ込めるのは、他でも無いタツヤの為だった。
それがアユ自身が考えた抜いた末に出した答え。
シズカには最早なにも言えなかった。










☆★☆★☆











時間はアユとシズカが屋上で話していた時よりも後−−−−−

アユが隠し切れなかった様にミズホもまた隠し切れず、保健室のマヤの所に相談に来ていた。
アユは自分の本当の想いを隠すのに対し、ミズホの場合は二人への罪悪感とタツヤの自分に対する想いが不安でどうしようもなかった。
その為、ミズホの顔は今まで見た事の無い位に青ざめていた。


「ミズホちゃん...大丈夫?
 いったいどうしたの、本当にちょっと見ない間にやつれちゃて...」
「...マヤ先生...私、怖いんです...」
「怖いって、何が怖いの?
 それに私よりも若槻君に相談した方がいいんじゃないの?」
「...タツヤ君には...言えないんです。
 私、本当にどうしたらいいのか分からなくって...」


最近のタツヤとミズホの仲はギクシャクとしていた。
周りからは上手くいっていると思われるのだが、タツヤが自分を見ていない事に気付いていた。
そしてタツヤもまた、ミズホが自分よりも他の何かに気を取られている事に気付いていた。
二人の心が互いに通じて合っていない事を二人は知っていた。

ミズホはポツリポツリとその原因を打ち明ける。
自分の正直な想い、自分がどれだけ卑しい人間か、そして自分が追い詰められている事を話した。
そして全てを話し終えた時、ミズホは泣き崩れた。
ミズホは軽蔑されても良かったと思った。 でなければ罪悪感から自分が押し潰される気がしたのだ。
しかしマヤは優しかった。


「そうだったの...
 でも、そんなに自分を責める事は無いわ。」
「そんな...悪いのは私なんですよ...
 私が原因で今までの関係を崩してしまって...二人を引き裂いた...
 そんな事までして...アユちゃんを騙して...タツヤ君を縛ろうとしたんです...
 全部、私の所為なんです...私さえ居なければ...」
「ミズホちゃんは悪くないわ。
 だってアナタは好きなんでしょう、若槻君の事が。
 しょうがなかったのよ、好きで好きで堪らなかったんだから。」
「マヤ先生...」


マヤはミズホの事を優しく抱きしめる。
今まで溜めて来た様々な想いが、ミズホを押し潰そうとするのを少しでも和らげたかった。
タツヤとアユに対する罪悪感と自分に対する嫌悪感、結局ミズホはその二つの事に耐えられなかった。
保健室にはミズホの鳴咽と、タツヤとアユへの謝罪の言葉がしばらくの間続いた。
声に出して泣いたお陰でミズホは落ち着きを取り戻して行った。

しかし顔を上げた瞬間、ミズホは恐怖から体が震え上がり顔から血の気が去って行く。
目は大きく開かれ、口からは言葉にならない声が出てくる。
そのミズホの視線の先にはアユの一番の親友であり、そして自分の親友の野上シズカが居た。
彼女が偶然に保健室の前を通った時、ミズホの声がしたので気になり、悪いとは思いながらも立ち聞きしていたのだ。

シズカはアユの一途な想いを踏みにじられた事により怒りを爆発させる。


「ふざけるなミズホ!」
「ゴ、ゴメンナサイ!」


シズカは怒りのあまり大声でミズホを責める。
その目からは自分の親友であるアユを思う気持ちから、涙が流れ落ちていた。
それに対し、ミズホもまた涙を流しながら謝った。
ミズホはただ目の前に居るシズカの存在が怖かっただけで無く、そこからタツヤとアユに自分の事を知らされるのが怖かった。
本当の自分を知られて二人が自分の元から消えてしまう事が怖かったのだ。


「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナ...サイ...」
「謝って済むと思ってるのか!
 オマエは二人の気持ちを踏みにじったんだぞ!
 アユとタツヤの事を裏切ったんだぞ、オマエは!」
「ゴメン...ナ...サイ...」


シズカはミズホの事を泣きながら怒鳴りつけ、ミズホは額を床に擦り着けて泣きながら謝る。
二人はお互いにタツヤとアユの事を想っていた。
シズカは二人の事を大切にしていた為に、ミズホは二人に対する罪悪感から泣いていた。
マヤはそんな二人の間に入って、ミズホを庇う様にして話した。


「野上さん、もうその位にしてあげて。
 ミズホちゃんは、ずっと悩んでいたんだから。
 好きな人を振り向かせる為に−−− 只それだけの理由なのよ。
 アナタだって分かるでしょう。 アナタも同じ女なんだから...」
「け、けど...
 それじゃあアイツはどうなるんだよ...
 アユの気持ちはどうしたらいいんだよ、アユはそれでもタツヤの事が好きなんだぞ!
 アイツの想いは何処に行けばいいんだよ!!
 答えられるのか、先生には!!」
「そ、それは...」


マヤにはその答えが見つからなかった。
二人の女が一人の男を好きになってしまった。
その結末は人それぞれであり、他人がとやかく言う資格が無い事はシズカにも分かっていた。
答えを出すのは他でも無い、本人達である。

シズカは不退転の決意を胸に秘め、保健室を出ようとした。


「野上さん、どうする気なの!」
「決まってんだろ。
 タツヤに教えてやるんだ...アユの本当の気持ちをな...」
「待って、ミズホちゃんの事だけは...その事だけは黙っていて。
 都合のいい事なのは分かってる。 けどミズホちゃんは...」
「...分かってるよ...
 言わない...言えるわけないよ...
 私だって女だから...ミズホの気持ち、分かる...」


シズカはミズホの事を見ないで話した。
その言葉通りミズホの気持ちは理解していた。
もし自分がミズホの立場に置かれていたら、ミズホと同じ事をするのが分かる気がしたのだ。
だからミズホが二人に対してやってしまった事は黙っている事にした。

それが同じ女としての思いやり−−−



しかしアユの想いだけは伝えてやらねばならなかった。
自分の一番の親友の為に、そして一途な彼女の気持ちを叶えてあげたかった。
だからこそタツヤに伝えようとした。

それが親友としての思いやり−−−



そしてシズカは保健室を出てタツヤの所に向かう。
ミズホは自分の気持ちを伝えられた。
だからこそアユの気持ちを聞かせてやらねばならなかった。
伝えられないままに終わってしまうアユの気持ち、それをタツヤの心に刻ませてやらねばならなかった。
その上でタツヤに答えを出して欲しかった。

それが二人の女性に愛されてしまった男のけじめ−−−










☆★☆★☆











時間は少し戻って、ちょうどシズカがアユと別れて屋上を後にした時−−−−−

シズカと入れ替わりにタツヤが屋上へと入ってきた。
タツヤは元気が無いのか、いきなり溜め息をつき空を見上げる。
空には雲一つ無く、太陽だけが青い空間で輝き、その存在を示す。


「いい天気ね...」


タツヤは澄んだ声で問われた。
その声には聞き覚えがあり、ふと声のした方向を見ると予想通りアユが居た。
優しく自分に笑い掛けているのに、何故か哀しそうに見える。
いつもと変わらぬアユがそこに居るのに、自分の知っているアユではなかった。
しかしタツヤはその理由に気付く。
いつも見ていたとても大切な人であり、自分の本当の想い人だからこそ気付いた。

目が違っていたのだ。
それだけが違うだけで、タツヤの胸は締め付けられる。
いつも自分の事を見ていた目が違うだけで、アユが泣いている様に感じた。

しかしタツヤもまた同じ目をしていた。
アユと同じ目−−−
自分の本当の想いを伝えられない者の目−−−
二人はその目で互いの事を見詰める。


「...どうしたの、タツヤ?
 溜め息なんかついて...元気出せよ。」
「スマナイ、心配掛けちまって...
 ...なあ、アユ...須藤さんはオレの何処が好きになったのかな...」


タツヤはアユに自分の悩みを素直に打ち明けた。
なぜアユに相談をしたのかは、なんとなくタツヤは分かっていた。
彼女だけには飾らず、そのままの自分でいられた。
だからこそアユという存在が頼りになった。
そしてアユはその信頼に応える。


「分からないの、タツヤは?
 ま、タツヤは人の事ばかり気遣って、自分の事には鈍感だからね...」
「...あのなぁ...」
「フフ、鈍感なタツヤ君に特別に教えてやるか。
 ミズホがタツヤを好きになったのはね、タツヤだからだよ。」
「はぁ?」
「他の誰でも無いタツヤだったからこそ、ミズホはあなたの事を好きになったの。
 誰もタツヤの真似は出来ない。
 タツヤは誰の真似をしなくていいの。
 だってミズホが好きになったのはね、タツヤという人間なの。
 タツヤがタツヤのままでいる事が大切なの、ミズホにとってそれだけで十分なんだから。
 だからもっと自信を持ちなさい。」
「オレがオレでいる事...本当にそれだけでいいのか?」
「あれ、タツヤは私の事を信じられないの?」
「そんな事は無い! オレはオマエの事を...信じてる。」
「だったらそんな辛気臭い顔をしないで笑ってなさい、ミズホの為にね。」


アユは小さな子供を諭す様に言う。
自分の子供を想う母親の様な母性をアユは感じさせた。
何よりも大切に想っているタツヤにだけ見せる顔だった。
タツヤはそんなアユに感謝の言葉を伝える。


「ありがとう、アユ。
 やっぱりオマエに相談して良かったよ。」
「ホント、手の掛かる大きな子供ねタツヤは。」
「悪かったな、まだガキで。」


二人は喧嘩友達から得難い存在へと移り変わる。
互いに悪態をついているが二人は信頼し合っていた。
そしてタツヤは屋上を去り、アユはその後姿を見詰める。

二人はお互いの位置付けを見つける事が出来た。
偽りの想いというシナリオの設定に書き加える事が出来たのだ。










☆★☆★☆











「タツヤ、ちょうど良かった。
 ちょっと付き合ってくれ。」
「あ、ああ。 構わないぜ。」


タツヤが屋上から降り、シズカが保健室から出て来た時、その二人は廊下で鉢合わせた。
そして二人は人通りの少ない校舎裏に来た。
シズカは自分の気持ちを落ち着かせる為に大きく深呼吸をし、タツヤに話す。


「タツヤ...オマエはアユの事をどう想ってるんだ。」
「...何故そんな事を聞く?」
「いいから答えてくれ!
 とても...大事な事なんだ。」


シズカはタツヤの目を真っ直ぐに見詰める。
その目には強い意志が篭められており、タツヤは拒否出来なかった。
そしてタツヤもまたシズカの目をしっかりと見詰めて話す。


「...とても大切な...友達だよ...」
「ともだち...オマエにとってのアユはそれだけなのか?」
「そうだ、それ以上でもそれ以下でもない。
 アユはオレにとって大切な友達だ。」


タツヤは自分の本当の想いを閉じ込め、その言葉を綴る。
自分の気持ちに別れを告げるように、その言葉には強い意志が篭められていた。
しかしシズカの次の言葉によってその意志は脆く崩れ去る。
シズカはアユの本当の想いをタツヤに伝える。


「バカヤロー!
 なんでタツヤには分からないんだよ!
 アイツはなぁ...アユはなぁ...オマエの事が好きなんだよ!!」
「!」


シズカは泣きながらアユの想いを伝えた。
その言葉を聞いた途端にタツヤは驚愕し、シズカの肩を掴み乱暴に問う。
だがシズカは流れる涙を拭わずに、真っ直ぐタツヤを見て言い聞かす。
それがアユの、嘘偽りの無い想いだと伝えたかった。


「本当だ、だからアユはオマエといつも居たんじゃないか。
 嫌いだったら、オマエの所に来るもんか。
 タツヤの事が好きだから...一緒に居たいから...だからアイツは...」
「アユが...オレの事を...」
「タツヤ、もう一度聞かせてくれ...オマエはアユの事をどう想ってるんだ?
 ...それから...誰が一番好きなんだ?」
「オレは...」


タツヤは迷う。 だが答えなければならない。
二人が自分に寄せてくれた想いに応えなければならない。
アユとミズホのどちらか一人に、その想いに応えてやらなければならなかった。


「...それでもオレは...須藤さんが...好きだ...
 アユの事は大切に想っている。
 しかしそれは友達として...」
「...その言葉、本当だな?」
「ああ...」


タツヤは自分の心を見せない様に、その想いを口にする。
あたかも本当の想いの様に自分に言い聞かせた。


「そっか...オマエはミズホを...
 だったら、ミズホに伝えてくれ。
 今のミズホは不安なんだ、オマエに本当に愛されている自信が無いんだ。
 ...だから伝えて...安心させてやって...」
「分かっている。
 ...それから...ありがとう。」
「礼なんかいらないよ。
 それよりも早く行って、保健室に居る筈だから。」


タツヤは走って保健室に向かい、シズカはそれを寂しそうに見送る。
そして一人になったシズカは哀しそうに呟く。


「結局駄目だったな、アユ。
 だけどオマエの気持ちはアイツに伝わった筈だ...」










しかしタツヤとシズカの二人は知らない。
ミズホがアユを保健室に呼んでいた事を知らなかった。

ミズホは全てを伝える為にアユを呼んでいた。










☆★☆★☆











「...ゴメンナサイ...」


保健室ではミズホがアユに謝っていた。
全てをアユに打ち明けたミズホは静かに謝った。
嫌われるかもしれないと思っていたが、アユという親友だからこそ伝えた。

ミズホはベットの上に座り、項垂れる。
自分の成すべき事をやり終えた姿だった。
アユはそんなミズホを優しく抱き寄せる。


「ありがとうミズホ、話してくれて...
 私達、まだ親友で良かった...」
「なに言ってるのよ!
 私はアナタ達二人を騙したのよ、そんな事までしてアナタからタツヤ君を奪おうとした醜い女なのよ!
 ...どうして...優しく出来るのよ...」
「けどミズホ、アナタは話してくれたわ。
 正直に話してくれた...だからミズホと親友でいられて良かった。」
「アユ...アナタ、本当にバカね...」
「ミズホだってバカだよ。
 黙ってればいいモノを...」


ミズホはアユと親友でいられる事に涙を流す。
アユと知り合えた事に感謝した。
そのアユの胸を借りてミズホは泣いた。


「ねえミズホ、私達が親友になれたのって、同じ人を好きになったからかもね。
 同じ気持ちを持っていたから、同じ想いをしていたから...」
「...ありがとう、アユ...」


絶対に勝てない−−− ミズホはアユに対してそう感じた。
優しすぎる心、その優しさの為に身を引く事を決めたアユ。
ミズホにはその想いが痛いほど分かった。
だからこそミズホは決心する。
全ての想いを、本来あるべき姿に戻そうと決心した。










「須藤さん!」


その時、タツヤが保健室に入って来た。
突然の事にアユは驚いていたが、ミズホは全てを悟ったかの様に冷静でいた。
一方タツヤはまさかアユがここに居るとは思っていなく焦った。


「な、なんでアユが...」
「私が呼んだの。
 アユに伝えたい事があって、ここに来てもらったの。」


ミズホの言葉には、いつも感じさせない強い意志が篭められていた。
絶対に伝えねばならないモノの為に覚悟を決めていたのだ。
そして偽りのシナリオをここで終わらせる為に話し始める。


「タツヤ君、アナタが本当に好きな人は誰?」
「なに言ってるんだよ。
 オレが好きなのはキミだよ、須藤さん...」
「ううん、それは違うわ。
 アナタが本当に見ている人は私じゃない。」
「須藤さん...」
「私はずっとアナタの事を見て来たから分かる...けど、もう自分に嘘をつかないで。
 アナタが私に抱いている想いは違う...アナタは私の事が心配なだけなのよ。」
「違う!
 オレは本当にキミの事が...」
「じゃあ、アナタは言えるの?
 アユの前で言えると思っているの?」


ミズホはその言葉を言ってしまった。
タツヤは驚きのあまり、なにも話せなくなる。
時間が凍り付いたかの様に、保健室の空気は止まる。
その中を、ミズホは更に話し続ける。


「聞かせて、若槻君。
 アナタが本当に好きなのは...誰?」
「...オレが...好きなのは...」


タツヤの中では二つの想いが交錯する。
ミズホが自分の本当の気持ちに気付いている事が分かった。
しかしミズホの事も気になった。
ミズホが誰よりも弱い事をタツヤは知っていた。

しかしタツヤがその二つの想いの中で迷っていた時、アユはその場から逃げ出した。


「やめて! なに言ってんのよ!」
「アユ!」「アユちゃん!」


二人が見ている中、アユは保健室から出て行った。
そしてミズホは素早くタツヤの事を促す。
そこにもミズホの強い意志が篭められていた。
他でも無い、大切な人に後悔をして欲しくなかった。


「若槻君、アユを追って!」
「須藤さん...」
「アユを失ってもいいの?
 今追わなかったら、アユは絶対にアナタの元に戻ってこないわ!」
「アユが...」
「お願い、早く行ってあげて!」


ミズホの真剣な目に諭され、タツヤは保健室を出た。
その胸には大切な想いを秘めていた。
アユを追う為にミズホの元を去る。
自分の事を想ってくれた二人の為に、そして自分自身の為に走る。
偽りのシナリオを捨て去る為に、自分の本当の想いに素直になった。
その姿を寂しそうに見詰めながら、ミズホは静かに呟いた。


「...さよなら...若槻君。」










☆★☆★☆











「アユ!」


タツヤは自分の想い人の名を呼びながらアユを追う。
今ここでアユを捕まえられなかったら、何処か遠くへ行ってしまうと思えた。
そして自分の本当の想いをアユに告げたかった。
今まで気付かないで居た時間、気付かないフリをしていた自分と別れる為にアユを追う。


「アユ!」


タツヤは今一度、自分の好きな名前を叫ぶ。
陸上部のアユに追い着ける筈が無いとは考えずに、ただがむしゃらに走った。
そしてようやく彼女の細く柔らかい手を掴む事が出来た。
タツヤはその手を引き、アユを自分の元へと引き寄せる。

アユは暴れていたが男の力には勝てず、その腕の中にすっぽりと収まってしまった。
力強い腕に抱かれ、タツヤの自分に対する想いが伝わり、アユはタツヤの腕の中で泣いていた。


「バカ...バカだよ、タツヤは。
 せっかくミズホが...ミズホだって勇気出して言ったんだよ。
 苦しかったんだよ、きっと...」
「だけど、オレはアユが...アユが好きなんだ...」
「タ、タツヤ...バカ...バカだよ...」


ただ泣きじゃくるアユを、タツヤはぎゅっと抱きしめていた。










☆★☆★☆











日は既に沈み、辺りは暗くなっている。
タツヤとアユはそんな時間に公園に来ていた。
二人はお互いに寄り添い、離れようとはしない。


「星...綺麗だね。」
「.........」
「どうしたの、タツヤ?」
「いや、なんでも無い。」


タツヤはアユの横顔に見惚れていた。
アユの事を綺麗だと素直に思い、その事に戸惑う。
二人でここに居る事が信じられず、どこか遠くで自分達を見ている錯覚に陥った。
タツヤの心臓は、すぐ横に居るアユのお陰で早鐘を打つように鼓動している。


「ねえタツヤ...私の事、好き?」
「な、なんだよ、こんな時に。」
「こんな時?」


アユはいぶかしげに首を傾ける。
その仕草がとても愛おしくなり、タツヤは抱きしめたい衝動に駆られた。
二人は見詰め合い、そのまま時が止まった様に動かない。
しかし次の瞬間、アユは溜め息を漏らす。


「はぁ、タツヤ相手にアイコンタクトは無理か...」
「な、なんだそりゃ?」
「ううん、なんでもなーい。」


先程まではいい雰囲気だったが、途端にいつもの二人に戻る。
その事に二人は気付き、互いに溜め息を吐く。


「...なんかオレ達って、こんなのばっかりだな...」
「そうね、でもこんなのじゃいけない時ってあるよね。
 例えば、今...この瞬間とか...」


その言葉が合図となり、アユの目がゆっくりと閉じられて行く。
タツヤもまた目を閉じ、二人の距離がゼロになる。
心地よい刺激が二人に走り、星空の記憶に今日というこの日を刻み込んだ。




















今まで気付かなかった分も含めてタツヤはアユを抱きしめる。
抱きしめてくれる人のお陰で今の自分が居る事にアユは感謝する。

もっと早く気付くべきだったと思う。
しかし過ぎ去った時間を元に戻す事は出来ない。
だからこそ、これからの時間を大切にしようと二人は願う。



二人だけの物語を綴る為に...






























後日談−−−−−





その夏、親孝行なアユのお陰でオレはアユの店を手伝う事になった。
アユと一緒に居られるのは嬉しい。
...だけど何が悲しくてオレが魚と格闘しなければならないんだ?


「コラ、タツヤ!
 真面目にやんなさい!」
「だ、だってよぉ...オレ、魚をさばいたこと無いんだぜ。
 それになんか、この魚って恨めしそうにオレを見てるし...」
「よ、お二人さん。 遊びに来たよ。」
「げ...オマエ等なんでココに...」


オレの目の前にはリュウスケ、ヨウスケ、ススム、カナ、ミドリ、シズカ、そして須藤さんがいた。
ヨウスケは面白そうにオレの今の姿を写真に撮る。
ちなみにオレがどんな格好をしているかというと、頭にねじりはちまき、黒いゴムのエプロン、そしてゴムの長グツ...
手っ取り早く言うと、どっから見てもお魚屋さんといった格好だ。


「コ、コラ! ヨウスケ、撮るんじゃない!」
「へへ、野球のユニフォームよりその格好がオマエには似合ってるんじゃないか?」
「恐ろしい事を言うんじゃない!」
「あれれ、そしたらアユさんと一緒に居られないんじゃない?
 それでいいの〜〜〜 兄さん。」
「カナまでオレの事をいじめるのか...」
「ジョークよジョーク。
 それよりも私はお客として来たんだよ。」


カナはオレに買い物カゴを見せた。
どうやらオレに接客をしろと言っているようだ。
他の連中はニヤニヤしながら見ていやがる、なんて友達甲斐の無いヤツ等だ。


「ほらタツヤ、お客さんだよ。」
「わ、分かってるってアユ...」


アユのヤツも笑っている...まさしく四面楚歌の状況だ。
オレは覚悟を決める事にした。


「い、いらっしゃいませ...」
「駄目じゃない若槻君。
 お魚屋さんなんだからもっと元気良く話さないと。」
「す、須藤さんまで...」


オレは泣きそうになった。
ひょっとしたらまだ根に持ってるのかな...って須藤さんに失礼だなオレは。
ええい、もうヤケだ!


「いらっしゃいませ!」


オレの声が商店街に響き渡る。
遊びに来ていた連中はオレを見て大笑いをする。
アユはそんなオレだけ屈託の無い微笑みを向けて話し掛ける。


「クスッ、似合ってるよタツヤ。」


ってオイ...オレの将来、魚屋のオヤジに決定なのか?
けどアユを手離す気は無いし...これって幸せな悩みなんだろうか?
そんな事を考えているとアユはオレの心を知ってか知らずか、俺にだけ聞こえる様に言う。


「頑張ってね、タツヤ。」


その言葉だけでオレの心は満たされる。
魚屋のオヤジって将来も、悪くはないかもな...





晴れ渡る空の下、アユと居られる事を幸せに想う今日この頃だった。



第弐拾八話  完

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