静かな場所−−−
冷たく無機質なコンクリートに囲まれた部屋−−−
その中央に置かれたテーブルの上で静かに眠る男が一人−−−

(またか...)

シンジは今見ているの光景が現実ではない事を知っていた。
過去に見ていたから判っていた。

「ゥグ...」

男の傍らですすり泣く幼いシンジ。
泣き疲れたのか、母親に抱かれて眠る幼い妹のレイ。
涙を流す事無く哀しむ母親のユミ。
それらは古びた映画フィルムのように映像は色褪せ、ノイズが混じっていた。

(知っている...覚えている...ただ忘れていただけ...)

幼いシンジは男を起こそうと揺さぶる。
昨日までだったらそこで起き、苦笑しながら 「おはよう」 と言ってくれた。

「ねえ、起きてよ...」
(無駄だよ...)

幼いシンジの言葉にシンジは心の中で呟く。

「早くしないとかいしゃに遅れちゃうよ...」
(もう起きないんだよ...)

シンジは知っている。

「ねえ、だったら遊んでよ...」
(ダメだよ...静かに寝かせてあげないと...)

幼いシンジも本当は知っていた。

「わがまま言わない...ちゃんと言う事聞くから。
 良い子になるからさぁ...
 ねえったらねえ! 起きてよ!!」

死という概念を受け止めたくはなかった。
判りたくはない、知りたくもなかった、しかし代償は大きかったが知ってしまったモノ。

(やめろ! もう判ってるんだろ! 死んでるって!!
 なんで今になって思い出させるんだよ!
 ...折角忘れていたのに...)

人は思い出を忘れる事で生きて行ける。 だが決して忘れてはならないモノが在る。
遊び疲れておぶってもらった思い出、頭を撫でて誉めてもらった記憶、その背中を見ていつか追い着こうとした想い。

(忘れてはならない事だって判ってるよ!
 でもいいじゃないか辛いんだから!)

その過去が在ったからこそ今のシンジが在る。
それは紛れもない事実である事を理解していた。
だからこそ忘れていた自分を責め、そして自分自身に言い訳をする。

「もう昔の事じゃないか!!」
ガバ!

突然視界が開けた。
上半身だけを起こし、寝ていたにも拘わらず汗を大量に流し体力は消耗している。
火照った体に汗で濡れたTシャツがベッタリと貼り付き不快感でいっぱいだった。

「大丈夫、シンジ君?」
(叔母さん?)

シンジの傍にはユイが居た。
傍にある暖かい存在を感じ、肩で荒く息をして今が現実である事を理解する。

「スイマセン、ちょっと嫌な夢を見たんで...」
「そう...何か冷たいモノでも持ってくるわね。」

返事を待たずにユイはキッチンへと向かう。
シンジは今の時刻を調べる為に時計を手繰り寄せる。
デジタルの数字が正確に今の時刻を表示している。

「まだこんな時間...」

額に手を当て、そのまま倒れ込むように仰向けになる。
時計が指していた時間はまだ4時前、日は昇ってはいなかった。

「またあの夢か...」

父のソウが死んで間もない頃、良く見ていた悪夢である。
あの頃はまだユミとレイが居てくれたお陰で壊れずに済んだのかもしれない。
ならばその二人を失った今はどうなるのか?
二年前、その二人を失った時は全てを捨てる事で壊れずに済んだ。
だが父のような強い男になる。 その手段として選んだ野球を、過去に捨てた去ったモノを再び手にした。
今の仲間達の夢を果たす為にも、昔の親友達との再会を果たす為にも、今一度始めたのだ。
その為には乗り越えなければならない壁がある。
答えを出さねばならない時が近づいている事にシンジは気付いた。











大切な人への想い

第四拾伍話 過去に近づく少女











「...ごちそうさま。」

かちゃりと箸を置く。

「もういいの?」
「...食べる気がしないんです。」

なるべくユイと顔を合わせないようにし、そそくさとキッチンを出て行く。
そこに新聞を読んで微動だにしなかったゲンドウが動く。

「シンジ、朝食は体の基本だぞ。
 しっかり食べて行け。」
「...スイマセンでした...」

新聞を読んでいるだけなのだが、威圧感と正論の為に再び席に戻る。
温かい朝食はそれだけで幸せに繋がるのだが、今のシンジにとっては重いだけで、モソモソとゆっくり時間を掛けて食べ続ける。
それを心配そうに見るユイ。
しかし異変は前触れもなく起きる。
シンジが口を両手で押さえ、いきなり立ち上がった。
吐きそうになるのを堪えるが、平衡感覚を失い、そのままの体勢で体が傾きテーブルに頭がぶつかりそうになる。
その瞬間、ダンッ! ととっさに手をテーブルに叩きつけ、辛うじて体を支える。

「どうしたのシンジ君?」
「待て、ユイ!」

慌ててユイが傍に近づくが今のシンジが普通でない事に気付いたゲンドウがそれを制す。
意識がある筈なのにシンジの目の瞳孔が拡がり、全身を小刻みに震わし、額からは脂汗が流れ前髪がベッタリと貼り付く。
以前にも同じ事があり、まさかとユイが気付く。
シンジは今もガクガクと体を震わせ、カッと開いた眼で一点を見詰めるが何も見えない。
だが記憶の中では次々と映像が移り変わり、昔を思い出させる。

「グェエ...」

胃の中のモノを吐き、力尽きたように倒れ、そこでシンジの意識は途絶えた。

「いかん!」

半開きになったシンジの口からは呻き声しか出ず、ゲンドウは安静にする為に急いでシンジを横に寝かす。
だが触れた瞬間、大量の発汗により体温が奪われ冷たくなっているのが判った。










...「シンジ君。 あれ、シンちゃん居ないの?」

朝、出席を取っている担任のミサトが教室内を探す。
今は野球部の練習がある為に遅刻など滅多にしないのだがシンジの席は空いていた。
不思議に思い、同じ野球部のムサシに聞くがどうやら知らないらしい。

「おっかしいわねぇ。
 連絡もらってないし...大丈夫かしら、決勝も近いのに。」

しゃべりながらも出席簿に欠席と記入する。
ムサシ達も朝練に来なかったシンジを心配していた。
だが練習には出なくても学校には来るものだと思っていただけに驚いていた。










あれから小一時間が経ち、往診にやって来た医者がシンジを診ていた。
倒れた時よりは幾分マシにはなっているものの、まだうなされていた。
一通り診察を終えた医者の見立てでは、心労だと言う。
だがゲンドウとユイには心当たりがあったので驚きはしなかった。

「...どうもありがとうございました。」

ユイは哀しそうにお礼を言い、シンジの傍から離れようとはしなかった。










☆★☆★☆











「やっぱり休みだったのか。
 シンジのヤツ大丈夫かな...」

放課後の練習で事情を聞いたタツヤが心配そうに呟く。
結局ユイから担任のミサトに連絡が渡り、体調がすぐれない為に大事を取って休ませる、との事である。
本当の事は伝えてはいなかったのだ。

「まいったな、最悪のケースも考えた方がいいな...」

その話を聞いていた加持が悪い方向に話を向ける。
理由は今までのシンジの動向と推理からである。
ヒデユキとの再会が 「何か」 をもたらし、それが増大して疲弊して行く。
しかもその 「何か」 は決して良いモノとは思えなかった。
そして心配事は野球部全体にも波及する。
四番やエースというモノは、居ると居ないとでは大きく士気に影響してしまうのだ。
そしてここにシンジを一番心配する者が居る。

「碇先輩、大丈夫かな...」

綾波レイである。
しかも何故かシンジの家の前に立っている。
話せば長くなるが、何故かと言うとレイはいつもシンジを目で追いかけており、どんな些細な事であっても気になってしまう。
となると何故か考えは悪い方へ悪い方へと向かい、練習どころではない。
そして見兼ねたマナが

「心配なんでしょ。
 ここは私に任せて、お見舞いがてらに行ってきなさい。」

それを聞いたレイは二つ返事で答え、顧問の加持に許可を得て、走ってここまでやってきたのだ。
なんの変哲もないマンションの一角。 どこにでもあるような呼び鈴。 その近くに碇という表札が貼ってある。
勇んでここまでやってきたと言うものの、何故か呼び鈴を押すのを躊躇してしまう。

(やっぱり一度電話した方が良かったかな?
 それに何も持っきてないし...普通だったらお見舞いの品ぐらいあってもいいよね。
 でも今月苦しくて手持ちがない...)

考えれば考えるほどネガティブになるのが判ってないらしい。
かと思えば慌てて鞄から手鏡を出して身だしなみを整える。
走ってきたせいで汗をかき、髪はボサボサ。

(これってマズイよねぇ...第一印象は大切だし)

なんと言っても初めての訪問であり、両親とは初対面。 けどゲンドウとユイはレイの事を知っている。
右から...左から...カガミを移動させて何度もチェックして、目にも止まらぬ早さでパパッと整える。
最後にニコッと笑顔を見せ、異常が無いのを確認する。 いざ出陣だ。
キッと真顔になり、ググッと白い指が呼び鈴に近づく。
だがいきなりドアが開いた。

ガチャ ゴツン!

おでこを強打し、白い肌に赤い痕が着く。

「イタタタ...」
「も、申し訳ありません、大丈夫ですか?
 とにかく手当てをしますので中へ...あら。」

ここでようやく二人は顔を見合わせた。

(こ、この人が碇先輩の今のお母さん? ハッキリ言って若いわ...)
「あら、ひょっとして綾波レイちゃん?
 初めまして碇ユイです。」

あまりの若さに驚いて呆然と見ているだけのレイに対し、ユイは大人の貫禄か挨拶をする。

「は、初めまして、綾波レイです。
 あ、シ、シンジ、さん、のお見舞いで来たのですが...」
「クス、ありがとうレイちゃん。
 シンジ君も喜ぶわ。
 さ、上がって頂戴。」

部屋に通されるとシンジは静かに寝息を立てていた。
どうやら今は落ち着いているようである。
しばらくした後、ユイはレイにシンジを任せて買い物に行った。
二人の関係は知っていたので看病を任せたのである。 もちろんレイは快く承諾する。
という訳でシンジの部屋で二人っきりになり、落ち着きを無くしたレイはキョロキョロと部屋中を見回す。

「そう言えば男の子の部屋って初めてなんだよね。」

看病といってもただ見ているだけ、しかも好きな人の部屋なので自然と興味は他のところに行ってしまった。
本棚には所狭しと野球に関する本や雑誌が収められ、机の上は整然と片付けられている。
だが机の上に伏せられた写真立てを見付けた。

「...誰の写真が?」

一旦気にすると頭から離れない。
もしかしたら自分の写真が?
そう考えれば嬉しくなるのだが、もし違う人の写真が入っていたらと考えると見るのを躊躇う。
だがそこでレイの思考は更に進む。

(私の知らない人かな...だとしたら一体どんな人?
 ...もしかして先輩の過去が判るかも...)

自分でも気付かない内に手が伸びる。
好きな人の過去を知りたいという興味はある。 しかし黙って見て良いのだろうかとも問い掛ける。
すぐそこに手掛かりがあるのに、それ以上手が伸びない。
そこにシンジの声が後ろから聞こえた。

「...レイ...」
「スイマセン! 見るつもりはなかったんです、本当なん...ってなんだ寝言か。」

ホッと胸を撫で下ろし、力が抜けてペタンとお尻を着く。
突然シンジが呼んだので、てっきり見られたかと思ったようだ。
しかしそれも束の間で新たな疑問、マナから聞いたシンジの妹を思い出した。

(今 「レイ」 って言った...私を呼ぶ時は 「綾波」 ...もしかして妹さんを呼んだの?)

気付くとシンジが冷や汗を流し、苦悶の表情を浮かべていた。
時折漏れる呻き声でレイの心配はより一層に高まる。

(何を苦しんでるんですか?)

少しでも苦痛が薄れるよう、流れ落ちる汗をハンカチで拭き取る。
しかしその手を不意に掴まれる。
それはシンジの手。 力は無く、ただ触れた程度かもしれない。
だがレイにはその手が何かに脅え、何かにすがるように求めている事が判った。

「大丈夫ですよ、碇先輩。」

そっとシンジの手を両手で包み込む。
そこから暖かさが伝わり、シンジの険しい表情が次第に和らいでいく。
シンジの唇からは再び規則正しい寝息が出始めた。

「.........ポ。」

そこで何故か頬を赤らめるレイ。
キョロキョロと周りを探り、誰もいない事を確認するとググッと身を乗り出す。
静かに目を閉じて自分の唇をシンジのそれに近づけた。

(そ〜っとそ〜っと...)

何も見えないので聴覚だけを頼りにする。
ドキドキと胸が高鳴り過去に一度だけシンジの頬にキスをしたのとその時の自分のセリフが思い出される。

(ホントは唇にしたかったんですが...
 やっぱり本当のキスだけは先輩からして欲しいんでほっぺにしました)


確かに自分はそう言った。
だが今はお互いの息が掛かるほど近くにいる。
キスという誘惑には勝てないのか、磁石の+極と−極が引き合うように徐々に近づいて行く。

(ホントのキスだけは...ああ、やっぱり我慢できない!)

そうである。
レイの突然の告白から既に2ヶ月以上が過ぎ、恋人同士になるどころか返事すらまだなのである。
従って餓えたオオカミの前に丸々と太ったブタを置くのと同義。 食らい付かなきゃ絶対におかしい。
そして二人の唇が触れ合った...と思いきや邪魔者が現れた。

「ごめんなさいね、任せっきりにしちゃ...って...」

ガチャリとノックもせずにユイは入ってきた。
レイはあとちょっとの距離で固まる。
その場には妙に気まずい空気が流れていたという。

「お邪魔、みたいね...」

だがこれは建前であって本音は

(そう言えば二人っきりだったんだから何かあってもおかしくなかったわね...)





一方の第壱高校野球部は練習も終わり、ミーティングを行っていた。
だが議長を務める筈のタツヤは隅に追われ、今はヨウスケが務めている。
議題は 「碇シンジと綾波レイの仲は発展するのか?」 である。
そして意見は真っ二つに分かれていた。
「お見舞いという特殊な状況は二人の仲を発展させる」 だの 「所詮は碇シンジだよ」 などと議論は白熱し、いつの間にやら部外者まで交えて賭けをやらかす者まで現れる。
オッズは1.2倍と10倍と出た。 どっちが1.2なのかはあえて言わないが...
もちろんその賭けを進めたのはミサトであった。










☆★☆★☆











日は既に沈み、シンジの部屋には明かりが点いていた。
その部屋でユイとレイは何やら話をしている。
話は弾んでいるようで、レイは身振り手振りを交えて楽しく話す。
その会話によりシンジは覚醒し始めた。
ぼんやりと視界が開き、耳には二人の会話が少しずつではあるが入ってくる

(誰か居るの?)

まだ覚醒しきらない頭で考える。
ピントが合っていないせいか、そこに誰が居るのかが判らない。

(一体誰が...)

次第にピントは合って行くのだが、その途中でシンジは記憶の中に一致する人物が浮かんだ。
昔は良く見ていた光景だった。
自分にとってとても大切な二人が楽しそうに話をする姿。
それを見るだけで何故だか優しい気分になれた。
だがその記憶とは、にわかには信じられない為に小さい声で名前を言う。

「レイ? それにかあさんも...」

普通ならば聞き取れないような声だったにも拘わらず、二人の耳にはしっかりと届く。

「起きたんですか、先輩。」
「大丈夫、シンジ君?」
「...あやなみ? それと叔母さんだったんだ。」

記憶とは違っていたが、それでもレイとユイは大切な人に変わりはなかった。
傍に居てくれる人が大きな安心を与えてくれるとは思わず、シンジの目から涙が零れ落ちた。

「ど、どうしたんですか先輩?」
「なんでもないっ。」

慌てて涙を拭う。
男であるが為に涙を見せたくはなかった。
ユイは二人に気を利かせて部屋から出て行く。
その出て行く際にそっとレイに 「頑張れ」 と耳打ちした。

「どうしたの綾波?
 顔、赤いけど...」
「ア、アハハハ。
 なんでもないんです!」

シンジは目は覚めたものの、まだ起き上がれるまで回復はしていなかった。
レイはそれが判っていたので、ベッドの横にちょこんと座る。

「...ありがとう綾波、傍に居てくれて。」

不意にシンジが感謝の言葉を伝える。
力の無い笑顔だったので、レイの胸が締めつけられる。
寂しそうな笑顔の奥にあるモノに気付いていたのだ。

「...何をそんなに悩んでるんですか?」

好きな人の力にもなれない苛立ちも手伝って、口にしてしまった言葉。
だが言ってしまった言葉を飲み込む事は出来ず、自分も一歩踏み込む覚悟でじっと見詰める。
やがて永遠とも言える時間が過ぎ、シンジは静かに息を吐いて視線を天井に向ける。

「もう二年も前になるんだ...全てをなくして、逃げ出したのは...」

寂しい目をしながら打ち明けた。
誰かに聞いてもらわなければ、押し潰されそうだった。
それだけの過去をシンジは持っていた。
レイはギュッと手を握り締めて黙ってそれを聞く。

「最初に失ったのは七年前...父さんが死んだ。」

言葉にしてみれば短く、普段何気なく目にする単語であった。
シンジはそれを素っ気無く言う。
だがその分リアリティがあった。

「それを聞かされたのは授業中だった。
 いきなり教室のドアが開いて先生が言ったんだ... 「お父さんが倒れた」 って。」

ハッキリと思い出し、目が虚ろになっていく。

「案内された場所は霊安室だった。
 静かでとても冷たい感じのする部屋の真ん中で父さんは寝かされてた...
 信じられなかった...だっていつも見ていた寝顔をしてたんだよ、父さんは。
 ...けど冷たかった、温もりは感じられなかったんだ...」

思い出すだけでも哀しくなるのに、今はもう涙は出ない。

「葬儀が終わると、ちっぽけな白い箱を母さんは大事そうに持ってた。
 すごく軽かった...どんなに背伸びをしたって父さんには敵わなかったのに、僕よりも小さな箱に入ってるって言うんだ。
 ウソだと想いたかった...けどそれは事実だと受け止めなければならなかった。
 護るべき人がまだ傍に居たから。」
「...お母さんと妹さんですね...」
「知ってたの? レイが居た事...
 綾波と同じ名前なんだ。」

少し驚いた感じで顔を向けるとレイは黙って頷いた。

「そっか、知ってたんだ。
 綾波の言う通りその二人が傍に居てくれたお陰で僕は強くなれた。」
「...妹さんって、どんな方だったんですか?」

レイは気になっていた事を聞く。
ここまで来た以上は後戻りはできない。 全てを受け入れなければならなかった。
一方、シンジは迷っていた。
だがしばらく考えたあと、力を振り絞って上体を起こして机に視線を送らせる。

「机の上に写真がある...それを見てくれれば判る...」

その言葉にレイの心臓は高鳴る。
気になっていた伏せてある写真立て。 そこにシンジの妹が写っていると言う。
レイはゆっくりと立ち上がり、恐る恐るそれを手に取る。

「...これが、先輩の、妹?」

レイは自分の目を疑う。
そこには中学時代のシンジと、髪と瞳の色以外は自分とうりふたつの容姿をした少女が写っていた。
その二人は仲睦まじく寄り添い合い、どれだけ妹が兄を慕っているのかが判った。



第四拾伍話  完

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