「アスカ...」

シンジは今、ベッドで寝ているアスカを見下ろしていた。
いつも見慣れた顔だったが、寝顔を見るのは久しぶりだった。
しかも苦しんでいるのは何年も昔のことだった。

「アスカ、大丈夫...?」

アスカの苦しむ姿を見ると胸が痛む。
そっと頭を撫でるように手を添えると、アスカが目を覚ました。

「だ、誰なの...?」
「...僕だよ、アスカ...」
「シ、シンジなの?」

無理に起き上がろうとするが、体に力が入らなかった。

「ダメだよ、まだ寝てなきゃ。」
「本当にシンジなのね?」

似つかわない不安な顔を向ける。

「そうだよ。
 だから安心して。」

もっと近づこうとしたとき、いきなりアスカが上体だけを起こして抱き着いてきた。
両の腕をシンジの背中に回し、力の限り抱擁する。

「ア、アスカ?」

突然のことで驚いたが、アスカがシンジの名前を繰り返し呼んでいるのを聞いた。
シンジは安心させるように背中をポンポンと優しく叩く。

「もう大丈夫だから...」

落ち着かせようと優しく語りかけたが、聞こえるのは嗚咽だけだった。
ここまでくると、どうしようもないので、あきらめてアスカ自身が落ち着くまで待つしかない。
そして時間が経つにつれ、アスカの震えも収まり、抱きしめる力も弱くなってきた。

「僕はここにいるから...」
「シンジ...なのね...」

すっとアスカが離れる。
だが両腕はシンジの首に回したままだった。

「...ゴメンね...」

シンジが謝る。
何に対してだが判らなかったが、謝らずにはいられなかった。
だがそれがアスカを安心させる。

「...バカ...」

いつもの悪口が戻り、それがシンジをホッとさせる。

「なんでアンタが謝るのよ...」
「だ、だってアスカが泣いてたから...」
「えっ?」

そのときになって、ようやく自分が泣いているのに気づいた。
涙は頬からアゴに伝い、僅かな光りに反射して光っていた。
そして涙は堰を切ったように溢れ、アスカは両手に力を込めてシンジを引き寄せる。

「ア、アスカっ!」

シンジの体重がアスカに圧し掛かる。
頬と頬が触れ合い、アスカの柔らかさが心地好かった。

(アスカが泣いているのに...)

そう思いながらも、アスカを感じると不思議と安心する。
アスカもまた泣きながらシンジの温もりを感じる。
お互いに名前を呼べば、相手は応えてくれる。





外の雨はいつの間にか上がり、月が優しく2人を照らしていた...











大切な人への想い

第七拾話  過ぎ去った夏(其ノ拾参)











チュンチュン...

鳥の囀りが朝の到来を教える。
昨日とは打って変わって天気は雲一つない晴れだった。
太陽の光はカーテンの隙間から部屋の中に入り、眠り姫を起こす。

「...ん...ぅ...」

瞼がゆっくりと開かれ、蒼い瞳が現れる。
最初に入ったモノは真っ白な天井だった。

「知らない天井...ってなワケないわね。
 さすがに何日も見てれば...って、あれ?」

左手は布団の中ではなく外気に触れている。
それに人の温もりを感じた。
ちょっと力を入れてみると、誰かの手だというのが判る。
しかもこの触り心地には覚えがあった。

「...まさか...」

アスカの脳裏に1人の気の弱そうな少年が思い浮かんだ。
おそるおそる横を見てみると、予想通りの気の弱い少年が寝ていた。
その寝顔はまるで天使のようにキレイで安らかである。

「バ、バカシンジ...あ、あ、あ...」

みるみるうちに顔が赤みがかっていく。
恥ずかしさなのか、それとも怒りなのか...
だがしっかりとアスカの左手に置かれていたシンジの手に気づくと、不思議と優しい気持ちになっていく。

「ホント、バカなんだから...」

ぎゅっと手を握ると安心する。
スゥスゥと静かな寝息を聞くと優しい気持ちになる。
あどけない寝顔を見ると、無性に悪戯したくなる...

「まったく、男のクセに寝顔はカワイイのよね。」

上体を起こしてニコニコとシンジの寝顔を堪能し始める。
柔らかそうなほっぺたを突ついてみたりする。

「...む...や、やめ...」

シンジの口から弱々しい声が漏れてくる。
それが面白いのか、アスカは何度も突つく。
そしてあることに気づいた。

「...」

少々思案した後にシンジを抱き起こし、両頬に手を添える。
普段殴ったり蹴ったりしないと起きないので、こんなことでは目を覚まさないようだ。
アスカはじっとシンジを見つめる。
特に唇を...

(だ、誰も見てないわよね...)

徐々に近づいて行くアスカの顔。
目標はただ一つ、シンジの唇だ!
目をつぶり、心臓はドキドキドキドキと早鐘を打つ。

(シンジ...!)

あとちょっと、というところで人の気配を感じた。
目を開けて横目でドアを見てみると、微かに隙間が開いていた。

「...」

一瞬の間ができた。
ドアの向こうで覗いている誰かも、気づかれたことが判った。
だが最後の1人も目が覚めた。

「...アスカ...」

誰だかは判った。
横を向いていた目が、すすすっと動く。
そこには真っ赤になったシンジが目を覚ましていた。

「...お、おはよ...」

シンジから、なんとも場違いな言葉が出た。
しかも情けなく笑っている。

「ふんっ!」

アスカが両手をぱっと離した。
すると支えがなくなったシンジは、ボスっとベッドに顔から落ちてしまう。

「な、なにするんだよアスカ...」
「うるさいっ、男がくどくど文句を言わない!
 ...それからそこっ、いつまで覗いてんのよ!!」

ドアに向かって怒鳴り散らす。
すると...

「あらアスカちゃん...すっかり良くなったみたいね...」

キョウコが現れた。
しかも手にはカメラを携えている。
その姿を見たアスカは、徐々に怒気が充填され...一気に爆発する。

「カメラなんて持ち出して、なにやってんのよママ!!」










しばらくするとアスカとシンジが2階から降りてきた。
アスカはなにやら怒っており、シンジは左頬を押さえてトホホな顔をしていた。

「あら、おはようアスカちゃん、シンジ。」

先にテーブルについていたユミが紅茶をすすりながら言う。

「おはようございます、おばさま。」
「おはよ...母さん。」

いつも通りに挨拶が交わされ、定位置につく。
だがそこでシンジの顔が曇った。

「おはよ、レイ。」

アスカが料理をしているレイの後姿に言った。

「お、おはよ...」

だがレイは振り返らなかった。
それがアスカに違和感を覚えさせる。
なにかあったのかとシンジを見れば、レイを避けている気配を感じた。

「ど、どうしたのよアンタたち...」

答えを求めるようにユミを見ると、彼女もまたいつもと違い、力無く笑っているだけだった。

(ホント、参ったわね...)

ユミは昨日のことを思い出す...











パン! パン!

「アナタたち今までどこに行ってたの、こんなに遅くなるまで連絡もナシに!」

普段決して見せない怒りを露わに、自分の子供であるシンジとレイを叩いた。

「ゴメンなさい...」

よほど堪えたのか、シンジの声は沈んでいた。
叩かれた頬は真っ赤になったが、手を当てようとはしない。

「こんな雨の中、一体なにをやってたの!」

その質問がきたとき、レイが怯えた。

「レイ...?」

自分の愛娘の変化に気づき、近づこうとした。
だがそのとき、レイは2階の自分の部屋へ逃げるように走っていった。

「待ちなさい、レイ!」
「待って、母さん!」

ユミは後を追おうとしたが、シンジに止められた。
何事かと思って振り向くと、シンジは静かに首を振る。

「今はそっとしておいてあげて、母さん...」

ひどく哀しい目を向けられ、ユミはなぜかシンジの言う通りにした方がいいと思った。

「判ったわ。
 ...でも今までどこに行ってたの...そのくらいは教えてくれる?」
「...湖...」

素っ気無くシンジは答える。
しかも目を合わせない。

「そこで、雨がやむまで...」
「そ、そう...
 とにかく今は大事な時期なんだから、気をつけてねシンジ。」
「うん...心配かけてゴメンなさい...」










...という具合で、なにかがあったのは間違い無かった。
だが理由を聞いても2人とも 「ゴメンなさい」 と謝るだけで話してはくれない。

「...困った子たちねえ...」
「なにか言いました、おばさま?」

ユミの独り言が気になるアスカ。
だがユミは言葉を濁すだけで教えてはくれない。

「ねえシンジ、今日はどうするの?」

場の空気を入れ替えるために新しい話題を振る。

「僕?
 一日中練習だね、槙村さんも付き合ってくれるって言うし。」
「ふ〜ん...ま、ガンバリなさい。
 それより今日は晴れなのかな?」

ピッとテレビのリモコンでチャンネルを変える。
何度か変えてると運良く天気予報がやっており、台風情報が流れていた。

「今日はなんとか持ちそうかな?」

台風の予想進路と速度が表示され、今夜半から雨が激しく降ると出ている。









☆★☆★☆










時は流れてお昼過ぎ。
アスカはヒマを持て余し、ぶらついていた。

「ふ〜む...お星地蔵...なんかウサン臭いわね。」

お土産屋の 「かざぐるま」 から出てきて真剣に悩んでいた。
腕を組んで首を傾げてるところから相当である。

「店員の話が正しければ1時間ほどで行けるって言うけど...はてさて。」

空を見上げると青空が見え、そのまま歩く。
となると前方不注意になり...

「「きゃっ!」」

誰かにぶつかった。
声からすると女の子である。

「ど、どこ見て歩いてンのよ!」

自分を完全に棚に上げているアスカ。
だが相手を見ると怒りは静まった。

「...レイじゃない。
 大丈夫?」
「あ...」

だがレイは元気が無いようだった。
しかもアスカを見るなり、すぐに顔を逸らす。
朝からこんな調子だったので、避けられているとしか思えない。

「...ねえレイ、アンタなにか隠してない?」
「隠してないよ...」

レイは否定するのだが、アスカに言わせれば 「顔に書いてあるわよ」 である。
だがここまでくるとレイは絶対に話さない。
1人悩みを抱え込んで自滅するタイプであった。

(ホント世話のかかる兄妹ね...)

アスカは基本的に姉御肌である。
レイの悩みをなんとかしようとして頭を働かせると...

「そうだっ!
 ねえレイ、今ヒマよね?」
「...う、うん...」
「じゃあ決まりね、さっそく行くわよ!」

強引にレイの手を取って引っ張る。
こうでもしないと言うことを聞いてくれないほど悩んでいるからだ。

「ど、どこに行くの?」
「ふっふ〜ん、聞きたい?」

思いっきり悪戯な笑みを浮かべる。
逆らえないことを知っているレイは、黙って首を縦に振るしかない。
そしてアスカは言った。

「お星地蔵よ!」









☆★☆★☆










アスカとレイは一路、吉野山の山頂にあるお星地蔵へ。
この山はバーベキューをした河原をちょうど見下ろすようにそびえ立つ。
お土産屋さんの話では小一時間で頂上まで登れるくらい小さな山らしい。
しかし...ちょっとしたハイキング程度ですぐ上まで登れるという言葉は大きな間違いであった。

「一体いつまで登ればいいのよ!」

アスカが叫ぶと鳥たちはバサバサと翼を羽ばたいて逃げていく。
レイもう〜んとうなって山を見上げた。

「...まだ30分しか経ってないよ...」

レイはハンカチを出して汗を拭き取る。
木が生い茂る山の中といっても、山登りをしているからしょうがない。
レイの言う通り、登り始めてまだたったの30分。
しかし30分は30分でも、それがこんなに急なキツイ登りだとは誰も予想はしない。
一応テニスをするために持ってきたシューズを履いてきたからよかったものの、サンダル履きできたら大変なことになっていただろう。
道は細く、急な上りにくねくね曲がっているし、木の根や石がゴロゴロしている。
おまけに湿ってぬかるんだようなところもあり、歩くのに一苦労だった。

「あと半分!
 もう少し頑張れば...」

アスカはヤケに気合が入っており、それをレイは不思議に思っていた。
そもそもお星地蔵とは一体なんなのか?
休憩も終わり、そろそろ出発というところで、聞いてみることにした。

「アス姉、そろそろ教えてくれてもいいでしょう...
 お星地蔵って一体なんなの?」

その質問にアスカは腕を組んで、う〜んと考えてしまった。
そしてしばらく悩んだ後、レイの方に振り返り、アスカも聞く。

「そんなに知りたい?」
「うん...」
「ホントはお星地蔵を見つけてからが良かったんだけどね。」

ふぅ、と一呼吸するとアスカは話し出した。

「なんでも小さくてとても可愛いらしくて...そのお地蔵様にお願いすると、片想いが叶うんだって...」

そのときのアスカの顔はとてもキレイだった。
恋をする女の子はキレイだというが、まさにその通りだった。

「片想いが...?」

その言葉を口にした途端、レイの表情が沈む。
対照的にアスカはこれ以上ないくらいに輝いていた。

「恋を叶えるお地蔵様なんだってさ。
 鈍いシンジには効果ないかもしれないけど、やっぱりそんな話を聞くとねぇ。」

恋を叶えるという言葉にもレイは反応し、イヤでも昨日のことが思い出された。
拒絶されたときのことを...
それが嫉妬や怒りや憎しみなど、アスカに対する負の感情が首をもたげ、もはや叶わぬシンジへの想いがレイを狂わせていく。

「アス姉も兄さんに恋してるんだもんね。」
「そ、そうよっ、アタシはアイツが好きなんだから!」

顔を赤くして、どもりながらも認めた。
それを見たレイの表情は歪み、徐々に笑いに変わっていく。

「ど、どうしたのよ、レイ?」

その変化についていけない感じがしたアスカが聞く。

「アス姉...昨日、私と兄さんに、なにがあったのか教えてあげようか...」

普段からは想像できないほど、気味の悪い声だった。
そのままアスカの答えを待たずにレイは続ける。










「湖にいって、ボートに乗って、そのとき雨が降ってきたの...」










「雨をしのぐために浮島の小屋にたどり着いて、そこでね...」










「私...」










「兄さんに...」










「抱かれたわ...」


















☆★☆★☆










強い陽射しと蝉時雨を浴びながら地面にくっきりと濃い影を落とし、
周囲は良く手入れが行き届き、林の中に入ったら楡や楠木が自然のままに生い茂っている。
そんな森の奥に社がひっそりと建っていた。
檜の皮でふかれた屋根に黄色く色あせたしっくいの壁、塗り落ちて黒ずんだ柾目の柱、小さくて質素だが立派な社。
シンジは今、山の中腹にある神社にきていた。
名前は 「吉野美晴神社」 といい、静御前にゆかりがあるとかないとか...
そんな神社に参拝をしにきたのかというと、そうでもない。

「はぁ...」

神社の裏手からは星降る里高原全体を見渡すことができる。
だがそんな景色を見ても今のシンジにはなんの感慨も湧かない。
頭に浮かぶのは2人の少女、アスカとレイだけであった。
長い間、口には出さずにいた悩みが今、シンジに重く圧し掛かる。

(あのときはアスカが見えた...)

もしあのときレイではなくアスカが迫ったのならば、はたしてシンジにはレイが見えたのだろうか...
シンジは出しようのない答えを捜し求める。

「大好き、か...」

ずっとそばにいてくれた幼馴染みのアスカ。
護らなければならない血の繋がらない妹のレイ。
どちらも大好きであり、どちらも選べない。
しかし人は成長し、いずれ大人になる。
そのとき自分のそばにいてくれる人が誰なのかを、シンジは思い浮かべることができない。
見上げるといつの間にか青空は隠れ、雲行きが怪しくなっていた...










「僕は誰が好きなんだろう...」









☆★☆★☆










「兄さんに抱かれたわ。」

突然のレイの告白。

「だから、そんなところにわざわざ行かなくてもいいの、私...」

だがアスカは意外にも冷静であった。

「ウソね。」
「ホントよ!
 私は、昨日...兄さんに...」

昨日を思い出すだけで辛く哀しくなる。
しかもアスカはシンジを信じて疑わない。
それがレイをさらに苛立たせる。

「なんでそう思えるのよ!」
「決まってるでしょ。
 アイツにそんな度胸あるはずないわ。」
「兄さんだって男よっ!」
「それでもアイツは手を出さないわ。
 アンタなにも判ってないのね。」

なんでもかんでも判っている。
そんな口ぶりがイヤだった。

「それじゃアス姉は兄さんの心が判るって言うの?
 ...だったらひどいよ!」
「な、なに言ってんのよ...?」

アスカは手を伸ばすが、レイはじりじりと後ろに下がる。
あんな辛い思いをしても、シンジの心を捕らえることができない。
それなのにシンジの心にはいつもアスカがいる。
それが今のレイとアスカの差だった。

「どうせ私が勝てないのが判ってたんでしょ...
 なにがライバルよ...」

出てくるのは涙と悔しさとアスカへの憎しみだけだった。

「そんなに私がフラれるのが見たかったの...
 誘っても抱いてもらえなかった女がそんなに見たかったの!」
「レイっ!」
「離してっ!」

アスカがレイの腕を取るが、すぐに振り解かれた。
レイは掴まれていた手首を押さえ、紅い瞳でアスカを睨む。
そして吐き捨てるように言った。

「...ひどい女...!」

レイはそのまま逃げようと、アスカに背中を向けた。
だがその背中に言葉が投げられる。

「そういうアンタが一番ひどいじゃない!
 抱かれればずっとそばにいてくれる、そう思ったんじゃないの?
 愛するんじゃなくて縛りつけようとしているのよ!」
「アス姉になんか私のこと、絶対に判らないよ!」
「判らなくって結構よ、アンタは自分のことしか考えてない。
 シンジのことなんか全っ然考えてないでしょう!」

アスカの言葉が胸に突き刺さり、感情の赴くままに流されていたレイの言葉がそこで途切れた。
昂ぶった気持ちが徐々に静まる。
だが、それでも抑え切れない気持ちがあった。










「だって...だって仕方ないじゃない...」










いつの間にか空は曇り、雨粒がポツリと落ちた。










「あの時だって、兄さんの中にはアス姉がいた...」










レイの涙に合わせて雨が降り始める。










「だから抱いてくれなかった...」










小さくて雨の降る音に消えてしまいそうだったが、アスカの耳にはしっかりと届いた。










「...ウソ...」










雨は次第に強くなり、2人を濡らす。
しかし2人にとって、そんなことはどうでもいい。
今はお互いの目の前にいる少女だけしか目に入らないのだ。

「仕方ないじゃない...」

力なくうな垂れ、後退る。
アスカは先ほどのようにレイを追うことはできない。
もはやレイのことを考えてやれなかった。

「そうでもしなきゃ私を見てくれない!!」

叫び、首にいつもかけられている水晶のネックレスを引き千切る。

「何が幸せに恵まれますようによ!
 こんなもの...こんなもの...!」

シンジからの誕生プレゼントを握り締め、嫉(そね)みと妬みと憎らしさからアスカを睨む。

「アスカがいるんじゃ、そんな願い、叶うはずない!」

ネックレスをアスカに向かって投げつけ、雨の降る中どこへともなく走り出した。
アスカは追うことを忘れて1人佇み、自分の幼馴染みを想う。










「シンジがアタシを...」



第七拾話  完






―――予告―――



え〜と...槙村ヒデユキです

何やらオレの知らないところで話が進んでいく...出番ナシだよ今回

ま、それは置いといてと、来週の話だな

ついにシンジ君たちを襲った事故が明らかになるようだぞ

しかも2回に分けてやるそうだ

色々とあるみたいだね、あの3人には





次回

大切な人への想い

「過ぎ去った夏(其ノ拾四)」



注) 予告はあくまで予定です





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