プルルル・・・

 

            プルルル・・・

 

                    プルル・・・ガチャ・・・

 

 

「・・・もしもし・・・」

「あ、ミユキ?」

「・・・なんだ、ノゾミか・・・」

親友に対してぶっきらぼうに言う。

さすがのノゾミもそんなことを言われたら文句の一つも出る。

「なんだとは何よ、その言い方!」

「ごめん・・・」

「ま、今日は色々あったから許してあげるわ」

いつもと変わらない態度でノゾミは接する。

中途半端な慰めはミユキの場合逆効果な恐れがあるからだった。

「でも驚いたよね、今日は。まさか六分儀さんが甲子園に出場するなん・・・ってことは・・・」

「・・・だよね、お兄ちゃんやケンスケさんと闘う・・・」

2人ともシンジの強さを知っているので、本戦では必ず当たると思った。

だが本当の心配は別のところにあった。

 

「・・・ねえノゾミ、六ぶ・・・碇さんってお兄ちゃんたちに逢ったのかな・・・?」

ミユキはあえてシンジのことを碇の名前で言う。

「もし昨日レイのお墓参りに行ってたなら、考えられ・・・まてよ・・・もしかしてお姉ちゃん・・・」

確かあのとき、昨日ヒカリが帰ってきたときの様子は変だった。

まるで何かを避けるようにしていた節があったのだ。

「・・・逢ってるかも、みんなに・・・」

「ホント?」

「だってお姉ちゃんの様子、おかしかったもん」

ノゾミのカンが働き、ある程度のことは推測できた。

「うん、絶対逢ってるわよ、お墓参りのときに」

「じゃ、じゃあ・・・」

だがその推測は最悪のケースでだった。

 

 

 

 

 

「うん・・・アスカさんともね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


大切な人への想い

第七拾六話 親友への想い


 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が変わり翌朝、時間はまだ太陽が産まれたばかりの頃である。

チュンチュン・・・チチチ・・・

新しい朝日は全てのモノに新しいエネルギーを与える。

はずなのだが・・・

「・・・もう朝なの・・・」

綾波レイが恨めしく朝日を眺める。

一睡もしていないのか、目はしょぼしょぼだった。

「鈴原ミユキと洞木ノゾミ・・・なんとかして2人と話さないと・・・」

自分が六分儀レイと似ているせいで、どうやって接触すればいいのか判らない。

一晩中考えても答えは出てこなかったのである。

「・・・ダメ・・・顔洗って目を覚まさなきゃ・・・」

よたよたよ重い体を動かして洗面所へと向かう。

壁にかけられた鏡を見ると自分がどんな顔なのかが判った。

「ひっどい顔・・・」

目は充血し、その下にはクマができており、髪はボサボサ。

一発で寝ていないのが判ってしまう。

 

 

「おはよ、綾波」

身だしなみを整え、部屋に帰る途中、ばったりとフジオにであった。

当然顔を見ると一発でバレてしまう。

「・・・ひょっとして寝てないの?」

「ははは・・・枕が変わると眠れなくって」

レイは適当にごまかして早々に立ち去ろうとした。

だがフジオは気づいた。

「・・・碇先輩か・・・?」

フジオの言葉にギクリとして歩みが止まってしまい、そのリアクションがフジオの考えを確信に至らしめる。

「・・・フジオ君には関係ないわ・・・」

「いや、あるね。 オレたちはナインなんだ。」

仲間を想う気持ち。

だがフジオには別の気持ちもあった。

「何があったのか教えてくれないか? ひょっとしたら力になれるかもしれない」

尊敬する人、碇シンジを助けたかった。

「碇先輩がいなかったら今のオレはいない。 オレは先輩の力になりたいんだ!」

「イタっ! 痛いよ・・・!」

「ごめんっ・・・」

熱くなり、知らぬ間にレイの腕を力任せに掴んでいた。

解放されたレイは赤くなった手首を押さえる。

そこからフジオの気持ちが伝わってくるような気がした。

だが差し伸べられた手を取る気にはなれなかった。

「・・・ほっといて・・・」

「なぜだっ! 何か知ってるんだろう、教えてくれ!」

「アナタに何が判るの?」

レイの向けられた目が冷たく感じられ、フジオは言葉を失う。

次の瞬間には哀しい目に変わり、レイはその場から離れていった。

同時にフジオは自分が部外者扱いされたことに憤りを感じた。

「オレは碇先輩が心配なんだ! そんな言い方はないだろ!」

レイの背中にぶつけるが、振り返ってはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは喫茶店 『CAT’S EYE』 である。

昨日から下宿しているアユたちは今日から本格的に店の手伝いを始めていた。

で、忙しいお昼時も乗り越え、お客もまばらになった頃。

「ふぃ〜・・・終わったァ」

ミドリがカウンターに突っ伏す。

ランチタイムの疲れがどっと出たのだろう。

「ハイ、お疲れ様」

ミキから冷たいモノが出された。

ミドリは嬉しそうに飲み干す。

「でも今日はホントに助かったわ。 みんな、どうもありがとう」

ミキが心からお礼を言う。

そもそも今日の客の出入りはいつもより遥かに多かったのだ。

その激闘が終わり、ようやく休憩となった。

「そういえばさ、でっかいカメラもってた人がいたよね」

休憩時間ともなると疲れが消えたのかミドリが元気になる。

「やっぱあれかな、東雲高校の取材」

「そうね、毎年のようにくるからね」

「「「それホントですか?」」」

信じられず、一斉に聞いてくる。

だが地元のミキにとっては別に驚くことでもなかった。

「ええ、スポーツ誌はもちろんTV局の取材なんてのもあったわ」

格の違いとでも言おうか、さすがは名門とまで呼ばれる学校であった。

その凄さはまだ続く。

「ここ数年は特にね。 去年、一昨年と彗星の如く現れたものすごい1年生レギュラーがいたのよ」

「確か・・・岩瀬トシフミと鈴原トウジですよね」

「そっか、昨日偵察に行ってきたのよね」

昨日、ミドリ、ミズホ、カナの3人は東雲高校へと偵察に行ってきたのである。

「そうよ、どうだったのミドリ」

アユが気になるのか聞いてきた。

だがそれを思い出しただけで途端にミドリが暗くなる。

どうやらミドリは感情を表に出すタイプであった。

「どうだったって・・・スゴイの一言よ・・・」

「そりゃあ判るわよ。 私が聞きたいのはどこがどうスゴイのかって」

「どこがどうって・・・とにかく全部スゴイの・・・」

 

 

ガキン!

快音と共にボールは飛び、高く張られたネットにボールが当たる。

それをミドリ、ミズホ、カナは呆然と見ていた。

「何よ、あのバッターは・・・」

ガキン!

力強いスイングから鋭い打球を産み出す。

快音がする度にポカーンと口を開けて空を見上げ、ボールがフェンスに当たってスタンドに落ちるのを見届ける。

「多分あれが東雲高校の四番、鈴原トウジね・・・」

スパーン!

今度はボールがミットに突き刺さる音がした。

「今度は何?」

「・・・あれ、見て下さいよ・・・」

カナが指したところはマウンドで、長身のピッチャーが投げているところだった。

180台後半まで伸びた身長を活かした投球はボールを投げ降ろすようであり、スピード以上に迫力が違う。

「なんなのよ、あのピッチャーは・・・」

「あれがエースの岩瀬トシフミね」

「さっきまで見てた二軍とは全然違いますね・・・特に個人の能力が」

実は一軍の前に二軍の練習も見ていたのだ。

とは言ってもただ単に間違えただけであるのだが・・・

「・・・さっきから気になってるんですけど・・・カメラマンや記者さんがたくさんいますね」

辺りをザっと見ても、それらしい人がよく目につく。

「アナタたちは初めてきたの?」

突然声をかけられた。

「はぁ・・・そうですけど」

「だったらあのバッターと、あそこのピッチャーはよく見ておくことね。 甲子園には怪物が棲んでいるってよく言うけど、あの2人は中でも別格よ」

カメラを抱えた女性だった。

「鈴原トウジに岩瀬トシフミ。 あの2人がいる限り、東雲高校が今年も優勝するわね」

「あの・・・どちら様ですか?」

「あ、ゴメンね。 ハイこれ」

名刺を差し出す。

「岡沢アキ・・・」

「フリーのカメラマン兼ルポライターなんだ。 よろしくね」

気を良くしたアキは東雲高校のレギュラー1人1人をこと細かく説明し始めた。

 

 

「・・・というワケなのよ・・・それを聞いてオマケに見てきたから気が遠くなってきたわ」

見てきたモノにしか判らないことがある。

事実、メディアから得るモノと実際に自分の目と足で得たモノとでは迫力が違う。

東雲高校の場合は専用グラウンドがあるお陰で受けるショックは並々ならぬモノがあった。

「もし当たったら、ウチには勝ち目ないわよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第壱高校の練習場である風早高校グラウンド。

他地区の甲子園出場校を一目見ようと辺りは生徒たちであふれていた。

見渡す限り、ひと、ヒト、人。

野球部も最初の内は戸惑っていたが、2日目ともなると慣れてきたのか、人目もあまり気にならなくなっていた。

しかし気にする者がいた。

「・・・今日はきてないのかな・・・?」

綾波レイである。

探しているのは無論、鈴原ミユキと洞木ノゾミである。

すでに甲子園の手伝いの練習も終わっているのできてもいいのだが、姿はどこにもなかった。

スパーン

シンジの投げたボールがミットに突き刺さる音がした。

だが肩馴らしなのか元気がないのか、軽い音でしかなかった。

とりあえずは普段通りに練習メニューをこなしてはいるが、その心の中はどうかは判らない。

恋人とは呼ばれているが、相手の心が判らないのがこれほど辛いモノとは思わなかった。

「レイっ! も〜、なにボケっとしてるのよ」

考え事をしていたので、さっきからマナが呼んでいたのに気づかなかった。

「消毒液とシップがなくなったからさ、もらってきて欲しいのよ」

甲子園も近くなり練習にも熱が入ると、どうしてもケガが多くなってくる。

手持ちの薬が底を尽きかけていた。

「じゃあ保健室に行ってもらってきますね」

言うが早いか、あっという間に走っていった。

だがその直後、シンジが救急箱を持っているマナの許にやってきた。

「どうしたのシンジ君?」

「シップ薬、まだあるかな? ちょっと、ヒジを・・・」

途端に青ざめるマナ。

「何やってるのよシンジ君、早く保健室へ行きなさい! レイが行ってるから診てもらって!」

ピッチャーにとってヒジは肩と同じように大事である。

特にシンジはエースなので試合前のケガなどもってのほかだった。

シンジは保健室へと走っていく。

「どうしたんだ、マナ?」

大声がしたのでムサシが聞いてきた。

「どうもこうもないわよ。 シンジ君、ヒジの調子が悪いんだって・・・」

「おいおい、大丈夫かよシンジのヤツ・・・でも今までそんなこと一度もなかったよな?」

ピッチャーでヒジが痛むのは大抵が変化球の投げ過ぎと投球フォームである。

だがムサシたちが見た感じでは、どうもそれが原因ではないと思われる。

「・・・やっぱり精神的なモノなのかな? カヲル!」

ピッチャーとしてのシンジについてはバッテリーを組むカヲルに聞くのが一番だった。

「シンジのピッチングで、これといった変化はないよな?」

「そうだね、いつも通りのメニューをやってるだけだよ。 ただ・・・」

気になる点があるのか、そこで言葉を濁す。

「集中できてないのかな? コントロールが定まらないときがあるんだ」

その回答でムサシとマナにはおおよその見当がついた。

「やっぱり精神的なモノか。 でもこればっかりは自分自身の問題だからな・・・」

「レイもなんだか様子が変だし・・・」

出てくるモノは悪い知らせばかりだった。

故郷に戻ってきたこと、親友たちと少女たちとの再会など、精神的に不安定になるのも無理はない。

だがカヲルにはまだ引っかかる点があった。

「でも最後に投げたフォークボール・・・あんなに落差があったのは初めてだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所を移して東雲高校野球グラウンド。

「常勝」 の御旗が掲げられ、部員たちは名門の名に恥じぬ練習をこなしている。

中でもチームの柱とも言うべき四番のトウジのフリーバッティングはいつもと空気が違っていた。

ガキン!

スイングをする度に薄っすらと流れる汗が太陽に反射して光る。

見ているチームメイトでさえ気圧されてしまいそうなバッティングだった。

「鈴原のヤツ気合入ってるな。 やはり甲子園が近いからな」

その姿勢に監督の時田は喜んでいた。

ガキン!

打てばボールは必ずスタンドまで飛んでいく。

四番に相応しい強さを持っていた。

「鈴原、頑張ってるな」

「キャプテン」

キャプテンの岩瀬トシフミが誰も近寄れない空気を漂わせていたトウジに声をかけた。

「どうしたんだ、昨日から人が変わったみたいじゃないか?」

昨日とはシンジと再会した日の翌日である。

思い出しただけでも暗くなってくる。

だから体を動かしてイヤなことを少しでも忘れようとしていたのかもしれない。

「何も変わっとりませんて・・・」

「ウソをつくのがヘタだなオマエは。 ま、平気でウソをつくよりはいいがな」

他の部員と違いキャプテンの貫禄なのか、いつもと雰囲気の違うトウジにも動揺しない。

トシフミは黙ってトウジから話すのを待った。

「・・・どないしても勝ちたいピッチャーがおるんです・・・」

「ウチの四番らしからぬ弱気な発言だな?」

「勝てるかどうか、判らんのです・・・」

珍しく自信のない声だった。

そのまま黙ってしまい、相手のピッチャーに対して恐れを抱いているようだった。

「予選のデータとかは見たのか?」

「いえ・・・でもなんとなくは判ります」

恐れを抱きながらも闘うことだけは忘れないのか、目の輝きは衰えることはなかった。

トシフミはそれを見て安心した。

「ウチの四番にここまで言わせるピッチャーがいるとは、オレもうかうかしてられないな」

トシフミは肩を回しながらマウンドに向かい、今まで投げていたピッチャーと交代した。

「ど、どないしたんですかキャプテン?」

「オマエが勝ちたいと思うピッチャーに興味が出たのさ。 東雲高校のエースとしても敗けるワケにはいかんしな」

早くバッターボックスにつくようにボールを向けてトウジを急かす。

最後の夏ということもあって、甲子園にかける想いは去年までのそれを遥かに超えていた。

「それともオレじゃ不服なのか?」

「そら違いますっ! ワイの方からもお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます」

シップ薬と傷薬など一式詰まった箱をもらったレイは校医の先生にお礼を言う。

大きさはダンボール箱ぐらいで、重いのかよたよたと頼りない足取りで戻っていく。

「まさかこんなにくれるとは・・・」

早く戻ろうと真っ直ぐに伸びた廊下を急ぎ、曲がり角に差し掛かったとき・・・

「「きゃっ!!」」

角の死角からやってきた人と衝突した。

しかも相手が走ってきたせいで箱の中身を派手にぶちまけてしまう結果になる。

「ゴ、ゴメンね」

先に謝ってきたのは相手の方だった。

レイも謝ろうとしてぶつかった相手の顔を見る。

「「あ・・・」」

2人とも言葉を失った。

(確か、洞木ノゾミ・・・)

会って話がしたいと思っていた少女が目の前にいたのだ。

しかもノゾミの方も同じことを思っていた。

だが何を話していいのか言葉が見つからず、お互いに見合わせるだけだった。

「・・・ゴメンね。 私急いでたから・・・」

ノゾミが十分に時間を置いてから出た言葉と一緒に散らばった薬を詰め直す。

気まずいせいなのか、視線を合わせられない。

やがてレイも片づけ始め、最後の一つを取ろうとしたとき、手が重なった。

「・・・綾波さん・・・だったよね・・・」

最初にノゾミが恐る恐る口を開いた。

「うん・・・洞木ノゾミさん、だよね・・・」

レイも同じだった。

「「あの・・・」」

同時に言葉が出てしまう。

聞きたいことがお互いに山ほどあるのだが、タイミングが悪いのか、なかなか切り出せなかった。

そして2人のところに最後の1人がやってくる。

「ノゾミっ、遅いじゃない!」

鈴原ミユキだった。

3人が介したとき三者三様の想いが交錯し、場の空気が急に重くなる。

その中でもミユキの雰囲気が逸脱していた。

(ちょ、ちょっとミユキぃ・・・なんなのよその目は・・・)

レイに対しての明らかな嫌悪感が現れていたのだ。

ノゾミは綾波レイに対しては 「不思議なコ」 ぐらいにしか思っておらず、親友の態度にハラハラしていた。

「あ、あの・・・」

レイはミユキの雰囲気には気づいていたが、なんとか勇気を出して接触を試みようとする。

だがミユキの態度は依然として変わらず、冷たかった。

「・・・ノゾミ、行こっ」

「待って!」

レイがミユキの腕を取って呼び止めた。

だがその手は強引に引き剥がされる。

「離してっ!」

「ゴ・・・ゴメンなさい・・・」

2人の間に緊張が走る。

その2人を見てオロオロとするノゾミは、こういった気まずい雰囲気が苦手で耐えられなかった。

「で、なんなの綾波さん?」

なんとか場の雰囲気を明るくしようと声のトーンを上げて言った。

が、必ずしも良い方向に流れるとは限らない。

レイの場合、呼び止めたはいいが何を話したらいいのか判らず言葉が出ない。

ミユキはそんなレイが・・・いや、親友の六分儀レイに似ている綾波レイの存在が気に入らなかった。

「用があるのかないのか、ハッキリしなさいよ」

「ミユキっ! ・・・ゴメンね綾波さん、聞きたいことって六分儀シンジさんとレイのことでしょ?」

「ちょっとノゾミっ、教えることなんてないでしょ!」

なおもミユキはレイに対しての不快感を露わにする。

元来ミユキは優しい性格で他人に対して辛く当たることはなかった。

しかし今日の態度はいつもと違い、ノゾミでさえ初めてだった。

「どうしたのよミユキ、アナタ今日ヘンよ?」

ミユキは親友に指摘され、自分がイヤな女になっていることに気づく。

だが今はもういないもう1人の親友、六分儀レイを想うと、自分を止められなくなる。

「・・・なんでアナタみたいな普通のコがそばにいられるのよ・・・」

六分儀レイの叶えられなかった想いを知っているからこそ、今の恋人、綾波レイが憎い。

あれからずっと苦しみ悩んできた惣流アスカを知っているからこそ、綾波レイがイヤでイヤで気に入らなかった。

「ただレイに似ているから、レイの影を追っているからそばに置いてもらえるとは思わないの?」

「ちょっとミユキ、アナタ何言ってるのよ!」

「六分儀シンジとレイを知ってどうするの? アナタにレイの何が判るっていうの?」

「ミユキっ!!」

「容姿が普通じゃない・・・妹だから・・・なのにアナタは全部持ってるじゃない! レイは自分の気持ちすら伝えてないのよ!!」

レイにはミユキの親友に対する想いが判った。

だが言葉の中に引っかかるところがあったのに気づいた。

「黒い髪も目も、碇シンジの心も持っているアナタになんか・・・六分儀レイの気持ちなんて判るはずない!!」

「ミユキっ、待ちなさい!」

ノゾミの制止も聞かずに走り去っていく。

だが今回はノゾミは追わなかった。

「・・・追わなくていいの?」

「いいの、それよりもゴメンね綾波さん。 ミユキがあんなこと言っちゃって」

親友の無礼を謝る。

だがレイは気にしていなかった。

気になるところが他にもあったから・・・

「気にしてないから・・・でも、知らなかったの?」

「何が?」

 

 

「レイさんがシンジさんに、自分の想いを伝えたこと」


第七拾六話  完


 

 

 

――― 予告 ―――

 

・・・おおっと、いけねぇいけねぇ。 今回はオレ、榛名ムサシだ!

 

いきなりテキストスタイルが変わってるから今回は驚いただろう

 

ご意見ご感想をお待ちしておりますって話だ

 

さて次回だが、どうやら話は長引いてるな

 

綾波がノゾミって女と話している間にシンジのヤツはミユキって女と話してやがる

 

なんか雰囲気違わない?

 

 

 

次回

大切な人への想い

 

「二年間の時の流れ」

 

注) 予告はあくまで予定です






sugiさんの部屋に戻る/投稿小説の部屋に戻る
inserted by FC2 system