終末の果て
THE END OF EVANGELION after story
ママぁ・・・どうして、アタシのことを見てくれないの?
アタシのこと、キライになっちゃったの?
アタシね、エヴァンゲリオンのパイロットになったのよ
みんなアタシのことを優しく、大切にしてくれるの。
でもね、ママ。
アタシはママの笑顔が見たいの。
ママの笑顔、それだけで良いんだから・・・
アタシだけに向けられたアタシだけの笑顔が
欲しいよぉ・・・ママぁ・・・
淋しいよ・・・
ねえ、ママ?
独りは嫌なの。
誰か・・・ううん、ママに構って欲しいの・・・
だから、返事をしてよ・・・・・・
お人形なんかじゃなくて、アタシの事を抱きしめてよ。
ママの温もり、忘れたくなんかない。
だから・・・ママもアタシの温もりを忘れないでよ。
お人形なんかじゃなくて、生身のアタシが此処にいるんだから・・・
アタシは走った。金色に輝く野原の中を。その眩しいくらいの夕陽の中を。
ママのいるサナトリウムは小高い丘の上にあったから。
いつもだったら、どうやってアタシがまた一歩大人に近付いたのか知らせようと、精一杯態度で示そうと思っていたのに、この日はどうしても走らずにはいられなかった。
一番最初に知って欲しかった。
アタシが『何』のためにエヴァのパイロットになったのか。
アタシが『誰』のためにパイロットになることを決意したのか。
それで一言、ホントにひとこと「よくやったわね」って云ってくれたら・・・・・・それで満足だった。それ以上のことを望もうとは思っていなかった。
尤も・・・・・・ママの状態がどんなだったのかアタシ自身も知ってはいたけど。
勢い良くドアを開けたそこにはママがいた。
正確にはママだったもの。
あの光景だけはアタシの頭にこびり着いたまま離れようとしない。
夕陽の紅さと天井から伸びているロープと、その先に『いる』ママの姿がミスマッチなのかそれとも相応しすぎるのか、呆然としたままだった。
だから、あのときのことがアタシにとってはニ度目の経験。
自分自身が抱き続けてきた価値が一息に壊される様な辛さは、あのときがニ度目だった。
どうして・・・
どうして笑ってくれないの?
だって・・・此処は夢の世界なんでしょ?
アタシの思うようになる世界なんでしょ?
なのに・・・なんで此処でも笑ってくれないの?
どうしたら笑ってくれるの?
ママ・・・お願いだから笑ってよ・・・
人形じゃなくて、アタシを見てよ。
返事をしない人形に話しかけるんじゃなくて、話しかけてるアタシに返事をしてよ。
ねえ、ママ!?
アタシの周りにいた大人は、『大人』だった。
アタシをアタシ自身の才能でしか計ろうとしなかった。
『何のために』『誰の為に』アタシが努力して来たかなんて関係なかった。
勉強をしているときだけが、アタシの心の落ち着き場になった。
手段が目的になった。
勉強は・・・・・・最初は全てが割り切れる様な感じがしてどうしても好きになれなかった。
逆にその感じを求める様になった。
ママの死、理不尽としか思えなかったその突然の変革をアタシの心に納得させたかったから。
ホントは・・・・・・こんな事しないでママの側にずっとついていてあげたら良かったんじゃないかって思う気持ちを押し込めるために。
自分が罪だと思っている事を罪とは思わないための虚しい努力。
アタシと云う殻を、中身のない卵のそれの様に脆いものを守るために必死になって。
あ・・・
ママ・・・
この弐号機に、ずっといたんだ・・・
ずっと、ずっと、一緒だったのね!?
ママッ
ごめんね、ママ。
アタシがココロを閉ざしていたから、だから弐号機とシンクロ出来なかったんだよね?
ずっと逢いたかったママはすぐそこでアタシに手を差し伸べてくれていたのに、アタシの方から手を引っ込めちゃって。
これからはずっと・・・一緒にいられる?
何のためにエヴァに乗ったかと聞かれたら、アタシはこの瞬間の為だって、胸を張って云える。
アタシを見てくれなくなったママに、もう一度アタシを見てもらうため。
一度は出来なくなったシンクロを、最初の気持ちに戻る事でアタシは取り戻す事が出来た。
誰の為でもない、他人に勝つためでもない、アタシと、その気持ちの為・・・・・・
ぎゃああああああああああああああああああああぁぁ
ああああああああああああああ
ああああああああああああああ
ああああああああああああああ
あ・・・ああ・・・ ううう・・・う・・・
殺してやる・・・殺してやる・・・殺してやる・・・
殺してやる!
THE END OF EVANGELION
The story after conclusion
Episode:2 まどろみ消去
どうして、こんなに苦しい思いをしなくてはいけないの?
アタシ、頑張ったじゃない。
それでも・・・足りなかったの?
あのバカシンジに、勝てないの?
最初は、単なる冴えない男のコ、それがシンジに対するアタシの評価だった。
でもユニゾンの特訓の時にシンジの良さをちょっとだけ解った様な気がした。
独りじゃなくて、時には力をあわせる事を教えてくれたのはシンジだった。
プライドがあっては・・・いけないの?
ずっと、エヴァのことばかり考えて、それしか自分を認めてもらう方法はないって思ったのに。
ママに認めてもらえるって思ったのに。
ママに・・・
そうじゃなかったら・・・どうしてアタシはエヴァに乗ったのよ?
シンクロ率でシンジに負けた時は、アタシは目の前が真っ暗になった様な気がした。
『常に一番である事』それがアタシ自身に課した試練だったのだから。
そのせいでシンジが虚数空間で危険な目に逢ったのは・・・・・・アタシの責任だったと思う。あそこでシンジを挑発しなければ・・・・・・
帰って来たシンジに声をかける事が出来なかった。
どうしてだったんだろう?ファーストがいる部屋に入って行く気にはならなかった。
そのときは・・・・・・気づいたらシンクロ率でシンジに負けた事なんか気にならなかった。
参号機のパイロットがあんな奴だと知った時、エヴァのパイロットである自分の誇りに傷がついたと思った。あんなやつのできる事なんかじゃないんだから。
それでも・・・・・・何もできずに制圧されてしまったアタシは自分の判断が甘かった事を後悔するばかりだった。
ジオフロント内まで来た使徒・・・・・・アタシもファーストも手が出なかった。
シンジなんかいなくたって・・・・・・そう思っていた心の何処かでシンジに対する信頼がなかったわけではないと思う。
最後には出てくるんじゃないか、そんな甘い考えが・・・・・・アタシのプライドを結局ずたずたにした。
使徒に心を覗かれた時、アタシの心はすでに壊れたも同然だった。
封印した想いは、封印されなければならなかったから、封印した。
だからそれが解き放たれた時・・・・・・今まで積み上げた歯車が、狂いだしていくのは実は心の中では解っていた。認めたくなかっただけで。
ついにエヴァを起動する事も出来なくなった。
動かない、エヴァ。
動いてくれない・・・・・・・アタシの誇り。
結局、アタシが苦しんでいた時には助けてくれなかった初号機が、ファーストを助けるために出撃したのを黙ってみているしかなかった。
きっとその時、アタシにはシンジを頼る気持ちがあった。
目覚めたのは、エヴァの中だった。
ママと一緒にいられるのは気持ち良かった。
探し続けていたものがこんなにも近くにあったなんて、半分以上信じられなかった。
だから、ママを傷つけるのは赦せなかった。
アタシの心を犯すのは赦せなかった。
出来る事なら・・・・・・歯車が狂い出す前に、戻りたかった。
何でエヴァシリーズに陵辱されないといけなかったのよ?
アタシって必要無いの?
使い捨てのコマだったの?
がんばったのに・・・
がんばったのに、そうとしか見てくれないの?
ねえ、誰か答えなさいよ!?
ねえ・・・誰でも良いから、答えてよ・・・
加持さん・・・
ミサト・・・
・・・シンジ・・・・・・
to be continued
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’99 May 22 初稿完成
’99 Aug 22 改訂第二稿完成
’00 Mar 15 改訂第三稿完成