時という時間の流れとともに・・・


第1話


・・見なれた幸せ・・それは・・









--------------プシュー・・・・・・ガー・・・・・・・

「・・・・あははは!それホント??だって・・・??あ・・ほら、あの子よ・・」

「え?ああ、あなたが前に話してた例の子ね・・・毎日来てるんだって?偉いわね・・・今どき居ないわよ、そんな律儀な男の子・・・・・」

「うん・・・しかもほら・・・入院してる子がさ・・・ボソボソ・・・」

「ええっ!!そうなの!!??じゃあ、あの子も・・・??」

「シーーッ!!声が大きいってば!!」

「ご・・ごめん・・・じゃあ、彼は・・滅ぼしみたいな意味で・・・??」

「わからないわ・・・でも、あの娘・・・彼が来てると、ホントに嬉しそうなのよ。私達には絶対、心を開いてくれないし・・・・事実、彼が来てくれると助かるのよねえ・・・」

「そうなんだあ・・・優しそうだもんね彼・・・でも、あの娘・・・実際のところどうなの??」

「え?そりゃあ・・・好きなんじゃない??だって、あんなに優しいんだから・・・・なんか口ではけっこうひどいこと言ってるみたいだけど、彼が帰っちゃったときの、あの娘の表情見れば誰だって分かるわよ!まあ、彼自身はけっこう鈍感みたいだけどね♪」

「違うわよ!医師としては??どうなの?あの娘の症状・・・・」

「ん・・・そうねえ・・・実際のところ・・・どうもかんばしくないのよ・・・ほとんどの先生がお手上げって感じ・・・」

「やっぱり、原因が『あれ』だから・・・ね。」

「そう・・・・かもしれないわね・・・・・。」




------------------------------



  ・・・・・・ウィーン・・・

「えーと、アスカの入院している階はどこだったっけなあ・・・??毎日来てるのに、来るたんびに忘れてちゃあ、またアスカにどやされるな・・・。」

 僕は、いつものようにアスカにどやされているところを想像して苦笑いを浮かべた。


 僕は碇シンジ・・・・元エヴァンゲリオン初号機のパイロット。

サードインパクトから、2年が過ぎた・・・・。2年たっても街は相変わらずだ・・・。

はじめて、ミサトさんに見せてもらったあの景色・・・今では見る影もなくなってしまっている・・・。友達はほとんど疎開したまま、まだ帰ってはこない・・・。

学校もまだ始まる状態にはない・・・。

昔は行くのも面倒くさかったけど、いざ無くなると寂しいものだ・・・。

 だから、いろいろあって、最近では、アスカの入院する「第三新東京総合病院」に来る事が、僕の日課になっている。

 

---------チィーン・・・・2階についた。 「う〜ん・・・・・ここだったっけなあ・・・仕方がない・・・しらみ潰しに探すしかないかな・・・・・・。はあ、アスカに絶対なんか言われるな・・どうしよ・・・」

 僕はアスカの怒る顔を思い浮かべて、おかしくなってしまった。

「アスカって、あんなに美人なのにどうして、怒るとどっかの小さな女の子みたいな表情になるんだろうなあ・・・??看護婦さんと、なにか話してるときはすっごく大人びて見えて、やっぱりアスカは大学出なんだなあって感心されられちゃうんだけど・・・」

 僕は病室のネームプレートを一つ一つ確認しながら、2階の奥のほうに進んで行った。

「うーん・・・ないなあ・・・・惣流なんて、珍しい名字だから見逃すわけはないし・・・この階じゃないってことかな??看護婦さんに聞けば分かるかなあ・・・」

僕は、2階の真中の受付に行くことにした。 「すみません・・・面会にきたんですが・・・惣流=アスカ=ラングレー・・・・・いや・・・ラングレーさんの病室はどこでしょうか?・・・・」

僕はあえて「さん」付けにしてみたものの、違和感を感じて上手くしゃべれなくなってしまった。・・・なんとも情けない・・

「はいはい!碇シンジさんですね。アスカさんが待ちくたびれてますよ。」

看護婦さんは優しい笑顔を浮かべて親切に教えてくれた。

アスカの部屋は最上階の10階にあるらしい

そういえば、自分で、眺めが良いだの、誰もいなくて貸しきりみたいだの、言っていたのを思い出した。



-----------------------------------プシュー
エレベーターのドアが閉まる。僕は「10」のボタンを押した。
中に少し太った健康的で優しそうなおばさんがいた・・・。

「あら?めずらしい・・・お母さんのお見舞いかなにか??」

「いっ・・・いえ・・・友達なんです。・・・」

「まあ、まだお若いんでしょう?お友達どうなさったの?」

おばさんは怪訝そうに尋ねてきた。

「まあ・・・たいしたことじゃないんですけど・・・・」

僕は言いにくそうにあいまいな返事をした。

「そうですか・・・では、お大事に・・・私はここで降りますので・・」

僕の返事の意味する所を感じ取ってくれたんだろうか?深くは追求せずおばさんは、五階で降りていった。

 おばさんが出ていった後、一人になった僕は壁に寄りかかって溜息をついた。

「たいしたことが・・・・ない・・・・・か・・・そうだと良かったんだけどな・・・」





アスカは・・・重度の心臓の障害に犯されてしまっている。

気がついたのは、一年くらい前。アスカが気持ちが悪いとか、レディーをいたわれなんとか言っていたので、医者に連れていったところ医師にそう言われた。

その日からアスカは半強制的に入院生活を強いられる事になってしまった。

アスカ自身は、嫌がっていたが、僕が毎日お見舞いに行くという事を条件に入院する事に同意してくれた。

 僕はアスカが同意してくれた事をホントに喜んでいたんだ。だって、それでアスカが治ると信じていたから。

だから、ミサトさんが怖い顔で「ホントに良いの?」って聞いてきたときに、僕はなんのことだかよくわからなかった。

ミサトさんの言葉の意味はすぐ理解させられること事になってしまった。

それはアスカが寝ている時のこと。僕とミサトさんが主治医の先生に話しがあるといわれ個室に呼びだされた時だった。
僕はあの時、アスカが入院する理由さえほとんど分かっていなかったんだ。

だから、今後の事に関するただの説明だと思っていた。

「アスカの退院の事ですか?それとも・・・」

僕が言いかけると医師は少しとまどったような表情を見せ、首を振った。

そして、ミサトさんのほうに向き直るとまじめな顔をして、一枚のレントゲン写真を取り出した。

ミサトさんは、先生の説明を聞く前になにかを理解したようだった。

先生はミサトさんにうなずいてそれから、僕のほうをちらりと見た。

僕はまだ、状況を把握できないでいた。
ミサトさんが、なにかを、察したかのように僕のほうに向き直った。


「シンジ君・・・あなたは・・・あなたは・・・ホントのことを・・・真実を知りたい?」


ミサトさんの問いに僕は無言でうなずいた。



「もし・・・もし、聞いたらあなたは本当に悩む・・・そして悲しむと思うわ、最悪また壊れてしまうかもしれない・・・それでも良いの?」



「ミサトさん・・・逃げちゃだめだって教えてくれたのはミサトさんでしょ?僕は・・・」

「人生にはね・・・逃げても良いことだってあるのよ・・・今回は悪い事にちょうどそれに当てはまるわ・・・。」




僕の言葉はミサトさんによって途中で遮られた。

僕はミサトさんの目がいつもと違う光を持っていることに気がついた。

そう、あれは、僕たちが使徒と戦っていた頃にたびたび見せた瞳。

僕は、いつもと状況が違っている事を判断した。




「シンジ君・・・・どうする?」






ミサトさんと、主治医の先生が僕をじっとみつめている。








「僕は・・・僕は・・・本当の事が・・・真実が知りたいです!僕は・・・僕はもうアスカから2度と・・・・2度と逃げないって決めたんです!教えてください!ミサトさん!いえ、葛城一尉!」







「わかったわ・・・・」
ミサトさんは表情を変えずに頷いた。




「アスカはね・・・・惣流=アスカ=ラングレーはね----------なの・・・・」







--------チィーン

僕が回想に浸っている間にエレベータが10階についたようだ。
でも、僕は、相変わらず上の空だった・・・・。





「いまだに信じられないよアスカが・・・・あのアスカの命が・・・・・後2ヶ月しかないなんて・・・・・・・・・」





アスカの病気はやはり、エヴァによるものであった。
LCLの化学変化によって起こったものであるらしい事が分かっているが実際のところはよく分かっていないらしい。  2ヶ月というのは最低でも、ということだった。点滴、血漿交換を繰り返していけば4ヶ月は生きられるとのことだった。
でも、多分彼女は断るだろう。
それを考慮しての2ヶ月だった。
移植というのは、99%無理らしい・・・。
アスカの心臓は、チルドレンの臓器というものは特別なものらしく、ほとんどの確率で拒否反応が起こってしまうらしい・・・。
僕とミサトさんは、愕然としていた。



 廊下の窓に身体を乗り出して空を見上げる。
どこまでも青い空が見える。アスカの瞳と同じ色をした広い空が見える。

ミサトさんから真実を聞いた時、世界が急にスローモーションになったような衝動にかられた。
頭の中がぐるぐる回って、世界が緑色に見えた。
そして、なにより涙がとまらなかった・・・。ホントに神様なんてこの世にはいるのだろうか?って何回も自問自答を繰り返した。
ミサトさんは、泣きながら医師の説明を受けていた。
それから後は覚えていない・・・・・・・

気がついたとき、僕の目の前には気持ち良さそうに寝息を立てているアスカがいた。
僕はアスカの枕元で息を押し殺して泣いた。
声が漏れそうになったので、袖口を思い切りかんだ。
本当に悲しい時には涙出るものなんだと、昔の自分に言い聞かせたった。

ふと、誰かに頭をなでられた気がした・・・・。

そこには・・・女神がいた。スカイブルーの目をした女神が・・・。少なくとも僕にはそう見えたんだ。

アスカは不思議そうに僕を見ていた。

「ご・・・ごめん・・・・ちょっと・・・そう・・・あの・・・お腹が痛くなってさ・・・」

僕は涙で汚れた顔をふきながら、アスカの病室を逃げるようにして出て行った。

アスカは僕の行動を見てなにかを言おうとしたが、なにも言わず僕を見送ってくれた。











「いま、考えるとあの時だけかなあ・・・アスカが僕を思いやってくれたのって・・・」











「ふんっ!バカシンジ!あの時って、いつのことよ!ことと次第によってはただじゃすまさないわよ!」


「ア・・・アスカ・・いつの間に・・・ご・・・ごめん・・・」


そこには空色の瞳をした鬼神がたっていた・・・・

「ったく!!いま何時だとおもってんのっ!!一時半よ!一時半!!この、病人のあたしに飢え死にしろってえの!!あんたは!!告訴するわよまったく!」


アスカは頭から湯気がでんばかりに怒っている。

「いや・・・アスカ・・なんの罪で僕を告訴するつもり?・・じゃなくて・・・じ・・実はまた道にまよちゃって・・・ごめん!」


僕はアスカに手を合わせた。


「ふんっ!!どうせ、そんなとこだろうと思ってたわ!ったく!ここに来るの何回目!!??」


たしかに、アスカの言うこともっともだ。なんかいだったかな・・・・
「ストーップ!!あんた、いま数えようとしたでしょ!!っとにバカシンジなんだから!!・・・ってなに笑ってんのあんたは!!」


「いやごめん!ほら!なんでアスカは僕がしてたこと、全部分かっちゃうのかなっておもってさ。」


僕は数えようとした手をしまいながら言った。


「ふん!ったりまえでしょう!バカシンジの考える事くらい手に取るように分かるわ!!どうせいつもみたいにボケボケッとしてでしょ・・・・・(フラッ)」


そう言った瞬間、アスカは床に座り込んでしまった。

「アスカッ!!大ジョブ??」

僕は驚いてアスカの側にかけより、腰に手をやってアスカの体を起こした。

「大丈夫よ・・・あんたのせいだからね・・・あんたが遅れるから・・・」

「アスカ・・・・ホントにごめん・・・僕ホントにバカだから・・・でも一生懸命さがし・・・イテッ」

アスカの指が僕のおでこ軽くをはじいた。

「嘘よ・・・なに泣きそうな顔してんのよ・・・ホントに・・・バカ・・・なんだから。・・・・・どうしたの?まさか?ホントに泣いてるのシンジ??」

「いやっ!なんでもないよ!アスカ・・・そう、なんでもないんだ!」

僕はアスカの微笑につい見とれてしまった。

「ははぁ〜〜ん!あたしに見とれてたんでしょ!まったくスケベなんだから。」

「・・・・・うん、じ・・・実は・・・・そうなんだ・・・・・」

僕はつい本音を言ってしまった。

「アンタバカァ!!??な・・な・・な・・なに真顔で答えてんのよ!」

「ご・・・ごめん・・」

「ほらぁ!あやまってばかりいないで、あたしを部屋までつれてってよ。なんか疲れちゃった。」

「え・・・でもアスカ・・・どうやって・・・モゴモゴ」

僕の頭の中にいろんなことが交錯する。

「だから、抱っこしてよ!アンタ男でしょ!それとも、いまさら恥ずかしい、なんて言わないでしょうねえ!ちゃっかり、あたしの腰さわちゃってさ!」

僕の左手はアスカの頭をそして、僕の右手はアスカの細い腰にしっかりと触れていた。

ああああああ!!いやっ!これはそのっ!だから、僕は・・・・」

「っとに!信じらんないわ・・・今まで気付かなかったの??まあ、いいわ・・・あたしは病人なんだし・・・その代わりヘンな事触ったら、殺すわよ!・・・とにかく、ほらシンジ、あのかどの部屋よ。」

僕は顔を沸騰させながら、アスカの指差すほうにアスカを抱いて歩いていった。

・・・まったく、シンジったら、相変わらず過剰反応するわよねえ・・・。まあ、そこがシンジの良いことろなんだけどね、やけに落ち着いてたら、それこそシンジらしくないわ。

にしても、あたしもあたしね・・・・。今日こそ笑ってシンジを迎え入れようと思ったのに・・・。

相手がミサトとか看護婦さんだったら、別に聞き流す程度なのに、何故かシンジが相手だと困らせてやりたくなっちゃうのよねえ。

やっぱり、あたしはシンジのことが好きなんだろうな。

ミサトに言われなくたって、分かっていたわ。シンジが帰ったホントに胸が押しつぶされるみたいに寂しくなるもの・・・。

でも、この超鈍感のバカシンジはまったく気付いていないみたいよねえ。

いいかげん、気付いても良いと思うんだけどなあ・・・ま、そこはシンジってことよね。

でも、シンジは・・・シンジはどうなんだろう・・・・

あたしはシンジの顔をのぞきこむようにして見た。

「ん?どしたの、アスカ??熱でもあるんじゃない??顔赤いよ?」

「っう!ウッサイわね!なんでもないわよ!!あんたこそ、あたしのこと落としたりしたら、承知しないんだからね!!」

はあ・・・・またやっちゃった・・・・。なんでかなあ・・・

「当たり前じゃないか。僕はこれでも男なんだから。もっと頼ってよ!」

「・・・・うん・・・・」

シンジったら・・・そんなこと言われたら、なにも言えないわよ・・・もう・・・

自分で気付いていないところがシンジらしいけどね・・・。

あぁ〜あ。ほんとに、なんなのかしらねえ、このギャップは・・・・。そう言えば、そろそろね。




僕が急にしおらしくなったアスカのことを不思議に思っていると、アスカが「ここよ。」と言って、「1002」と書かれたプレートを指差した。

「もう、忘れんじゃないわよ。病人が出迎えに行くなんてどう考えてもおかしいでしょ?」

僕は苦笑しながら、アスカを病室のベッドの所まで運んでいった。

そして、ガラス細工を扱うようにそっとアスカをベッドに寝かせた。


・・・・そう・・・僕からすればホントにアスカはガラス細工みたいなものなんだ・・・・


「・・・・・ンジ・・・??」


・・・それも、ただのガラスじゃない・・・世界でたった一つしかない素材で作られた・・・最高の女神像なんだ・・・たとえ、馬鹿にされたっていい!僕は本当にそう思う!


「もしも〜し!シンジ???聞いてる?」


僕は絶対にあきらめない!・・・・・必ず・・・僕がなんとかして見せるよ!・・・


「シンジく〜ん・・・碇シンジく〜〜ん??」


ね?僕の大切な・・・・・大切な・・・アス・・???

「くぉのバカシンジ!!!アンタなに考えてるの!!人の話しきいてんの!!さっきからこぶし握ったり、笑ったりしちゃってさ!!また、回想モードに入っちゃったわけ??っとに、バカシンジなんだから!!」

僕の文字どうり回想シーンはアスカの金切り声によって終止符が打たれた。

アスカは腰に手を当ててきりきりと怒っている。

「ご・・・ごめん・・・でも・・アスカ!アスカは絶対僕が守るからね!

まずい!どうやら回想モードと現実がごっちゃになってしまったようだ・・・。

僕はまたアスカから小言が飛んでくることを予想して覚悟を決めて目を閉じていた。

アスカの体が動いたのを感じた。

それ!来るぞ・・・はあ、今度はなんて言われるのか・・・・な????

「・・・・・!!!!」

----------------- 次の瞬間、僕は言葉を失ってしまった。頭の中が真っ白になる。

僕の唇はアスカによって塞がれていた・・・。

         アスカのほのかな香りが僕の鼻をくすぐる・・・。

      うまれてから2度目のキス・・・

初めてのキスの相手と同じ・・・でも、なにかが違う・・・

どうしてだろう・・・アスカを必要としてくれてるの・・・??

僕はアスカの背中を抱いた。

------------------ シンジとキス・・・体が勝手に動いちゃった・・・

こんなにシンジを近くで感じたのはひさしぶり・・・

ううん・・・自分とママ以外の人間をこんなに気持ちよく感じたのは初めて・・

シンジと初めてキスした時はひどかったわね・・・

でも、今回はなにかが違う・・・あたしが・・・シンジを好きだから?

好きな人を側に感じる事がこんなに気持ち良いなんて知らなかった・・・

シンジの腕があたしの背中を抱いている・・・・

あたしも、シンジの背中に手をやる。

------------------









「アスカ(シンジ)・・・」









お互いのぬくもりの名残を惜しみながら、どちらからともなく体を離す・・・。



最初に口を開いたのはアスカだった。 「・・・・シンジ・・・・ありがと・・・・」

アスカは真っ赤に染まった顔で小さくそう言った。

「・・・・うん・・・・」

僕は呆然としていて上手くしゃべれなかった。


二人の間を時の流れだけが過ぎて行く・・・・



-------------昔の僕だったら会話さがしに必死になったに違いない・・・

でも、僕にはその沈黙がとても自然に、そして心地よく感じた。

そして僕の口から自然に言葉が出た。



-------------シンジいつの間にこんなにカッコ良くなったのかしら・・

もう、こんな雰囲気になったら言うしかないじゃない!

・・・・・行くわよ!アスカ・・・・。










「好き(だ)よ・・・シンジ(アスカ)」










お互いの声がユニゾンする。











沈黙が流れる。








次の瞬間、僕たちは顔を見合わせて、笑ってしまった。




「「あははははは!!」」




「シンジッたら!こんな時にまであの時の特訓が生きてるわけえ??」


「そんなこと言ったって仕方ないじゃないか!それにほら!アスカだって!」


「あら!!??あたしの唇奪っておいて、口答えする気ぃ??訴えてやるわ!」


「そんな??!!だって・・・アスカが!!」



----------「「あははははは!!!」」


「まったく!!ったく!相変わらずバカシンジなんだから!アンタッて成長しないのお?」


「そんなこと言われたって仕方ないよ・・・でも、アスカは・・・・・・・変わったね・・・・」


「そお??せいぜい、エヴァのパイロットじゃなくなった事くらいじゃない?」


「アスカ・・・・・・・・すごく・・・綺麗になった・・・」


「・・・・・・!!!・・・・バカ・・・恥ずかしくなっちゃうじゃない・・・」


「ご・・・ごめん・・・で・・・でも、ホントの事だから・・・」


「・・・ありがと、シンジ・・・これからもよろしくね・・・」


「うん・・・・・・僕のほうこそ・・・・・・・・・なんか順番が逆になっちゃったね・・・・」


「ふふふ・・・そうね・・・・でも、あたしなんか忘れてるような・・・・」


「?????え?なにかって?・・・」


アスカは僕に人差し指を突き出して合図を出した。

僕はアスカの答えが出るのを待っていた。











「あああああああああああ!!!」







突然、アスカがとんでもない声を張り上げた。
他の病室の患者さん達はどれほど驚いた事だろう・・・

「アスカ・・・そんなに大きな声だして、どうしたの?」

僕はアスカをなだめる様に聞いた。





「シンジ!!あたしの昼ご飯は??」






僕は、はっとなった。まずい、これは僕の経験から行ってもものすごくまずい状態だ。

ただでさえ、時間にうるさいアスカ。しかも、今回は食事に関しての事だ。

食事のことになるとアスカはもう手がつけられない状態になってしまう。

僕は、すかさず時計を見た。時計は・・・2時をとっくに回っている・・・・。

「あのね・・・アスカ・・・今日はアスカの好きな卵焼きとか、ハンバーグとかがいっぱいはいっているんだ・・・だから・・・」

僕は自分でもわかるくらい意味不明な言葉でアスカをなだめようとした。

・・・たとえ無理と分かっていても・・・。

ギロッ・・・・

あああ・・・やっぱりだめだ・・・・さっきまでの天使のようなアスカはどこへ・・・

「・・・・・シンジッ!」

「・・は・・・はひっ!」

僕はびくびくして答えた。

「・・・・今日は特別な日だから・・・許してあげる・・・その代わり・・・・」

「ほんと!」

ドイツ人は、休日とか特別な日を大切にするってホントだったんだ!

「そのかわり!」

僕がほっとしているとアスカが僕のほうに近寄ってきた。そして・・・

「そのかわり・・・食べさせてよ・・・おべんと・・

アスカは僕の耳元でかすかに聞こえるくらいの声でそう言った。










「ええええええええっ!!!食べさせるって、ど・・ど・・・どうやって!」










僕はうろたえて、最大音量で叫んでしまった。

「あったりまえでしょ!罪滅ぼしよ!罪滅ぼし!ほら、男でしょ、往生際が悪いわよ!」

アスカはいつものように腰に手を当てて攻撃的な姿勢をとっていたが顔が真っ赤になっていた。

僕はしぶしぶ了承することにした。

ひさしぶりに、心の中で「逃げちゃだめだ!」を何回も繰り返した。

「・・・・わかったよ・・・じゃあ・・・アスカ・・・横になってよ・・・・・んで、なにから食べる?」

自分で赤面しているのが分かる。

「もっちろん!卵焼き!!」

アスカは僕が赤面しているのを見てむしろ落ち着いたらしい。いつもの調子に戻っている。

「・・・え・・と・・じゃあ・・あーん・・・してくれる??」

僕は相変わらずユデダコ状態になっていた。

「あーん。」

アスカが目を閉じて口をあけている。・・・・っか・・・可愛い・・・

僕は頭をぶんぶんと振って、卵焼きを箸でつかむと、目を閉じてアスカの口にそれを放り込んだ。

「どう・・・???」

目を閉じてむしゃむしゃやっているアスカにいつものように聞く。

「まあまあよ。じゃ、次はハンバーグね!」

僕はほっとした、アスカの「まあまあ」はGOODの意味をもっていることを知っているからだ。

1回やってしまえばこういうのも慣れというものが来るのだろうか。僕は最初ほど緊張する事はなかった。


--------------こうしてアスカの昼食は延々一時間かかってフィニッシュを迎えようとしていた。

そして最後の、鳥のから揚げを箸でつまんでアスカの口に運ぼうとした瞬間・・・・

「あっらあああああ!アスカは骨折で入院してたんだっけええ??」





「「・・・・・・・・・・・」」

恐る恐る、僕達は後ろを向いた・・・・

そこには・・・・・予想どうりの表情を浮かべた背の高い、赤いジャケットを着た女性が立っていた。

「「ミサトッ(さん)!!!」」



<つづく>


はじめまして・・・・八色の姓です。
いやあ、今までほんとに受けの立場だった俺ですが無謀にも、投稿させて頂く事にしました。
いやあ、ほんとに駄文ですねえ。
いくつか書けば上手くなるものなんでしょうか?
どうか、ご意見のほどよろしくお願いいたします。
ではでは!



八色さんの部屋に戻る/投稿小説の部屋に戻る
inserted by FC2 system