時と言う時間の流れとともに・・・
第ニ話
・・本日晴天なり・・
「「ミサト(さん)っ!!」」
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「う〜ん・・・・良い天気よねえ。」
ミサトさんは背伸びをしながら本当に気持ちよさそうにしている。
確かに今日は本当に良い天気だ。窓からは眩しいくらいに日光が入ってくる。
雲一つないそら・・・こう言う日を晴天と言うのだろう。
どんな人間だってこんな日は良いことが起きることを予想して出掛けるに違いない。
現実はそう上手くも行かないらしい・・・現に今、僕の身には最大のピンチが訪れている。
「にしても、この部屋、日当たりも良いし!見晴らしも良いしほんと最高じゃない!あたしも入院するんだったらこれくらいの部屋に住みたいわねえ。」
・・・・だが、その元凶になると予想される人物は未だ部屋のことに夢中になっているようだ。
もう一人の被害者、惣流=アスカ=ラングレーのほうを見てみる。
アスカの視線がなにかを言っている。
僕は首を傾げてみた。
今度は、口をパクパクさせている。
「どうすんのよ??」
僕にはそう読み取れた。
「どうするって言ったって・・・・」
事実、今のところ策なしだ。
アスカも、はあ、と溜息をついている。
僕達の悩みの種、ミサトさんは、というとさっきからわざとらしくはしゃいだ振りをしている。
たしかに、はしゃいでいるのは事実だろうが、それは景色にではない事を僕は知っている。
ーーーーたしかにタイミングがまずかった。
ただ二人きりでいるだけでも散々からかってくるミサトさん。
しかも今回目撃されたのが僕がアスカに弁当を食べさせていると言うシーン。
これでミサトさんがなにも言わないわけがない。
今日はスゴイ1日になりそうな予感がするよ。
僕はとりあえず、ミサトさんの機嫌をとることにした。
「ミサトさん・・・・お茶でもいかがですか??」
それとなく聞いてみる。
「そうね〜♪頂こうかしらん。あれ?もしかしてシンジ君、口移しでもしてくれるのかしら??」
僕は一瞬頭が真っ白になった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「やあね〜〜、冗談よ!じょ・う・だ・ん。」
まったく持って、冗談ではない、いくら僕だってミサトさんの目を見ればわかる・・・
相手はあのミサトさんだ。
近いうちに病院中に知れ渡る事は間違いないな・・・。
どうしよ・・・
ーーーーはあ、まいったわねえ・・・・。状況は思いっきりふりだわ。
ったく・・・相手があのミサトとはねえ・・・・
シンジは・・・・・だめだわ、目が明後日向いてる・・・
ったく、シンジったら、丸め込むつもりだったのか知らないけど逆にやられてどうすんのよ。
はあ、上手いことごまかさないと明日になったら病院中に変な噂がたちこめるに決まってるわ。
はあ、ほんと、溜息出ちゃうわ・・・・
「「はぁ・・・・・」」
溜息までが相変わらずユニゾンする。
時間がたつのが遅く感じる。
不意に、ミサトさんが、こちらを振り返った。
「ねえ、アスカ、シンジ君のお弁当どうだったああ??」
ついに来た。はじまってしまった。
「ん・・・・まぁまぁだったわよ・・・」
アスカはミサトさんの顔を見ないようにしている。
確かに、今ミサトさんに表情を読まれたらそれこそ一貫の終わりだ。
それをアスカも2年前に心得たらしい。
「ふ〜〜ん。まぁまぁ・・・かあ♪」
ミサトさんはこちらの反応をうかがうようにこちらを見ている。
・・・・ドクン
・・・ドクン
心臓が外に聞こえそうなくらい大きな音を立てている。
アスカも同じだろう。唾を飲み込む音がアスカののどから発せられる。
「シンジく〜ん。」
「は・・はい!!」
「アスカって、卵焼きが好きなんだってえ♪知ってたああ??」
ミサトさんはニヤニヤしている。
「・・・・は・・・はい・・・・そ・そ・それは・・・まあ、前から・・・」
上手くしゃべれない。
「へえ〜。じゃあ、前から『こういうこと』してたんだあ〜。」
「「なに言ってんですか(のよ)!!!!ミサト(さん)」」
「あら〜??二人ともなにユニゾンしちゃってん♪もう使徒はこないわよん!それに私が言ったのはシンジ君がアスカにお弁当作ってあげることだったんだけど?なにかまずかったかしら??」
ミサトさんは満面の笑顔を顔に浮かべている。
僕とアスカはがっくりと肩を落とした。
僕達はミサトさんの手中に収められてしまったことを理解した。
「さ〜て、おふたりさ〜ん!いろいろと聞かせていただきましょうかねえ♪」
ミサトさんは景気良く自前のビールのプルタブに手をかけた。
ーーープシュッ!「かんぱ〜〜〜い!」
僕が愕然としているとアスカが口を開いた。
「ミサト・・・一体どこから見てたの??」
アスカはもうどうにでもなれと言う表情だ。
「え?なんのこと?お姉さんわからないわ♪」
思いっきりしらばっくれている。
「だからっ!!あたしがシンジに食べさせてもらってると見たんでしょ!!」
「アスカッ!」
僕が止めたときには時すでに遅し・・・アスカもまずった、と言う顔をしている。
「あら〜〜!そんなことしてたの??エッチィ〜〜キャー、」
当のミサトさんはしてやったり、とばかりにオーバーリアクションをとっている。
「ったく!シンジ君もすみに置けないわねえ!でも、お姉さん嬉しいわ!」
「「はあ・・・」」
結局、ミサトさんの占領下に置かれたことを僕達は察した。
「病院に愛しの彼が来て、お弁当食べさせくれるなんてなかなか良いシチュエーションじゃない??ねえ、アスカ??」
アスカは真っ赤な顔をしてうつむいている。
「あたしも、そう言う出会いがほしかったわあ♪」
ミサトさんの話がいつまで続くのか心配になってきたとき、電話が鳴った。
ーーーーーートルルルルル・・・・
どうやらミサトさんの携帯らしい。
「チッ!」と舌打ちするとミサトさんは仕事の顔に戻り電話を取った。
毎度のことながら僕はこのミサトさんの変化に驚かされてしまう。
普段はおちゃらけていても、やはりミサトさんはネルフ本部戦術作戦部なんだなあ、とつくづく感じてしまう。
「・・・・はい・・・葛城です・・・・ってなんだアンタかあ・・・」
でも、今回はその表情も長くは続かなかった。
どうやら電話の相手は加持さんのようだ。
受話器ごしに「マイハニー」と言ってる。相変わらずの加持さんの性格に僕はおかしくなってしまった。
「んで?一体なに??いいの?アンタ勤務中でしょ?」
僕とアスカは、ミサトさんの口調から仕事関係の電話ではない事を察して、そば耳を立てていた。
「あれぇ・・相変わらずつれないなあ・・・せっかく上手い酒のませてくれる店見つけたんだけどなあ・・・どう、今晩??」
「はぁ・・・・アンタ良いのいっつも遊んでて・・」
「ははは!リッちゃんには悪いけど、俺にはそのほうが性に合ってるんだ。長い付き合いだ、リッちゃんだってわかってくれるさ。」
その瞬間アスカがにやりと微笑んだ。
あの笑いは・・・そうだ思い出した。僕とアスカが2号機に乗った時の表情だ。
どうやら、なんか思いついたみたいだねアスカ・・・。
僕はアスカのほうを確認した。
アスカは満面の笑みを浮かべて、「見てなさい!」と言うようにガッツポーズを取っている。
「う〜ん・・・・・どうしよっかなあ・・・・ッワ!!なにすんのよ!!・・スカッ!!」
迷っているミサトさんの不意をついてアスカが受話器を奪い取った。
「は〜い!おひさしぶり、加持さん!」
「ん・・・・アスカか。・・・どうだ、調子は!」
「体の調子はいいんだけど、ちょっとねえ・・・」
アスカはさも辛そうな声を出している。
「???どこか悪いのかい?」
「さっきまでは良かったんだけど・・・ちょっとどこぞの酔っ払いが来てからねえ・・・」
アスカはニヤニヤしながらミサトさんの顔を見ている。
「ッ!!ちょ!ちょっと!!アスカ!貸しなさいよ!!」
ミサトさんが受話器をひったくろうとする。アスカはそれをひらりとかわして逃げまわっている。
・・・・はあ、ほんとにアスカ心臓悪いのかな・・・
「・・・はあ、葛城・・・またやってるのかあ・・・・一体なんのために休みとったんだ??」
「そうなのよ!加持さん何とか言ってやってよ!・・・・・・ッガ!!」
「ザー・・・・・あれ?もしもし、アスカ?・・・・」
「ミサト!!なにすんのよ!!」
「うっさいわね!!ちょっと手が滑っただけよ!!」
むごい・・・・眼下にはミサトさんの手とうによってこなごなにされた携帯電話が落ちている。
「はん!いったいどう言う風に手がすべると、あんな正確に電話を壊せるのかしら??!!」
「あ〜ら!アスカッ!世の中は日進月歩、光陰矢のごとしなのよ!!」
「なにわけわかんない事いってんのよ!!だいたいあんたは!!」
・・・・はあ・・・僕まで病気になりそうだ。誰か助けて・・・
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「こんにちは!アスカさん、検温の時間ですよ・・・・あら?お取り込み中かしら?」
部屋の中が一気に静まり返る。
アスカとミサトさんはどうやら固まってしまったようだ。
「いえいえいえ!!そんな事ありませんよ!」
僕にとってはまさに天の助けだ。
「あら、シンジくん、いつも悪いわね。」
「いえ・・・僕が好きでやってる事ですから。・・・ではお願いします。」
看護婦さんは僕に微笑むと部屋の奥のほうに歩いて言った。
「アスカさん・・・たまには運動も良いかもしれないけど、ほどほどにね。あなたは病人なんですから・・・」
「・・・はい・・・」
アスカはミサトさんになにかを言いながらしぶしぶ頷いた。
「お姉さんでいらっしゃいますか?」
看護婦さんがミサトさんのほうに向き直って尋ねた。
「・・・・はい・・・まあ、そのようなものですわ。」
「っけ!な〜にが、『お姉さん』よ、声までつくちゃってさ!」
「・・・・・いつも妹がお世話になっています。」
ミサトさんはアスカの言ったことが聞こえなかったのだろうか?僕は不思議に思ってミサとさんを見た。
でもやっぱり、それは大きな間違いだった。
・・・・ミサトさん、そんな手の色が変わるほどコブシ握らなくても・・・
僕は再度「はあっ・・」と溜息をついた。
「いえいえ、お礼なら私よりもシンジ君に言ってあげてください。」
「シンジ君に??」
「ええ!彼のおかげで私達ずいぶん助かっているんですよ。ほんとに今どき珍しい思いやりのある良い青年です。」
「あら!やっぱりこれも私の・・・「「ゴホン、ゴホン」」
「あ〜ら!シンちゃんもアスカも風邪かしら〜〜??た・い・へ・んねええ!!!」
ミサトさんの顔は引きつっている。僕とアスカは視線を合わせないようにしていた。
「ふふふ・・・・3人ともほんとに仲が良いんですね。では。私はこれで・・・」
看護婦さんは微笑みながら部屋を出て行こうとしたが、ふと振りかえってミサトさんのの方に向き直った。
「すみません。お姉さん・・・少しお話が・・・・」
「・・・はい・・・わかりました。」
ミサトさんも看護婦さんも仕事の顔になっていた。
ミサトさんは、看護婦さんと10分ほど話しこんでからもどってきた。
「「なんの話しだった(の)んですか?」
今日何回目かわからないが僕達は声をユニゾンさせながら尋ねた。
「ん〜?なんでもないわ。ただ、アスカ今日は熱があるみたいだから早く休むようにって。」
ミサトさんはすましてこたえた。
・・・・だが、僕にはなにか引っかかる気がしてしょうがなかった。
「たしかに、今日は、はしゃぎすぎたわ・・・あたしもなんか疲れちゃった。」
アスカは眠そうにあくびをしている。
「じゃあ、あたしはもうそろそろ帰るわ。」
「加持さんとデート??」
「っさいわね!違うわよ!」
「ま、せいぜい捨てられないように頑張んなさいよ!」
「あなたもね!アスカ!・・・まあ、シンジ君に限ってそんなことないかあ。」
「「ミサトッ(さん)!!」」
「わかってるわよ!そんな事気にもしてないんでしょ!良いわね〜〜♪」
「「そんな事ッ!!」」
「はいはい・・・わかりました!!さて、もうこんな時間だし・・・シンジ君はどうする??」
「・・・・え?そうですね・・・僕は・・」
ミサトさんに言いように操られている事に苦笑しながら、
僕はアスカに目で尋ねるようにアスカを見た。
「だいジョブよ・・・今日は・・・・」
寂しそうなアスカの表情に僕は彼女を抱きしめたくなった。
ミサトさんはそれを感じ取ってくれたのであろうか「先に出てるわね。」と言って外に出て行った。
「アスカ・・・・」
夕日でアスカの髪がキラキラと輝いている。
「シンジ・・・今日はありがと・・・ホントにだいじょぶだから・・・」
アスカはうつむきながらそうこたえた。
「うん・・・じゃ・・・明日も来るから・・・今日はよく休んでね。」
「・・・・・・・・・うん。」
僕はアスカに背中を向けるとドアのほうまで歩いて行った。
しかし、その時頭の中にアスカの暗い顔がよぎった。
(逃げちゃだめだ・・・逃げちゃだめだ・・・・・)
頭の中で慣れ親しんだ言葉を何度も自分に言い聞かせた。
「シンジ・・・・??どしたの?ミサトが待ってるわよ・・・」
僕は思いきってベッドの近くまで戻った。
夕暮に照らされながら二人のシルエットが重なる・・・
初めてした、自分からのキス。
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シルエットが二つになる・・・。
「アスカ・・・お休み・・・」
僕は逃げるようにして病室の扉をくぐろうとした。
「シンジ!!」
その瞬間アスカの声が聞こえる。
僕は恐る恐る振りかえった。
「ありがと!!」
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・・・そこには女神がいた・・・
・・・蒼い目をした女神が・・・
・・夕日がとても綺麗だった・・
<つづく>
第二話です・・・・。
うーん、僕HTMLの使い方がどうも良くわからないんですよね・・・・。
大きなスペースを作りたい時って、<BR>をいっぱい書く以外に何かありませんか?
誰か教えてください!
では、また!
FROM 八色の姓
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