時と言う時間の流れとともに・・・

第九話


・・・I CAN FIND OUT・・・THAT IS・・・










・・・久し振りのペンの感触。

最後に日記帳を開いたのもずいぶん前のことだ。

案の定、前の日付は1ヶ月ほど前になっている。

このところ色々あったから日記なんて書いてなかったな・・・

日記を書く・・・

EVAのパイロットではない自分を確認するために自分で考えたこと。

端末で打てばいいのだけれど、EVAがああだったから僕はあえて紙とペンという形式にこだわった。

そのために、本屋で買ってきた万年筆と皮の表紙の日記帳。

ペンのインクはまだ満タンに近いし表紙も新品そのものだ。



11月28日


とりあえず、日付を書いてみる。

いつもなら、そこからその日の天気を書いて終わり。

でも今日ははじめて日記らしい事がかけそうだ。






















11月28日


アスカが退院できた。

今日から僕と一緒に暮らすことになる。

4年もたったせいだろうか・・・

アスカの存在そのものが新鮮に感じる・・・

アスカが側にいる・・・

たったそれだけの変化で僕の胸の鼓動は早くなる・・・

くさい台詞・・・日記だけの中で許される。

でも、事実、僕の胸は今も高鳴っている・・・

幸い、それを気付かれる事はない・・・はしゃぎすぎたのだろうか?

アスカは現在ご就寝・・・

そろそろ晩御飯の支度をしなきゃいけない。

アスカを起こさないようにそっと出かけよう・・・

                     Written by シンジ



























パタン・・・

日記帳を机の奥にしまいこむ。

アスカはまだ寝ているようだ。

思わず笑顔になってしまう。

頭の中に自分の作ったハンバーグを頬張るアスカの顔が蘇えってくる。


・・・アスカ・・・喜んでくれるかな?

ちかごろ、ろくなもの作ってなかったけど・・・

がんばってみよう!

高揚する気持ちを押さえながら僕は家をでた。














・・・・なんか買いすぎちゃったかなあ??

まあ、いいや、残ったらミサトさんのとこにでも持って行ってあげればいいし。

スーパーのビニル袋をぶらぶらさせながら階段を上るシンジ。


「たっだいま〜。アスカあ、もう起きたあ??」


そんな事を言いながら自分の靴を直すためにしゃがみこむ。



・・・ドタドタドタ・・・


・・・っしょっと・・・ん??アスカもうおきてるみたいだな・・・

足音は僕のすぐ後ろまで着て止まった。


「シンジッ!!」


「ん?アスカ、起きたんだ?
今ね、買い物行って来たんだ。今日はご馳走だよ!」


靴を直し終えて振りかえる。


「ほら、アスカ見て・・・・・・・」











僕は・・・言葉を失った・・・。































アスカは・・・



泣いていた・・・


























目の回りを真っ赤にして泣きじゃくっているアスカ・・・




「・・・アスカ・・・??」









「・・・シンジーッ!!」


泣きながら、僕の胸に飛び込んでくるアスカ。






「・・・どこに・・・どこに行ってたのよっ!!」


ドンドンと僕の胸を叩きながら必死に叫ぶアスカ。

僕にはなにがなんだかわからなかった。


「え?いや、その・・・スーパーに買出しに行ってたんだけど・・・」


僕がそう言うとアスカはますます強く僕の胸を殴りつけてきた。


「バカッ!!バカッ!!シンジの・・・バカぁ・・」


「・・・アスカ・・・痛いよ・・・」


泣きくづれるアスカ。


・・・もう・・・・・・イヤなのよ・・・


「え?」


「・・・もうっ!!・・・もう一人は嫌なのよっ!!
もう、裏切られるのは嫌!!置いてかれるのも嫌!!
もう一人に・・・一人になんてしないでよぉ・・・・・」







・・・僕はできることなら自分の頬を思いきり殴りたかった。

アスカは安心しきっていたんだ。

やっと自分の居場所に帰って来れて・・・

でも、僕はそれをぶち壊してしまった・・・

なにが、一生離さないだ・・・

そんな台詞が言えた義理か!!

くそっ・・・僕はなにをやっているんだ・・・







「・・・・アスカ・・・僕は・・・絶対にどこにも・・・どこにも行かない!!」


僕はアスカをきつく抱きしめた。


「・・・うんっ!・・・うんっ!・・・」


泣きじゃくるアスカ。

僕はアスカの髪に顔をうずめた。

涙が止まらない・・・

アスカの髪が僕の涙で薄茶色に染まっていった・・・





















僕達は泣きながら抱きしめあった。

お互いの存在を、愛するものの存在を確認するために・・・

自分の居場所を確かめるために・・・・・・

・・そして・・・初めて見つけた・・・

希望と・・・

・・・幸せを・・・

決して・・・こぼさない為に・・・



<つづく>


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