出会いがあれば別れが有り、始まりが有れば終わりが有る。

 

    始まりはなにかを作り出し終わりはなにかを生み出す(と、しんじる)

 

   この物語りはある少年の、出会い、そして別れが生み出すカルチョドラマである。

 

 

[Eファンタジー  プロローグ]

 

《はじまりは別離よりそしてボールより》

 

 

  そこは、とある遊園地で、有った。

 

  沢山の人々が、楽しそうに、集う場所であった。

 

  そこに、その場所に、そぐわない、と言ってはとても可哀想な母と、子がいた。

 

  母は初秋なのに分厚いみすぼらしいコートを着、しかしとても美しい女性であった。

 

  その手に繋がれている男の子は、とても楽しそうに母に微笑んでいた。

 

  対照的に、母は、優しく微笑がえしながら、どこと無く寂しげな顔をしていた。

 

  母は、しばらく乗り物などを一緒に回っていたが、ふと、売店の前で足を止めた。

 

 

   「・・・・・シンジ・・・・・シンジ・・・・・シンジ・・・・・」

 

   「アイスクリーム たべる?」        「うんっ」

 

   「おいしい・・・・・?」           「うんっ」

 

   「 ・・・・・シンジ・・・・・シンジ・・・・・シンジ・・・・・」

 

 

   「 なぁに  お母さん ・・・・・」

 

   「・・・・・シンジ・・・・・はい・・これ・・・・・」

 

   「なぁに・・・・・これ・・・・・」

 

   「・・・ボールよ・・・これで、遊んでらっしゃい・・・・・・」

 

 

   しばらくの沈黙が、この親子を包む。

 

  {ギュッ}と、とつぜん母は わが子をだきしめた。

 

   「どうしたの?」と、子が聞く。母は 思わず涙を浮かべた・・・。

 

 

   「お母さん・・・・・、いかなきゃ行けない・・・・・。」

 

   「うん?」

 

    その子には母が、何を言ってるのか分からなかった。

 

    それが、今生の別れになるとも知らずに・・・・・・。

 

   「シンジ・・・お母さん・・・きっと・・・」

 

   言葉に詰まる母。しかし気を取り直し言葉を続ける。

 

   「きっと・・・帰って来るから・・・・・」

 

   「うんっ」

 

   「体が、元気になったら・・・・・帰って来るから・・・・・・。」

 

    涙に濡れながら母は立ち上がり、シンジから離れる。

 

   「 じゃ、行くからね・・・・・。」

 

   「うんっ早く帰って着てねー」

 

    その場で、手を振るわが子を尻目に、涙を拭きもせず、遠ざかる母。

 

    その姿を、その子は、一生忘れる事はなかった・・・・・・・・・。

 

 

 

    あれから何年発ったのだろう。

 

 

    その子・・・碇シンジは、14歳になっていた・・・・・。

 

    手にサッカーボールを持ち・・・・・・・。

 

    そのボールを母との唯一の、絆としながら・・・・・・。

 

 

   物語りは、まだはじまってもいない・・・・・・・。

 

 

 

  ◇ 第一節に続く




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