始まりは、いつも唐突である。

 

 ヒーローは、、時とともにやってくる。(と、思う)

 

 時にうまく乗っかって行けた者だけがヒーローに、成ることが出来る。

 

 だからたとえ物凄い才能が有ったとしても、

 

 

 物凄い努力をしたとしても、

 

 運が、なければ、時に乗れなければ、

 

 

 決してこの世にヒーローとして名を残すことは出来ない。(と、やっぱり思う)

 

  これは、そんな人間たちの物語りである。

 

 

[ Eファンタジー]

 

[ ファーストステージ]

 

[第一節]《プロであった男》

 

 

 (注)この物語はフィクションです。

    実在の人物、団体等とは関係ありません 。

 

 

 

 1998年6月14日 フランス トゥールーズ

 

 日本代表が、架の地に立つ。

 

 ワールドカップと、云う 。

 

 カルチョの聖戦に・・・・・。

 

               

 

だがこの物語はそれより6年前にさかのぼる・・・・・。

 

 まだワールドカップが、夢物語だったころ。

 

 それは、Jリーグと、云う。

 

ファンタジーの始まったころ・・・・・。

 

 

 

 

 

1992年10月。

日本のサッカー界が、大きく変わろうとしていた。

 

日本に初のプロサッカーリーグが

誕生しようとしていた。

 

1993年5月15日

ジャパンプロフットボールリーグ

 

Jリーグである・・・・・。

 

 

(Jリーグ初年度参加10チーム、地域と名称)

 

  埼玉県浦和市浦和市F・C{レッドダイヤモンズ}

  静岡県清水市清水市F・Cエスパルス

  愛知県名古屋市名古屋グランパスエイト

  大阪府吹田市パナソニックガンバ大阪

  神奈川県横浜市日産F・C横浜マリノス

  神奈川県川崎市読売ヴェルディ川崎

  神奈川県横浜市・九州A・Sフリューゲルス

  茨城県鹿島郡鹿島アントラーズF・C

  千葉県市原市ジェフユナイテッド市原

  広島県広島市サンフレッチェ広島F・C

 

  (以上10クラブ  1993年4月当時)

 

 

 

 

日本にサッカーと、云う競技が伝わっておよそ85年。

サッカー発祥の、地、イングランドより

遅れることおよそ,100年。

 

 

そのJリーグのクラブの一つ

名門ミツビシ浦和レッドダイヤモンズの

フロントルームに彼はいた。

 

 

「江藤君、君は今まで我がミツビシのために

よく貢献してくれた。」

フロントの言葉を、彼は黙って聞いていた。

 

「まあよそのクラブの人気選手などは、一億とか二億だとか

云われている様だが・・うちも来年からJリーグにプロチームと、して

参加する訳だから・・・」

 

彼の頭の中には色々な思いに駆られていた。

 

「それら人気選手程ではないが・・・

まあうちとしても、これぐらいの数字は出してあげようと・・・」

 

その手に渡された書類を目に通すこともなく彼は

「考えさせていただきます」というと息も継がず

彼は出て行ってしまった。

 

「おおい、江藤君、な、何か不満でも、・・・・・」

 

その言葉を聞くこともなく彼は

部屋を出て行ってしまったのであった・・・・・。

 

 

5000万・・・・・

それがミツビシ浦和レッドダイヤモンズのエース

江藤未来世(ミキヨ)につけられた「値段」で、あった。

 

日本代表の中心として、そしてミツビシF・Cのキャプテンと、して

ひたすら邁進して来た功労者で、あった。

 

グラウンドに行くと待っていた男がいた。

レッズのトレーナー、赤石 宏で、あった。

知る人ぞ知るスポーツ針師で、ある。

未来世とは、10年来の友人で、あった。

 

「おーいミキヨ」

「おうっ」

「一昨日打った針の具合は?

そろそろ効いてきて痛みが・・・」

「5000万だ!」

「えっ」

 

「・・・・・そ、そうか・・・ウン・・そりゃ当然・・・

そのくらいもらって当然だよ・・」「くそくらえ、だ」

 

「えぇっ」

「・・・・・・」

 

宏は、以外だった・・・。

未来世の言葉とは、思えない言葉だった・・・。

地位や名誉や金で14年もやってきた男では、ないことを

誰よりも知っていた宏で、あった。

 

「宏はどうだ・・・10倍の金を出すから・・・

10倍効く針、打ってくれるか・・・・・。」

 

「・・・そんなのはムリだ・・・」

「そうだろ・・・俺だってそうさ・・・・・。」

 

 

「そりゃあお前は・・・いままでだって

会社の給料だけでも一生懸命やってきたし・・・・・」

 

宏は思い出していた・・・・・

この14年間を・・・・・。

 

それは、日本サッカーの低迷期でもあった。

 

オリンピックはメキシコ以来出場していない・・・。

ましてやWカップに至っては・・・・・。

 

1985年10月・・・・・

国立でのWカップアジア最終予選・・・韓国との試合・・・。

 

ホームでの2対1の敗戦・・・・・。

 

 

帰りのバスのなかで・・・・・

生まれたばかりのわが子を抱いて

呆然と座り込んでいたお前を・・・・・。

 

あの未来世の姿を

宏は忘れることはなかった・・・・・。

 

 

「今までも、これからも俺の生き方は変わらん・・・。

変わってたまるか!・・・それを今のガキどもは・・・。」

 

ロッカールームの中から練習をおえ、着替えて出て来た

若手選手を見て未来世は、そう、はき捨てた。

 

「俺、2000万ぐらいかなー」

「おめえが2000万だったら俺は4000万だって。」

「そんなーだってヨミウリのあいつ、1500万だっていうぜ?」

「えぇーあのへたくそがー」

 

 

そんな声が向こうから聞こえて来ていた・・・。

 

二人は黙り込んでしまっていた・・・。

 

このいきなりの価値観の変わりよう・・・。

 

「・・・でもさミキヨ・・・やっぱりプロは金だぜ・・・

そうやって足に値段をつける事によって・・・強く・・・

うまくなっいくんじゃないのかな・・・・・。」

 

「たからこそだ・・・・・

たからこそ今まで以上に恥ずかしいプレーは、

出来なくなる・・・。・・・もし・・・俺が自分の思い通りのプレーが

出来なくなったら・・・その時は・・・・・。」

「やめるってえのか?」

 

「そうだな・・・・・

プロっていうのは・・・足に値段をつけるってのは

そういうことだぜ・・・宏・・・。」

 

・・・相変わらずシビアな男だ・・・と宏は思っていた・・・。

だがそれだから今まで頑張って来れたのだった・・・。

たからこそこの男に今まで付いて来た宏だった。

 

「なにをいってやがる!まだまだうちは

お前の力が必要なんだぜ・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「それに来年の四月からはWカップの

一次予選も始まる・・・・・。

ゆめだろ・・・・・お前の・・・・・小さいころからの・・・・・。」

 

「ば、ばか言え・・・いい年して・・・

そんなこと・・・言えるか・・・。」

 

宏は再び思う・・・

その覚悟こそ、本物であろうと。

そう思い自分に言い聞かせなければこの数々のプレッシヤーに

打ち勝てるはずもない。

 

「・・・でもその意気やよしってとこかな・・・・・。

ミキヨ・・・お前さんはそのゆめにいくパスを

もっているんだから・・・・・。」

 

「34歳にもなって・・・・・恥ずかしいな・・・。」

 

「俺にも見させてくれよ・・・

その夢の続きをさ・・・・・。」

 

「・・・そうだな・・・。」

 

宏は三たび思った・・・

これだけの覚悟を持ってやっていける選手が

他にどれだけいるのかと・・・・・。

 

まだまだこの男が日本のサッカー界には必要だと・・・。

ただでさえ今の日本には引っ張って行けるだけの人材が

不足しているのだから。

 

 

 

と、そんな話も一段落した時・・・・・

 

土手の上に一人の少年が、たっていた。

年の頃は、14・5歳ぐらいか・・・

ただ、見るからに汚らしい

作業服の様なものを来ていた・・・。

 

「あのーすいませーん、あ、そこのおっさん二人・・・

ちょっといいすかー・・・。」

 

なんともぶっきらぼうな口の利き方である。

失礼な奴・・・・・

それが宏の最初の印象だった・・・。

 

 それが運命の出会いであったことを。

 

 碇シンジ・赤石宏・江藤未来世の

人生を変える出会いだったと云うことを・・・。

 

  カルチョの神は

   静かにその幕を・・・開けた・・・。

 

   (第2節につづく)




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