ふとした出会いがその人の運命を変えることもある。

 

  その出会いがそれぞれの人生を決めるかも知れない。

 

  出会いは一つの人の分岐点、かも知れない。

 

  だが、人は出会いに期待してしまう。

 

  それがどんな出会いで有ったとしても・・・。

 

 

 

 

 

 

 

[Eファンタジー]

 

[第二節]

 

 

《夢を追う者飛び込む者》

 

 

 

 

 

 

 

 

       (注)この話はフィクションであり、登場する

        人物、団体、地名、などは実在の名称とは

        関係ありません。

 

 

 

 

 

  「すんませんね、この辺でサッカーのテスト、

  やってるってきいたんすけど・・・。」

 

  歳のころは14・5歳ぐらいだろうが、

  随分失礼な口の利き方だ。宏の印象は最悪・・・。

 

  「だあれがおっさんだ、だれが・・・」

 

  そんな宏の文句を遮るように、

  「・・・あっちだよ・・・」と、

  土手の向こうのサブグラウンドをミキヨは指さした・・・。

 

  「ありがとーおっさんー」と、いうか言わない間に少年は

  土手の方に走り去ってしまった・・・。

 

  「レッズのエースを掴まえておっさんとは何だおっさんとは!」

  と、自分も言われた事も有り余計に憤慨する宏。

 

  「まあ良いじゃないか・・・どう見ても14・5歳ぐらいの

  子だったなあ・・・あんな子でもプロを目指すんだったら・・・」

  「プロも考えもんだ是!・・・まったく・・・」

 

  「・・・おいおい・・・」なだめるミキヨ。

 

  「・・・なんだかテスト見に行くの・・・

   嫌になってきたな・・・」この後自分もテストに

  立ち会わなければ成らないことを考えると・・・

  少し頭の痛い宏であった。

 

  ・・・プロとはそういう効果も有るのだということを、改めて

  思った宏だが、同時にそんなにこの世は甘くはないよと

  思わずには居られなかった・・・・・。

 

 

 

 

 

         ☆   ☆   ☆

 

 

 

 

 

  午後からあったレッズ一軍の練習も終わり、クラブハウスに

  ミキヨ達一軍メンバーが引き上げてきた。

 

  ちょうどサブグラウンドの前にミキヨが差しかかった。

 

  そこに何やら怒鳴り声のような声が聞こえてきた・・・。

  ・・・プロテストが行われていたサブグラウンドからだった。

 

  見れば2軍のコーチ達や宏と、さっきのあの少年が・・・

  何やらもめているようだった・・・。

 

  宏に駆け寄り声を掛けるミキヨ。

 

  「どうした宏・・・あいつ・・・なんかやったのか・・・」

 

  「おう、ミキヨ、練習終わったのか・・・嫌、な・・・・・

   テストしててさ・・・4・50人ぐらいいたんだけど・・・

   ま、全員落ちたんだけど・・・でも、あの子・・・なっとく

   出来ないって、テストとっくに終わってんのに、もう2時間も

   食い下がっちゃってさ・・・」

 

  「はぁ、そりゃまた・・・でも何であいつだけ?・・・」

  あんな子供がそれほど食い下がる、と云うのも大した

  根性だが一人だけ?と云うのもよく分からない・・・。

 

  「基礎(体力)の段階でもう、ちょっとだめで・・・

   まあ真面目にやって無い感じで・・・」と宏。

 

  「ふーん・・・で、それで・・・」

 

  「もうそれが気に入らないって感じで、

   何で基礎何かやるんだって・・・そんなんで、何が分かるって」

 

  「ほう・・・」感心したかのようなミキヨの返事。

   だが構わず続ける宏。

 

  「・・・要は、試合してみないと分からないだろうって、

   ホント、困った奴だよ・・・他の奴は皆とっくに

   帰ったってのにさ・・・」 

  いちどきに喋ってなのか、それともあの子のせいなのかしゃがみこむ宏。

  ホトホト呆れた様子だった。

 

  だが次の瞬間ミキヨが言った言葉は宏には信じられないものだった。

 

  「・・・ふーん・・・それはそれでそうかもな・・・」

 

  「へっ、どういう意味だそりゃ・・・」

 

  「言ってる事、あながち間違いとは言えないんじゃ無いかな・・・」

 

  「・・・おいおい、これ以上話をややこしく・・・」

  と、言いかける宏を制してミキヨが少年に駆け寄る。

 

  「・・・君、どうした・・・」向こうを向きまだコーチたちと

  言い合いを続けていた少年だったがミキヨに気が付き、

  「だぁかぁらぁー・・・あっ、さっきの・・・」と振り向く。

 

  「おっさん!・・・あ、いや、えーっと・・・」

  さすがに二度も面と向かっておっさん!はまずいと思ったのか

  言葉に詰まる少年。それを見て、

  (なーんか、うちの翔太ににてるなー)思わず微笑むミキヨ。

   そして、

 

  「江藤、江藤ミキヨだ・・・」と、名乗るミキヨ。

 

  「江藤さん、ね、・・・あんた、ここの、何・・・」

  

  随分なセリフである。

  少なくとも周りにいたコーチや選手達には。

  

  仮にもレッズの江藤と言えばうちのエースであり

  日本代表のキャプテンを努めた事もあるのだ・・・。

  それを、<あんた、ここの、何>とは・・・・・。

 

  だが、当のミキヨ本人はあまり気になって無いようだった。

  (・・・まだ、ホントがきんちょ、だな・・こいつ・・ふふっ)

  子供にむきになってどうする・・・そんな心境だった。

 

  「一応、ここの選手さ・・・ところで何で君だけ残ってる?

  テストには落ちたらしいじゃないか。」

 

  「ふん、あんなテストで何が分かるっての、要は試合だろ試合!

  試合で見ないで何分かるって、そうだろ。」

 

  確かにそういう面も有るかもしれない。しかし基礎がなければ

  90分もフルには戦えない・・・。

  だか、

  「だけどテストにだって試合形式のは有ったはずだけど・・・」

 

  「あんなパスも回らない!シュートも撃てないゲーム!

   いくらやったって意味ないよ!全然!!」

  一気にまくし立てる少年。しかし、

 

  「おい!!いい加減にしろ!これ以上ごねるなら警察に

   突き出すぞ!」 業を煮やしたコーチだった。

   2時間もこの調子でもううんざりで、有ったに違いない。

   怒りは頂点に達していた。だが少年もまだ負けていない。

 

  「おーやるならやってみろってんだ!大体大人がこんだけ揃って

   俺一人納得させられないなんて、なっさけないと思わんかねー

   何にもわるくないぞー俺は・・・・・ふん。」

 

  「なっなんだとぉ」 益々険悪になる両者。

  だがミキヨはなぜだか少年に同情したくなっていた・・・・・。

 

  その理由は自分でもはっきりとは、分からない。

  だがそれはこの少年が幼い様に見える、わが子に似ている、

  と、いう理由だけでは無いようだった。

 

  「待って下さい・・・、確かに失礼な事だと思いますが

   子供相手に少し大人げ無いんじゃ無いですか・・・・・」

  と、たしなめるミキヨ・・・。少し驚いた様なコーチ達。

 

  レッズのエースの言葉だけに、コーチ達も無視は出来ない。

  しかし、それでは収まるはずも無い・・・。

 

  「・・・じゃあ江藤君に何か良い案でも・・・・・。」

 

  「・・・こうしましょう。・・・君・・・名前は・・・」

 

  「俺?俺の・・あ、いや僕の名前は、シンジ・・・碇シンジっ

   て言うんだ・・・。」初めて名前を名乗った少年。

 

  「・・・シンジ君か・・・形はどうであれ、試合形式なら

   文句は無い訳だ・・・そうだな?」

 

  「・・・・・まあね・・・。」とりあえず

   そう、答えるシンジ。だが、納得しているとは・・・。

 

  「私が・・・テストをします・・・1対1で・・・

   俺を1対1で抜いて1ゴールあげれば・・・と言うのは?」

 

  「えぇー」と、一様に驚くレッズの面々・・・。

 

  ところが・・・

  「そんなんでいいのぉー」と、シンジ・・・。

  相当に自信が有るのだろうか・・・

  もう、勝ったかのようなセリフである・・・しかし・・・。

 

  「しかし・・・そんな・・・江藤君・・・」

  コーチ達は戸惑いを隠せないようだ・・・。

 

  だがそうでもしなければこのガキ(シンジ)は

  納得しまい・・・。

  「日本代表のDFが、自ら・・・」

  高々ガキ一人に何もそこまで・・・

  何がミキヨをそこまでにさせるのであろうか・・・。

 

  「大丈夫、こんな子供に負けるほど私も

   もうろくしてませんよ・・・。」

 

  「・・・やってみないとわかんないと、思うけど・・・」

 

  「・・・・・そうだな・・・・・。」

 

  画して前代未聞の勝負が始まろうとしていた・・・。

 

 

  だが、それが、その後の

  二人の運命を大きく左右為ることになろうとは・・・。

 

 

  それを知るのは・・・・・

 

  カルチョの神のみであろうか・・・・・。

 

 

  ◇第参節につづく




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