その日、街は赫く炎に包まれた。 血の惨劇と、己の飽くなき欲望に染まったクリスマスの夜。 一人の少年を求め、少女達の痛哭の叫びが炎の街に響きわたった。 その日、街は赤く血に染まった。 危ういバランスの上に大量に積み上げられた小石の数々。 その日、誰かが小石を一つ抜き取り、山は一気に崩れ落ちた。 様々な色、形、大きさを持った小石達は急な斜面を一気に転がり落ちてゆく。 ほかの小石の上を飛び、ほかの小石の下を潜り、ほかの小石を押し退けて。 儚く消え、優雅に走り、美しく輝く……‥ 眩いばかりの輝きは、色とりどりの軌跡を描きながら落ちてゆく。 どこを目指して? なにを目指して? そこに辿り着いた時、すべての軌跡は一点で交差した。 その瞬間、神の座する絨毯の色は万色に輝いた。
逃 走 第36章 の 日々 One's life is an escape. |