新・機動戦機 NERV 〜Etemal War〜

REPORT 1


序章:『戦争 (涙の果てにあるもの..)』 〜The Surprise〜


− 時に、西暦2015年...
宇宙の最果てで起きた両軍の確執は激化し、太陽系の全てを巻き込むまでになった。
巨大な物量で盛り返す帝国に、一時有利に戦局を推し進めていた惑星同盟は苦戦を強いられていた。
戦争が激化し、半年が過ぎた..西暦2016年 2月 帝国は同盟軍に対して、「V作戦」を発令する。
機動兵器による技術差で均衡を保っていた同盟は、帝国の機動兵器JAの脅威の前に...
運命の灯火が消されようとしていた。



同年 4月 .. AREA2−地球圏

新型機の蒼いJA・F型シンジ専用機・ミ−ティア
シンジの駆るミ−ティアは、これまでに5〜6機の同盟側MS...
通称Lシリ−ズのサキ・Lを撃墜(おと)していた。

「碇 少尉..これ以上の戦闘は無理です。 弾薬も尽きますし、機体の損傷も..」
「くっ..ここまできたのにぃ〜くそぉ!」
ダンっとコントロ−ル・パネルを叩くと部下の言葉に頷き、無線のスイッチを入れた。
「こちら..MS15小隊、帰艦します..補給の用意をお願いします。」
「了解しました。お疲れさまです 少尉、帰艦をお待ちしています。」
プッンと通信が切れ..再び、沈黙が訪れた。



月面基地のディスプレイを見上げながら、通信士の伊吹少尉が、真っ青な顔で上司を振り返った。
「ダメです。 依然、コロニ−の進行..止まりません。」
伊吹少尉の視線を受けた赤木博士は、
・・・見れば解るわ
そう思って溜め息を吐き、クルクルっと指先でボ−ルペンを回転させる。
「日向中尉..地球への落下までの時間を逆算して。」
「地球落下まで、残り..6時間と5分29秒..しっ しかし...」
中尉の発言の間も、MAGIによるCD(カウント ダウン)が物凄い速さで進んでいる。
同僚の言葉に続けるようにして、青葉中尉は苦渋の表情を浮かべ..
「阻止限界点までは、残り..4時間をきっています。」 っと呟いた。


阻止限界点=クリティカル・ポイントとは、致命的な一線っという意味の言葉である。
この一点を越えると、機関部の破壊や制御部の占拠が成功しても、地球の引力で物体が引き寄せられ..
必ず落下するっという、致命的な一線だった。
地球へのコロニ−の落下..この現象が引き起こされてしまえば、地球の全人口の何割かは死滅し...
巨大な質量物の衝突衝撃は、地上に大きなクレ−タ−を残し、吹き上げられた粉塵による環境の変化は、
太陽の光を遮り、自然の破壊をも齎し..最悪、地球は死の星となる事も考えられた。




「お疲れさまです。」
声を掛けられ、振り返ったシンジの目の前に、タオルが差し出されている。
整備士らしい少女が、華やかな笑顔で立っていた。
「僕に?」っと尋ね、少女が頷くのを見ると、シンジはそれを受け取り、彼女に礼を述べた。

「馬鹿シンジ〜アンタ、状況が見えないの? イチャついてるんじゃないわよっ!」
背後からの怒声に驚き、振り返ったシンジの視界に映ったのは...
深紅のパイロット・ス−ツに身を包んだ同期の女性士官の姿態だった。
彼女はバイザ−(宇宙服用の気密性ヘルメット)を紐で浮かしたままの状態で...
背をMSの足首の部分に預けるとストロ−付きのドリンクを咥えている。
彼女は、名を惣流・アスカ・ラングレ−っと言う。
掛け声の主を見詰めるシンジの前で、アスカはタンっと軽く床を蹴るとスッと近づいてきた。
・・・うっ 何か用が在るのかな?
「何?」
・・・アタシも随分と嫌われたもんね
素っ気無いシンジの言葉に、彼女は苦笑を浮かべた。
「私は..アンタの事、嫌いじゃないわよっ。」
シンジはアスカの囁くような声を聞き、「えっ?」っと疑問符を浮かべる。
・・・そ そんな〜告白なのかな? でも、アスカなら美人だし...
百面相の様に、色々と模索しては表情を変えるシンジ。
アスカは溜め息を吐き、シンジの肩にポンっと手を置くと呟いた。
「嘘よ..じゃね。 アタシもう出撃だから...お互い生き残れたらいいわね。」
シンジは、彼女にどんなリアクションを取っていいのか解らず、「そうだね。」っとだけ呟いた。


真紅に塗装された最新式のJAU・F型アスカ専用機・フランメ ク−ゲル(炎の弾丸)
シンジの駆るJAより、さらに25%の出力UPに成功した、帝国軍最強の機動兵器の一つである。
試作段階で10機に満たない数しか生産されず、アスカの様な下級士官では乗れるはずの無い機体だった。
ただし、本来ならばである...アスカは、元々新型機のテストパイロットで、JAUに乗りなれていた。
それを口実に、彼女の母親であるキョウコ・ツエッペリン博士が、娘に貸し出すよう上層部に掛け合ったのだ。


「アスカ・惣流少尉...JAU、出るわよっ。
アベル軍曹・カイン軍曹..目標は、コロニ−制御室、ザコは無視するのよ。」
「「了解」」
ゴオオオオオオオっと物凄い騒音と共に、カタパルトから、MS11小隊が発進する。
真っ赤な弾丸の様なアスカ機を、追い掛けるような形で2機が続き、合計3本の矢が時空(そら)に放たれていった。

「碇少尉ですね?」
MS11小隊の発進を黙って見詰め続けるシンジの思考を妨げて、目前の少女が尋ねた。
彼女は黒い軍服に身を包み、イチジクの葉を象ったエンブレムを胸に飾っていた。
エンブレムに彫られた、God is in his heaven , all right with the world っと言う文字...
彼女はNERVの人間だった。
・・・父さんの差し金かっ...どうせ、まともな用件では無いのだろうけど...
頷き、「..どうせ、僕が誰だか解った上で尋ねてるんでしょう?」っと皮肉な態度で答えた。
彼女は苦笑を浮かべると否定せずに、「まぁ..そうなんですが..」っと言って笑った。
彼女の笑みを見詰めたシンジは、軽い目眩を覚えた。
・・・平気で人を騙す人間の笑みだね...父さんの部下らしいよっ
シンジはそう感じ、我ながら皮肉的なもんだなっと感じていた。

「こちらへ..」
少女の指し示す方向へと、彼女の後ろを歩き出すシンジ。
同じ風景の通路を暫く歩くと...彼の前に、無意味に頑丈そうな鋼鉄製の扉が現れた。
PI PI PI PI...
少女は扉の前で立ち止まると暗証番号を、的確に打ち出していった。
「こちらです。」 扉が開ききると右手奥の方向を指差し歩き始める少女の後を、シンジは黙って歩き続ける。
「あっ!?」
シンジは驚愕の声を上げた。
彼の見上げる視線の先には、見た事も無い新型のMSがリフトで固定させられていた。
駆動系が明らかに、JAシリ−ズとは異なっている。
少しでも機械工学に詳しい者なら...
このMSが如何に、従来のものより優れているのかっが、一目で解るほどの画期的な構造が成されていた。

「汎用人型機動兵器Eva..そのプロトタイプです。
JAとは異なるコンセプトで開発された機動兵器..従来、JAは小隊行動を取り、作戦を遂行します。
それに対し、このEvaはたった一機で、戦況を打破するのを目的に開発されており...
そのスペックは優にJA一小隊に匹敵します。」 そう呟き..少女は、シンジにカ−ドキ−を差し出す。
シンジはそれを受け取ると、新型機の昇降機へと駆け出した。

−時に、西暦2016年 4月10日...地球へのコロニ−落下まで、残り..4時間26分45秒
阻止限界点まで、残り..2時間30分12秒




REPORT 2


新型機を駆るシンジは、コロニ−の落下を阻止できるのか?
コロニー機関部の目前で、シンジは黒い死神と出会うのだった。
彼の卓越した操縦技術は、シンジを地獄へと誘うのか?

次回...『決戦、阻止限界点』 〜In the earth〜

この次も、サヴィ〜ス サヴィ〜ス!




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