こおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーん!!!


 雄叫びと共に、初号機の背に6対の光の翼が発現する。

「シンジ!」
「碇君!」

 未だケイジ内で拘束された、弐号機と零号機の中に響く、アスカとレイの叫び。

 第15使徒の襲来。
 成層圏に出現した、その使徒を迎撃する為、シンジと初号機はたった一機で出撃した。ミサトの指示である。
 使徒による精神攻撃により苦しむシンジ。
(ここまでか……)
 ミサトが作戦の断念を決断しようとした時……

 初号機が吼えたのは、その直後であった。

「暴走……!?」

 アスカとレイ、そして、発令所の面々の表情が強張る。
 ミサトが拳を握り、唇を噛む。
 マヤは震えながらも、僅かな異変をも見逃さぬように、モニターを凝視している。
 レイの不安に満ちた瞳。少し前までは考えられなかった瞳の色。
 リツコですら極度の緊張で、顔を青ざめさせていた。
 そして、アスカは……

「シンジ……」
 自分の躰を抱きしめる。

 シンジが抱いた躰。
 シンジに抱いて貰った躰。

(大丈夫……だよね、シンジ)







『続・シンジ400%』







全壊前回のあらすじ。

 第14使徒を撃退するためにシンジと初号機は、シンクロ率400%と云う、理論上ありえない数値を記録する。
 使徒を殲滅したものの、それがシンジの肉体に与えた影響は、とても無視出来ないものであった。
 4人に分裂した碇シンジ。
 だが、それは、アスカ、レイ、ミサト、マヤの4人の女性にとっては福音でしかなかった。
 4人のシンジは、4人の女性に等しく分配され、何人かの甲斐性なしの男共を不幸にしたものの、基本的に、平和で幸せな世界が訪れたのだった。





前作『シンジ400%』は「めぞんEVAG04号室にて、ひっそりこっそり公開中!








19日前




 はふぅ……

 アスカはそっと、甘い息を吐き出す。
 ふと、時計を見る。
 日付は2分前に変わっていた。
 それを、見咎めたかのように、右の乳首を舌先で転がしていたシンジの唇が、アスカの半開きの唇を覆い、舌を吸う。
 アスカの股間に顔を埋めたシンジが、吸っても吸っても溢れてくるアスカの愛液を、飽きずに吸い続ける。
 左の乳房を弄びながら、へその周りを舐めていたシンジが、そっとへその中に舌を這わせる。
 最後のシンジはアスカの右足の指の間を舐め回していた。
「足の指の間を舐められるのは気持ちいい」
 アスカがこんな事を云ったのが何時だったのかは、はっきりとは憶えていない。だが、アスカの形のいい足の指や、足の裏に、舌を這わせるのは、シンジにある種の倒錯的な情欲を掻き立てさせる。

 シンジの唇が、アスカの唇から離れる。
 ダラリと流れる睡液を、舌の先で追いながら、アスカはうっすらと目を開ける。

 自分の躰を貪る4人の男。

 『輪姦』と云う、女性にとっては屈辱的な行為を、今のアスカは何の躊躇いもなく受け入れ、幸せすら感じていた。

 全く同じ顔をした4人の男。4人の碇シンジ。

 それは、4人でありながら、アスカにとっては、あくまで『碇シンジ』と云う一人の男なのだ。たとえ、4人の内の誰か一人だけであっても、4人全員であっても、それは全て、惣流アスカと云う少女の愛する、碇シンジと云う少年なのだ。

 ミサトの家を出て、新しく借りたマンション。寝室に置かれた巨大なダブルベッドも、5人もの人間が乗っては、どうしても狭く感じる。

 足の指を舐めていたシンジが、ベッドを回り込んでアスカの頭の方に来る。そして、自分の屹立したペニスをアスカに見せつけるように、アスカの顔を跨ぐ。
 アスカは目の前にそびえるペニスにそっと舌先を這わせていく。
「アスカ……僕も……」
 へそを舐め回していたシンジが、アスカの顔の横からペニスを突き出す。アスカはそれを横目で見ると、左手でシンジのお尻に手を回し、腰を引き寄せると、ソレを口に含む。
 先程まで舌先を這わせていたペニスには、今はアスカの右手がまとわりついている。
 右の乳首をいたぶっていたシンジは、左の乳房が開いたのを見て、両手で、両の乳房を揉みし抱くように体勢を変える。舌先は、乳房と乳房の間に移動している。
 股間にいるシンジは、頭の両側にアスカの太股の圧力を感じながら、舌先をアヌスの方へと移動していた。
 舌先をアヌスに潜り込ませながら、鼻の頭で陰唇をつつく。溢れ出る愛液は、シンジの鼻を濡らし、シンジの呼吸に障害を与える。
 ゴホッ。
 愛液にむせるシンジ。股間で出された咳にすら、今のアスカには快感を与えた。
 ビクリと腰を震わせ仰け反る。
「はぁ……」
 ペニスを口から吐き出し、トロンとした目をしながら、涙と涎を垂れ流しながら喘ぐ。
 だらしのない弛緩した表情。だが、それもシンジには美しく思えてならない。

 股間にいたシンジは躰を起こすと、自分のペニスを、そっと、アスカの愛液と自分の唾液で濡れた、アスカの女の中心へと添える。
 力の抜けてしまった感のあるアスカの脚を幾分持ち上げながら、少しづつ、少しづつ自分の男を埋めていく。
 半ばまで埋まったところで、シンジはいきなり奧まで一気に突き入れた。
「ヒッ」
 パン!
 アスカの悲鳴と、肉のぶつかる音が同時に上がる。
 そのまま、アスカを抱え起こし、今度は自分が後ろに倒れ込む。騎乗位の形だが、躰に力の入らないアスカは、そのまま、シンジの胸に被さっていった。
 別のシンジが、アスカの尻を掴み、広げる。アスカの下になったシンジのペニスを飲み込んだままのヴァギナの上に、可愛いアヌスがヒクヒクと蠢いている。
 シンジはそこに自分のペニスをあてがうと、先のシンジとは対照的に、ゆっくりと挿入していった。
「あぐ……あ……」
 アスカは、焦点の合っていない眼を限界まで開き、声にならない音を、咽の奧から吐き出した。
 アヌスに挿入したシンジが、自分のペニスが一番深くまで入ったのを知ると、アスカを後ろから抱え込むようにして、アスかの上体を起こす。アスカの頭が、糸の切れた人形のように揺れると、涙と涎が飛び散った。
 そして、また別のシンジが、抱え起こされたアスカの乳房を掴み、自分のペニスの先を、アスカの乳首に当てる。
「ん……」
 そのまま、乳房の中に押し込み、または、擦り付けるように、乳首を撫で付ける。
 それを見ていた、最後のシンジが、開いている乳房を掴むと、同じように、ペニスを乳首に当てて行った。
 そして、下になったシンジと、後ろのシンジが、同時にゆっくりと腰を動かし始める。
「ひあっ、はっ、ひゃあ」
 ガクガクと首を揺らして喘ぐアスカ。既に天才少女のプライドなど何処にも見えない。髪をボサボサに振り乱し、虚ろな眼を見開き、涎と鼻水を垂らしながら、意味をなさぬ声を発し続ける。
 その表情がシンジ達の征服欲を刺激する。
 あの、高慢で美しい才女が、自分の手によって、自我を忘れるほどよがり狂っている! あれだけ馬鹿にしていた男に全てを晒して、阿呆のように快楽を求めている!

 シンジは、更に貪欲にアスカをなぶり続ける。そしてアスカも、その全てを受け止めて行った。







1時間前




「パターン青! 使徒です!」

 日向マコトの声が発令所に響く。
 それを聞き、ギクリとしたように、顔を見合わせる、ミサト、リツコ、マヤ。
「……来ましたね」
「そうね……、リツコ、準備は?」
「出来ているわ……、でも、何のテストもしていないのよ?」
「解ってるわ……、でも今使わないで、どうするのよ?」
 ミサトの言葉を受け、リツコは視線をマヤに移す。
 それに気付き、マヤは緊張した面もちで、首をゆっくりと縦に振った。
「……やりましょう、先輩」
「……解ったわ。準備を進めて。ミサト、子供達を……」
「解ってるわ。日向君、チルドレンに非常召集、全員よ! 急いで!!」

 そして、運命の輪は再び回り出す。







25日前



「出張? 何よ、それぇ〜!?」

 コトの発端は、第2新東京市で行われる、国連のイベントへの、ミサト、アスカ、レイの3人の出席命令であった。
「だから、この記念式典に、NERVの代表として、作戦部長の私と、チルドレンの貴方達に出席しろってコトよ」
 ミサトが仏頂面を下げながら説明する。彼女にとっても、あまり歓迎したくない仕事らしい。
 NERV本部内のブリーフィングルーム。そこへ突然呼出を受けたアスカとレイは、ミサトから突然の命令を受けていた。
「イヤよ! 何でアタシがそんなのに出なきゃなんないのよ!」
 アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「そうだそうだ」と云いたいらしい。
 シンジ分裂以来、以前のように、険悪な雰囲気もなくなり、意外に仲がいいようだ。
「仕方ないでしょう。上の命令なんだから」
「じゃあ、何でアタシとファーストなのよ! アタシとシンジ、でなければファーストとシンジでもいいじゃない!」
 アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「そうだそうだ」と云いたいらしい。
 当然、アスカとセットのシンジは、アスカ専属のシンジ1号、レイとセットのシンジは、レイ専属のシンジ2号だ。
「だから、向こうのお偉いさんが、貴方達二人を希望しているのよ」
「まあ、向こうもムサイ男よりも、可愛い女の子の方がいいってコトじゃない?」
 横からリツコが口を挟む。
「何よ! シンジはムサくなんかないわ!!」
 アスカが叫ぶ。アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。ついでにミサトと、何故か居るマヤも頷いている。「そうだそうだ」と云いたいらしい。
「……言葉のあやよ……」
 さすがのリツコも、この4人が総掛かりでは分が悪い。
「と、とにかく、シンジ君は待機。貴方達二人は明日から出張。解った?」
「あ、明日ぅ〜!? 何よソレ! 何でそんなに急なのよ!!」
「し、仕方ないでしょう……そういう日程なんだから……」
「……ミサト……アンタ、忘れてたわね」
 アスカとレイが揃ってジト目でミサトを睨む。
「う……」
 思わず引いてしまうミサト。書類の山に埋もれていて、1時間前まで自分も知らなかったのだが、そんな言い訳は通用しないだろう。
「とにかく、アタシはイヤだからね!」
「そ、そうは云っても……」
「なら、せめて、シンジを連れてってもいいでしょ!?」
 アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「そうだそうだ」と云いたいらしい。
 ……結局、二人とも、シンジから離れたくないだけらしい。
「それはダメよ」
 答えたのはリツコだった。
「何でよ? 待機任務なら、マヤのが一人いれば充分でしょ? アタシもファーストも、ミサトだって連れてけるじゃない!」
 『マヤの』とは、マヤ専属のシンジ4号の事だ。ついでに、ミサト専属がシンジ3号である。
「それがダメなの。シンジ君が増えた事は、国連と委員会には秘密にしてるわ。向こうにバレたら、3人のシンジ君の引き渡しすら要求されかねないしね。良くて実験サンプル。ヘタすると………アスカ、あなた、シンジ君を委員会のジジイどもの慰み者にしたい?」
「ぐ……」
 こう云われては、アスカも黙るしかない。レイもアスカの横で、渋い顔をしている。
「とにかく、そういうワケだから、アスカ、レイ、解ったわね!?」
「で、でも!」
あああああぁぁぁぁぁ!! ウルサイ! 私だって、シンちゃんから引き離されて、頭にきてんのよ! 1週間もシンちゃんと出来ないなんて〜〜!!! ああああ、考えただけで躰がモヤモヤして来るわ!!! きぃ〜〜〜〜!!!
「ミ、ミサト、落ち着いて!!」
「と云うわけで!!! アタシだって我慢してるんだからッ!!! 命令よ!!! 解ったわね!!!???」
 さすがのアスカも、ミサトの剣幕に、黙るしかなかった。レイと二人で、ミサトに圧倒されながらも、仕方なく首を縦に振った。

 それを見ながら、マヤがこっそりと口の端を歪めていたが、誰も気付かなかった。



 翌日、大仰な、だが搭乗している人間を考えれば、けっして大げさとは云えない護衛を引き連れて、アスカ、レイ、ミサトを載せた巨大なヘリが飛び立って行くのを、マヤとシンジ4人衆は、ぼんやりと見送っていた。
 4人のシンジの内、3人は、幾分元気がない。よく見れば目の下に隈が出来ている。昨晩の激闘が伺える。妙にホッとしているように見えるのは気のせいだろうか?
(そういえば、あの3人、妙に肌の艶が良かったな……)
 小さくなって行くヘリを見送りながら、マヤ専属のシンジ4号は、ヘリに搭乗するアスカ、レイ、ミサトを思い返していた。

「さ、帰りましょうか」
 ヘリが見えなくなると、マヤは4人のシンジにそう話しかける。
「「「「そうですね」」」」
 同時に答えるシンジ4人衆。それを微笑ましく見るマヤ。
「………ねぇ、シンジ君達さぁ……」
「「「なんですか?」」」
 4号を除いた3人がハモる。
「今日から一人なのよね?」
「「「……そうですね」」」
 一瞬寂しげな表情を浮かべる3人。
「じゃあさ、私の家に来ない? みんなでご飯食べましょ、ね?」
 そう云って、自分の隣にいる、マヤ専属シンジ4号に笑い掛ける。
「そ、そうですね。ね、ねぇ、みんな、おいでよ。一人じゃ寂しいだろ?」
「で。でも……」
「邪魔……じゃ、ないですか?」
「そんなことないわよぉ」
「うん、遠慮しないでいいよ」
「そ、そうですか? じゃ……」
「お言葉に甘えようかな……帰っても誰もいないし……」
「そ、そうだね、ペンペンは一人でも大丈夫だし……」
(作戦成功!)
 心の中で快哉をあげるマヤ。
「じゃ、決まりね。さ、行きましょ。今日は私の手料理を食べさせてあげる」
 上機嫌で歩き出すマヤ。
 それを4人のシンジが、苦笑いを浮かべながらも嬉しそうに追いかけていった。

 そして、シンジ達はその晩から家に帰れなくなった。







40分前




「状況を報告するわ。使徒は現在成層圏で静止、今の所動きはないわ」

 ブリーフィングルーム。ミサトが、集合した6人のチルドレン(レイ、アスカ、シンジ×4)に状況を説明する。
「成層圏? そんな所にいるのを、どーやって、やっつけんのよ?」
「今の私達に、それだけの射程のある武器は無いわ。とりあえず、手持ちでは一番射程距離の長いポジトロンライフルを装備して、使徒が射程内に入ってくるのを待つしかないわね」
「……無茶苦茶消極的な作戦ね」
「でも、仕方ないよ、攻撃方法がないんだから」
 シンジはアスカの台詞に苦笑しながら、アスカを宥める。
「……とにかく、敵がいつ降下してくるか解らないわ。1機ずつ交代でポジトロンライフルを装備の上、地上待機。他2機はケイジにて待機。解ったわね」
「ええ〜!! ケイジで待機〜!? じゃ、アタシ達エントリープラグの中に居なきゃなんないの? 退屈ぅ〜!!」
「我慢なさい。これも任務よ!」
「ぶぅ〜」

「「「「……僕達はどうするんですか?」」」」
 むくれるアスカを横目に、4人のシンジがミサトに問いかける。当然、エヴァに乗るのは1人だけなので、他3人は待機任務になるのだろう。
 だが、ミサトから帰ってきた答えは、予想を裏切っていた。
「……シンジ君は、4人ともエヴァに乗って貰うわ」
「「「「え?」」」」
「……ミサト?」
「……」
 むくれていたアスカが、急に顔を引き締める。今まで黙って指示を聞いていたレイも、ミサトに鋭い眼差しを向けた。
「4人乗りのエントリープラグを用意したわ。シンジ君には、それに4人でエントリーして貰うわ」
「「「「4人で? 大丈夫なんですか?」」」」
「理屈ではね。パーソナルパターンは全く同じだし……」
「危険は……ないの?」
 アスカが恐る恐る尋ねる。その横で、じっとミサトを睨み付けるレイ。思いは一緒のようだ。
「……解らないわ。まだテストもしていないしね…………でも、あなた達にも解るはずよ。これは……チャンスなの」
 じっと、アスカとレイの瞳に視線を注ぐミサト。その瞳の中にアスカとレイは、自分達と同じ、不安を感じ取っていた。
 ミサトも不安なのだ……テストも無しに、いきなり実戦での運用。これでシンジを失いでもしたら……。だが、それでもやらなければならない。これには、危険を押してやるだけの価値がある。そして、それは、アスカとレイにも良く解っていたし、アスカとレイの願いでもあるのだ。
 アスカは、ゆっくりと視線をシンジ達に移す。そこでは、4人のシンジが、戸惑いながらも、黙って指示を待っていた。
 それに、軽く微笑み掛けるアスカ。
「シンジ……、アタシ、信じてるから」
「「「「え? あ、うん」」」」
「碇君……頑張って……」
 レイもシンジに声を掛ける。不安げな、だが、決意と信頼を秘めた瞳。
「「「「う、うん、大丈夫だよ、綾波」」」」

 それを見つめる、ミサトとリツコの瞳は、既に作戦部長、或いは科学者としてのそれであった。







20日前




もぉ、イヤぁぁぁああああ!!!! アタシ帰るぅ!!!

 雄叫びを上げたのは、ドイツと日本のハイブリッド帝国美少女、惣流アスカ・ラングレーだ。
 アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「私も私も」と云いたいらしい。
帰る帰る、今すぐ帰るぅ〜〜!! 今すぐ帰ってシンジとるのぉ〜〜!!!
 間違っても、14歳の女子中学生の台詞ではない。
 アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「私も私も」と云いたいらしい。
「もお!! 我が儘云わないの!! 私だって、夜泣きする躰を必死で押さえてんだから!!!」
 この女共の肉体は、4日間ヤってないだけで夜泣きするらしい。

 ここは、第2新東京市にある国際ホテルで、今回の国連イベントの来賓の逗留を一手に引き受けている。
 そのロビーで、アスカ、レイ、ミサトの3人は、周りにたむろしている年輩のおっさん共の無遠慮な視線を黙殺し、大音響で怒鳴り合っていた。どう考えても、こんな話をする場所ではない。注目を集めまくっている。最早、『慎み』などと云う言葉は忘却の彼方だ。
 しかも、話をしているのが、スーパーモデルもかくやと云わんばかりのダイナマイト美女と、どうみても高校生以上には見えない美少女が二人だ。周りで聞き耳を立てている連中も、話の内容とのギャップに半ば呆然としている。
 中には、夜泣きなら自分の手で静めてやりたいなどと考える不埒者もいたが、彼女達の剣幕に、考えるだけに留めているようだ。賢明である。

「とにかく、アタシは帰らせてもらうわ! これ以上、シンジの居ない所になんか居られないわ!!」
 アスカの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「私も私も」と云いたいらしい。
「あああ〜〜!! ホンットに我が儘なんだからぁ!! どうすりゃ、いいのよぉ!!」
 頭を抱えるミサト。帰還予定は明後日、一番大事な式典は昨日終わったが、まだ細々したイベントやら会合やらが残っているので、今帰るワケにはいかない。
「…………解ったわ、こうしましょう」
 何らかの折衷案を思いついたらしい。ミサトが渋い表情で、アスカとレイに向き直る。
「……何よ」
「……いきなり全員帰るワケにはいかないわ。今日は一人、明日はもう一人、最後の一人は明後日まで残る……こうしましょう」
「……いいわ、じゃ、今日帰るのは私ね」
 その言葉に、ミサトとレイが、仏頂面でアスカを睨む。さすがに引いてしまうアスカ。
「な、何よ、文句あるの?」
「当たり前でしょ! 私だって、今すぐ帰って、シンちゃんとりたいんだから!!」  ミサトの横では、レイがコクンコクンと頷いている。「そうだそうだ」と云いたいらしい。
「な、何考えてんのよ! ミサト! アンタ、中学生置いて帰ろうなんて、保護者としての自覚あるの!?」
「そ、そんな……」
 一気に泣きそうな顔になるミサト。
「ホンットに無責任なんだから! 責任者なら、ちゃんと責任とりなさい!! それでよく作戦部長なんかやってられるわね!!」
「ひ、非道い……」
「ズボラ! がさつ! 味覚音痴! 生活不能女! 年増! 音痴! ビヤ樽! 淫乱!!」
「うう……そこまで云わなくても…………それに淫乱ならアスカだって一緒じゃない……」
 蹲って床に『の』の字を書き出すミサト。『勝った!』とばかりに、アスカは会心の笑みを浮かべる。
 ちなみに、ダブってるのは『淫乱』だけではない。さあ、いくつダブってるか捜してみよう。

「……でも、私なら、帰れるはずよ」
 レイの目がピキーンと光る。
「う……、ファースト……で、でもアタシも譲るワケにはいかないわ!」
 睨み返すアスカ。

 ゴゴゴゴゴゴ…………

 宮下あきら風手書き立体極太ゴシックの効果音をバックに対峙するアスカとレイ。
「……決着を付ける時が来たようね、ファースト」
「……そうね……これが運命と云うモノなの?」
「さあ……? でも残念だわ。もしかしたら、いい友達になれたかもしれなかったのにね」
「……でも、最早、私もアナタも引くことは出来ないわ」
「そうね……、サヨナラ、レイ。アタシ、アンタのコト、実は結構好きだったのかも」
「……私も、アスカ」
 ゆっくりと構えを取るレイ。それを見て、アスカも戦闘態勢を取る。
「ふふ……ありがと。……じゃあ……いくわよ」
「ええ……」

 二人の間に緊張が走る。

 アスカは思う。サヨナラ、世界で唯一解り合えたかも知れない、本当の親友になれたかも知れない、もう一人のアタシ。
 レイは思う。残念。でも、私にも譲れないモノがある。例えたった一人の、そして、最初の『友』を失うコトになっても……
 ミサトは一人、蚊帳の外で、床に『の』の字を書いている。

 そして、二人は同時に動いた。

「「じゃあ〜んけん……」」

「「ホイ!!」」

 アスカ:グー
 レイ:チョキ

 アスカの顔に獰猛な笑み。牙があれば、さぞかし絵になったことだろう。
 レイの顔に驚愕と焦り。使徒との闘いでも見られなかった動揺。

「あっちむいて……」

 すかさずアスカが動く。素晴らしい流れだ。動きに淀みがない。
 レイは未だ心の焦りから回帰出来ていない。この時点で勝負はあった。

「ホイ!!!」



 2時間後。
 アスカを見送る、レイとミサトの顔は、苦渋に満ち溢れていた。



 アスカが第3新東京市に到着したのは、日も大分、西に傾いた頃だった。
 アスカは、ようやく第3新東京市に辿り着いたというのに、無茶苦茶イラだっていた。

 シンジに連絡が付かないのだ。二人で住んでいるマンションに電話をしても誰も出ない。携帯に掛けても繋がらない。折角帰ってきたというのにイライラが募るばかりだ。

 とにかく、速攻でマンションに戻る。マンションでならば、シンジの携帯に取り付けた発信器から、シンジの位置が割り出せるからだ。
 鍵を開けるのももどかしく、マンションの扉を開け放つ。
 直ぐにアスカに感じたのは、籠もった空気の匂い。どうもシンジも2,3日部屋を空けているらしい。
 いちおう部屋を全部覗いてみるが、シンジの姿は無い。

 取りあえず、窓を全開にして、受信機の接続を急ぐ。先程までとは違った焦りがアスカを突き動かしていた。あるいはシンジに何か有ったのかも知れない……
 冗談ではない。もし、万が一、シンジが居なくなったりしたら自分はどうすればいいのだ? 心も躰も、もうシンジなしでは、生きていけないと云うのに!

「居た!」

 反応は直ぐにあった。
 ネルフ本部の近く、だが本部内ではない。
「……なんで、そんなところに……」
 思い出す。そこに何があった……?

「! まさか……!」



 ドゴォ〜〜ン!!

 伊吹マヤのマンションの玄関の扉が、凄まじいまでの破砕音と共に砕け散ったのは、アスカがシンジの居場所を掴んでから、僅か5分後のことであった。
 扉を破戒したのは、云うまでもなく、セカンドチルドレン・惣流アスカ、その人である。
 ちなみに、アスカのマンションからここまでは、車で、ミサトの運転でも15分かかる。どうやってアスカがここまで来たかは乙女の秘密と云うヤツだ。

「な、なんだぁ!?」
 わらわらと部屋の奥から人影が湧き出てくる。
 全く同じ顔をした4人の少年。
「……久しぶりね、シンジ」
「「「「アスカぁ!?」」」」
「……折角、可愛い彼女が、アンタの為に予定を切り上げて帰って来てやったってぇのに……アンタはこんな所で何をやっているのかなぁ?」
 無論、ナニである。
 ちなみにシンジは4人とも素っ裸だ。当然、今までナニをしていた為だ。なお、まだ、陽も暮れていない。
「「「「え、あの、これにはワケが……」」」」
 どう考えても弁解のしようのない状況ではあるが、ここでアスカに責められるべきなのは、アスカ専属のシンジ1号だけなのに、何故か4人揃って弁解している。

「どうしたのぉ、何があったのぉ、シンジくぅ〜ん?」
 そこへマヤが、躰にシーツを巻き付けただけの姿で顔を出す。どことなく惚けた表情だ。たった今までナニをしていたのだから仕方ないが。ちなみに今日は平日で、まだ就業時間内のはずだ。
「……マヤ?」
「へ…………って、ア、アスカぁ!?」
 一気に覚醒するマヤ。その瞳に怯えと驚愕が走る。
「……ただいま、マヤ。……随分、お楽しみのようじゃない?」
「そ、そんな……帰ってくるのは明後日……」
「アタシだけ予定を切り上げさせて貰ったのよ……」
 薄い笑みを浮かべるアスカ。
 ……怖い! マヤは自分が今、断頭台に首を突っ込んでいるコトを自覚した。
「そ、そんな……」
「ねぇ……マヤ?」
「は、はい!」
「質問に答えてくれる? どうして、シンジが全員ここに居るのかしら?」
「え、えっと……それは……」
「……なんで、全員裸なのかしら?」
「あ、あの……」
「いったい、何やってたのかなぁ……」
 アスカの眼が細くなる。
 ヤバイ! 冗談ではなく、生命の危機が眼前に迫っている!!

「ご、ごめんなさい!!!」
 突然、土下座するマヤ。
「「「「マ、マヤさん!」」」」
「……フン」
 慌てるシンジ4人衆。それを半眼のまま睨み付けるアスカ。
 そして、アスカは土下座するマヤの側にしゃがみ込む。
「ねぇ、マヤ?」
「は、はい!」
「……顔を上げてくれる?」
「そ、そんな……」
「……いいから上げなさい」
「は、はい……」
 恐る恐る顔を上げるマヤ。それでも、アスカと眼を合わせるコトは出来ないらしく、視線を彷徨わせている。顔は真っ青だ。
「そんなに怯えなくてもいいから……、一つだけ聞かせてくれる?」
「な、なんでしょう……」
「………………気持ち良かった?」

 瞬間……時が止まったような気がした。

 硬直するシンジ4人衆。マヤは、少しの間、アスカの台詞の意味を、恐怖で硬直した頭の中で反芻していたが、その意味を知るや、その青い顔が、カラースプレーを吹きかけたように真っ赤に染まった。
「……気持ち良かった?」
 再び問い返すアスカ。
 マヤは、顔を染めたまま、恥ずかしそうに俯くと、
「すっごく……」
 と、小声で答えた。
「そう……」
 その答えに、満足そうな笑みを見せるアスカ。
「……アンタ達のコト、赦して上げてもいいわ」
「ほ、本当!? アスカ!」
 マヤの顔に、希望が走る。
「但し、条件があるわ……」
 アスカは意味ありげな笑みを浮かべて、4人のシンジを見回した。







20分前




「随分大きいね、このプラグ」
「うん……、4人も乗るんだから、もっと狭くなると思ったよ」
「でも、こんな大きなプラグ、エヴァに入るのかな?」
「あ、初号機にだけ改造があったって、マヤさん云ってたけど……コレのコトかな?」

 4人のシンジは4人用の、巨大なエントリープラグの中で、LCLを体内に取り込んでいた。
 プラグ内で会話をするシンジ4人衆。全員声が一緒なので、音声だけ聞くと、一人で会話しているようにしか聞こえない。
 プラグ内がLCLで満たされる。プラグの容量が大きいので、LCLの注入にも、いつもより時間が掛かっている。
『シンジ君、準備はいい?』
 モニターが開き、そこにミサトの顔が映る。
「「「「あ、はい、大丈夫です」」」」
『そう、じゃ、先鋒はシンジ君で行くわ。1時間たって、動きがなければアスカと交代。いいわね?』
「「「「はい」」」」
『がんばんなさいよ、シンジ!』
『碇君……気をつけて……』
 モニターが二つ、立て続けに開き、弐号機と零号機からの映像が送られる。
「「「「うん、大丈夫だよ、心配しないで、アスカ、綾波」」」」
『じゃ、いいわね、シンジ君。エヴァンゲリオン初号機、出撃!』
 そして、エヴァンゲリオン初号機は出撃した。

 使徒からの精神攻撃が、初号機に対して行われたのは、その直後だった。







19日前




 ぱたん……

 ベッドに倒れ伏すアスカ。
 それを見て、息を付くシンジ4人衆。

アスカ専属シンジ1号「……疲れた」
レイ専属シンジ2号「うん……、アスカがこんなに凄いなんて思わなかったよ……」
ミサト専属シンジ3号「はは……ミサトさんも凄いけどね……」
マヤ専属シンジ4号「……ねぇ、アスカ動かないよ。大丈夫かな?」
シンジ1号「ああ……大丈夫。良すぎるとこうなるんだ、アスカ」
シンジ2号「ふ〜ん、……でもさ、アスカ、なんかお尻も慣れてたみたいだけど……」
シンジ1号「え、ああ……、ア、アスカ、好奇心強いから……」
シンジ4号「はは、そ、そうだ、あの、乳首に先っぽ押し付けるヤツ……」
シンジ3号「ああ、あれ? ミサトさんに教わったんだけど、いいでしょ?」
シンジ4号「うん……気持ち良かった」
シンジ3号「あれ、ミサトさんの胸でやると凄いんだ。おっぱいの中に埋まってくんだ……」
シンジ2号「す、凄そうだね……」
シンジ1号「う、うん……、やってみたいな……」
シンジ4号「僕はリツコさんにやって貰おうかな……」
シンジ2号「……え?」
シンジ3号「何だって?」
シンジ1号「な、なんで、リツコさんが出て来るんだよ?」
シンジ4号「あ、やば……」
シンジ2号「おい!」
シンジ4号「う、うん……、実は時々、リツコさんも混ざってくるんだ」
シンジ2号「そ、それって、もしかして……」
シンジ1号「3P?」
シンジ4号「う、うん……」
シンジ3号「う、羨ましい……」
シンジ2号「リ、リツコさんとマヤさん……」
シンジ1号「なんか凄そう……」
シンジ4号「あ、じゃあさ、今度代わってみる? 僕もアスカと一度ちゃんとヤってみたいし……」
シンジ1号「う、うん!」
シンジ2号「あ、ず、ずるいよ、そんなの」
シンジ3号「そうだよ! 僕達とも代わってよ」
シンジ4号「そうだね……」
シンジ1号「いいんじゃない? 僕も、綾波やミサトさん抱いてみたいな……」
シンジ2号「まあ、交代しても結局全員、同じ人間なんだし……」
シンジ3号「じゃあ、ローテーションにしようよ」
シンジ4号「うん、でも、子供が出来たらどうしよう?」
シンジ3号「どうって? アスカと綾波はともかく、ミサトさんとマヤさんは余り問題ないんじゃない?」
シンジ4号「そうじゃなくて……誰の子供になるのかな?」
シンジ1号「そりゃ、僕達の子供だろ?」
シンジ4号「僕達の……誰?」
シンジ2号「誰でも一緒だよ。全員同じ碇シンジなんだから」
シンジ3号「遺伝子検査しても、4人とも父親だって云われるんじゃない?」
シンジ4号「それもそうだね」
シンジ1号「そうだよ。あ、ところで、リツコさんが来る日って決まってるの?」
シンジ4号「う、うん、週に一度…………あれ、今日だ?」
シンジ1,2,3号「「「へ?」」」

 その時、電話のベルがけたたましく鳴り出す。
 時計を見ると、もう午前1時を回っている。電話が掛かって来るには非常識な時間だが、どうせ非常識な人間の非常識な用事であろう。
 ここは、アスカとシンジ1号のマンションなので、当然、シンジ1号が受話器を取る。
「はい。もしもし」
「シンジ君? 私よ」
「あ、リツコさん!」
 正に噂をすれば影。
「アスカが帰って来たんですってね。残念だわ。今晩はマヤの所に泊まるはずだったのに……」
「はは……」
「ところでアスカは? 代わってくれる?」
「あ……、今ちょっと………えと、失神……してます……」
「あら、やるわね? さすが、4人揃うと凄いわね」
「はは……」
「じゃ、いいわ。アスカに伝えておいてくれる? このコトは、ミサトとレイに報告して置いたから」
「へ? このコトって……」
「あなたが4人全員アスカの所に居るコトよ」
「な、何で……」
「私、今晩、凄く楽しみにしてたのよねぇ〜」
「…………」
「それで、ミサトとレイからの伝言を伝えるわ」
「は、はあ……」
「レイが明日……もう今日ね。今日の午後には帰って来るから、翌晩は全員でレイの所に泊まること! それからその次はミサトの所。解った?」
「で、でも、アスカは……」
「あなた……いえ、あなた達が説得しなさい」
「そ、そんな……」
「……解ったわね」
 そして、電話は切れた。
 呆然とするシンジ。とにかく、このことを他の3人に説明するべく、シンジ1号はベッドへと戻っていった。

シンジ1号「……と云うワケなんだ」
シンジ3号「じゃあ、今度は綾波の所に行くんだね」
シンジ4号「綾波かぁ。楽しみだなぁ」
シンジ2号「あ……、でも、ちょっと問題が……」
シンジ3号「? どうしたの?」
シンジ4号「もしかして、普通にしかヤってなのかな? いきなり4人は辛いかな」
シンジ2号「って云うか……」
シンジ1号「……どうしたの、いったい?」
シンジ2号「う、うん。実は綾波……まだ処女なんだ……」
シンジ1号「は?」
シンジ3号「……嘘」
シンジ4号「まだヤってないの?」
シンジ2号「いや……実は初めての時、間違ってお尻の方に入れちゃって……、綾波もそういうモノだと思っちゃったみたいで……それからずっと……」
シンジ1,3,4号「「「…………」」」

 翌晩、4人のシンジが、レイをどう扱ったのかは秘密だ。

 さらに翌晩、4人のシンジが、ミサトにどんな目に会わされたかも、やっぱり秘密だ。







ちょっと前




 ふぅぉぉぉおおおおおお………

 翼を生やした初号機が、ゆっくりと浮き上がる。
 光の翼は、光の粉を撒き散らしながら、微かに震えている。

 突如、翼が大きく羽ばたいた。

 くぅおおおおおーーーーー!!

 雄叫びと共に、弾丸の如く天空へ飛び立つ初号機。

「シンジ!」
「碇君!」
 少女達の叫び。

「シンジ君!」
 その叫びに、どれだけの想いを込めても……最早、自分達に出来る事は何一つない。
 ミサトとマヤは、ともすれば折れそうになる心を必死で押さえつけながら、メインモニターを凝視していた。
 モニターの中では、飛び立って数秒にしかならないというのに、初号機が使徒に組み付いていた。使徒のATフィールドは一瞬も持たなかった。
 初号機から伸びる光の翼は、今や、使徒を覆い尽かさんばかりに巨大になっている。
 暗黒の宇宙で絡み合う2体の光鳥。
 輝きを宇宙に放ちながら、翼はためかせ、蠢いている。
 その幻想的な光景は、それを見つめる者達の心を奪ってしまうに十分なものであった。

 そして、初号機の翼は、使徒を完全に覆い尽くす。人々はそれを呆然と見つめていた。

 いち早く我を取り戻したのは、リツコだった。
「マヤ! 初号機の状況は!?」
「は、はい!」
 弾かれたように、マヤの指がコンソールを走る。
「使徒の反応は消失しています。初号機、健在! 現在のシンクロ率……」
 マヤは、はっと息を呑む。

シンクロ率……1600%!!







15日前




「ねえ、リツコ。ちょっと相談があるんだけど……」

 その日、シンクロテスト終了後、ミサト、アスカ、レイ、マヤの4人は、なんとなくリツコの居る研究室に集まっていた。
 シンジの方は、今日の担当が、ミサト専属の3号で、掃除と食事の用意をするべく、さっさと帰宅していた。
 しばらく、四方山話(実は猥談)に華を咲かせた後、ミサトが、おもむろにリツコに話しかけた。

「お金ならダメよ」
 即答するリツコ。ミサトの普段の行動が伺える。だが、今日ミサトが相談したいのはそんなことではない。
「お金じゃなくって……、え〜と、シンジ君の事なんだけど……」
「……何?」
 シンジの事と云うことで、アスカ、レイ、マヤも興味を持ったらしく、黙ってミサトを見つめる。
「4人乗りのエントリープラグ……作れないかしら?」
「……どうして?」
 その必要性はない。逆に万が一の場合、シンジを全員失いかねない。作る意味がないし、ミサトがそれに気付かない訳はない。
「ほら、前にシンジ君とアスカが同じプラグに入って、凄いシンクロ率を出したじゃない。今回もそれと同じ……もしかしたら、もっと凄いシンクロ率が出せるんじゃない?」
 その可能性がない訳ではない。しかも、アスカの時と違い、4人のパーソナルパターンは同一だ。確かに研究対象としては、とてつもなく面白い素材だ。だが、あくまで研究対象としてだ。
「……ミサト」
「な、何?」
「本音を云いなさい…………何を考えているの?」
「へ? や、やぁね、何も考えてないわよぉ」
「ミサト」
 睨み付けるリツコ。どうやらごまかしは利かないようだ。
「う……、解ったわよぉ………」
 ミサトはいたずらのばれた子供のように、それでも結構楽しそうに話し出した。
「シンジ君さぁ……、こないだ1人が4人に増えたワケよね?」
「そうね」
 何を今更。リツコの口調がそう云っている。
「じゃ、じゃあさ、4人だったら、何人に増えるのかなぁ……な〜んて」

 突如。

 研究室の空気が変わった。

 リツコが信じられないモノを見る目付きでミサトを見ている。
 アスカ、レイ、マヤのミサトを見る瞳が尊敬の輝きに彩られている。マヤはともかく、アスカとレイが、かつてそんな眼でミサトを見た事があったろうか?

「す、凄いわ、ミサト!」
「……素敵」
「シンジ君が一杯……ああ……」


 なんか、既にイっちゃってるようだ。
 それを横目で見ながら、リツコは冷静に告げた。
「ダメよ、ミサト」
「え? ど、どうしてよ!」
「そうよ! アタシ達の幸せを邪魔する気!?」
「…………どうして、そういうこと云うの?」
「非道いですぅ、先輩!」
 いきり立つ4人娘(『娘』とは云い難い者も若干居るが)にリツコはそっと溜息をつく。
「落ち着きなさい。いい、よく聞いて、4人乗りのエントリープラグを作ったとして、シンジ君が首尾良く増えたとして……」
 それで何の問題があるのだ?
 4人娘の視線がそう告げている。
「4人乗りのエントリープラグじゃ収まらないわ。10人以上入れるぐらいの大きさでないと……」
「リツコ、それじゃ、作ってくれるの!」
「偉い、リツコ!」
「ありがとう……感謝の言葉」
「先輩、素敵ですぅ〜!」
 4人娘大喜び。
「……但し、条件があるわ」
 リツコがそっと微笑む。

「私にも分けてね」

 その後、この話を漏れ聞いたNERVの女性職員が、ミサトの許へ殺到したらしい。







そして現在




「シンクロ率1600%!!」

 伊吹マヤの叫び。不安と期待の入り交じった叫び。
(やった!?)
 ミサトが拳を握る手に力を込める。作戦は成功……か?
 ケイジ内のエヴァの中では、アスカとレイが息を呑んで見守っている。
 一段下の方にいるオペレーター達の表情も、緊張している。

 ゴクリ。

 誰かが飲み込んだ唾の音が、やけに大きく響く。

「……リツコ? 成功……よね?」
 ミサトが焦れた。
「焦らないで、ミサト。マヤ……初号機のプラグ内の映像……急いで」
「解ってます……電磁波が強くて巧く……映像、出ます!」
 全員が、メインモニターを注視する。
 アスカもレイも、既に他の事など何も考えられない。
 そして、モニターが映したものは……

 ひい、ふう、みい………………、16人の碇シンジ!


「やったぁ!!!」

 誰かの叫び。本当に嬉しそうな叫び。
 ミサトがガッツポーズを取る。
 リツコの会心の笑み。
 マヤが手を叩いて喜んでいる。
 下の方にいる女性オペレーター達からも歓声が上がっている。
 対して、男性オペレーター達は、一気に、どよ〜んと落ち込んでいるようだ。まあ、仕方あるまい。

「やったね! レイ!」
 アスカがレイに笑い掛ける。
「ええ、アスカ!」
 レイの笑み。満面の、心からの笑み。


「な、なんだよコレ……」
「ミサトさん達、こんなコト考えてたんだ……」
「非道いよ……」
 シンジの愚痴など、誰も聞いちゃいなかった。


「…………碇」
「……問題ない。シナリオ通りだ」
「…………そうなのか?」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………いや、すまん。聞いた私が悪かった」
「………………冬月」
「……なんだ?」
「…………俺達も分けて貰えるかな?」
「………………」
「………………」
「…………まず……無理だろうな」
「…………そうか…………」


「ぐふふふ」
 ミサトの妖しすぎる笑い。
(まずは、1度に何人まで相手に出来るか、記録にチャレンジね。アソコ、お尻、口、乳首、谷間、手、お臍、脇の下、膝の裏、足の裏、髪の毛……ぐふっ、ぐふっ、ぐふっ)
(何人かでローテーション組ませて、24時間マラソンHってのもいいわねぇ……うひゃひゃひゃひゃ)

「ふぅあ、ひゃはっはっはっはっはっはっ」

 いつしか、高笑いを上げている。
 だが、それを止める者など誰もいない。女性陣は全員同じ思いだったし、男性陣は悲嘆して泣き崩れている。

 そんな中、リツコは、16人のシンジの映像を見ながら思う。
 残る使徒は2体。
 残る機会は少ない……

「早急に、64人入れるエントリープラグを開発する必要があるわね」

 その呟きを聞いた、ミサトとマヤが、リツコの方へ、グッと親指を立てるのだった。








 この話を聞いた、洞木ヒカリ、霧島マナ、山岸マユミを始めとする何人かのクラスメート達が、急にアスカとレイに優しく接するようになったらしい。










『続・シンジ400%』改め『シンジ1600%』・








注・『シンジ6400%』の執筆予定はありません






あとがき

すいません、こんなのしか出来ませんでした。
ああっ、石を投げないで!!




ザクレロさんのメールアドレスはここ
zacrero@ic-net.or.jp



中昭のコメント(感想として・・・)

  ザクレロさんより18禁投稿です。
  ほんわかした甘いムードが・・・匂うような一編です。


キャラコメ


カポーンカポーン
天然少女   「お姉ちゃん・・・」
美少女M   「あれはほっといていいわ
         んじゃ早速読みますか・・・・・・・ユイカ」
天然少女   「なーに?」
美少女M   「早く寝なさい」
天然少女   「まだ眠くないもん」
美少女M   「シンヤと二人っきりで読むからさっさと寝ろって
カポーンカポーン
天然少女   「近ずいてるよ」
美少女M   「しょうがないわね・・・パパを生け贄に差し出すか
         パパ、隠れてるのはわかってるわよ」
永遠の少年S「・・・なんでわかったの」
美少女M   「18禁小説を読む娘の顔を覗き見る父親・・・嘆かわしいわね」
永遠の少年S「・・・可愛いから」
娘達     「「ポッ・・・パパ」」
    ポカ ポカ
娘達     「「いったーい」」
ミセスR   「メッ」
娘達     「「ごめんなさーい」」
永遠の少年S「何を読んでいたの・・・かな」
天然少女   「あのねあのね、パパがいっぱいなの」
永遠の少年S「僕が?」
天然少女   「四人のパパがアスかーさんを・・・えーと・・・そうだ、輪姦(マワ)しちゃうの」
永遠の少年S「回す?」
天然少女   「アスかーさん、涎と鼻水を垂らしてアウアウなの」
永遠の少年S「くるくる回して鼻水?・・・よくわかんないや」
ミセスA   「カポーンシーンジーーーーー読んだわね読んだでしょじゃぁやってもらってあげるわ
        いくのよほらぐずぐずしないで
    ポカ
ミセスA   「なにすんのよ。レイ。あんた嫉妬してるんでしょ。四人のシンジを一人じめ・・・足まで舐めてもらったの」
ミセスR   「フィクション。実在の人物と無関係」
ミセスA   「ノンフィクションにすれば良いだけよ。
        四人に増やすのは無理だけど、同じ顔をした息子がいるん・・・だか・・・ら」
「「「「・・・・・・・・」」」」
ミセスA   「ちょっと待って、冗談、冗談よぉー」

美少女M   「反省室にトジコメね。シンヤに手を出そうなんて1万年早いわ」
少年S     「冗談っていってるけど?」
美少女M   「なら、後3時間くらいしてから反省室に入ってみたら?熱烈大歓迎よ」
少年S     「やめときます」


永遠の少年S「・・・レイ・・・・なんで足を僕の方につき出してるの?」
ミセスR    「・・・」
永遠の少年S「・・・舐めるの?」
ミセスR    「・・・ポッ・・・・・何をいうのよ」



  みなさんも、是非ザクレロさんに感想を書いて下さい。
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