使徒との戦いも終わり3年が経ち、平和を取り戻し、すっかりと再建がなった第三新東京市の一角でその事件は起きた...

「ぎゃー」

夕食も終わり、後かたづけをしているときに突然洗面所からあがったその悲鳴に、主夫碇シンジはとるものもとりあえず洗面所に飛び込んでいった。そしてそこにはヘルスメータに乗って青い顔をして放心しているアスカの姿があった。

「アスカどうしたの...」

そういって押っ取り刀飛び込んできたシンジだったが、バスタオル一枚のアスカの姿と、アスカが乗っているものを見つけると冷たく言った。

「何だまた太ったのか...」

そのシンジの冷たい言葉にアスカは正気を取り戻した。

「なんだまた太ったのかとはなによ...
 それより誰に断ってあたしの裸をのぞきに来たのよ...」

手は口ほどにものを言い...そんな言葉はないが、それを実践するかの様にアスカの言葉が終わる前にシンジはアスカによって叩きのめされていた。
 
 



ダイエット...或いは


 
 

「ひどいよアスカ...いきなり殴るなんて...」

鼻の頭に絆創膏を貼りながらシンジは文句を言った。

「どっちがよ。乙女の裸をのぞいておいて...
 それになにが『何だまた太ったのか...』よ、デリカシーのかけらもないんだから」

そういうとアスカはもう一発シンジの顔に張り手を入れた。

「そんなこと言ったって、これで何度目だよ...
 太ったってアスカが騒ぐの...
 そのたびにこっちはいい迷惑を被っているんだよ」

シンジの不平は止まらない。そうだろう誰だって毎月こんなことを繰り返されていたらいやにもなる。しかしアスカの方はシンジのそんな言葉を聞くと目に涙を浮かべて言った。

「なによ...あたしはシンジのために綺麗でいたいのよ
 それともシンジはあたしがぶくぶくに太ってもいいの?
 それに元はといえばシンジが悪いんじゃない」

シンジは幾度となく聞かされたその言葉に飽き飽きしていた。涙だって初めのうちはだまされたがこう何度も繰り返されるといい加減嘘泣きが出来ることぐらい気がついていた。しかしここで聞いておかないと後が怖いことは身にしみてわかっている。情けない話だが3年にわたる同居生活でアスカの恐ろしさがすっかり身に付いてしまったシンジは続きの言葉を聞くことにした。

「僕が悪いの?」

「そう、シンジがカロリー計算もしないでご飯を作るのがいけないのよ」

実はシンジはカロリー計算をして食事を作っているのだが、すべての努力はアスカの盛大な食欲と間食によって無にされていた。『みんなアスカが悪いんじゃないか』そんなシンジの言葉も口に出されることはなかった...体の方はたくましくなったがアスカに頭が上がらないのは変わっていないようだった。

そんなシンジの心の叫びも聞こえないようにアスカのボルテージは上がる一方だった。

「そうよシンジがみんな悪いのよ...」

「ハイハイ」

「ちょっとした油断があたしを豚にするのよ...」

「そうだね」

「これは...!」

「これは?」

アスカは言葉に一段と力を込めた。

「ダイエットしかない!」

「そう良かったね」

まるでレイのような言葉を言うとシンジは自分の部屋へと戻っていこうとした。そんなシンジの頭をスリッパが直撃した。

「こら〜〜〜!なにが良かったねだ〜!
 もうちょっとまじめにやれ〜」

聞き慣れたアスカの怒声にうんざりしたかのようにシンジは言った。

「ダイエットするんだろ
 勝手にすればいいじゃないか
 僕まで巻き込まないでよ」

『「そうよシンジがみんな悪いのよ...」
 「ハイハイ」』

アスカはいきなり二人の会話を録音したMDを再生した。そして言った。

「シンジも自分が悪いことを認めているでしょ...
 だからあんたも手伝うのよ...わかった?」

シンジは毎度のこの展開にもはや悟りの境地に達したのかもはや抵抗はしなかった。そしてなにを今度はなにをすればいいのかとアスカに聞いた。

「わかったよ何でも協力するよ...
 それで今度はなにをすればいいの。
 ダイエットメニューは作るけどそれでいいの?」

アスカはシンジの言葉を聞いてにやりと笑った。そしてシンジに聞こえないようにつぶやいた。

「チャア〜ンス」
 

***
 

ことの始まりは3日前、アスカがヒカリ達仲の良い友達と昼食を屋上で食べている時だった。

「え〜〜〜っ、アスカってまだだったの」

元々騒がしい屋上だったがヒカリのその声は周りの騒音もかき消すほどの大声だった。

「ちょ、ちょっとヒカリそんな大声を出さないでよ」

アスカは赤い顔をしてヒカリの口を押さえた。ヒカリは自分の出した声の大きさに気づいたのか少しトーンを下げて言った。

「だって、アスカがまだしてないなんて信じられなかったんだもの」

その言われように少しハラがたったアスカはヒカリに逆襲した。

「そんなことを言うけどヒカリだってあの鈴原としたの」

「ええ」

あっさりと言ってのけるヒカリにアスカは言葉を失った。

「それにここにいるヨウコだってミハルだってもうしてるよ」

さらにヒカリは追い打ちを駆けた。アスカはその横で塩の柱と化していた。

「どうせアスカのことだから家でも碇君のことをこき使ってそんな雰囲気になれないんでしょ」

シンジの名前が出たことで現世に復帰したアスカは言った。

「なっ、なんでシンジの名前がそこで出るのよ
 あたしはシンジのことなんか...」

「何とも思ってないっていうんでしょ...
 いい加減聞き飽きたわその言葉」

投げやりにヒカリが言う。

「だって...」

「ハイハイ、じゃあ未だにアスカのことを思っている碇君にはすっぱりとあきらめてもらって、新しい彼女を紹介してあげましょうね〜碇君もてるから選り取りみどりよね〜」

ヒカリはアスカに見えないところでにやりと笑って言った。

「ヒカリ〜」

青い顔をして言うアスカをヒカリは満足そうに見るとアスカの肩に手をかけて言った。

「アスカ素直になりなさいよ。
 別に今すぐ碇君にあげちゃいなさいとは言わないけど
 自分の心をちゃんと伝えておかないと後悔するわよ
 紹介するっていうのは冗談だけど、碇君がもてるのは冗談じゃないからね」

そんなことは言われなくたって3年間一緒にいたアスカにはよくわかっていた。父親譲りのすらりとのびた背。どこか女性的なところもあるが優しく整った顔。そして死線を乗り越えてきた自信からくるたくましさ、ゆとり、やさしさ。同年代の男をかすませてしまう魅力をシンジは身につけていた。但し、本人は自分がもてることにまったく気がついていなかった...シンジ自身が朴念仁であることもその一因だが、陰で競争相手をつぶしていったアスカの涙ぐましい努力もあった。

「いい、アスカ素直になるのよ...」

ヒカリの言葉にただアスカは頷くことしかできなかった。

『素直になれれば苦労なんかしていないわよ...』

そんな心の声を残して...
 
 

***
 
 

「それでアスカ。僕はなにをすればいいの?」

シンジの言葉ににやりと笑ったアスカは

「そうね〜
 まずあたし専用のダイエットメニューを作ること」

「ハイハイ」

「それから、お風呂上がりにマッサージ」

「ハイハイ」

「そしていっしょに夜の運動...」

「運動って何するの」

「あれよ」

「あれ?」

「だからあれよ」

「だからあれって何だよ」

「..クス」

消え入りそうな小さなアスカの声にシンジは何を言われたのかわからなかった。

「へっ?何?」

「だ・か・ら・セ・ッ・ク・ス・よ〜」

「わ〜」

そう言ってシンジはアスカの口を押さえ周りを見回した...自宅マンションの中なので誰も聞いているはずがないのにも関わらず律儀なリアクションをするシンジだった。そして言われた内容が頭の中に染み込んで来た時その内容を理解し、真っ赤になった

「ボクでいいの...」

「シンジじゃなきゃいやなの...」
 
 

<その夜>

「ハジメテナノヤサシクシテ...」
「ウン!アスカ」
「イタイ!」
「ダイジョウブ...?」
「ウッ...ヤメナイデ...」
「アスカ!」
「シンジ!」
 

<二日目>

「マダイタイノ」
「ヤサシクスルカラ」
「アン!」
「アスカ、アスカ...」
「...シンジ」
 

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    ・
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    ・

<十日目>

「シンジモウイッカイ」
「カンベンシテヨ」
「ダメヨマダマダ」
「ソンナ〜」
「イイワヨシンジ〜イク〜イク〜イク〜」
「ヒェ〜」
 

***
 

「センセ最近やつれたんやないか」

相変わらず一緒にいるトウジがヒカリに作って貰った弁当をかき込みながら言った。

「惣流だろシンジ」

シンジはアスカとの関係をどう答えて良いのか曖昧に笑ってごまかそうとした。

「そんなに夜のおつとめがきついのか」

「ウン、毎晩10回」

何の気なしに振られたケンスケの言葉にシンジは思わず答えてしまった。しばらくして自分が言ってしまった言葉に気づき慌ててシンジは言い直した。

「いや、毎日アスカにマッサージをさせられるんだそれが10分1セットで10セット以上で...」

狼狽するシンジに優しく肩を叩きながらトウジは言った。その顔は慈愛に満ちていた。

「センセ、恥ずかしい気持ちは分かるんやけど...無駄やで...ホレッ」

トウジの指さした先には顔をつやつやと輝かせたアスカがヒカリ達相手に大きな声でしゃべっていた。

「それでさー、シンジったら何回も求めてくるの〜
 さっすが碇指令の息子よね〜
 今晩から20回にしようかしら〜」

シンジは聞こえてきた会話に女性には羞恥心がないのかと目眩を感じていた。そして今晩のおつとめに

「体が持つのだろうか...」

不安の隠せないシンジだった。それでいてアスカを拒めないシンジはゲンドウ譲りの好き者なのだろうか...

「シンジモットスルワヨ」
「モウダメダヨ」
「ダーメ、アト5カイ」
「タスケテ、タスケテアスカ」

第三新東京市の夜は平和なようだった...
 

〜おまけ〜

毎晩繰り広げられるシンジとアスカの営みに...同居している葛城ミサトは眠い目をこすって...

「そうこれがサードインパクトの真相ね.......

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 んな訳あるか〜」

月夜に吠えていた。そして彼女はシンジ達との別居を涙ながらに誓うのだった。
 
 

〜おまけその2〜

とあるカップル

「トウジ〜モット〜」
「モウエエヤロ」
「ダメ、イカリクンノトコロハマイバン20カイヨ...ホラ」
「ソンナカンニンヤ」
「ダ〜メ」
「ヒェ〜」
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「ウラムデ・・・・センセ〜」
 
 

〜おまけその3〜

本人の名誉のため特に名を秘す。

「ふんどうせボクの彼女は左手さ!」
 

(おしまい)
 


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tortoise@kw.NetLaputa.ne.jp



中昭のコメント(感想として・・・)

  カウンター3万HIT記念作品。トータスさまからです。

  前回の2万HITと170度方向性が違ってる・・・・・・・
  明るいというより、イヤラシイお話ですね。

  ヒカリが・・・イインチョが経験スミなんて。
  おじさんは許しませんよ。

  ケンスケ(仮名)の恋人は納得いくけど。(笑)


  記念作品ありがとうございます。
  楽しく読めました。大胆なアスカが可愛いです。
  3ヶ月後のアスカの体重が増えていない事を祈りつつ、コメントを終わります


  みなさんも、是非トータスさんに感想を書いて下さい。
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