アレッ^2



 
 
 

棚からぼた餅、家宝は寝て待て、雉も鳴かずば撃たれまい...ちょっと違うか。まあ、そんなわけで一日にして正妻と二号さんを手に入れたシンジ君であるが、世の中そんなに甘くはない。何しろ未成年の婚姻に関しては保護者の同意が必要であるというのが我が日本の法律である。従って、保護者が「やんぴぃ〜」なんて言ったら絶対に二人は結婚できないことになっている。ちなみに「やんぴぃ〜」がどういう意味であるかとか、その前に中学生では結婚できないだろうというつっこみは却下である。無理が通れば道理が引っ込むとの理の通り、お役所が受け付けさえすれば婚姻自体は認められたことになってしまうのだ。ただしその時、婚姻届自体の年齢を詐称してはいけないよ。それは立派な犯罪になるからね。まあというわけでもないが、結婚はまだ無理だとわかっている常識的な二人は、とりあえず婚約と言うことでお茶を濁すことにしようと言うことでお互いの合意を見た。後の問題は碇家の両親である。惣流家に関しては、おかしな家訓を娘に教え込むぐらいだから、家訓に則った行動ならオールオッケーであったりする。従って二人は作戦を立てて難物であろう碇家両親を説得しようと試みるのであった。しかしあにはからんや、意外にもユイ母さんの答えは二つ返事でオッケーだった。当然のように隣ではゲンドウパパが胸をなで下ろしているのはお約束だ。しかし二つ返事とはどうやって数えるのだろうか。辞書によればすぐに承知することとあるが、“いいよ”であれば一つである。だったら一つ返事の方が現実に即していると考えるのは作者だけであろうか。まあ作者の疑問は置いておくことにして、ユイ母さんは婚約に関して一つの条件を付けた。まあある意味簡単なことではあり、そしていつの世にもなくならないことではある。すなわち息子夫婦との同居である。まあ婚約の間柄だからまだ夫婦ではないのだが、この場合便宜上夫婦と言うことにしておこう。嫁姑の戦いがここに勃発かぁ〜と思ったらどうやらそうではないらしい。『実は娘が欲しかったの』などというレイちゃんが聞いたら怒り出しそうな理由がそれである。まあその疑問には彼女は『だってマイが自由にさせてくれないんだもの』と宣った。しかしそんなことで争奪戦からはねのけられたレイちゃんはいい面の皮である。しかし、隣でゲンドウパパが異様にほっとしているのは気のせいだろうか。いやそうではない。彼は彼なりに非常に深い理由があったりするのだ。そのことはレイが二号さん契約を結んだと聞いたときに一瞬のうちに真っ青に染まった顔色がそれを表していた。一方アスカの方が同居を簡単に承諾したのは理由がある。何しろ敷地坪数十万坪という大邸宅に住んでいる彼女のことである。同居といってもお互いの部屋を行き来するのに自転車でも使わなければ息が切れてしまう。であるからして舅姑を端っこに住まわせておけば立派に同居の名が立ち、しかも実害がないという姑息なことを考えていた。レイ@二号さんに対しても同じ方法を採ろうと画策したが、条件闘争の中で歩いて3分以内という条項をいち早くつけられたため、そのたくらみは水泡に帰していた。まあそんなことで敷地の一角にもうけられたこじんまりとした一戸建て...そうはいっても一介のリーマンが一生かかっても手に入れることができない大きさがあるが...をホームスイートホームとして二人の甘い生活が始まるのであったぁ〜って、レイちゃんの住まいは壁隣にあったりする。こちらは別宅と言うことなのだが、なぜかちゃっかりマイ母さんまでついてきたりする。そしてあろう事かアスカちゃんのお母さんであるキョウコさんと意気投合なんかしたりするもんだから、アスカ、レイ、シンジの三人は簡単には関係を壊せなくなっていちゃったりしちゃったりする。ちなみにこの日から碇夫妻は黒塗りのリムジンで出社などするものだから、電車通勤の冬月所長ににらまれていたりなんかして...しかし、そんなことを気にするような碇夫妻は玉じゃない。ゲンドウパパなどは、またからかいの材料が増えたとほくほくしていたりする。ちなみに一方の惣流家、一代で一介のソフトやさんから財をなしたところなんかはどこかで聞いたことがある話である。ちなみに惣流家の場合、自作のソフトの売り上げで成り上がったところなど、いろいろと陰口をたたかれる某微少軟とは少し毛色が違う。お気づきであろうが、一代で財をなしたぐらいだから当然代々引き継がれてきた由緒正しい家訓など眉唾物である。つまり百科事典一冊分もあろうかと言う家訓、実は頭首であるラインハルト惣流=キルヒアイス...なんか聞いたような名前だな...が日本にかぶれて考え出したものである。従って家訓としての条文の選定理由は“おもしろい”が最優先課題であったことは夫婦の秘密である。当然のことながら、決定にはキョウコさんが少女時代に読んだコミックスの影響が色濃く出ているのは疑問の余地のないところである。なぜ、このように“おもしろいから”が選定理由となる家訓をアスカちゃんが信じているかというと、これはひとえに幼少からのすり込みのせいである。毎日毎日枕元で子守歌代わりに言われていては、どんな疑い深い人だって信じてしまうだろう。このすり込み、別名“洗脳”はアスカが物心つく前から行われていたこともあり、効果は絶大であった。最近は枕の下に仕込まれたスピーカーで睡眠学習などさせられていたりもする。冗談もここまで徹底すれば立派なものである。まあおかげさまで、本来なら絶対に出会わない二人が、こうして縁を結ぶことができるのだから作者にとってはまことに都合のいい冗談と言っていいだろう。しかしだ、第一話といい第二話といい、いったいどれだけの人が付いてきてくれるのだろうか。ちょっと不安になっていたりもする気弱な作者である。まあ、ここまで続けた以上、中途半端はよくない、このまま続けていくことにしよう。かように両家からは表だった反対もないまま、二人の婚約関係は順調な滑り出しを見せるかと思われた。しかぁし、そうは問屋は合羽橋...すみません関東限定のギャグです...そうは問屋がおろさない。この決定に不服を唱えるものが当然いるのだ。もちろんシンジ君のクラスメイトなどという小者ではない。ここまで読んでいる方なら当然気づいているだろう。エヴァキャラの中でまだ現れていないメインキャラがいるのだ。当然日向とか青葉といった日陰キャラなどではない。かといって霧島マナとか山岸マユミと言ったシンジ君においしいキャラでもない。そうそう我らがナルシーカヲル君である。当然このカヲル君。シンジ君の存在など知る由もないので、今のところノーマルである。なぜ、“今のところ”などという但し書きをつけたかと言うと、実はこの先の展開を作者が考えていないことに大きな原因がある。まあ単なるボケ・引き立てキャラになることはすでに決定しているので多少の設定の揺らぎぐらい何とでもなるだろう。そこでこのカヲル君、実はアスカちゃんの幼なじみだったりする。つまりシンジ君とレイちゃんみたいな関係でもある。ただシンジ君とレイちゃんとは違い、アスカちゃんにとってカヲル君は“いいおもちゃの一つ”だったことが彼にとっての悲劇であろう。つまり“いいおもちゃ”では有ったが“お気に入りのおもちゃ”では無かったのだ。まあこのカヲル君、当然惣流家に伝わる...?家訓は知っているわけで、いつかはアスカちゃんと××と考えていたのだが、どう策を凝らしてもアスカちゃんにはかなわない。シンジ君がアスカちゃんの天敵ならば、アスカちゃんはカヲル君の天敵だろう。すなわち彼がどんなに努力しようとも、絶対にアスカちゃんにはかなわない星の下に生まれついているのだ。いい加減あきらめればいいものを、男子一生の目的とばかり、修行の旅に出たりするのだから質が悪い。しかも彼が修行の旅に出ている間に、アスカちゃんが引っ越してしまうのだからさらに星の巡り合わせが悪いと言っていい。彼の生まれついた星の悪さは追々彼に語ってもらうことにしよう。たぶん涙なくしては聞けない代物になることは作者が保証する。かといってこれはイタモノではないので、そういった方面の心配は不要である。して、このカヲル君、修行がすみ、ようやくアスカちゃんの行方を追って第三新東京市にたどり着いた時には、すでにアスカちゃんの婚約の儀は滞りなくすんでいたりする。これに怒らないで男であろうか、いやない。この言い回しはこの回では初めてであろう。まあ、言い回し自体はいいのだが、このように、鳶にあぶらげをさらわれたことを我慢できるようなカヲル君ではない。またそうであっては作者も困る。しっかりと失地回復、捲土重来、汚名挽回...?とばかりに彼もまた第三新東京市に引っ越してきたりするから話はおもしろく...失礼、ややこしくなる。さあ、だいたい前振りは終わったので本論に入ろう。碇家、綾波家の引っ越しも終わり、惣流家が第三新東京市に引っ越してきてからおよそ一ヶ月が経ったその日から物語は再開する。アスカシンジレイの3人は、学生の本分を忘れず、しかも校則をきっちり守っていつものように学校への道を疾走していたりする。ちなみに惣流家から門を出さえすれば学校まで5分の道のりなのだが、門を出るまで走って30分かかるのはお約束というものである。従って彼らは、今の住居を用意してくれた親たちの暖かい心遣いに感謝しながら、始業時間の50分前には自宅の玄関を飛びであることになるのだ。はじめの頃は息も絶え絶えだった3人だが、1ヶ月もすれば体力も付く。虚弱体質だったレイも、このトレーニングが効いたのか今では健康優良児で通ってしまうほど鍛え上げられている。一方シンジはというと、彼の境遇にやっかんだ男子生徒の追求から逃れるため、黄金の逃げ足とも呼ばれる健脚を発揮するに至っている。ああ、また前置きが長くなってしまった。これがこの物語のスタイルになってしまったりすると、それはそれで大変なので何とかしたいものである。惣流家の門から5分と言ったが、これにはいろいろと条件がある...というか、何の問題もなければ、歩いて5分で学校に到着する。つまりこの問題と言うやつがミソなのである。ここでは少年Aとでもしておこうか、当然少年Aと言っても、某物語の連載が春先から休止しているK川書店の少年誌のことではない。未成年者の名前を出せないときに使うあれである。この少年Aの活躍によって、惣流家に伝わる?家訓のトッププライオリティは全校生徒の知るところになったのである。従って、毎朝登校の時間になると、腕に覚えのある奴らが夢よもう一度?とばかりたむろしているわけである。しかしこんな奴らを一人一人相手をしていたら大変である。しかも玄関から学校までの距離が遠い彼らにとって、朝の一分一秒は非常に貴重な時間となっている。君らにも経験があるだろう...朝のまどろみの中の一分の貴重さに...何者にも代え難いその時間のために布団から出ることが遅くなったことが。そう、その時間を確保するために彼らは学校までの道をわき目もふらず全力疾走するのであった。だから途中にどんな障害物があろうとも、そしてその壁がいかに高かろうとも、彼らは乗り越えずにいられなかったのであったぁ...何か違うな。有り体に言うと、アスカちゃんは校門までで待ち伏せる男どものところに速度を落とさず突っ込んで、そのままラッセル車のように障害物を巻き上げて突き進んでいったのであった。しかしこの日がこれまでと違ったのは、すべての関門を突破したと思った後に、一人の少年が両手を広げて待っていたことだった。

「待っていたよ、マイスゥイートハニー」

実はここで、「唄はいいねぇ〜」で始まる迷台詞を言わせようかとも思ったのだが、いかにもこの場にそぐわない。それに今の3人に対してそんなにのんびりとしていたら相手にしてもらえない。ということで、自分のそばで見かけたらぶん殴りたくなるような台詞をはきながら、その少年は背景にバラを散らして両手を広げるなどというキザなまねをすることとなった。そこにかまわず突っ込んでくる3人組み。そしてそのまま交わる二人の視線、久しぶりに出会った二人は熱い包容を交わすのであった...などとは問屋がおろさない。ラストスパートとばかりに、3人がひとかたまりになって校門に飛び込んできたのである。1対3、その結果は火を見るより明らかである。べちゃりと冗談のような音を立て、少年はその場に挽きつぶされていた。

「ねぇ、アスカ...今何かいなかった?」
「気のせいよ...ねえ、レイ」
「わたし...なにも...見なかった...」

結構酷い奴らである。渚カヲル...転校初日から遅刻&保健室決定。
 
 

転校二日目から毎日のように見せられたら、クラスメイトとしてもいい加減なれてしまう。しかも相手は折り紙付きの猛者を一撃で屠ってしまう少女である。A組...そういえば言っていなかったな...では、彼らにちょっかいを出そうなどと言う酔狂な生徒は存在しなかった。はじめからあの三人はいなかった。そう思って学生生活をエンジョイした方がよっぽど健全である。少なくともA組生徒は色恋沙汰の対象から彼らを外すという賢明な選択をした。従って彼らの興味は別のところに移っていた。当然シンジが大人になったかと言う下世話な話題もあったが、これは表の場では語られず、闇に潜んで鬼畜な同人本の形で日の目を見ることになった。そのかわり、毎朝の日課として何人の生徒が立ち並び、そこを彼らが何秒で突破したかと言うところに焦点が移っていた。しかし、ここでも誰かが止めるなどと言う発想は誰にもなかった。それほどすさまじい彼らの疾走であったのだ。

「5秒3、最後の一人が離れていたけど十分に上を狙えるね」

眼鏡を光らせ少年Aがつぶやく。いったい彼の言うところの上とはなんだろう。まさか学校まで疾走することにランクがあるとは思えない。

「賭はどないになっとるんや」

こちらは黒ジャージの似非関西人。早々に争奪戦への参加を切り上げ、似非関西人らしく商売へと勤しんでいた。ちなみに彼に言わせると、『あんな凶暴女は願い下げや』とのことである。電波少女ならばいいのだろうか?

「1ヶ月間のトータルで浮いたのは花田兄弟だね。
 後はとんとんかな...一番沈んだのはヤンだね」

「はっ、あいつは偉そうなことばっか言いよってに」

「仕方ないよ、ミラクルヤンも非常識には通用しないよ。
 それに有史以来、こんなばかげたことは起こっていないはずだからね」

だから人生はおもしろいんだ。とどこかの無精ひげスイカおじさんみたいなことを少年Aは呟いた。

「確かにあいつらが非常識であることは確かやな。
 しっかし負けっぷりもミラクルやな」

そういいながら二人は胴元の取り分をしっかりと計算していたりする。なかなか将来頼もしいものがあるではないか。
 
 

そういうことで3人は、下駄箱に到着したところでようやく速度を落とすのであった。しかしイベントは終わらない。お気づきのことだろうが、当然下駄箱と言えばイベントがある。そう、ふたを開けた瞬間になだれ落ちる数々の獲物である。しかしアスカさんに対しては、肉弾戦しか挽回のチャンスがないことが知れ渡っているにもかかわらず、体の弱いお兄さん達は恋文などしたためて募る思いを綴っていたりする。駄菓子菓子...だがしかぁし、そんなものは読んでもらえなければ意味もない。如何せん読んでもらうには量が多すぎたのだ。下駄箱の中にぎっしりと詰まった恋文の束をいったい誰が読むのだろうか。当然のことながらお手紙の束は、その役目を果たすことなく、校庭の片隅で炎と消えていく運命を辿ったのであった。しかし最近ダイオキシンの問題が叫ばれている。そう言った中で学校の簡易焼却炉など生き残れるのであろうか。まあお話の筋としてなくなってもらっては困るので、最新最精鋭の設備を備え、燃焼温度もむちゃくちゃ高くなる焼却炉であると考えてもらえばいいだろう。すまん、話が脱線した。アスカさんはいいが、レイちゃんの方は条件がはっきりとしない。見目麗しいレイちゃんが二号さんに甘んじている現状を憂い、自分が白馬の騎士になろうと考える人間がいても不思議はないだろう。まさしくその通りに考える男どももたくさんいた。ただ、全く同じ封筒がアスカさんのところに入っていることも考えると、彼らの考えることも大したことはない。まあレイちゃんの可憐さも有り、体力のあまりないお友達には、レイちゃんの方が人気があったりする。そしてその結果、大量の手紙の束が下駄箱に詰め込まれることになる。しかし、今時下駄箱に恋文などと言う古風な風習が残っているのだろうか。しかも、他人の恋文が入っているのを見つけて、それをそのままにするということがあり得るのであろうか。まあ処分しているところを見つかってフクロにされるのもいやだから、彼らもそのまま残しているのだろう。んでもってレイちゃんは束となった恋文の数々、律儀にも別に持ってきた袋に詰め込んでいたりする。持って帰ってお返事でも書いているのかと言うとそうではない。マイ母さんの言いつけで持って帰っているだけらしい。その後の運命は暇な主婦の暇つぶしに使用されているという噂だ。ああ、プライバシーはいずこに...して最後に残ったシンジ君。彼の場合はちょっと事情が違う。彼の下駄箱から出てくるのは恨みの籠もったお手紙の数々。中には果たし状なんかも混じっていたりする。カミソリメールなんてのは日常茶飯事、彼の端末は夜の生活を教えろと言うメールと、彼を嫉んだメールであふれかえっていたりする。しっかしカミソリメールも果たし状も一通ならまだ目に留まることもある。だがこうも沢山来ていては単なるゴミの山にすぎない。結局封をあけられることもなく焼却炉の露と消えることになる。中には三号さん希望のお手紙も有ったりするのだが、これもまた道連れとなって焼却炉に消えていくのであった。しかし毎日毎日下駄箱一杯になるとは、書く方も根気があるとしか言いようがない。駄菓子菓子この日は少し状況が違っていた。某ナルシー君、転校初日からオーソドックスにとばかりお手紙を2通したためてきたりする。当然一通はアスカさんへの恋文であり、もう一通はにっくき碇シンジへの果たし状である。しかし手紙を入れようとしたナルシーカヲル君、あまりの密集具合に手紙を入れることを断念。ちまちまとじゃまな手紙を取り出して処分しようとしていたところを他の生徒に見つかったりしたものだからたまらない。『なにすんじゃい、われ』とばかりに校舎裏に連れ込まれてしっかりとフクロにされたことは言うまでもない。しかしこういったときには関西弁がしっくりとくる。『なにをするんですか、きみ』では迫力がない。まあ言葉の迫力は置いておいて、かわいそうにカヲル君はシンジ君のとばっちりまで受け、転校初日からズタボロにされていたりする。しかもこの後には校門でのあれである。本当に身も蓋もないとはこのことである。その結果...

「あれっ、今日は手紙はいっていないね」
「いい加減諦めたんじゃない」

てな会話が二人の間で交わされることになる。草場の陰でカヲル君が泣いているよ...殺すんじゃないってか?

まあレイちゃんはその横で、お手紙をいつものように袋に詰め込んでいたりする。何とも平和な光景であるといってよい。

この世界の常識とは異なり、意外とアスカとレイは意気投合していたりする。ちなみにまだ夜の生活などないので、優先権争いなども起こっていない。当然夜の生活に付いてはごく一部の少女達には不満がたまっているのであるが、意外なほど良識的であるシンジ君があれこれ繰り出される誘惑をはねのけているのである。しかし14歳で本妻、二号さんを持とうというのである。良識といってもたかが知れている。まあここで言いたいのはめくるめく夜の生活...と言うことではなく、アスカとレイが仲がいいと言うことである。従って、自分たちの手が空いているので、アスカなどはせっせと手紙を詰め込んでいるレイを手伝っていたりする。

「マイおばさまも好きねぇ」

当然のことながら、アスカもこの手紙達の辿る運命はよく知っている。それでも決してやめろと言わないところなどはアスカも同罪である。ちなみに恋文の読書会。キョウコ、ユイ、マイの三人で行われているのは公然の秘密である。キョウコなどはアスカに持って帰ってこい、といつ言おうかうずうずしているところである。シンジ用の危険物処理班が編成されているところを見ると、シンジ君へのお手紙もそのうち同じ運命を辿るのであろう。しかし恋文を書いている男達、彼らは主婦の暇つぶしに貢献していると知っているのであろうか...
 
 
 

教室での彼らの席は、他の生徒からの強い要望により、窓際の一番後ろに置かれていたりする。そのほかの場所にしたりすると鬱陶しいというのがその最大の理由である。そしてその周りの席は空いていたりするのも緩衝用なのだろう。ここだけ3人用の長机になっていたりするのもご愛敬である。

いつものように遅れて入ってきたすちゃらか教師は、これまた転校生が来たときの儀式を始めた。

「喜べぃ女子ぃ。今度も上物だぞ」

決して人買いのお姉さんの台詞ではない。公正にして厳粛、学問の府で教鞭を執っている女性の言葉である。しかしこの人が言うと、美少年を前に舌なめずりしている絵が浮かぶのはなぜだろう。やはり無精ひげ、ポニーテールおじさんが相手をしていないのがショタに走るきっかけとなっているのであろうか。

「さあ、渚君入って」

入り口から入ってきた男子生徒に、教室の女子生徒の視線は釘付けとなる。もっとも約2名は、そんなことはどうでもいいので前すら見ていないのだが。そして大部分の男子生徒からは敵意の籠もった視線を向けられることになる。まあこれにも例外はあって、約一名は視線を前に向けてもいないし、その他数名は熱の籠もった視線を向けていたりするのはお約束である。それは置いておいて、この渚カヲル。黒板にでっかく自分の名前を書くと、さっと髪を掻き上げたりなんかしてなかなか気障な仕草などしたりする。しかし、彼は保健室送りになったんじゃなかったっけ?まあいいか。まあ気障なポーズのカヲル君、自分の名前を黒板に書いて自己紹介をした。

「渚.............カヲルです」

たっぷりとタメの入った自己紹介などをしたりする。そしてカヲル君、効果の行き渡ったのを確認すると、その視線を教室の一角へと向けた。当然そこにいるのは、憎っき仇敵、ど外道シンジ君。カヲル君はポケットから白手袋を取り出すと、ツカツカと彼らの前に歩み寄った。そしてしっかりと振りかぶってシンジ君に向かってその手袋を叩き付けた...がしっかりと避けられた。このシンジ君、一ヶ月の間で危機回避の能力に磨きが掛かったようだ。手袋を避けられたことにもあわてず、カヲル君はポケットの中から再び白手袋を取り出すともう一度シンジ君に投げつけた...がこれもはずれ。別にシンジ君はカヲル君の方を見ているわけでもなく、アスカちゃんやレイちゃんと楽しく会話をしているのだが、やはり危機回避能力の高さは半端じゃない。それとも単に悪運が強いだけなのか、後から後から繰り出される白手袋を難なく回避していった。しかしいったい何枚手袋を持っているんじゃ。この時点でクラスメート達のカヲル君を見る目が変わったのは当然だろう。多くの女子生徒は彼の見た目と奇行をはかりにかけ出したりしている。しかしここまで来てだれも止めないのも立派である。教壇で頬杖を付いているすちゃらか教師などは、また新しいおもちゃが見つかったとばかり、授業のコマ割の変更の連絡などしていたりする。

「ええぃ、面倒だぁ〜」

両手一杯の白手袋をまとめて投げつけようとしたとき、すっと彼らの間に割ってはいる影があった。

「…なにをするの」

赤い目をさらに赤くしてレイちゃんは闖入者を睨み付けた。その瞬間カヲル君の態度は手のひらを返したように変化した。さっと白手袋をどこかに片づけると、跪いてレイちゃんの手を取った。

「美しいお嬢さん。
 あなた達をこの腐れ外道の手からお助けするために私は参りました」

そう言ってレイちゃんの手をすりすりしていたら単なる変態だろうが。

「…ここには腐れ外道はいないわ。
 だからあなたはいらないの。
 そう、あなたはいらないのね」

そう言ってクスクスと笑うレイちゃん。何か性格が変わっていないか。しかしこんなことでくじけるようなカヲル君ではない。またそうでなくてはこちらも困る。都合の悪いことは全部耳に入らないのか、勝手に暴走をし出したりする。

「そうですね、腐れ外道はいりませんよね。
 だったら私が排除いたします」

どうやら“腐れ外道”と“いらない”しか耳に入らなかったようだ。なんて都合のいい耳をしているのだろうか。カヲル君はそう言うと、再び手袋の束を抱え上げるとシンジ君に向かって投げつけた...しかしここまでしていればシンジ君も当たり前だが気が付く。そんなものに当たるはずがない。すべての手袋が外れたカヲル君はシンジ君にくってかかった。

「…なぜ避ける」

「…男の求婚を受ける趣味はない」

















なぜ求婚なのだ?

「ち、ちぃがぁうぅ〜」

おうおう、カヲル君血の涙を流しているよ。

「これのどこが求婚なのだぁ」

「じゃあ交際の申し込みか?」

「それも、ちぃがぁうぅ〜」

今度は地団駄を踏み出した。なかなか忙しいことだ。

「いいか、これは決闘だ、決闘。お互い正々堂々と死力を尽くして雌雄を決する。
 その申し込みの作法なのだ。
 それを君は、君という人は...
 全く好意に値しないね」

「やっぱり求婚か。だったらそんな趣味はない」

性格は髭おやじの影響をうけたのだろうか、それとも上司いびりのこつを伝授されたのか、このシンジ君はなかなか手強い。

「人の話を聞け!」

顔の大きさを3倍(当社比)に膨らませ、カヲル君はシンジ君に詰め寄った。こめかみのあたりには青筋が浮かんでいるのはお約束だ。

「ぽっ、優しくしてね」

しかしこのシンジ君はさらに上手だ。いやからかいのつぼを心得ていると言っていいだろう。

「だからそれはやめんかぁ」

カヲル君の叫び声が学校中に木霊した。そしてそのまま床の上をごろごろと転がりだした。

「やだやだ、ちゃんと聞いてくれなくちゃいやだ。
 みんなして僕をいじめるんだ、いやだいやだ」

見事なだだである。最近珍しいだだである。

「アスカの言ったとおり、からかいがいあるね」
「そうでしょう。あといたぶってもおもしろいのよ」
「…精神的に追いつめるのはどう?」
「それもおもしろいわよ」
「でもやりすぎると壊れない?」
「…大丈夫よ、5分もたてば忘れるから」

3人でそう言ってひそひそ話をしていたりする。結構酷い3人であった。

「ということで、碇シンジ君、君にけっと...ヒデブ」

1分で気を取り直したカヲル君の顔にアスカちゃんの靴の裏が...カヲル君撃沈。

「アスカ、スカートの時は気をつけてって言ったじゃない」
「大丈夫よ、シンジ以外には見せないから。ほらっ」

そう言ってスカートをまくり上げると...裏切ったな裏切ったな、おじさんの夢を裏切ったな。カヲル君と一緒に裏切ったな...失礼、ちょっといやな思い出が、スカートの中にはスパッツが...

「でも、僕は人には見せたくないな」
「あん、シンジぃ」

しっかりと1ヶ月でシンジ君も順応したようだ。後ろからアスカちゃんを抱きしめるあたりなんてなかなかできるもんじゃない。その姿に生徒達は、『またか...』とばかりの反応をしている。なにしろ日常的に繰り返される光景なのである。

「…これ…どうするの」

ぼろ雑巾のように崩れ落ちているカヲル君を棒でつついて、レイちゃんはアスカちゃんの顔を見た。

「ちょいとそこの双子」

「ん、ノブクン達のこと?」

お、おい、中2にもなって自分のことをノブクンなどと言うか?さすがにその反応にアスカちゃんも冷や汗をかいている。

「そ、そのノブクン達よ。
 これ...あげるから、好きにしなさい」

「嬉しいなぁ、よっちゃんおもちゃが増えたね。
 レジンで固めて1/1カヲル君人形にしようか」

「じゃあ首が取れるのはデフォルトだね」

おまえら同じ顔をして怖いことを言うなよな...首引き鋸を取り出したりしたものだから、さすがに教室全員が引いていたりする。

「き、きらいだぁ〜
 み、みんな、だいっきらいだぁ〜」

いち早く危険を察知したカヲル君、脱兎のごとくその場を逃げ出した。

「アイ、シャル、リターン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

叫び声が校門の外に消えていく。渚カヲル14歳の出来事であった。

「ほい、渚カヲル、早退ね」

担任のすちゃらか教諭出席簿を取り出すと該当欄に(早)の字を書き込んでいる。おいおい、それでいいのか。

「何か問題でも?」

おい...
 
 
 
 
 

ひゅ〜ほほほっと続いたりする
 


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NAG02410@nifty.ne.jp



中昭のコメント(感想として・・・)

  トータスさんに頂きました。80万ヒット記念作ぅ

  改行なしの怒濤の記述も健在でし

  関係ない話ですが、よっちゃんは親戚の子にきー兄ちゃんと呼ばれています
  優しい子や。中学生で社長と呼ばれたよっちゃんに対して。

  それはともかく婚約と同時に同棲開始っすか。
  ええなぁ。
  適度なスパイスのカヲル君も登場してますます好調。次回が楽しみ。

【きゃらこめ】でぃーえぬえー
であるからして舅姑を端っこに住まわせておけば立派に同居の名が立ち、しかも実害がないという姑息なことを考えていた。
ミセスA  「・・・ぽん」
白衣のヒト 「何を考えているのかしら、アスカ」
ミセスA  「あ、あはははお義母さま、お元気ですか?」
白衣のヒト 「ええ、適度な運動をしているとイヤでもね」
ミセスA  「あ、掃除ですか。いやですわ、言ってくだされば代わりますのに」
天然少女  「言わなくても普通はやると思うの」
すかぽーーーーん
ミセスA  「ほほほほ、いやですわねー最近の嫁は教育がなってなくて」
白衣のヒト 「そうね」
ミセスA  「・・・・」





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