アレッ^4

 
 
 

学祭と呼ばれるものは、いつの季節に行われるのが一般的なのだろうか。ちなみに筆者の高校の頃には秋に、文化祭と呼ばれて行われていた。大学の時には6月であった。ちなみに大学の時には秋にもそれらしきものが有ったのだが、非常にマイナーであり。学祭の委員をしていた筆者ですらその存在を確認できなかった。少し話がずれたな、話をこの物語に戻そう。ちなみにここ第壱中学にも学祭...ここは学園ではないので、文化祭と言った方が正確だろうか。まあそんな出し物がある。ちなみに季節は文化と言うぐらいだから秋である。まあ中学ぐらいの文化祭というと、一部の文化系のクラブが活躍時だと張り切るぐらいで、後はクラス単位で何か芸をさせられて終わりと言うのが、戦後公立中学で行われてきた一般的なものである。まあ高校ぐらいになると、クラス単位で出し物を考えて...となって自主性が発揮されるようになるのだが、中学ぐらいだと変な義務感に目覚めた教師によって、金太郎飴的な行事が繰り広げられることになる。駄菓子菓子、それではこれからの展開がおもしろくない。従って第壱中学の文化祭は、ちょいと高校的なテーストが漂うそこはかとなくソフィスケートされたデリシャスかつアトラクティブ、デンジャラス(?)なものになって貰うことにした。何を言っているのかって?言い訳だよ、作者の。そんなこんなで、各クラス毎に出し物は何をしようかと言う話し合いが行われることになる。だいたいこんな話し合いは、ごく一部の熱心な生徒によってリードされていくことになる。まあそれは問題ない。民主主義とか言うシステムは“何も決まらない”と同義であることがしばしばであり、しかも面倒なことには関わりたくないという心理が働いたものなら、絶望的に何も決まらなくなってしまう。こういうときに言い出しっぺになると言うことは、すべてを押しつけられることと同義でも有るのだ。しかしこれもまた抜け道がある。言い出しっぺが事前に根回しをしていればそれもまた覆るのである。もしくはどこかの脳天気が、何気なく放った一言が、哀れな子羊を作り出すこともある。A組の場合は両者がまぜこぜになった典型的なものだろう。楽をしたいと言う生徒が、料理人、ウエイトレスと逸材の揃っていることを理由に喫茶店を開くことを提案したのだ。事前の根回しと、ウエイトレスの制服情報により男子に異論を持つ者は居なかった。

駄菓子菓子、どんなときにもよけいな一言を言う人は居るもので、それはA組においても例外ではなかった。しかもそれが一つのクラスを預かる担任であったりするものだからなおさら質が悪い。しかもその彼女、普通とか常識的とか言うことが大嫌いで、お祭り馬鹿騒ぎが大好きときている。しかも一番嫌いな言葉が“モラル”だというから救いがない。じゃあなんで教師をやっているんだと言う突っ込みの聞こえる中、30直前ビアタンク女は、生徒の立てた計画にほんの些細な(彼女にとっては!)横やりを入れた。

「ひねりがないわね!」

たったその一言のため、クラスの総意は可愛い生徒がウエイトレスをする普通の喫茶店から、受けねらいの変態な喫茶店へと変貌していった。そしてこういったときに流れ着く方向はただ一つ。そう、みなさんの予想の通り“女装”である。〜跳びという時にする“助走”ではない。通常世界に存在しないおぞましい存在を作り出すあれである。斯様に出し物が決まれば、次に決められるのは哀れな犠牲者である。この時何故か生徒達は急に民主主義に目覚め、推薦+投票を行おうと言うことに相成った。その裏にあるのは本人の拒否の封じ込め。クラス全員で決めたことだからと言うことで、理不尽なことをその生徒に押しつけることだった。別名“数の暴力”とも言われるあれである。教室の広さからいってそんなにウエイトレスの数は必要ない。しかしわずかながら残った人権意識を満足させるためには交代も必要である。と言うことで3人を1チームに2交代制がとられることになった。まあこうなると誰が犠牲に落ち着くかは自明の理である。こういったときには、全身に男子生徒の恨みを買っている某碇シンジ少年が選ばれないことがあろうか、いやない。しかも普段は彼を守っている本妻&二号さんコンビも、このときばかりはと敵方に回ったのである。かくして某碇シンジ少年は、哀れさらし者への道を歩んだのであったぁ。
 
 
 

某碇シンジ少年が、数の暴力に耐えていた時から少し後。放課後の視聴覚教室は、異様な空気に包まれていた。ぴっしりと暗幕がしめられ、数少ない入り口には内部からしっかりと鍵が掛けられた上、『関係者外立ち入り禁止』の立て札。ひょっとして何人かの男子生徒が、いたいけな女子生徒を連れ込んで...と言うことはここでは絶対にない。なぜならこれは18禁でもイタモノでも無いからである。違った意味で『痛い』ことはあるかも知れないが...まあそれは良いだろう。その視聴覚教室に集った生徒は13人。灯りの落とされた教室のため、一人一人が誰であるかは伺い知れない。しかしこれからなにやらの儀式が始まるのは確かなようだった。

「始めろ」

ぽつりと告げられた言葉で、目の前のスクリーンが明るく点灯する。そこにはアスカちゃんの顔が大写しにされていた。

「第一の犠牲者、惣流アスカ・ラングレー」

次に映し出された画像では、某シンジ少年が彼女のスカートの中に頭を突っ込んでいた。

『第一次接触』

スクリーンに極太明朝でテロップが入る。

『陥落』

重なり合って口付けを交わす映像をバックに、匿名R.K教諭のコメントが入る。

「まあ、相性ってものが如何に恐ろしいかがよく分かったよ。
 何しろフグも裸足で逃げ出すアスカ相手に、素人が圧勝するんだからね。
 しかし平凡を絵に描いて額に入れたような彼が、アスカを落とした事実は特筆に値するな」

映像が切り替わる。胸元に某シンジ少年の腕を抱え込み、幸せそうに微笑むアスカの姿が映し出される。それをバックに某T.S少年の独白がなされた。

「ぴ〜〜だけは仲間やとおもうとったんや。
 それなのに一人だけさきぃ大人になりよって。
 わしゃ、ぴ〜〜を許せんのや」

その言葉が終わると同時に新しい映像へと切り替わる。画面には蒼銀、赤眼の美少女が映し出されていた。

「第二の犠牲者、綾波レイ」

映像が切り替わり、後ろからシンジに抱きかかえられ頬を赤らめている姿が映し出される。

『第二次接触』

くったりと腰が砕けているレイの姿が映し出された。

『陥落』

「確か第一候補は彼女だったはずでは?」

映像を前に疑問の声が挙がる。

「単なる幼なじみと言う条件が邪魔したようだ」

的確な回答がなされる。よく研究されているようだ。

最近微笑みを浮かべることの多くなったレイの映像が映し出される。それを背景に某K.A少年の告白が流れる。

「ぴ〜は否定しているが、綾波がぴ〜〜を好きだったのだと思う。
 ブラコンとは違うが、もとはと言えばそこから発展した関係ではないだろうか。
 惣流の登場が刺激になったとしか思えない」

映像が切り替り、レイの白すぎる肌がプールサイドに映える。そしてH.H嬢の独白がそれに被さる。

「男の子たちがいつも騒いでいたんです。
 ええ、綾波さんがぴ〜〜君のことを好きなのは知っていました。
 でも、だからって、二号さんなんて...
 ふ、ふけつやう〜

最後の声のあまりの大きさに、視聴覚教室の窓ガラスがビリビリと音を立てて揺れる。突然の大音響にそこに居た11人は耳を押えてのたうった。

「な、なんなんだ今のは...黒ジャージにオタク」

なんとか自分をとり戻した一人が、平然としている二人に驚きの目を向けた。

「まあ“慣れ”ちゅうもんやな」
「そうそう」

こんな物に慣れるのかと言う心の突っ込みをよそに、映像は新たな少女を映し出した。そこには図書室で読書にいそしむマユミの姿が映し出されていた。

「第三の犠牲者山岸マユミ」

映像はシンジを抱き抱え口付けをしている物に切り替わる。

『第三次接触』
『のち陥落』

「A組ではないな」
「誤差の範囲だよ」
「この時構成員の10名を失ったよ」
「全部君のクラスだろう。
 たいした問題ではない」

会議は粛粛と進んでいくかと思われた、そう脳天気な関西人の声が響くまでは。

「渚ぁ〜、ちょっとええか〜」
「す、鈴原君。ここではコードネームで呼ぶのがしきたりだよ」
「そうかぁ〜、ほなら自爆ナルシー何のためにここにあつもーとるんや」

黒ジャージとしてはもっともな問いかけだった。彼は面白いビデオを見せてもらえると言われてつれ込まれたのだ。

「良い質問だね、黒ジャージ君。
 我々男の敵ぴ〜〜に正義の鉄槌を下し。
 いたいけな少女達を救い出すための相談だよ」

崇高な目的だろうと胸を張る自爆ナルシーに、黒ジャージは盛大にため息を吐いた。

「あんまり手をださんほうがええんとちゃうか?
 なん自分の顔、変形してきとるで。
 なんや三番目なんか、もろ手伝おうとるやないか。
 そっとしとくのが賢明やないのか」

もっともな黒ジャージの意見に隣でオタクがうんうんと頷いている。そのほかはと言うと...誰も聞いていないようだ。双子のCLファンは、見ている映像がつまらないとばかりに映像をあふんあふんに切り替えようとしているし、モビルアーマーZはフィギュアに色づけをしている。モビルアーマーGはクジャクの羽を振り回しながら「くすぐりのすべて」とかかれた本を熟読中である。そのほかに至っては論外である。元映像にあった水着カットをダビングなどしていたMクジラもいる。

「ふふふふ、今回の僕はひと味違うのだよ。
 今回このために最終兵器を用意したんだ。
 これで目標ぴ〜〜は彼女たちに捨てられるんだぁぁぁぁぁあ」

背景に炎をあしらい、自爆ナルシーは燃えていた。今度こそはとの思いがあるのだろう。しかし...止めておこう。結果をばらすとおもしろくなくなる。

「まあ無駄やと思うけど、どないすんねん」

彼をかわいそうに思ったのか、とりあえず聞いてあげるだけは聞いてやるらしい。男だな黒ジャージ。

「ちゃうねん、胴元をはるんや」

あ、そう...

「ふふふふ、聞いて驚かないで欲しいな。
 今回は強力な助っ人を呼んだんだ。
 さあ、い出よドロンジョ、ボヤッキー、トンズラぁ!」

ゲシッ

高らかに言った自爆ナルシーの頭に白い足が伸びる。かかとを後頭部にめり込ませ、自爆ナルシー沈没。そのほかのメンバーは...綺麗な足の付け根から覗く白い物を見ようと、腰をかがめていた。

「だぁ〜れがラスカルよ」

言ってないだろ。おい。それに、ベルバラなら“オスカル”だろ。“ラスカル”じゃアライグマになってしまうじゃないか。

「いぢめてやる〜」

アライグマが違うって。

しかしあんたら全員古いね。それを知っている大人達ってみんな三十路...げふんげふん。まあいいか。

「なんやこいつらは」

黒ジャージは突如現れた3人組に驚き、隣にいるオタクの顔を見た。

「知らないね。僕のデータには入っていない。
 しかし、これは売れるなー」

先ほどの光景はしっかりとカメラに収まっていたようだ。早速邪魔な頭を消す作業をしている。

しかし、誰が登場したのか分からないと話が進まないなぁ。まあ前回の予告で、誰が現れたのかは賢明な方達なら気づいていると思うが、そう鋼鉄の彼らである。鹿瀬解では...阿波徳島の馬鹿...彼の世界では“華麗なる女スパイ”とか“必殺シンジキラー”とか呼ばれ、その実“声優が一緒でようわからん”とか“露出狂”と言われている霧島マナとその他2名だ...あっ、転けた(爆)

「だぁ〜れが可憐な百合一輪よ!」

そんなこと言っていないだろう。なんだ君たちそんな顔をして。何か不満でもあるのかい?お兄さんが聞いてあげよう。何おじさんだって?話を聞かないと言う選択肢も僕には有るんだけど...まあ良いだろう、聞いてあげようじゃないか。ふんふん、何で俺達の名前を出してくれないんだ?今回はそれなりに重要な役割が有るんだろうって?まあそうには違いないが、役どころを聞いたら恥ずかしくて名前を出して貰わない方が良かったと思うかも知れないよ。それでも良い、俺達には何もないから...聞いたような台詞だな。仕方ない、名前だけでも出しておくか。えっと、ムサシリーストラスバークと浅利ケイタ。これで良い?そんな涙を流さないでよ。何々、ゲーム本編ではまともに名前も出なかった?あれってゲームだったの?あっ、また転けた。

「とにかくだっ!」

おっ、自爆ナルシー君回復したね。やはり後ろで首引き鋸を持っているCLツインズが怖かったのだろうか。

「この三人が対ぴ〜〜作戦の重要なキーなんだ。
 分かったかね諸君...なんだい黒ジャージ」

ちょっとええかぁ〜と手を挙げる黒ジャージ。

「止めといたほうがええんやないかぁ。
 四号さんを紹介しとるようなもんやで」

ふふふと黒ジャージの指摘に不敵に笑う自爆ナルシー。おい、その自信はどこから来るんだ。

「大丈夫だよ黒ジャージ君。
 マージョは男の趣味はないんだ。
 ねえ、グロッキー、ワルサー」

うんうんと頷く男二人。

「僕たちも女の子に趣味はないしぃ」

おいっ

「そう言うことだよ黒ジャージ君。
 ちなみにマージョは僕の魅力にも心が動かなかった。
 これは男に興味がないとしか考えられないじゃないか」

基準が基準だからなぁ。こんなこといわれてて良いのかい?マナちゃん。

「私、変態は嫌い!」

そうだよね。

「しかしどないすんねん。
 ぴ〜の周りはあの二人が固めとるやないか」

「ふふふ、それは秘密だ。
 軽々しく教えるわけにはいかないよ」

自爆ナルシーの言葉に、全員は立ち上がった。そして全員

『ならいいや、別に聞きたい訳じゃないし』

そう言って、出口へ向かって歩き出した。

「き、君たち...その行為は好意に値しないよ。
 ど、どうして教えて下さいの一言が言えないんだい」

「「「だって興味ないしぃ〜」」」

カヲル爆沈...
 






「つ、つまりだね。
 ぴ〜〜に女性を近づけるから問題が有るのさ」

何故か首筋に絆創膏を貼ったカヲルが説明をしている。絆創膏が貼ってあるからと言ってキスマークじゃ...おいケイタ...何を頬を赤らめている。

「おいしかった...」

おいっ

カヲルの姿勢が心持ちそりくり返っているのは...お尻に力を入れているように見えるのは、気のせいにしておこう。

「ほな、どないすんねん」

あれ、君らは出ていったんじゃなかったのかい。

『あんなもの見せられちゃね〜』

だからそれは忘れよう...おぞましいだけだから。

『ふ〜ん、オカマを掘るってああいうことだったんだ』

だからマッドビデオ、変なことに感心するんじゃない。

「いいかい、アスカさんレイさんにはマナが当たる。
 ぴ〜〜にはケイタとムサシが当たるんだよ。
 二人も女性相手なら手荒なまねは出来ないだろうしね」

青い顔をし、脂汗をにじませながらカヲルはホワイトボードに作戦を書いていく。

「いつの間にか手段が目的となっているね」

ぽつりとオタクが呟く。確かカヲルの目的って...そうか、そう言うことかリリン...失礼。カヲルの目的はアスカさんを落とすことだったね。

「それでどないすんねん。
 個別撃破っちゅうても、結局こいつらはなにすんねん。
 まあ男の方は想像でけんことも無いが...」

冷や汗がこめかみを走る黒ジャージ。そうだろう、あんまり想像して気持ちのいい世界じゃない。

「ふふふ、黒ジャージ君。
 君の想像したとおりの世界が展開されるんだよ。
 教室に咲き乱れるバラの花と百合の花...
 なんて素敵なんだ」

「あかん、かんぜんにいってもうとる」

怪しい微笑みを浮かべ、ケイタは自爆ナルシーの前で手をぶんぶんと振ってみた。その動作にはっとカヲルは我に返ってお尻を押さえた。

「とにかくだ、これでぴ〜〜は女の子からは変態の烙印が押され。
 アスカさんレイさんからも見捨てられる。
 これで目的は達成万々歳さ」

「その前にお前が“変態”になっとるやないけ」

びしりと指さす黒ジャージ。

「ち、違う...僕は至ってノーマルさ。
 男なんて...僕には価値が無いよ」

「「ふ〜ん、そんなことを言うんだ」」

そう言って自爆ナルシーの横に立つ二人組。そっと両脇からカヲルの腕を押さえ込んだ。

「「まだ調教が足りなかったみたいだね」」

そう言ってケイタ、ムサシの二人は真っ青な顔をしたカヲルを押し倒し...だめだ。おぞましくてこれ以上は書けない。
 






悲鳴と嬌声と喘ぎ声が台風の様に通り過ぎた後、再び視聴覚教室には静寂が訪れた。そうそこにいた12人は、自らの身を目的のために捧げた自爆ナルシーの姿に感動していた。

「徹底的にやって、ぴ〜に目覚めさせるっちゅうわけやな」

親友が変態というのも嫌だな、と考えながら黒ジャージは言った。

「で、この女はあの二人を目覚めさせるのかい」

写真の売り上げはどうなるだろう。シミュレーションソフトを立ち上げながらオタクが呟く。どうせ自分には色恋は無縁だ。ならせめて懐ぐらいは潤って欲しい物だ。

「え〜えっ、この二人ってあんまり好みじゃないのよね」

「お、多くは望まないよ。
 ぴ、ぴ〜〜を落とす間だけ押さえていてくれればいい」

「ま、良いけどね。
 この学校にも私の好みはいなかったか」

ドロンジョじゃなくてマナは悔しそうに指を鳴らした。その姿だけを見ればなかなかラブリーなのに。

「僕じゃだめなのかい」

ここまで来れば立派としか言いようがない。自爆ナルシーは、お尻を押さえながらマナの前に跪いた。しかしその格好間抜けにしか見えないぞ。

「変態は嫌い!」

ああっっと自爆ナルシー再び爆沈。

「なるほど確かに効果はある」

オタク君、それは違うよ。自爆ナルシーはその前から脈は無かったんだよ。
 
 
 
 

んでもって、慎重に作戦は練られ。いよいよ決行の日となった学園祭当日。解放された校内は多くの生徒でにぎわっていた。

「いいかい、手はず通りに頼むよ」

また首筋に絆創膏の増えたカヲルは、そう言ってアジトとなっている視聴覚教室から三人を送り出した。自然と内股になっているのはお約束と言う物だろうか。それに小指も立っているような...

「じゃあカヲル君また後でね」

ウインクとともに去っていくケイタにカヲルは冷や汗を流していたが。

三人が2−Aの教室に入っていったのを確認すると、カヲルは一人呟いた。

「シンジ君、君は僕と同じになるんだよ...」

やっぱり堕ちたのね、カヲル君。
 
 


◇ ◆ ◇ ◆ ◇





一方教室の方はと言うと、異様な熱気に包まれていたりする。怖い物見たさとは違った形で人が集まっているのだ。何を隠そう我らがシンジ君、みなさん第一話の紹介を覚えているだろうか。

>かのようにすべてにおいて平々凡々な彼であったが、見た目だけは“可愛いぃ〜”と女の子に言われるものを持っていた。

の様に、シンジ君は男にしては“可愛い”のだ。しかも彼の母親の血は、おぞましき髭オヤジより強靱で、シンジ君の顔からそのむさ苦しさの排除に成功していたのだ。そんな彼が女装をしたのだ。その結果は押して知るべしである。しかもである。この女装に関しては奥様方の熱の入れようが違ったのだ。特にユイ母さんなどは、『女の子が欲しかった』の念願を果たすべく、1週間前からブティック通いをするほどの熱の入れようであった。キョウコママにしても完全に悪のりし、その潤沢な資金力をもって専属の美容師を雇い入れたのだ。しかもである。立ち居振る舞いも女らしくなくてはならないと、歌舞伎の世界から女形を招いて“女らしさ”を朝から晩まで叩き込んだりした物だから並大抵の物ではない。その師匠、自分の教えた成果のすさまじさに、本気で歌舞伎の世界に誘おうとしたとかなんとか。まあ、それだけすさまじく似合っていたと言うことである。そして最後の仕上げとばかり、ユイ母さんはシンジ君に過酷な試練を課したのである。そう、女装と来ればお約束とも言える“デビュー”である。なになに、よく分からない?まあ仕方ない。ここでデビューとはシンジ君が女装したまま繁華街に出ると言うことである。しかもユイ母さん。優しいのかそれとも鬼畜なのか、シンジ君が帰宅するのに一つの条件を付けた。その条件とは...みなさんお分かりであろう。すなわち“ナンパ”をされることである。しかし、ただナンパをされるだけでは生やさしい。ユイ母さんは更に条件を付けたのだ。そう、最低でも10人以上にナンパされることと。それに不満顔を見せたシンジ君に向かって彼女は『文句があるなら100人にするわよ』としっかり脅しをかけ、タイトなウルトラミニの姿で送り出してしまった。ああ、何という麗しき親子の愛情...なわけはない。

しかしこのときのシンジ君...えっと、女性化したときはなんて呼ぼう。『男だったらシンジ、女だったらレイ』と某髭オヤジは宣ったがすでに“レイ”は使用済みである。それに『碇レイ』では各方面からお叱りが来てしまう。ましてや『キイ』では西のほうから刃物が飛んでくる。仕方がないので『碇ユイカ』と言うことにしておこう。これもどこかで見たことがある?大丈夫。メジャーな方は『惣流ユイカ』のはずだし、もう一つの方も...『惣流ユイカ』だ。何がメジャーで何がもう一つの方かって?ちっちっち、それを聞くのは野暮と言う物だよ君。ともかくシンジ君はしばらくユイカさんと言う事に相成った。

で我らの『碇ユイカ』嬢、結構その気になって街へと繰り出したのである。その出で立ちは赤い色をしたマイクロミニと体の線をくっきりと出す、薄手の絹のTシャツなどを着ていたりする。当然ブラの中にはパットが入って嵩上げされているのはナイショだ。そしてうっすらと化粧をし、更にショートのカツラをつけている物だから、どこからどう見ても可憐な美少女である。ただどうしても声の方だけは何ともならないので、極力声を出さないようにしているものだから、物を知らない馬鹿などは、シャイな美少女と勘違いなどしてくれるから更に都合がいい。かかるはかかる、おもしろいように馬鹿どもが引っかかってきたのである。結局ユイ母さんの出したノルマは10分で達成され、街にいた1時間の間で、30人の馬鹿野郎から声を掛けられることとなった。しかもその中には無精ひげ尻尾髪おじさんまで居たのだからおもしろい。この無精ひげ尻尾髪おじさん、慣れた手つきで『ユイカ』嬢をいかがわしいところに連れ込もうとしたのを、惣流家SS...もちろんshort storyでもSide storyでもない。まあSecret serviceと言えば聞こえは良いが、心配になった美少女3人が後を付けていただけである。その彼女達が取り押さえたのである。その後、この無精ひげ尻尾髪おじさん、相方のビヤダルホルスタインおばさんに引き渡されたのだが、消息は不明である。結局1時間で街から消えた“美少女”は数々の伝説を第三新東京市に残すこととなったのである。このことについては後ほど語られることは...多分無い。

まあそんなわけでA組の女装喫茶は、当初の目的からはかなりずれはしたが大盛況となったのである。しかも『ユイカ』嬢...学校だからシンジ君でいいか。男子生徒だけではなく、女子生徒まで虜にしてしまったのだ。その日を境に、学校内でシンジ君を見つめる視線に、敵意以外に熱い物が混じったとか混じらなかったとか。まあそれくらいである。しかもだ、毎朝下駄箱にラブレターなど入るようになったりした物だから人生はおもしろい。尤もそのラブレター、大半は男子生徒から来ていたというのがおぞましい限りだが...

そんなところに入ってきた鋼鉄三人組。早速渡された写真からターゲットを探したのだが、どこをどう探してみても見つからない。仕方がないので、おぞましい姿をしたウエイトレス(?)にマナがシンジの居所を尋ねてみた。そのウエイトレスは『またか』とため息を吐くと、控え室に消え、哀れな子羊を彼らの前に連れてきたのだ。すぐさま襲いかかろうとしたケイタとムサシの2人。ああ、シンジ君の貞操は如何に...
 
 

ぼかっ、バキ、ぐしゃぁぁぁあ...
 
 

荒れ狂う嵐の中、ある生徒は鬼神を見たという。またある生徒は暴走した零号機を見たという。高速移動する使徒を見たという生徒も居た。そしてある生徒は陸上巡洋艦を見たとも証言した。それが一瞬だったのか、それとも長い時間だったのか。証言する者によってそれは異なっていた。ただ彼らの証言に共通していたのは、その嵐が去った後、残されていた2つの残骸だった。その残骸達は、しばらく教室の隅にうち捨てられていたが、そのうち自力で再建を果たすとよろよろと視聴覚教室へと戻っていった。そして視聴覚教室の扉が閉まった後、遮音性の高いその教室からなにやら絹を裂くような悲鳴が聞こえたと言う。アーメン。
 
 


◇ ◆ ◇ ◆ ◇





そしてそのおぞましい時から一週間後、朝のホームルームで葛城ミサトは乗っていた。何しろ今日は転入生が3人もいるのだ。人買い...失礼、担任としてなかなかのイベントである。

「喜べみんなぁ〜
 知っているとは思うが転入生を紹介するぅ。
 さあ三人ともはいってらっしゃい」

すちゃらか教諭に呼ばれて入ってきた生徒は言うまでもないだろう。マナ、ムサシ、ケイタの三人組だ。

「みんな知っていると思うから紹介は無しね。
 じゃ、マナちゃん、あなたの席はシンジ君の“島”ね。
 ムサシ君にケイタ君、あなた達は渚君の“島”ね」

「「「はい」」」

と言って嬉しそうに席に着く三人組。三人が三人とも頬が赤く染まっているのはお約束と言う物だろう。

「霧島マナ、朝5時に起きて碇君の為にこの制服を着てきましたぁ」

「今更何言ってんのよ。
 一緒に登校してきたくせに」

「…アスカ、それは突っ込んじゃいけないわ。
 …お約束、それは絆だから」

「はあ、こうもお約束通りに4人が揃うとはあきれるわね」

「…それよりも今回の出番はこれで終わりらしいわ」

「全くあの腐れ外道作者ときたら」

「…しかもこれで最終回らしいわ」

「えええっ、まだシテ貰っていないのにぃ」

「…私はキスもしていないのに」

「でも良かった、カヲル君もこれで僕をかまわなくなるだろう」

さすがにそう言う趣味にはついていけないと、シンジは視線をもう一つの島に向けた。

「カヲル君って、アスカを狙っていたんだと思ったのに」

僕だったなんて...人は分からないとシンジは思った。

「シンジ、変態が染るからあっちを見ちゃだめよ」

「シンジ君、...可愛かった」

「…ひどいやマナ...可愛いだなんて」

なにやら意味が分からない会話を繰り広げている島から離れて、もう一つ新たに出来た隔離島では。渚カヲルが両脇を固められて盛大に脂汗をかいていた。ぴったりとくっついた机の下からはケイタとムサシの手がカヲルの内股をなぞる...

「ずっと一緒...」

「放さないから...」

ああ、これが見目麗しき女性からだったらどんなに幸せだろうか。いや、まだ女の子と見まごうばかりの美少年だったらまだ我慢が出来たのに。カヲルは両側を固めた無骨な少年に、現実逃避をすることもできないでいた。
「「うふっ!」」

カヲルは神の作り出した偶然を呪った。完璧な計画だったのに、どうして最後の最後で手のひらから水ふがこぼれるように失敗したのだと。

「何でシンジ君が女装していたんだぁ〜」

どうやら女装したシンジは、マナにクリティカルヒットしたらしい。

「何故だぁ〜」

カヲル君。ちゃんとホームルームには出ようね。

「納得がいかないぞ〜作者を出せ〜」

一部を除いておおむね今日の第三新東京市も平和なようだ。

「僕の出番はこれだけなの?」

そうだよ、シンジ君!
 
 
 
 
 
 
 

おしまい
 
 
 
 

「教生マヤ、危ない放課後」には続かない(笑)
 


トータスさんのメールアドレスはここ
NAG02410@nifty.ne.jp



中昭のコメント(感想として・・・)

  トータスさんに頂きました。100万ヒット記念作ぅ


  うううもう最終回。
  教生マヤがあるか・・・

  >「止めといたほうがええんやないかぁ。
  >四号さんを紹介しとるようなもんやで」
  あははは
  確かに



【きゃらこめ】でぃーえぬえー
しかもその彼女、普通とか常識的とか言うことが大嫌いで、お祭り馬鹿騒ぎが大好きときている。
しかも一番嫌いな言葉が“モラル”だというから救いがない。

みちゃと  「信じられない人間よねぇ。これで教師なんでしょ」
ミセスR  「・・・コクコク」
みちゃと  「こんな教師に指導されたら生徒が不幸よねぇ。どんな風になっちゃうだろ」

少年S   「急用ってなに?レイママ」
美少女M  「最近、非常召集ないから喜んでたのにぃ」

ミセスR  「さぁ」
みちゃと  「?さぁって?何が?」
ミセスR  「生徒達」
みちゃと  「ああ、ミライ達はずっと私が担任だもんね。
       そんなに感謝しなくてもいいわよん」
ミセスA  「鋼の心臓ね」
みちゃと  「心臓?最近ちょっと息切れが激しくなってきたのよ。
       まだ100年くらいは大丈夫だと思うけどね」
ミセスA  「ストレートに言っても通じないかもしれないわね」
永遠の少年S「何が?」
ミセスA  「普通とか常識的とか言うことが大嫌い、お祭り馬鹿騒ぎが大好き
       一番嫌いな言葉はモラル。
       これだーれ?」
永遠の少年S「クイズかい?うーーーん、もう少し条件はないのかな」
ミセスR  「どうしてそういう事ゆうの?」
永遠の少年S「特定できないから」
美少女M  「・・・それってどういう意味?パパ」
ミセスA  「もしかしてアタシも候補に入ってるのかしらぁ?」
ミセスR  「教師」
永遠の少年S「うーんアスカやレイも高校教師になったし」
ミセスR  「ビアダル」
永遠の少年S「ああ・・・うーん」

ミセスA  「そこでなんで悩むのよ。お腹なんか出てないわよアタシ達」
ミセスR  「おしおき」


みちゃと  「インモラルで教師でビアダル・・・うーん誰かしら」




  みなさん、是非トータスさんに感想を書いて下さい。
  メールアドレスをお持ちでない方は、掲示板に書いて下さい。


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