「純白の天使」

 

by イイペーコー


 第三新東京市・・・新たな経済の拠点に変貌しつつあるこの街には、数多くの企業がこぞって進出していた。

 そこには高さを競い合うかのようにビルが建ち並び、地上をそして地下を張り巡らすように交通網が発達している。

 そして当然のように、そこではたらく労働者は数知れず・・・昼は経済の最先端を担うビジネス街として、夜は魅惑的な輝きを視覚に訴えるネオン街もそこには共存していた。

 

 これは、その街で働いている一人の若き会社員の不幸な・・・あるいは世界一幸せな物語である。

 

 

 

 

 

「高校生の会社見学・・・ですか?」

 

 愛用のノート・パソコンを操り、忙しそうにとある会計資料を作成していた少年・・・いや、このオフィス街で働いているのであるから、「青年」であろう。

 中性的な容貌に加え、優しげな眼差しが、年齢どころか性別までも勘違いしてしまいそうになる。

 

 青年は、ある男に声を掛けられて手を休めた。

 

 その若きビジネスマンの名は碇シンジという。

 とあるレベルの高い大学を3年前に卒業し、今ではこの街に本社を置いている中堅企業に勤めている。

 ミスの少ない、また分析能力の高い優秀な経理マンというのが、彼に対する周りの人達の評価であった。

 年齢は今年の6月で25才になった。・・・前述の通り、かなりの童顔である為、未だに新入社員と勘違いされてしまう事も少なくないようだ。

 

 

「そうだ、碇君。・・・急な話で申し訳ないが、これからすぐに第3会議室に行って、高校生40人の会社見学に付き合ってやってくれんかね」

 

 シンジの上司なのであろう、50代くらいの温厚そうな雰囲気を漂わせている紳士が、いかにも彼に対してすまなそうな面持ちでそう言った。

 

「しかし、冬月部長。学生の会社見学の対応は、総務部の管轄なのではありませんか?・・・我々、経理部が手を出すべき事ではないと考えますし、なおかつ今はご存知の通り、決算資料作成の真っ最中です。とても他部署の応援をしている暇は無いと浅慮致しますが・・・」

 

 シンジは心底、困っているようであった。

 事実、最近の彼は深夜残業・休日出勤の連続で、かなりの負荷がかかり、精神的にも肉体的にも疲労感がピークに達しているようであった。

 

「碇君の多忙な状況は分かるが・・・すまんな、なぜか今回の依頼は、先方の学校から碇君に対応してもらいたい旨の要望があったらしいのだ。

 一昔前と違って、少子化が進んだ昨今では、労働力確保の為には各学校の機嫌を損ねる訳にはいかないのだよ。・・・すまんが、すぐに行ってくれないだろうか」

 

「はぁ・・・わかりました。しかし、なぜ私なのでしょうか?」

 

「それが総務部の方でも、その理由は確認していないそうだ。・・・私立白鳳学園という女子校らしいが、碇君、心当たりはないかね?」

 

 シンジは自身の記憶を辿るように、数瞬の間、考え込んだ。

 しかし、この第三新東京市の出身ではないシンジは、未だに会社関係者以外の人達と交流をする事すら、ほとんど無かった。

 従って、この街の学校・・・それも女子校に親しい付き合いをしている知人などいる筈も無かったのである。

 

「白鳳学園ですか・・・学校名ぐらいは存じておりますが、知り合いはいないと思います」

 

「そうか・・・。いずれにしても、そこの生徒達はもう到着しているらしい。会社概要の説明用資料は総務部の方で準備しているらしいから、とりあえずすぐに会場の方に向かってくれたまえ」

 

 シンジもこれ以上、意見を述べても無駄であろう、と判断したのであろう。

 自身の多忙な状況はさておいて、上司からの命令に反する事などできる筈もない。

 

「分かりました。・・・すぐに行ってきます」

 

 

 この時、彼の人生において重大なターニングポイントを迎えていたのであるが、むろん、そんな運命の悪戯に気付く筈も無かった。

 

 

 

 

 冬月から指示を受けてから数分後、シンジは第3会議室のドアの前に立っていた。

 ドアをノックしようとしていた手が宙で止まった。

 中からはザワザワとした大勢の少女達の話し声が洩れ聞こえてくる。

 中高生特有の甲高い声質と甘いイントネーションが、ノックしようとしたシンジの手を躊躇させたのである。

 

(まいったな・・・こういうのって苦手なんだけどなぁ)

 

 幼少の頃は勿論の事、学生時代の頃を通しても異性とのふれあいについては、縁遠かったシンジであった。

 決して女の子に人気が無かった訳ではない。

 中性的であり、また清潔さを感じさせる容姿に加えて、誰にでも分け隔てなく親切に接する優しい所に魅力を感じる女の子も数多く存在していたようであった。

 ただ彼の少し引っ込み思案な性格と、異性に対して極端に鈍感な感受性が災いしたのか、特定の異性と付き合う事は一度として無かった。

 

 なおもノックを躊躇っていたシンジであったが、その時背後から彼を呼ぶ声がした。

 

「・・・碇さん」

 

 ドアの向こう側から聞こえてくる声とは正反対のかなり低い声質ではあったが、聞き心地の良い透き通るような声であった。

 

 慌てて振り返るシンジ。

 そこには、清楚なイメージを感じさせる純白のジャケットとタイトスカートを身にまとった妙齢の女性が佇んでいた。

 その真白な服装に劣らないパウダースノーのような白い肌が目に眩しい。

 短めの青みがかった銀髪とどこか寂しげな赤い瞳が印象的であると言えようか。

 背格好と服装から、年齢は20代前半くらいであろうと想像できるが、幼げな面持ちだけを見るとハイティーンのような雰囲気すら感じてしまう。

 

「はい、碇ですが・・・あなたは?」

 

 自身の記憶の奥底まで探しても、目の前の絶世の美女と面識がある筈のないシンジであった。

 

(キレイな人だなぁ・・・)

 

 抱きしめれば折れてしまいそうなウエストラインは、程よく異性の魅力を醸し出している柔らかな身体の凹凸を自然にアピールさせている。

 それに加えて西洋の人形のような整った彼女の容姿は、さして異性に対して免疫の無かったシンジの心を惹きつけるのに充分であったようだ。

 

 碇シンジ、25才にしてようやく迎えた初恋であったのかもしれない。

 

 そんなシンジの想いをよそに、その女性は彼の問いに答えようとせず、にっこりと微笑んで、こう言った。

 

「みんなが言う通りの人ね・・・」

 

 落ち着いていると言おうか、それともおっとりしているとでも言おうか。

 穏やかな口調で、しかしそれでいて更に問いかけようとしているシンジを制するかのように言葉を繋げる。

 

「私の名は、綾波レイ・・・。生徒達が待っているわ・・・」

 

「はぁ・・・」

 

 なおも躊躇するシンジを尻目に綾波レイと名乗った女性は、つかつかと近寄ったかと思うと、おもむろに会議室のドアのノブを回した。

 

 その瞬間、会議室の中から「きゃあ!」という大勢の黄色い声が沸き上がる。

 

(学校の先生なのかな?・・・それにしても、すごい人気だな・・・)

 

 レイの後に続いて会議室の中に入っていくシンジ。

 40人もの女子高生達が作り出す甘い雰囲気に圧倒されたせいと、元からの国宝級の鈍感ぷりも手伝って、シンジは気付く事ができなかったのだが、彼女達のその甘い視線は、彼の前を歩くレイではなく、シンジ自身の方に注がれていたのである。

 

 そして、少女達に正対して会議室の正面中央のテーブルの前に立つレイとシンジ。

 とたんに騒々しかった辺りが、シーンと静まり返る。

 

(ずいぶんと教育が行き届いているんだな・・・)

 

 シンジは感心して、流し目でレイの横顔を伺った。

 

(横顔もキレイだな・・・)

 

 しかし、ここでもシンジは気が付く事ができなかった。

 レイの横顔に見惚れているシンジを凝視して、不機嫌極まりない様相を呈している一人の少女の存在に。

 

「碇シンジさんです・・・」

 

 左手で彼の方を示しながら、シンジを紹介するレイ。

 相変わらず物静かな声であるのだが、凛とした響きを持っており、少女達がその声を聞き漏らす事は無いようだ。

 

 それに対して、自然な流れの中で紹介されたにもかかわらず、シンジはあたふたと焦ってしまう。

 

「あの、えっと・・・本日は貴重な授業の時間を割かれまして弊社にご足労頂き誠にありがとうございます。・・・その・・・本日の皆さんの会社見学を担当させて頂きます碇シンジと申します。・・・どうぞ宜しくお願い致します」

 

「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」

 

 まさに40人全員が息を合わせたかのように声が揃う。

 担任の教師であろうレイによって、普段から洗練されている事が伺い知る事ができる。

 そんな彼女達の様子を見ながら、シンジはようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。

 

 

 

 

 この日を振り返ると、シンジにとってはあまりにも突然の来訪者達であった。

 多忙を極めている仕事を邪魔された形であり、ややもすれば、彼女達に対して反感さえ抱いていたシンジであったが、今や私情もおおいに絡んでいたが、歓迎しようという姿勢に変わっていた。

 

(綾波レイさんか・・・これを機会に親しくなれるといいなぁ・・・)

 

 シンジのよこしまな想いをよそに、私立白鳳学園の会社見学は順調に進められていった。

 まずはおおまかな会社の営業内容に始まり、次に持ちビルである本社内の各テナントを案内していく。

 その際に、それぞれの部署の役割分担やら人員の配置状況やら、オフコン等のOA機器の設置状況等を説明していった。

 

 そして今は、再び先程の第3会議室に戻り、会社概要資料の説明に移っていた。

 シンジ自身、経験のない仕事であったが、説明も終盤になってようやく慣れてきたようであった。

 意外な程に女子高生達が熱心に話を聞いてくれている為か、より一層にシンジも熱弁をふるう事ができたようである。

 

 そんな時だった。

 シンジによる会社概要の説明も終わり、最後の質疑応答に移ろうとしていた。

 

「・・・これで会社概要の説明を終わります。ご質問等がございましたら、お受け致します」

 

 一瞬の間の後、一人の少女が手を挙げた。

 元からなのか少し染めているのか、ショートカットに揃えられた茶褐色の髪の毛が、立ち上がりざまにふわっと揺れる。

 くりくりとした大きな瞳が愛くるしさを強調している少女であった。

 

「私は霧島マナと言います。・・・碇さんへの質問は何をお聞きしても宜しいのでしょうか?」

 

 ここまでほぼ間違う事がなく説明を終えていたシンジは精神的に余裕を持つ事ができていた。

 そのためか、一人の少女・・・マナの問いかけに対して、特に躊躇う事なく返答してしまった。

 

「私で分かる事でしたら何でもお答えしますよ」

 

 そう言って、にこやかに微笑むシンジ。

 その瞬間、女子高生達の間に甘い溜め息があちこちで洩れた。

 もちろん、そんな雰囲気の変化に気が付くシンジではない。

 

「男に二言はないですよねぇ〜」

 

 マナの口調がとたんに変化した。

 小悪魔のような妖しい微笑みを浮かべ、猫撫で声でシンジに確認を迫る。

 

「え・・・?」

 

 急な少女の態度の変貌にシンジは思わず絶句してしまう。

 それを見越していたのか、マナはシンジの返事を待つ事なく猛攻を始めた。

 

「まず、最初の質問よ。・・・碇さんには恋人がいるの?」

 

 いきなり核心を突く質問であった。・・・もっとも、シンジとしては予想外の質問ではあったが。

 

「な?!・・・そんな質問は会社見学に関係ないでしょう!」

 

 間髪置かずマナが攻める。

 

「『私で分かる事でしたら何でもお答えしますよ』・・・って、言いましたよねぇ。キチンと答えて下さいよ!」

 

 マナの勢いに押されてしまったシンジは、活路を求めて担任のレイに視線を合わせた。

 しかし、肝心のレイはというと、にこにこと微笑んで、生徒を戒めるどころか逆に歓迎しているかのような表情であった。

 

(そんなぁ・・・)

 

 シンジはレイの助けを諦めて、再び視線を正面に向けた。・・・すると黙って聞いていた周りの少女達が一斉に声をあげた。

 

「「「「「答えて下さい、碇さん!!」」」」」

 

 なぜ、ここまで息のあった行動がとれるのか、考える余裕すら微塵もないシンジであった。

 そして、観念したのか、ぽつりと呟くようにシンジは答えた。

 

「恋人は・・・いません」

 

 その答えを待っていたかのように、ドッ!という奇声があちこちからあがった。

 マナは立ち上がったまま、再び手を挙げた。

 

「次の質問よ。・・・碇さんの好みのタイプはどんな女の子なの?」

 

 更に核心に迫るマナの追求であった。

 

「た、タイプ?・・・好みって・・・そんな」

 

 25才の青年らしからぬ反応だろう・・・シンジの頬は思春期の少年のように、みるみる赤く染まって行った。

 とたんに、少女達から「かわいい!」という声があがり始める。

 

「こんな女の子がいいなぁ・・・って、あるでしょ?例えば、元気で明るい方がいいとか、髪は長いよりも短い方がいいとか、瞳はパッチリと大きい方がいいとか」

 

 かなり私情がこもったマナの追求であった。

 

 当然の事ながら、「ずるいぞ、マナ!」とか「誘導尋問だよ〜」等々、黄色い声の異議があがる。

 シンジはというと、先程の落ち着きぶりはどこへやら、思考が混乱して対処に窮していた。

 

 

 そして、再び少女達が一斉に声をあげる。

 

「「「「「答えて下さい、碇さん!!」」」」」

 

 半ばパニックになりつつあったシンジは、とんでもない事を口走りそうになる。

 

「わ・・・私の・・・僕の好きな女性は・・・好きな女性の名前は・・・」

 

 息を飲む少女達。

 

『綾波レイさんです!』とそのまま叫びそうになる瞬間であった。

 

 ガタン!!

 

 目の覚めるような音が会議室に響いた。

 

「な、何?!」

 

 我に返ったシンジの視界に映ったのは、一番手前に座っていた少女の机が何かの拍子で倒れてしまった後であった。

 

「き、君・・・大丈夫?」

 

 慌ててその少女に駆け寄るシンジ。

 

「あ・・・!!」

 

 シンジは絶句して、そのまま固まってしまった。

 

 肩を完全に覆う程の長くてさらさらとした赤みがかった金髪が目に眩しい。

 純粋な欧米人ではなさそうであるが、スラリとした長い脚が異国の血が混じっている事を示している。

 そして、美の女神の寵愛を受けているとしか思えないその整った容姿はまるで天使のようであった。

 

 しかし、シンジが絶句したあげくに固まってしまったのは、その少女の美しさによるものではなかった。

 

 その少女は安らかな寝息をたて、椅子に座ったまま眠っていたのである。

 どうやら、寝ぼけて机を蹴飛ばしてしまったようだ。

 そして、それも彼が驚いたひとつの要因であったかもしれないが、問題の本質は別にあった。

 そう・・・少女は眠ったまま、その細くて美しい脚を大きく広げていたのであった。

 

 一昔前もさることながら、最近の女子高生が身にまとっている制服のスカートの丈は極端に短い。

 ふだんからも油断をしてしまうと、他人に覗き見られてしまう事もあるかもしれないその“聖域”である。

 それが、熟睡していたとはいえ、椅子に座ったままの状態で大きく開脚すれば、言うまでもなく、その普段は隠されている“聖域”も日の目を浴びてしまう事になる。

 おそらくは女子校である事から、校内ではふだんから気を緩める事も多かったのであろう。

 

 健全な男子にとっては、ふだんは目に触れる事のできない神秘の場所・・・それが今、惜しげもなくシンジの視界に広がっていた。

 立ち暗むほど眩しい“純白”であった。

 

 ふだんのシンジであれば、慌てて視線を逸らしている所であろう。

 しかし、天使のように美しい少女に惹かれたのか、もしくは光輝くような“純白”の色に動転したのか、シンジは思わず少女の秘密の“聖域”を見つめ続けてしまっていた。

 

 それが彼にとって、悔やんでも悔やみきれない・・・場合によっては幸せこの上ない結果を生み出す行為となってしまう。

 

「ん、うーん・・・」

 

 眠っていた少女から吐息のような甘い声が洩れ聞こえた。

 そして眠り姫のような少女は、シンジの熱い視線を感じたのか、ゆっくりとその閉じられていた瞼をゆっくりと開けていった。

 瞼の奥からは、澄みきった湖のような蒼い瞳が現れる。

 

 その宝石のような蒼い瞳は、ぼんやりと開かれたまま、一瞬辺りをきょろきょろと伺った後、ふと、自身のはだけられ、純白の下着があらわになっている下半身と、それを凝視している目の前の青年を交互に捉えた。

 

 間が抜けたかのように見つめ合うシンジと少女。

 そして数瞬の後・・・静まりかえっていた辺りの雰囲気が突然弾けた。

 

「きゃああああ!!!!・・・エッチ!!ヘンタイ!!チカン!!」

 

 パシーン!!

 

 はたして、非難の訴えの方が早かったのか、抗議の平手打ちの方が早かったのか。

 ・・・かくして、りっぱな紅葉の跡がシンジの頬にくっきりと残されてしまった。

 

「えーと・・・その、ごめんなさい」

 

 叩かれた頬の痛みに耐えながら、シンジは頭を下げて謝った。

 しかし、激高した少女は、感情の収まりがつかないのか更にシンジを責め立てた。

 

「ごめんで済んだら、ケーサツはいらないのよ!!・・・アンタ、仮にも男でしょ!・・・男だったら、キチンと責任をとりなさいよ!!」

 

 びしっ!・・・という擬音でも聞こえてきそうになる勢いでシンジの顔を指差し、仁王立ちのまま少女はシンジを睨み付けた。

 シンジはというと、その天使のような美少女から発せられる乱暴な言葉使いに対して、呆然として圧倒されてしまっていた。

 

「ちょっと、アンタ!・・・人の話をちゃんと聞いてる?!」

 

 そう言って少女は、差していた指を更に伸ばして、シンジの額を軽くつついた。

 

「は、はい・・・聞いています。・・・それで、『責任』というと、私は何をすればいいのでしょうか?」

 

 従順なシンジの返答を聞いて、少女はニヤリと笑みをこぼした。

 

「男が女に対して『責任』をとると言えば決まっているでしょ!」

 

 この少女の物言いを聞いて、他の少女達が一斉にざわめき始めた。

 

「ちょっと、アスカ!・・・抜け駆けはズルイわよ!」

 

 先程、シンジを質問責めにしていた少女・・・マナが、シンジとアスカの間に割って入ってきた。

 

「放っておいてよ、マナ!・・・この問題は、アタシとシンジの二人の問題なんだから!!」

 

 割り込んできたマナに対して、明らかに不愉快な表情を見せながら、マナに『アスカ』と呼ばれた蒼い瞳の少女は更に興奮しているようである。

 ・・・冷静に聞いていれば、「アタシとシンジ」と口走ったアスカのコメントには違和感を感じ、深読みをすれば意図的な含みすら察する事もできるのであるが、肝心のシンジは、むろんその事に気付く筈も無かった。

 

「アスカ・・・さんとおっしゃるのですか。・・・つい覗き見してしまった事は謝ります。何らかの『責任』をとれ、とおっしゃるのなら、私のできる範囲で、できるだけの事は致します。・・・ですから、この場はお怒りを鎮めて頂けないでしょうか?」

 

 8才も年下の少女に対して、シンジは自らの非を認めて、可能な限り丁寧に接して見せた。

 そのシンジの低姿勢な態度が功を奏したのか、アスカはとたんに表情をほころばせて、こう言った。

 

「分かればいいのよ!・・・で、そう言ったからには、どんな『責任』でも取ってくれるわよねぇ。」

 

 してやったり、の満面の笑顔を浮かべてアスカは胸を張った。

 

「はぁ・・・」

 

 もはや、否定できる雰囲気ではない。

 とりあえずシンジは、アスカという少女が何を要求してくるのか、その出方を見る事にしたようだ。

 マナをはじめ、他の少女達もアスカがシンジに対して、どんな『責任』を取らせようとしているのか、固唾を呑んで静観している。

 

「とりあえず・・・今晩、アタシに夕食をごちそうしなさい。・・・いいわね?」

 

 とりあえず、と前置きした意味に、はたして何人が気付いたか・・・。

 そしてシンジはというと、意外な程に簡単なアスカの要求に胸を撫で下ろしていた。

 

「分かりました。そんな事で良ろしければ、お安いご用です」

 

 にこっ・・・と笑みを溢すシンジを見て、アスカはいわくありげに、ニヤリと微笑んだ。

 

「契約成立ね!・・・それじゃあ今日の夕方、この会社の最寄りの駅で待っているから、仕事が終わったらすぐに迎えに来てよね。・・・残業なんかしたら承知しないんだから!・・・いいわね?」

 

 この繁忙時に定時で帰るのは後が辛いとシンジは考えたが、これ以上の妥協案を提示するのは困難だろうと判断したようだ。

 

「わかりました。・・・時間厳守でお迎えにあがりますよ」

 

 近所のレストランでコース料理でもご馳走すればいいだろうと、シンジは楽観的になっていた。

 

(食事が早く終わったら、それから会社に戻って残業をしてもいいだろうし・・・それに、このアスカという少女から、綾波さんの情報でも聞けるかもしれないしな・・・)

 

 不埒な考えを思い巡らしているシンジであった。

 

 そして、マナを含む他の少女達は、不満げな表情を各々見せていたが、肝心のシンジがあっさり了解してしまったので、やむを得ないと考えたようで、異議を唱える者は出てこなかった。

 夕食をご馳走してもらう・・・というレベルは、どうやら少女達にとっては許容範囲内であったようだ。

 

 パン、パン、パン。

 

 今まで静観していたレイが唐突に手を打ち鳴らした。

 そして、みんなの視線が自身に集まったのを確認するとおもむろに口を開いた。

 

「時間ね・・・これで、今日の会社見学は終了とします」

 

 こうして、終始寡黙であったレイが締めくくり、波瀾万丈であった白鳳学園の会社見学も終わりを告げたのであった。

 

 

 

 

 

 黄昏が夜の闇へと移り変わりつつあるビジネス街をただひた走る青年が一人。

 カバンを右手に抱え、視線はチラリと左手首の腕時計を見やる。

 

(遅くなっちゃったなぁ・・・)

 

 終業間際の急な打ち合わせ・・・。

 会社勤めをしている以上、それはやむを得ない事であったのだが、珍しくプライベートの約束をしていたシンジは焦りを感じながら、懸命に駅へと走った。

 

 時刻は午後7時になろうとしている。

 終業時刻の5時30分から、既に1時間半が経とうとしていた。

 

(あの子・・・さすがにもう帰ってしまっただろうな・・・悪いことをしてしまったなぁ)

 

 懸命に走り続けるシンジ。

 十字路を右折すると正面に駅ビルが視界に入ってきた。

 

 

(こんな事なら、携帯の番号を聞いておくんだったなぁ・・・)

 

 待っている筈がない・・・。

 そう思いつつも、シンジは走るペースを落とさずに駅ビルの中に駆け込んで行った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

 肩で息をしながら、辺りを見渡す。

 しかし、あの赤みがかった金髪の少女はどこにも見あたらない。

 

「やっばり、帰ってしまったんだな・・・。悪い事しちゃったなぁ・・・」

 

 荒い呼吸をしながら、ため息をつくシンジ。

 そして、諦めて会社へ戻ろうとした時だった。

 

「どこに行くつもり!」

 

 一度聞いたら忘れそうにない、甲高く、そして透き通った声。

 シンジは慌てて振り向いて、声のあがった方向に視線を向けた。

 

 するとそこには、女子高生には似合いそうにないスポーツ新聞を大きく見開いた形で、それを両手に持ち、顔を隠している少女がいた。

 

「ひょっとして・・・アスカさんですか?」

 

 その問いに答えるかのように、少女は手にしていたスポーツ新聞をたたんで、そのまま屑箱に投げ捨てた。

 

「遅いわよ!!・・・いったい何をやっていたのよ!!」

 

 細い眉毛の片方がピクピクと吊り上がる。

 せっかくの妖精のようなその顔立ちも怒りをあらわにした形相で、泣く子も黙るかのような凄みすら感じられる。

 

「本当にすみません・・・。会議が長引いてしまったものですから・・・」

 

 そう言って、シンジは深々と頭を下げた。

 ほんのわずかな時間の面識しか無かったが、かなり短気で手強い少女であろうとシンジは感じていた。

 それゆえに簡単に許してくれる筈もなく、なにか無理難題を突きつけられるのではないかと戦々恐々として身構えるシンジであった。

 

 ところが・・・である。

 

「まぁ・・・いいわ。・・・早く行きましょ!」

 

 アスカは、にっこりと笑顔を見せるとシンジの手を握って駅の改札口の方に引っ張った。

 

「わっ・・・!!」

 

 変わり身の早い少女の反応にも驚いたのであるが、それ以上に彼を動揺させたのは、アスカの華奢で柔らかな手の感触であった。

 元々、奥手であったシンジは、25才にもなって異性と手を繋いだ経験など、ほとんど無かったのである。

 結果として、酸性を示すリトマス試験紙のごとく、シンジの頬は真っ赤に染まった。

 

 しかし、そんなシンジの動揺ぶりに気付かないのか、アスカは彼の手をしっかり握ったまま、更に改札口へと近づいて行った。

 

「ちょ、ちょっと、アスカさん!・・・いったい何処に行こうとしているのですか?」

 

 戸惑いながらのシンジの問いに対して、アスカは歩みを止めて振り返った。

 見ると、彼女の方も異性との接触には慣れていないのか、アスカの頬もほんのりとピンク色に染まっている。

 

「どこって、決まっているじゃない!・・・アンタ、アタシに夕食をごちそうしてくれるんでしょ!」

 

「はい・・・そのつもりですが、私はこの界わいに良いレストランを知っているものですから、そこへ行こうと思っていたのですけれど・・・いかがでしょうか?」

 

 すると、アスカは間髪置かずに首を横に振った。

 

「アンタねぇ、こんなに人を待たせておいて、そこらのレストランなんかで手軽に済ませてしまおうって言うの?!」

 

「はぁ・・・では、どこに行けばいいんでしょうか?」

 

 困った顔を見せるシンジに対して、アスカは少しの間、躊躇し、そしておもむろに口を開いた。

 

「アンタのマンションに案内しなさいよ!・・・今夜は、アンタの手料理で勘弁してあげる!」

 

 つっけんどんな口調で言い捨てるアスカ。・・・しかし、ますます真っ赤に染まっていく頬を見れば、彼女自身も大胆な発言をした事を認識しているようだ。

 

「ええっ!!・・・僕のマンションですか?!・・・それは、いくらなんでもまずいですよ!」

 

 動揺すると自身の事を「僕」と言ってしまう癖のあるシンジである。

 今は、かなり平常心を失っているようだ。・・・そのせいか、なぜアスカがシンジの住居が一軒家やアパートではなくマンションである事を知っているのかを考える余裕すら無かった。

 

「だーめ。・・・アンタは、清き乙女の秘密を覗き見たあげく、この天下の美少女を長時間も放ったらかしにしたのよ!・・・その報いは、自分自身の苦労によって償うべきよ!」

 

 無いようで有るような説得力。

 どちらにしても、シンジが拒否できる余地は微塵も無いようだ。

 

「でも、僕は一人暮らしですよ。・・・そんな所に女の子が一人で来るのは・・・」

 

「うるさーい!・・・決定事項に変更なし!・・・さ、行くわよ!」

 

 シンジの最後の抵抗も、アスカの一喝によって途中で遮られた。

 そして、アスカは再びシンジの手をぐいぐいと引っぱって改札口を通って行った。

 

 なんとなくではあったが、後戻りのできない人生のとある選択肢の改札口をくぐってしまったような・・・そんな気がしているシンジであった。

 

 

 

 

 

 

 郊外の緑豊かなとある街に築3年程度と思われる真新しいマンションが建っていた。

 

 一人で住むには充分であろう2LDKのゆったりした間取り。

 加えて、居住者のふだんの生活スタイルが垣間見える整理整頓の行き届いた室内は、とても独身男性の部屋とは思えない程、清潔感に溢れていた。

 

 そして、日常において、来客の類は皆無であったその部屋に、今夜は花一輪のような訪問者の存在があった。

 もっとも、一輪とは言え、ひまわりのように光り輝く存在感を持った花ではあったが。

 

「ごちそうさま!・・・まぁまぁ、美味しかったわよ」

 

 言葉にした評価は低くても、その満足そうな笑顔が、シンジの作った夕食の真の評価を雄弁に物語っていた。

 

「どう致しまして。・・・あり合わせだから、たいした物ができなくて申し訳ないです」

 

 謙虚に答えたシンジ。

 しかし、あり合わせと言いつつも、和洋折衷のレパートリーに富んだメニューであったと言えよう。

 そして今は、食後に挽きたての暖かいコーヒーを飲みながらくつろいでいた。

 

 時刻は既に午後9時を過ぎている。

 シンジは壁掛けの時計でその時刻を確認すると、さすがに落ち着かないのか、アスカに話しかけた。

 

「アスカさん、もうかなり夜も更けてきました。・・・いくらご自宅には連絡されているとは言え、これ以上はお父さんやお母さんが心配なさいますよ。

 車でお送りしますから、そろそろ帰られた方がいいでしょう」

 

 しかし、シンジの心遣いは、逆にアスカを不機嫌にさせてしまったようだ。

 

「アタシ、パパはいないもん」

 

 先程まで浮かべていた満足そうな笑顔がみるみる曇り始める。

 

「あ・・・すいません!・・・無神経な事を申しました。・・・ですが、もうお帰りになられた方がいいのは間違いありません。・・・非礼はお詫びしますから、どうか・・・」

 

「うるさーい!!・・・誰がなんと言おうとも、アタシは帰らないからね!!・・・今夜はここに泊まっていくんだから!!」

 

「ええっ!!・・・泊まっていくって、僕の部屋にですか?!」

 

 アスカの爆弾発言にシンジは狼狽した。

 しかし、なおもアスカの爆弾は投下され続けた。

 

「アンタ、昼間の約束を忘れたワケじゃないでしょうね!・・・どんな『責任』でも取ってくれるって、言ったでしょ!」

 

「そ、それはそうですけど・・・でも、それは夕食をごちそうする、という事だったのではないのですか?」

 

 非難するという口調ではない。どちらかと言えば許しを乞うような物言いであり、また、その表情であった。

 

「アンタ・・・まさか、あれほどの『大罪』を犯しておいて、晩御飯をごちそうしたくらいで許して貰えるとでも思っていたの?

 ・・・それに、アタシは言った筈よ、『とりあえず』今晩、アタシに夕食をごちそうしなさい、ってね。

 つまり、夕食はひとつ目の要求に過ぎないわ。

 とは言っても、心配しないでいいわよ。・・・際限なく要求するつもりはないから。

 アタシがアンタに求める要求項目は全部で5つよ!・・・この要求項目を全て満たした所で、アンタは『責任』を果たした事になるんだからね!」

 

 アスカの勢いに完全に圧倒されてしまい、シンジは金魚のように口をパクパクさせている。

 そのせいか、なかなか反論の申し出は言葉にならないようだ。

 そんな彼の反応をよそに、アスカは更にシンジに迫る。

 

「という訳で、その二つ目の要求が今晩、アタシをこの部屋に泊める事よ!・・・いいわね?!」

 

 元々の原因はシンジの非にあるにせよ、少女の要求は、彼の倫理観から大きく逸脱したものであった。

 そんな非道徳的な要求を飲めるシンジでは無かった。

 

「アスカさん・・・どういうつもりか分かりませんけど、その要求を飲む事はできません。・・・なさけなく見えるかもしれませんが、端くれであっても僕も男です。

 年齢差があると言っても、男と女がひとつの部屋で寝泊まりするなんて、許される事ではないと思います。

 悪い事は言いません・・・ご自宅までお送りしますから、もう帰りましょう」

 

 それに対してアスカは即答せずに俯いてしまった。

 表情には先ほどまでの怒気を含んだ勢いが感じられない。

 はっきりと拒否の姿勢を示したシンジに対して、今まで高圧的な態度を見せていたアスカであったが、異性に対して感受性の鈍いシンジでもその違いが感じ取れる程に落胆の色を濃くしていった。

 

 言いすぎてしまったのだろうか・・・と人の良いシンジは自らの物言いを反芻しながら省みていた。

 

 二人の間を沈黙という名の居心地の悪い時間が流れていく。

 そして、やはり謝ろう・・・と、シンジが考えていた時だった。

 

「いや・・・」

 

 今までの物腰と明らかに違っていた。

 俯いたままで、そして弱々しく、か細い声で、アスカは否定の気持ちを言葉にした。

 

 たまらず、シンジはアスカの側に近寄った。

 

(謝らなければ・・・そして、慰めてあげなくては。・・・勝ち気な素振りを見せていても、傷つきやすい年頃なんだ。・・・それに辛い悩みでもあるのかもしれないし。)

 

 もし、悩みがあるのならば聞いてあげようとシンジは考え始めていた。

 

「アスカさん・・・」

 

 俯いている少女の肩に、シンジはそっと手をかけた。

 

 その時である。

 アスカは、シンジの胸の中に勢い良く飛び込んでいった。

 そして、離れるものか・・・と言わんばかりに、その細くしなやかな両の腕をシンジの背中に回して、堅くそして強く抱きしめていた。

 

「あ、あ、アスカさん?!」

 

 声が半オクターブほど上がってしまったシンジであった。

 行き場を失ったシンジの手が宙を泳ぐ。

 ・・・互いの洋服越しにではあるが、アスカの高校生らしからぬ、豊かに発育した双丘が、柔らかく、そしてなまめかしい感触となって、シンジの理性の防護壁を崩しにかかる。

 更に彼の鼻孔を、アスカのさらさらと流れるような髪が甘い香りを漂わせ、容赦なくくすぐっていく。

 

 宙を泳がせている手で、彼女を抱きしめたくなる衝動にかられてしまうシンジ。

 理性と欲望のせめぎ合い・・・この手の状況に免疫のないシンジではあったが、かろうじて理性の方が勝っていたようである。

 

「アスカさん・・・何かあったんですか?・・・私で良ろしければ相談に乗りますよ」

 

 少々震えた声ではあったが、かろうじて冷静な物言いのシンジであった。

 しかし、シンジの問いが聞こえている筈のアスカは、押し黙ったまま、更に自らの身体をシンジに押し付けていく。

 女性特有の丸みを帯びた柔らかな凹凸が強調されて、接しているシンジの身体に伝わっていった。

 

「あ・・・アスカさん?」

 

 一瞬、取り戻していた冷静さもかき消されてしまいそうなシンジであった。

 すると、ようやくアスカは口を開いた。

 

「アタシ・・・もう、長くないの・・・」

 

 気が付くと、シンジの胸の中にすっぽりと収まっているアスカの身体が小刻みに震えている。

 

「え・・・?! 長くないって、それって・・・」

 

 鈍感なシンジと言えど、その言葉が何を示しているのかぐらいは瞬時に理解できた。

 

(でも・・・そんな・・・こんな元気そうなのに・・・)

 

 シンジの動揺をよそにアスカは言葉を繋げる。

 

「アタシ・・・末期ガンなの。・・・お医者さまからは、1ヵ月ももたないだろうって言われているの」

 

「!・・・」

 

 思わず絶句してしまうシンジ。

 

「・・・だからね・・・アタシ、“思い出”が欲しいの。・・・この世に生きていた、っていう“証”が欲しいの。

 ・・・もうすぐアタシはこの世から消えてしまう。

 だから・・・その前にオトナになりたいの。

 好きな人にヴァージンを捧げて・・・それを17年間生きてきた最後の“思い出”にしたいの・・・」

 

「アスカさん・・・君は・・・」

 

 今まで離すものか、と抱きしめていた両の腕を解いて、アスカは顔を上げた。

 そして、視線と視線を絡め合わせる。

 

「そう・・・アタシはアンタの事が・・・シンジの事が好き。・・・この気持ちはウソじゃない。・・・だから」

 

 少女の瞳が潤み出す。

 

「だから・・・抱いて・・・アタシに“思い出”を頂戴」

 

 次の瞬間、アスカは再びシンジの胸の中にすっぽりと収まっていた。

 アスカの意思ではない。

 シンジが彼女を抱きしめたのだった。

 

 それは衝動的な行動であったかもしれない。

 しかし、シンジはアスカを抱きしめずにおれなかったのだ。

 

「今夜だけでいい・・・アタシをシンジの恋人にして」

 

 なんの変哲もなかった夜が、聖夜へと変わろうとしている。

 

「分かりました・・・アスカさん。・・・いや、分かったよ・・・アスカ」

 

 アスカはゆっくりと瞳を閉じた。

 二人のシルエットがひとつに重なり合う。

 青年にとっても、少女にとっても初めてのキス。・・・それは、甘い甘い果実のような味であった。

 

 二人の初夜が始まる・・・。

 

 

 

 

 

 

「はあぁぁ・・・」

 

 艶めかしい喘ぎ声とともに、少女のしなやかな肢体が弓なりとなった。

 少女が喘ぎ、身体をうねらす度に、ぎしっ、ぎしっ、とベッドのスプリングが音をたてる。

 

 白いベッドの上には、生まれたままの姿に近い若い二人の男女がいた。

 シンジとアスカ・・・今宵限りの恋人同士となった二人である。

 かろうじて互いに身にまとっているのは秘所を守る純白の下着のみ・・・アスカの方は白いブラも既に外されている。

 

「ああぁん・・・シンジぃ・・・」

 

 シンジの手が、アスカのきめ細やかな素肌の上を優しくなぞっていく。

 その高校生とは思えない豊かな双丘を、そしてその頂きにポツンと自己主張しているピンク色の小さな豆粒ほどの乳頭を、小鳥がついばむように愛撫していく。

 そして、同時にそのピンク色の乳頭を口で含んで、舌で転がすシンジ。

 

「ひゃうっ!!」

 

 とろけるような快感がアスカの全身を駆けめぐっていった。

 

 ちゃぷっ、ぴちゃっ、ちゃぷっ・・・。

 

 シンジの舌が淫猥な響きをもたらし、それに輪を掛けるような艶めかしい少女の喘ぎ声が、今や二人の愛の巣と化した寝室に響いていく。

 

 ある時は優しく撫でるように、またある時はこねるように、そして気が付くと荒々しく鷲掴むように美しい少女のたわわに実った双丘を責め立てていた。

 あまりに甘美なその少女のかぐわしさに我を失っているシンジであった。

 

「はぁぁ・・・ああぁぁ・・・」

 

 慣れていないシンジの未熟な愛撫であったが、こちらも初めてであるアスカにとっては、充分すぎる刺激であるようだ。

 シンジの蠢く手や舌に合わせるようにその身をくねらせ、操り人形のごとく反応して手足を仰け反らしていく。

 

 ひとしきりそのアスカの双丘を堪能た後、シンジは矛先を変えるかのように、そのなめらかな彼女の素肌に舌を合わせたまま、胸から細く引き締まった腰の辺りを通過し、更にへその下へと降りていく。

 

「ああぁぁ・・・!そ、そこはダメェ・・・!」

 

 シンジの意図を察したのか、アスカは身をよじらせ抵抗する。

 しかし、シンジは愛撫していた胸から両手を離し、今度はがっちりとアスカの太股を抱えてゆっくりと開脚させる。

 昼間、会議室で思わず垣間見てしまった光景と同じくらいにアスカの美しい脚が開かれて固定される。

 そしてあの時、シンジの目を奪った純白のパンティが、眩しい光を発するかのようにシンジを誘惑している。

 

 たまらずシンジはパンティ越しにアスカの秘所へ舌を這わせた。

 

 ピクン!とアスカの肢体が更に仰け反る。

 

 

「はぁぁ・・・! だめぇ・・・!」

 

 既にそこはアスカの愛液がしっとりと潤っていた。

 甘酸っぱい匂いがシンジの嗅覚を刺激していく。

 

 ぴちゃっ、ひちゃっ。

 

 アスカの愛液とシンジの唾液によって、薄い布きれは、既にアスカの秘所の形がくっきりと写し出されていた。

 

「だめぇ・・・! そんな汚い・・・!」

 

 息も絶え絶えのアスカ。

 抗議と言うより、官能に打ち震えて発せられる喘ぎ声に近い。

 

 そして、アスカのパンティーの縁に手をかけるシンジ。

 ゆっくり、ゆっくりと純白のパンティーは脱がされていく。

 あらわになった秘所は、眩いばかりのサーモンピンクであった。・・・そして、秘所の回りには気持ち程度に赤毛のアンダーヘアーがうっすらとしている。

 

 アスカは、自らの秘所が熱くとろけてしまうような錯覚を感じた。

 その理由はすぐに分かった。

 

「アスカ・・・きれいだよ・・・ここ。 とっても、きれいだ」

 

 シンジは熱い視線を、アスカの秘所の奥までじっとりと絡めていたのである。

 

「いやぁぁ・・・恥ずかしい!・・・お願い、見ないで!」

 

 シンジはアスカに恥ずかしがらせる時間を、ほとんど与えなかった。

 

 ぴちゃっ、ぴちゃ、ぴちゃっ。

 

「ふぁっ・・・!!」

 

 先程までの愛撫とは比べものにならない。

 自身の秘所から雷のような衝撃が全身を駆けめぐるアスカであった。

 

「アスカ・・・とっても美味しいよ・・・」

 

 アスカの秘所からは、とめどなく愛液が滴り落ち、シンジはそれを溢すものかとばかりに舌で舐め上げすくっていく。

 

「はああぁぁぁん!・・・し、シンジィ・・・!」

 

 自分の秘所を貪るように舐め続けるシンジの頭に両手を掛けるアスカ。

 快楽に溺れてしまいそうな中で、かろうじて恥ずかしさが勝り、シンジの顔を自身の秘所から遠ざけようとした行動であった。

 しかし・・・。

 

「ひぃっ・・・!!」

 

 シンジの舌は、アスカの包皮に覆われていたクリトリスを捉え、その舌で小さな豆粒程の大きさのそれを中から捲り上げるに摘み出すと、新たな快感の渦にアスカを引き込むように刺激を与え始めた。

 

 舌の先端でそれを舐めあげたかと思うと、口に含んで軽く噛んで見せるシンジ。

 

「くはぁ・・・!」

 

 いつの間にか、遠ざけるつもりでシンジの頭に掛けていた手は、逆に自らの股間にシンジの顔を押し付けるかのように力を込めてしまうアスカであった。

 

 ちゃぷっ、ちゃぷっ、と淫猥な音が響いていく。

 

 自慰すらほとんどした事の無かったアスカにとっては、あまりにも強烈な快感の嵐であった。

 そして、未だ経験した事のないその快楽の頂点に導かれていく。

 

「もう・・・ダメェ・・・アタシ・・・だめぇ!!」

 

 アスカの肢体がピクピクと震え出す。

 サファイアのような蒼い瞳は虚ろになって、焦点が定まらなくなってきている。

 頂への臨界点はもう目の前まで来ているようだ。

 

「はああぁぁぁぁぁ・・・・・・!!」

 

 最後は大きく口を開けたまま、アスカは果てた。

 アスカは、全身を大きくピクンピクンと反り返るように震わせたかと思うと、しばらく小刻みな痙攣を見せながら、肩で大きく呼吸している。

 そして、それに合わせて彼女の心臓は、激しく鼓動を繰り返し、その度に彼女の豊かな胸が隆起した。

 

 シンジは身を起こすと、身体の位置をアスカと視線が合う程度にまでずらし、彼女を自身の胸の中に収めるように抱きしめた。

 

「アスカ・・・大丈夫?」

 

 そう声を掛けながら、シンジは片手でアスカのさらさらとした髪の毛をとくように撫で上げた。

 

「うん・・・大丈夫。・・・でも、こんなに気持ちの良い事だったなんて・・・ちょっとビックリしたわ・・・」

 

 心地よい脱力感の中で、アスカはシンジの胸に頬をこすりつけた。

 そして、聞こうかどうしようか迷っていた事を口にした。

 

「ねぇ、シンジ・・・。シンジはさ、アタシで何人目なの?」

 

 シンジは25才という充分な大人である。

 まして、異性にもてない筈のない彼である。抱いた女性の数は少なくないのだろう、とアスカは思っていた。

 

「何人目って・・・何の事?」

 

 この手の話題に、とても鈍いシンジは間の抜けた返事をしてしまった。

 ある程度、その鈍感さは知っているつもりであったアスカであったが、つい、声を荒くしてしまう。

 

「もう!!・・・こんな時に“何人目?”って聞けば分かるでしょう?!・・・シンジが抱いた、つまりセックスした女性の数の事に決まっているでしょ!!」

 

 赤裸々なアスカの物言いにシンジは思わず赤面してしまう。

 

「ええっ!!・・・そんな!!・・・僕は今まで、こんな行為をした事なんてないよ!・・・だから、もちろんアスカが初めてだよ!!」

 

「ほんと?・・・その割には女の扱いがずいぶんと上手だったんじゃない?」

 

 シンジが嘘をつくようなタイプでない事くらいは、アスカは分かっていた。

 しかしながら、シンジの手によって、簡単にオルガスムスへと導かれた事の恥ずかしさをごまかすかのように彼を責めるアスカであった。

 

「そんなぁ・・・初めてに決まっているじゃないか!!」

 

 そのシンジの答えは、アスカの独占欲を充分に満足させたようだ。

 

「それじゃあ、シンジもアタシが初めてになる訳ね!」

 

 シンジの胸に埋めていた身を起こしてアスカは笑顔を見せた。

 

「アタシのヴァージンを優しく受け取ってね・・・その代わりに、アタシはシンジにとって初めての女になるわ」

 

 そう言って、今日何度目になるのか・・・熱いベーゼを交わした。

 

「さてと・・・」

 

 甘い甘いキスの後、アスカは小悪魔の微笑みを浮かべながら身体を起こした。

 そして、シンジの下腹部の方に視線を落とし、シンジが唯一、身に付けている青いトランクスに手を掛けた。

 

「な、何・・・?」

 

 おそるおそるシンジが尋ねる。

 

「ふふっ、さっきは一方的にシンジに責められたからさ、今度はアタシがシンジを気持ち良くさせてあげるの」

 

 元々、口より手が早いアスカである。

 そう言うが早いか、一気にシンジのトランクスを剥ぎ取った。

 

「あ、アスカ・・・?!」

 

 驚嘆の声を上げるシンジ。

 

 ぶん!

 

 そんな擬音が聞こえてきそうになるような、逞しいシンジのモノが天を突かんばかりにそそり立ちながら、アスカの目の前に現れた。

 

「うわっ!!・・・何コレ!・・・こんなに大きいの?!」

 

 学校の授業である保健の時間に、ある程度の形は説明を受けていたアスカであったが、実物を見るのは無論初めてである。

 予想以上に大きくて長いシンジのモノに、アスカは恐怖心さえも感じていた。

 実際の所、シンジの剛直は日本人の標準的なサイズよりもひと回りもふた回りも長くて大きかった。

 他の男性の持ち物を知らないアスカが、その事を分かろう筈もない。

 グロテスクで巨大なモノを見て、怖いという感覚を持ったとしてもそれは17才の処女にとってはごく当たり前の反応であったと言えよう。

 

 しかし、恐ろしい・・・という気持ちに反するように、アスカはそれに触れてみたい、という好奇心が首をもたげて表に現れていた。

 

「すごい・・・ピクピクしてる・・・」

 

 シンジのモノを凝視するアスカ。

 すると、その幹の部分に青い筋があり、それは別の生き物であるかのようにドクンドクンと脈を打っている。

 

 思わずアスカは、その細い指でシンジの剛直を掴んでいた。

 

 ぎゅっ・・・。

 

 握った瞬間、シンジのモノは更にピクピクと激しく蠢いた。

 

「本当に生き物みたい・・・ピクンピクンと脈を打っているわ。」

 

 不慣れな手つきながら、アスカは大胆にシンジのモノを擦り上げるように、その手を上下し始めた。

 

「ちょ、ちょっと・・・アスカ、そんなに触ったら・・・、ああ、ちょっと待って・・・。」

 

 異性に自らのモノを扱かれるなど、勿論今まで一度もないシンジである。

 あまりの快感にシンジは我を忘れそうになってしまう。

 

 しゅっ、しゅっ、とアスカの白い手が上下する度に、シンジは快楽に打ち震えるような、また半ば苦痛とも受け取れる表情を浮かべる。

 

「はあぁ・・・アスカぁ・・・」

 

 そんなシンジの様子を見て、アスカはますますエスカレートする。

 

「シンジ、先っぽがヌルヌルしてるよ!!・・・気持ち良いの?!」

 

 そう問いながらもアスカは、シンジのモノを握って上下させる手を休めようとはしない。

 

「う・・・うん、き、気持ちいい・・・よ。だけど・・・」

 

「だけど?」

 

「アスカ・・・も、もう、手を離して!」

 

「やせ我慢しなくてもいいのよ!・・・男の人って、こうされると気持ち良いんでしょ?!・・・もっとしてあげる。」

 

 シンジの剛直を上下させる手を、更に躍動させていくアスカ。

 

「駄目・・・だよ!このままじゃ、アスカを汚しちゃうから!!」

 

 しかし、シンジは口ではそういいながらも、この目の前の天使のような少女に自らのザーメンによって汚してみたいと、本能の方は訴えて止まない。

 

「いいの!!・・・アタシを汚して!!」

 

 そう言ってアスカは、新たな刺激をシンジの剛直に加える。それは・・・。

 

 ちゅぱっ、ちゅぽっ・・・

 

 その愛らしい小さな口を大きく開け、シンジのモノを頬張ったのである。

 それがフェラチオという行為である事くらいはアスカも知っていた。

 

 口の中でシンジのモノを吸い上げたかと思うと、舌の先端で剛直のカリの部分をアイス・キャンディーでも舐めるかのように愛撫していく。

 決して慣れた仕草ではなかったが、初めて味わう快楽にシンジにとっては、充分すぎる程の刺激であった。

 

「くああふっ!!・・・あ、アスカぁ!!」

 

 出してはいけない・・・我慢しなくては・・・と、ひたすら耐えるシンジ。

 しかし、童貞のシンジには、そう長く耐えうる事はできなかった。

 

 アスカが深々と、シンジの剛直を頬張った瞬間であった。

 

「アスカぁぁぁ・・・!!」

 

 ・・・どぴゅっ!どぴゅっ!どぴゅっ!

 

 張り詰めていた糸がぷつりと切れるように、シンジの剛直はピクンと大きな脈を打ったかと思うと、溜まりに溜まったザーメンをアスカの口内に解き放っていったのである。

 

「うんっ?!・・・んんっ!!」

 

 シンジの放った大量の白い激流が一滴残らず、自らの喉や口内の全てを充満していく。

 

「げほっ!げほっ!ごほっ!」

 

 その激流の勢いで大半は飲み干してしまったアスカであったが、その苦さに耐えきれず、わずかに口内に残っていたザーメンをむせ返すように吐き出した。

 

「だ・・・大丈夫?アスカ?」

 

 身を案じるシンジに対して、アスカは汚れてしまった口元をティッシュペーパーで拭きながら笑顔を見せた。

 

「大丈夫よ・・・それよりも嬉しかったわ。シンジもさっきのアタシのようにイッてくれたのでしよ?・・・これでおあいこよね」

 

 そう言って、シンジの胸に顔を埋めるアスカ。

 心地よい柔らかなアスカの肢体が、直にシンジの肌に伝わっていく。

 

 その柔らかな感触に酔いしれながら、シンジのモノは逞しく回復しつつあった。

 そして・・・。

 

「今度はアタシの膣内(なか)でね・・・」

 

 その一言に、シンジのモノはピクンと反応していた。

 充分な堅さを取り戻し、青筋がドクドクと蠢き始めている。

 

「アスカ・・・!」

 

 そう言って、シンジは再びアスカの肢体にのし掛かっていった。

 そして、どちらからともなく唇を求め合う。

 

 ちゃぷ、ちゃぷ、くちゅ・・・。

 

 舌と舌を絡め合わせ、互いを貪り合う。

 ねっとりと舌が溶け合うようなディープなキスを交わしながら、シンジは再びアスカのたわわに実った双丘を右手で優しく撫で上げる。

 

「ん、うんんっっ・・・」

 

 くぐもった声がアスカから発せられた。・・・しかし、まだ唇は繋がったままである。

 

 更にシンジは、そのマシュマロのような柔らかさとゴムマリのような弾力感のあるその双丘を乱暴に揉み回す。

 だんだんと手慣れてきているシンジの右手が蠢く度に、アスカの美しい乳房が形を変えて歪められる。

 

「はあぁぁぁ・・・ん!」

 

 たまらずアスカが唇を離して喘ぐ。

 しかし、構わずシンジは再びアスカの唇を捕らえる。

 

「んぐっ・・・んんんっ!!」

 

 互いの唾液を絡め取り合うような熱烈なベーゼが続けられる。

 その間もシンジはアスカへの愛撫を休める事はない。

 

 既に先程のオーラル・プレイで、どこを刺激すればアスカが感じてくれるのか、ある程度の事が分かったシンジは、迷う事なくその部位へと手を忍ばせていく。

 

「くふぅぅんっ・・・!」

 

 舌を絡め合わせながら、アスカはひときわ大きい喘ぎ声をあげた。

 シンジの左手が彼女のピンク色の乳頭を責め始めたかと思うと、ほぼ同時にシンジの右手が、アスカの未だ愛液が溢れ続けている秘所を探り当て、浅めではあったが、その膣内へ中指を侵入させてきたのである。

 

 アスカの身体を鋭い痛みが走る。

 しかし、それを上回る程の快感が、すぐにうねりとなって彼女を襲い始めた。

 

「んんんっ・・・!くふぅぅぅ・・・!」

 

 それでもシンジはアスカの唇を解放しない。

 あまりにも甘美なニオイにシンジの理性の制御弁は、完全に破壊されてしまったようである。

 

 シンジの指の動きは更に激しくなり、ヴァギナの膣内へ軽いピストン運動をし始めた。

 同時に親指がクリトリスを撫で上げていく。

 中と外のウィーク・ポイントを同時に責められ、アスカは身を反り返るように喘いだ。

 

「はあぁぁぁ・・・!!」

 

 アスカの甲高い喘ぎ声が部屋の中に響いていく。

 ようやくシンジがアスカの唇を解放したのである。

 

「アスカ・・・かわいいよ」

 

 快感に打ち震えるアスカを見下ろしながらシンジが呟いた。

 

「シンジぃ・・・アタシ・・・もう・・・」

 

 このままでも、アスカは再び快楽の頂点にいざなわれていく事は間違いないように思える。

 しかし、アスカはそれを望まなかった。

 

「シンジ・・・来て・・・お願い・・・」

 

 息も絶え絶えに肩で呼吸しながら、震えるようなか細い声でアスカはシンジを求めた。

 そして、シンジはアスカに応えるかのように黙って頷いた。

 

 ゆっくりと、アスカの内股を割っていくシンジ。

 先程放ったばかりだというのに、自らの熱いモノは既に天を向いてそそり立っている。

 そして、その剛直をアスカの秘所にあてがっていく。

 

 貫かれる恐怖の為か、アスカの身体がピクピクと小刻みに震えている。

 そんな彼女の様子を見ながらも、シンジは行為を止めようとはしなかった。

 

 この子の願いを叶えてあげなければ・・・

 

 最初は、その思いの方が強かったであろう。

 しかし、今は自身の性欲を求めて、目の前の汚れなき天使を自らのモノにしたいという欲望の占める割合の方がはるかに大きかった。

 

 ゆっくりと、シンジの剛直の太い先端がアスカのヴァギナの入り口にかかる。

 すると、シンジのモノを迎えようとするのか、アスカの愛液がペニスに絡まるように付着していった。

 

「アスカ・・・いくよ!」

 

 半ば目を虚ろにしたアスカは黙って頷いた。

 

 ずぶ、ずぶ、ずぶ・・・。

 

 ゆっくりと腰を沈め、自らのモノをアスカの膣内へ沈めていくシンジ。

 

 ぐぐぐぐ・・・ずぶ、ずぶ、ずぶ。

 

 先程まで快楽の渦の中にのまれていたアスカであったが、とたんに険しい表情に変わった。

 

「いたぁーい!!痛い!!痛いぃぃ・・・!」

 

 破瓜による激痛がアスカを襲う。

 それはまさしく身を引き裂くような鈍痛であった。

 

「アスカ・・・大丈夫?」

 

 激痛に耐えているアスカを見て、シンジは思わず、膣内に入りつつある自身のモノを引き抜こうとしていた。

 

 しかし、アスカはシンジの行動を敏感に察したのか、激痛に耐えながら、そのしなやかな脚をシンジの腰にがっちりと絡めた。

 

「くうぅぅ・・・お願い!・・・シンジ、最後まで・・・はぁっ!・・・最後まで、きちんと入れてぇぇ・・・!!」

 

 その懸命なアスカの言葉を耳にして、戻りつつあったシンジの理性は弾け飛んだ。

 

「アスカぁ!!」

 

 シンジは、一気に剛直をアスカのヴァギナの奥深くに沈めていった。

 

 ずぶ!ずぶ!ずぶ!・・・・・・ぶちっ!!

 

 それが処女膜であったのかどうか、初体験のシンジに分かろう筈はない。

 しかし、それがそうであった事を証明するかのように、その瞬間、アスカは絶叫した。

 

「い、いたぁぃ! 痛いっ!! 痛い〜!!」

 

 爪を立てて、シンジの背中の皮膚をえぐっていくアスカ。

 シンジも、その痛みに耐えながら、更に自らのモノをアスカの膣内へと沈めていく。

 そして、シンジの剛直の先端が、彼女の子宮の壁に触れた瞬間、アスカの激痛は頂点に達した。

 

「ふぐぅぅ!!あひぃぃ・・・!!」

 

 全身を引き裂くような激痛に耐えられず、無意識の内にその身をよじらせるアスカ。

 

 アスカの内股を破瓜の血が、愛液とともに滴り落ちる。

 つたって、したたり落ちる純潔の証が、一滴、また一滴と、純白のシーツに真っ赤な証を染め上げていく。

 

「アスカ・・・暖かいよ・・・アスカぁ!!」

 

 大人であるとは言え、こちらも初体験のシンジに痛がるアスカを気遣う余裕はないようだ。

 初めて感じる女体の膣内の感触・・・しかも、今まで誰も触れる事の無かった処女地である。

 その窮屈な内部の圧迫感が、シンジに更なる性欲を植え付けていく。

 気がつくと、シンジはその極太の剛直を、ゆっくりとではあるが、狭い膣の中で抜き差しさせていた。

 しかし、人一倍太くて長いモノで処女膜を突き破られ、あげくに中でピストン運動を受けているアスカの方はたまらない。

 

「痛いッ! 痛い! いたぁいっ!!」

 

 シンジの背中にくい込んでいたアスカの爪が更に深く彼の身をえぐっていく。

 

 アスカの繰り返し発せられた悲痛な訴えと、我が身の背中に走る痛みのおかげでシンジは我に返った。

 動かし始めていた腰の動きを止めて、シンジはアスカの表情を伺った。

 

「ご、ごめん・・・アスカ。・・・今すぐ外すよ」

 

 彼の本質である優しい一面が表に現れ、シンジはゆっくりと自らの剛直をアスカの膣内から抜き取り始めた。

 しかし・・・

 

「だめぇ!!・・・抜いちゃダメっ!!」

 

 身を裂かれる程の激痛のさなか、アスカはその痛みを必死に耐えながら、そう叫んでいた。

 

「あ、アスカ・・・?」

 

「お願い・・・アタシ、耐えてみせるから・・・最後まで、きちんとして・・・。

 そして、アタシに“思い出”を頂戴・・・」

 

 アスカの訴えは、シンジの心にずっしりと響いた。

 

(・・・そうだった。この子は余命幾ばくもない悲しい定めを背負っているんだ。)

 

「分かったよ、アスカ・・・。」

 

 初めての体験とはいえ、快楽に溺れかかっていた自らをシンジは恥じた。

 そして、アスカの願いを叶え、なおかつそれを少しでも和らげた上で、心に残る“思い出”にしてあげようと、シンジは考えていた。

 それと同時に一夜限りの恋人であると割り切ったつもりであったシンジであるが、健気な姿を見せるこの少女に、いつしか心を惹かれている自分を感じていた。

 

「大丈夫よ・・・シンジ、動いていいよ」

 

 自身の体を思いやるシンジの気持ちを察したのか、アスカはそう言ってシンジの行為を促した。

 

「アスカ・・・動くよ」

 

 アスカは目を閉じて黙ったまま頷いた。

 

 それが合図であったかのように、シンジは再び腰を前後させ始めた。

 今度は少しずつ、かなりゆっくりとした動きで、自分のモノを抜き差しさせている。

 

「つぅぅ・・・」

 

 アスカの口から痛みに耐える呻き声が洩れる。

 その声を耳にしながらも、シンジは行為を止めなかった。

 いや、止める訳にはいかないのである。

 アスカの願いを叶える為に、シンジは断腸の思いで行為を続けた。

 

 少しでも気持ちよくさせてあげたい・・・。

 

 シンジは未熟な手つきながらも、仰向けになっても形の崩れていないアスカの豊かな双丘を再び愛撫し始めた。

 その柔らかな膨らみを撫で上げるように揉み上げ、そして薄いピンク色の乳輪から乳頭を優しく包み込むかのように口で含んで、舌で転がしたり唇で軽く引っ張ったりして、快楽の道標となろう性感帯への刺激を与えていく。

 

「はあぁぁっ・・・はあぁぁんっ」

 

 その度にアスカは身悶えて喘ぎ声を洩らしていく。

 その喘ぎ声は、時が経つにつれ、いつしか痛みをこらえる呻き声よりも、確実に多く洩らされるようになっていった。

 

 ずっ、ずうっ、ぐいっ・・・。

 

 アスカの膣内で抜き差しされるシンジの剛直も、アスカの身悶えが激しくなり、その秘所から溢れる愛液による潤いが増していくにつれ、無意識の内にではあるが、だんだんとその勢いを増していった。

 

「はぁぁ、はぁっ、あぁぁんっ!!」

 

 興奮高ぶったアスカは髪を激しく振り乱しながら、その身をよじらせていた。

 そこには、先程まで破瓜による激痛に耐えていた清純な少女の面影は垣間見る事ができない。

 快楽の嵐に襲われた大海に浮かぶ小船のように、アスカは押し寄せる快感の荒波にもまれて、我を忘れて悶えていった。

 

 アスカは焦点の合わない陶酔した面持ちで宙を仰いでいる。

 気が付くと、自らシンジの動きに合わせて腰を上下させているアスカであった。

 それは、もはや性欲に満ち足りようとしている成熟した“オンナ”の姿であった。

 

「アスカ! アスカぁ! アスカぁっ!」

 

 身悶えてよがるアスカを前にして、シンジ自身も快楽に身を任せたままに腰を振っていった。

 

 パン! パン! パン!

 

 互いの秘部が擦れ合い、打ちつけられる度に淫猥な音が響き渡り、それが更に二人の快感を高めていく。

 そして、シンジの腰の躍動は、どんどん激しくなっていった。

 シンジの太くて長いモノが、ずぶずぶとうなりをあげて、深く深く沈められていく。

 ついにはシンジの剛直が、アスカの膣内の最深部とも言える子宮の壁を激しく叩いていた。

 

「くはぁぁっ・・・!! あ、当たってるぅ・・・、当たっているわ!!」

 

 アスカを快楽の絶頂に導こうとするのか、シンジのモノが子宮の壁に触れる度に、新たな性感のたぎりが彼女の身体の奥底から泉のごとく湧き上がり、電気が流れるかのように全身に伝わっていく。

 

 そしてアスカがその性感に打ち震える度に彼女の膣内はそれに敏感に反応し、きゅっ、きゅっ、とシンジのモノを締め上げていく。

 

 その自らのモノに絡み付き、絞り取るようなアスカのヴァギナの感触にシンジは酔いしれた。そして未だかつて経験した事のない心地良い圧迫感の中で、その巨砲が臨界点を迎えていく。

 

「くおぉっ!!・・・アスカぁっ!!・・・もう、ダメだ!! もう・・・いくよ!!」

 

 若くて荒くれる精のエネルギーは、今にも爆発しようとしていた。

 爆ぜるべき行き先を求めて・・・その瞬間を今か今かと待ちわびているようである。

 

「はぁ、はぁ!・・・もう・・・アタシも・・・あはぁっ!!」

 

 アスカもついに快楽の嵐に押し流されて、高い高い頂へと昇りつめていく。

 

「アスカぁ!!」

 

 既に限界を超えたシンジの剛直の先端からは、ヌルヌルとしたゼリー状の分泌物が漏れはじめている。

 

「来て!!・・・アタシの膣内(なか)に全部出して!!・・・アタシにいっぱい“思い出”を頂戴!!」

 

 喘ぎながらアスカの両脚が、逃がすものかとばかりにシンジの腰をがっちりと掴まえる。

 

「アスカぁ!!・・・もう、出る!! 出すよ!! 出すよぉ!! アスカぁ!!」

 

 これでもかと砕けんばかりに腰を激しく上下させるシンジ。

 膣内て暴れるシンジのモノが、脈を大きく打ちながら、子宮の壁の奥へと最後の力を叩きつける!

 

「アタシも・・・もう、飛んじゃう!!・・・早くきてぇ!!」

 

 そのアスカの絶叫が最後の引き金となったのか、シンジは耐えに耐え、溜まりに溜まっていた精の雄叫びを一気に解き放っていく。

 

「うおおおっっ・・・!!」

 

 どぴゅっ!! どぴゅっ!! どぴゅっ!! どぴゅっ!! 

 

「はあぁぁぁぁぁ・・・・・・!!」

 

 押し寄せる精の荒波が、アスカの膣内を所狭しと駆けめぐり、シンジが果てた事を彼女の子宮に伝えていく。・・・そして子宮に浴びせかけられる激流の感触に恍惚とした表情を浮かべながら、同時にアスカも頂点に達していった。

 

 どくどくどく・・・とアスカの膣内へ、溢れんばかりにそそぎこまれる白いたぎり。

 それは、どこにこれほど溜まっていたのかと驚くほどに大量のザーメンであった。

 

 もうどうなってもいい・・・。

 

 最果ての快楽の余韻の中で、シンジとアスカの二人は同じ事を思い描いていた・・・。

 

 そして、あらん限りの愛情と体力を使い果たした二人は、秘部が繋がったままの状態のままで、ぐったりと眠りについていった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・深い深い眠りの中で、シンジはある夢を見た。

 

 道に迷い、木々の生い茂った森の中をさ迷い歩き、疲れ切った足取りで、ようやく光の差し込む辺りに辿り着くと、そこには透き通るような湖があった。

 湖面には純白の衣装を身にまとった天使が、シンジを背にして、はるか彼方を見つめながら、そしてその身を輝かせながら宙に浮かんでいた。

 

 天使に向かって必死に手を伸ばすシンジ。

 届きそうで届かない。

 

(そうだ、名前を呼ぼう・・・)

 

 しかし、シンジには天使の名前がすぐには浮かんでこなかった。

 

(どうして?・・・僕は彼女の事を・・・あの天使の事を知っている筈なのに!)

 

 そうしている間にその天使は、ゆっくりとではあったが、ふわふわと空中に舞い上がり始めた。

 

(早くしないと・・・あの子が行ってしまう!!)

 

 シンジは焦った。

 そして天使の名前を必死に思い出そうと頭を抱えた。

 

(あの天使の名前は・・・僕の大事な天使の名前は!!)

 

『アスカぁぁぁぁ・・・!!!』

 

 喉もつぶれんばかりにありったけの大声で叫んだ。

 

 すると、純白に輝く天使は・・・赤みがかった長い金髪を宙に踊らせ、クルリと向きを変えた。

 眼下に広がる蒼い蒼い湖よりも、更に透き通ったサファイア・ブルーの瞳が輝きながらシンジを見つめる。

 そして、形の良い小さな唇がゆっくりと開かれた。

 

『やっと思い出したようね・・・バカシンジ!

 ・・・アンタにふさわしいのは、世界中を探したって他にはいないんだから!!

 このアタシだけが、アンタにとって唯一のパートナーなんだからね!』

 

 乱暴な口振りもなぜだか心地良い。

 幸せな・・・そう、25年間生きてきた中で、シンジは最も幸せな時の流れを感じていた。

 

 そしていつしか、シンジは満面の微笑みを浮かべていた。

“純白の天使”もシンジを優しいまなざしで見つめながら、にこやかに微笑んでいる。

 

 そして、しばらく視線が絡み合う程に見つめ合った後、シンジが口を開いた。

 

『やっと見つけたよ、アスカ。・・・もう決して忘れる事はないし、迷う事も、間違う事もない。・・・ずっと、君だけを見つめていくし、そして君だけを愛していくよ』

 

 シンジの告白を聞き惚れるようにしていた“純白の天使”は、やがて満足そうな面持ちになり、こう言った。

 

『ちゃんと、責任取りなさいよね!!』

 

 その瞬間、目の前の光景が眩い程に光り輝き、シンジの意識は幻想的な夢の中から、現実の世界へと引き戻されていった・・・。

 

 

 

 

 

 

「ちゃんと、責任取りなさいよね!!」

 

 シンジは心地良い眠りから覚めて行きながら、夢の中で“天使”が言っていたセリフを再び耳にしていた。

 

(・・・何だろう? 右腕が重たいや・・・)

 

 痺れるような感覚を伴いながら、自身の右腕に何かが伸し掛かっているような感触があった。

 硬い物ではない。柔らかい触感と甘い香りを漂わせるモノがそこにある。

 

 唐突に息苦しさを感じ始めた。

 呼吸ができない。・・・鼻も口も何かで塞がれてしまったようだ。

 

「んんんっ!!・・・うんんんっ?!」

 

 呼吸困難のあまり、シンジは悲鳴をあげた。・・・かなり、くぐもった声ではあったが。

 

 半ば強引にシンジは目覚めさせられると、目の前には夢の中に現れた“純白の天使”がそこにいた。

 ・・・そして、息苦しさの理由もすぐに分かった。

 彼女の白魚のような細い指がシンジの鼻をつまみ鼻孔を塞ぎ、そしてなおかつ、昨夜は何度となく交わし合った唇が、シンジの口を塞いでいたのである。

 

 ようやくシンジが目覚めた事を確認すると、彼女は笑顔を振りまきながら、シンジの鼻と口を解放した。

 

「ようやくお目覚め?・・・シンジって意外にねぼすけさんなのね」

 

 25才の男性とは思えない、髭が一本も生えていないすべすべのシンジの頬をつんつんと突つく。

 

「あ、アスカ・・・さん?」

 

 驚きながら、よそよそしい敬称を名前に付けたシンジに対し、アスカの表情はみるみる不機嫌さを現していく。

 

「シンジ!!・・・アンタねぇ、この状況でなおかつそんな他人行儀な物言いをするワケ?」

 

 シンジの右腕を枕がわりにしていたアスカは身を起こして、仰向けになっているシンジの上に馬乗りになるように伸し掛かった。

 

「あ・・・」

 

 シンジの頬がみるみる赤く染まる。

 彼の視界に飛び込んできたのは・・・純白の天使、アスカの眩いばかりの裸身であった。

 しかも・・・それだけでは無かった。

 

「昨日の夜から繋がったまんまなんだからね!!」

 

 シンジの身体の上に馬乗りになった形は、いわゆる騎上位のスタイルになっていた。

 その結果として、互いの秘部同士が繋がっている局部が丸見えとなっていたのである。

 

「えっ・・・? ええ〜〜〜っ!?」

 

 だんだんと身体全体に感覚が戻ってくると、もちろんの事ながらアスカと繋がっている自身のモノからは、締め付けられるような心地良い圧迫感が伝わってきた。

 そんなシンジの狼狽ぶりを目にして、アスカは高校生とは思えない艶めかしい視線をシンジに絡めながら、メガトン級の爆弾を投下させる。

 

「シンジのコレって、元気よね〜〜〜男の生理現象って言うんだっけ?・・・朝、早くからムクムクと硬くなっちゃうんだもの!・・・おかげで目が覚めちゃったわ!」

 

 爆弾の投下はまだまだ続いた。

 

「“持ち主”の方は気持ち良さそうに熟睡しているのに不思議よねぇ〜〜〜あんまり、アタシのナカで暴れるモンだから、最後はどくんどくん・・・って、いっぱい出していたわよ」

 

 あまりの事にシンジは声も出ない。

 

「もちろん、ぜ〜〜んぶ、アタシのナカに出していたわ!・・・ああ〜ん、赤ちゃんがデキちゃってたら、どうしよ〜?!」

 

 小悪魔の妖艶な微笑み・・・。

 シンジは引きつった笑みを浮かべながら、ようやく口を開いた。

 

「あの・・・アスカさん?」

 

「“さん”は余計よ!・・・昨日の夜みたいに“アスカ”って呼んで、マイ・ダーリン♪」

 

 魅惑的なウィンクを投げかけるアスカ。

 そんな彼女に少々、たじろぎながらもシンジは恐る恐る言葉を繋ぐ。

 

「アスカ・・・あの〜〜ひょっとして・・・“末期ガン”とか、“1ヵ月ももたない”って言うのは・・・」

 

「あ〜〜アレね、もちろんウソよ♪・・・良かったでしょ♪」

 

「え・・・!!う、嘘なの?」

 

「あら・・・シンジ、まさか不満があるワケじゃないでしょうね。・・・なんたって、

『やっと見つけたよ、アスカ。・・・もう決して忘れる事はないし、迷う事も、間違う事もない。・・・ずっと、君だけを見つめていくし、そして君だけを愛していくよ』

 って、はっきり言ってくれたもんねぇ♪」

 

 再び絶句してしまうシンジ。

 どうやら、夢の中のセリフは寝言となって発せられていたようだ。

 

「アタシも、もう一度言ってあげる・・・ちゃんと、責任取りなさいよね!!」

 

 完全にノックダウン状態のシンジであった。

 彼の将来は、極太でピンク色の愛のクサリによってがんじがらめに拘束されてしまったようだ。

 それは、人生の墓場に足を踏み入れた瞬間であったかもしれないし、ひょっとしたら幸せいっぱいのバラ色の未来の扉を開けた瞬間であったかもしれない。

 

「アタシの5つの要求の事、覚えてる?・・・一つ目は夕食をごちそうする事、二つ目はこの部屋に泊める事。・・・三つ目はアタシを“オンナ”にするコト。・・・ここまでは、昨日言っておいたわよねぇ」

 

 三番目の要求事項は、“三つ目”として明言していなかったアスカであったが、それを反論できる筈のないシンジであった。

 

「そこで四つ目の要求よ!!」

 

 またしても無理難題を押し付けられるのか、とシンジは身構えた。

 それに対して、アスカはこれから告げようとしている要求があまりにも恥ずかしいのか、それとも続いている“行為”に身体が反応しているせいか、頬を紅潮させて俯いた。

 

「四つ目はね・・・アタシをシンジのお嫁さんにするコト・・・」

 

 そう言うと、アスカはシンジのモノにまたがったまま、彼の華奢な胸板に顔を埋めた。

 すべすべとした頬や、さらさらとした自慢の髪をシンジの胸板に擦りつける。

 その心地良い感触にシンジは酔いしれていく。

 気が付くとシンジは、アスカの背中に両手を回し、彼女を優しく包み込むように抱きしめていた。

 

 しばらくの間、そうしていた二人であったが、少々、痺れをきらしたかのようにアスカが口を開いた。

 

「シンジ・・・“四つ目”の返事は?」

 

 ひとさし指で、シンジの胸板に“の”の字を書いているアスカであった。

 そんな仕草を見せる少女に対して、人一倍優しいシンジが、否定的な発言をできる筈はない。

 ・・・もっとも、冷静に考えた所でアスカの事を既に愛し始めているシンジの答えは決まっているようなものであったのだが。

 

「アスカ・・・プロポーズは、男の方からするものだよ」

 

 そう言いながら、彼女の美しい金髪を優しく撫でるシンジ。

 

「シンジ、それって・・・」

 

 とろけてしまいそうな心地になるシンジの胸板と優しい手によるサンドイッチ状態の中、アスカは顔を上げてシンジの目を見つめた。

 

「アスカ、頼りない男だけれども、精一杯努力して君を幸せにしてみせるよ。・・・だから、僕と結婚して欲しい」

 

 迷いの無い、しっかりとした口調であった。

 

「嬉しい・・・嬉しいよぉ、シンジぃ!」

 

 そう言って、アスカは再びシンジの胸に顔を埋めた。

 そして、蒼い瞳から溢れてくる嬉し涙をシンジの胸板に擦り付ける。

 まるで子猫がじゃれるようにアスカはすりすりとシンジにその身を擦り合わせ続けた。

 結果として、シンジのモノにまたがっているアスカの腰も微妙に上下し、彼の剛直は再び雄たけびをあげるかのように、彼女の膣内で硬く、太く、そそり立っていった。

 

「あん!・・・ダメ・・・だめだってば、シンジ!」

 

 シンジのモノの変化を自身の膣内で感じたアスカが、敏感に反応して喘ぐような声をあげた。

 口では非難するような物言いをしながらも、アスカは無意識の内に腰を振り始めていた。・・・とても昨日まで、汚れを知らない少女であったとは思えはしない。

 

「アタシをこんなインランな女の子にしたんだからね!・・・一生かけて責任取ってよ!」

 

 シンジの記憶では二回目の・・・アスカの記憶では何度目になるのか分からないが、愛の行為が再開された。

 

 

 今日は平日、シンジは会社が、アスカは学校があるというのに、二人は忘れているのかどうかは定かではないが、愛の行為を止めるつもりは微塵もないようであった。

 無断欠勤と無断欠席になるのは、どうやら必至のようである・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は二ヵ月程の月日が流れた。

 

 とある晴れた日の事。

 街外れの教会では1組の結婚式が行われてようとしていた。

 美男美女のそのカップルは幸せそうな微笑みを浮かべている。・・・まだ、歳はかなり若いようだ。

 

 新郎は長身で細身、また中性的な笑顔が特徴的だ。

 新婦は腰まで届く赤みがかった金髪に輝くような蒼い瞳が魅惑的だ。

 

 新郎の名は碇シンジ。新婦の名は惣流アスカという。もっとも、新婦は今日という日から碇アスカとなる。

 

 

 

「それにしても最初は本当に驚いたよ・・・アスカが、ウチの会社の社長・・・惣流キョウコ社長のお嬢さんだったなんてね」

 

 式を目前にして新郎新婦の二人は、新婦側の控え室で二人だけの世界を作り上げていた。

 二人に緊張感はないようだ。・・・むしろ、心地良い時の流れを感じているようである。

 

「あら・・・シンジ、逆玉を狙っていたんだったら、お生憎さまよ。・・・アタシは、高校生の分際で妊娠して、親からは勘当されてしまった身の上なんだからね」

 

 むろんシンジにそんな気持ちがない事ぐらいは百も承知のアスカであった。

 

「そんな事、これっぽっちも考えていないよ。・・・ただ、社長が僕達の結婚に同意してくれて、なおかつ、こんな不祥事をしでかした僕をクビにせずにいてくれただけでも、僕は充分に感謝しているよ」

 

 そう言って、シンジは全ての女性を魅了してしまいそうな中性的な笑顔を浮かべた。

 

「それはそうと、あれから二ヵ月も経つのね・・・まるで昨日のような気もするのにね」

 

 二人が結ばれた日を思い出しているのか、アスカは宙を仰いで目を閉じた。

 

 

 

 

 

 ・・・二人が結ばれた夜の翌日。

 アスカは事の全貌をシンジに包み隠さず話していた。

 

 

 アスカがシンジの事を好きになったのは、会社訪問の日ではなく、それを遡る事、半年程前であったらしい。

 

 最初の内は、毎朝同じ電車に乗り合わせるかっこいい人、という程度の存在であった。

 実際の所、中性的な雰囲気を漂わせるシンジは、アスカの通う女子校の生徒の間では、かなりの有名人であったとの事であった。

 

 シンジの名前すら知らぬ最初の頃は、“環状線3両目の貴公子”と女生徒達からは呼ばれていたようである。

 

 シンジが勤めている会社の社長であるアスカの母親が、自宅に会議書類を忘れ、それをアスカに会社まで届させた時に、たまたま“環状線3両目の貴公子”こと碇シンジの姿をアスカが社内で見かけたのである。

 その日の内に、アスカは“社長の娘”という特権を生かして総務部長を脅かし、碇シンジに関する個人データを全て入手したのは言うまでもない事である。

 

 アスカによって、“環状線3両目の貴公子”の名前が学校中に知れ渡るのには、さほど時間はかからなかったようだ。

 名前が知れ渡ってからは、女生徒達の間では、親しみを込めて“シンちゃん”と呼称されていたようである。

 女生徒達の間では、身近なアイドルのような存在であったようだ。

 

 

 しかし、アスカにとっては、ある時を境にシンジは特別な存在になった。

 

 

 ある夜、試験明けという事もあってか、開放的な気分になっていたアスカは、女友達数人達と繁華街に位置するカラオケボックスで夜遅くまで過ごしてしまった事があった。

 その店の前で他の友達のみんなと別れた後、アスカはチンピラ風の男達数人に絡まれてしまったのである。

 第三新東京市・・・この街の繁華街は、夜になると秩序と風紀のレベルが一気にダウンしてしまう所であり、昼間の雰囲気しか知らなかったアスカは油断していたのであった。

 

 明らかにいやらしそうな目つきを漂わせているチンピラ達は、美少女という形容がふさわしいその容姿に加えて、高校生とは思えない程に見事な発育を遂げているアスカの身体を目当てにしている事がありありであった。

 

 あわや、そのチンピラ達の車に押し込まれそうになった所をシンジに助けてもらったのである。

 他の通行人達が見て見ぬふりをしている中で、シンジは迷う事なく助けに入ったのであった。

 

 

 その時以来、アスカにとってシンジという男性は、“白馬に乗った王子様”であり、“初恋の相手”という特別な存在となったのであった。

 

 ただ、こんな運命的な出会いをしたにも関わらず、シンジはアスカの顔をまったく覚えていなかったようである。

 その後、何度となく朝の通勤通学の電車の中で、意味深な視線をシンジに絡めていったアスカであったが、肝心のシンジの方はまるっきり無反応であったという事であった。

 

 そして運命の日とでも言おうか、業を煮やしていたアスカは、会社見学という機会を利用して勝負に出た・・・という事らしい。

 むろん、居眠りをして机を倒し、あまつさえ純白の下着までシンジに見せ付けたのは、彼女なりの作戦であり、演技であったようである。

 

 

 

 

 

「しかし、ホント、シンジのニブチンぶりにも困ったものよねぇ、このアタシとあれほど印象的な出会いをしたと言うのに、これっぽっちも覚えていなかったんだからねぇ」

 

 純白のウェディングドレスを身にまとった17才の新婦、アスカはぼやきながら、白のタキシードが良く似合う新郎、シンジの腕に自らの腕をしっかりと絡め合わせた。

 

「ごめんね、アスカ。・・・これからは、女性の気持ちにも敏感になれるように頑張ってみるよ」

 

 ところが、アスカはかぶりを振って見せた。

 

「だめよ!・・・もうシンジはアタシという最高の伴侶を得たんだから、これ以上、他の女の子なんかの気持ちを知る必要なんかないんだからね!」

 

 冗談ではないようだ。

 アスカは真剣な面持ちでシンジを睨み付けている。

 

 そんな仕草もかわいいな、とシンジは改めて実感しながら、くすくすと笑い出した。

 

「何よ!シンジ、どうして笑っているのよ!」

 

 真面目に注意を促したというのに、笑い出してしまったシンジを見て、アスカ姫はいたく機嫌を害したようだ。

 

 しかし、他の女性は別にして、この二ヵ月間で、アスカの事をよく理解できていたシンジは、アスカに不機嫌でいられる時間を長くは与えなかった。

 

「ごめんね、アスカ。・・・笑った訳じゃないんだ。幸せな気持ちに浸っていたから表情に笑みが浮かんだんだよ」

 

 シンジの説明を聞いて、アスカはみるみる内にご機嫌な様相を呈していった。

 

「ふーん・・・一応、聞いてあげる。・・・どうして幸せな気持ちに浸る事ができたの?」

 

 そう尋ねながら、シンジの答えを想像するアスカ。

 そして、自身が想像した回答を上回った事を答えてくれないと許さないぞ、と言わんばかりにシンジを睨む。

 

 そして、シンジはおもむろに答えた。

 

「僕の愛するアスカは何を着てもきれいだし、かわいいけれどね・・・やっぱり、純白のウェディングドレスが一番良く似合うと思ってさ。

 世界中どこを探したって、アスカよりもウェディングドレスが似合う女性はいないと思ったんだ。

 そんなすてきな女性と結婚できる僕は、なんて幸せなんだろう・・・と考えていた訳だよ。

 分かったかい?・・・僕の“純白の天使”さん」

 

 とたんに、ぽん・・・という擬音が聞こえてきそうになる程にアスカの頬は真っ赤に染まった。

 どうやら、シンジの回答は及第点を貰えたようである。

 

 しばらくの間、もじもじしながら俯いていたアスカであったが、ふと何かを思い出したかのように顔を上げると、シンジに熱い視線を絡めながら口を開いた。

 

「シンジ、二ヵ月前にアタシが言った“五つの要求”の事を覚えている?」

 

 間髪置かずにシンジは答えた。

 

「もちろん覚えているよ・・・でも、アスカ、確かあれって、“五つ目の要求”はまだ教えてもらってなかったと思うよ」

 

 アスカは試すような口調で言った。

 

「アタシの“五つ目の要求”・・・シンジは何だと思う?」

 

 今度はさすがにシンジも考え込んだ。

 そして、想像の範囲ではあるが、答えを導き出したのか、ゆっくりとした物言いでシンジは答えた。

 

「月並みかもしれないけど、アスカを幸せにする事かな?」

 

 このシンジの答えは予想できていたのだろう、アスカは、うんうんと頷きながらにっこりと微笑んだ。

 

「正解・・・と言いたい所だけど、間違いよ、シンジ」

 

 それを聞いて、シンジは首をかしげた。

 そんなシンジの様子を楽しんでいるかのように、アスカは満面に笑みを浮かべながら、言葉を繋いだ。

 

「それはもう、優しいアタシだけの王子様だもの、アタシの事はもちろんの事、お腹の赤ちゃんも含めて幸せにしてくれる事については、一点の疑いも考えていないもの」

 

 アスカはドレスの裾を気にしながらシンジに近寄り、自分のおでこを、こつんと音がするかのようにシンジの胸板に埋めた。

 

「アタシの“五つ目の要求”を教えてあげる。・・・それはね、たった一日でいいわ。・・・一日でいいから、アタシよりも長生きしてね。・・・もうシンジなしでは、生きていけそうにないから」

 

 サファイア・ブルーの瞳から一筋の涙が流れ落ちる。

 もちろん、それにすぐさま気付いたシンジはハンカチを手にして、流れるアスカの涙を拭った。

 

「アスカ・・・おめでたい日に涙は似合わないよ・・・大丈夫、僕は百才まで生きる自信があるんだ。・・・決して、アスカに寂しい思いはさせないよ」

 

「シンジぃ・・・!!」

 

 純白のウェディングドレスとタキシードのシルエットがひとつになった。

 独身時代の最後のキスを交わす二人。

 

「さぁ・・・行こうよ、アスカ!・・・僕達二人の新しい船出の第一歩だ」

 

「うん!!」

 

 

 

 こうして、第三新東京市に新しい一組の夫婦が誕生した。

 これからケンカも沢山するだろうし、それ以上に愛を奏でるように仲の良い夫婦になる事だろう。

 

 どうかこの若き夫婦に幸多からん事を祈ろう・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「ママぁ〜〜!!ママってばぁ〜〜」

「ママ、ちょっと来てぇ〜」

 

「なあに?・・・ユイカにマイカ、どうしたの?」

 

 白い大きな一軒の家の中で親子三人の話し声が聞こえてくる。

 蒼い瞳とさらさらとした美しい赤みがかった金髪が印象的な母親と齢は十代くらいの娘が二人。

 かなり若い頃に、この二人の娘を身ごもったせいもあり、初対面の人からは三姉妹と勘違いされる事もあるようだ。

 

「ママ、どうしてこの白いパンツは額縁に入れて飾ってあるの?」

 

 いつも仲睦まじい両親の寝室の壁に飾ってあった額縁の中の純白のパンティーを指差し、興味津々の表情を見せる次女のマイカ。

 それを見て、ほんの少しだけ頬を赤く染めている長女のユイカ。

 それぞれ母親と父親の性格を色濃く継いでいるようである。

 そんな二人の娘の疑問に答えるように母親が口を開いた。

 

「ユイカ、マイカ・・・これはね、ママがパパを撃墜した時の最終兵器だったのよ♪」

 

 

 

END


イイペーコー さんのメールアドレスはここ
rfh7a23@d1.dion.ne.jp



中昭のコメント(感想として・・・)

  イイペーコー さまからの投稿作品です。

>かなりの童顔である為、未だに新入社員と勘違いされてしまう事も少なくないようだ。
美少女M  「きゃはははは」

>碇シンジ、25才にしてようやく迎えた初恋であったのかもしれない。
ミセスR   「こくこく」

>『綾波レイさんです!』とそのまま叫びそうになる瞬間であった。
ミセスR   「えばり」

>“聖域”を見つめ続けてしまっていた。
ミセスR   「こけこけ」

ミセスA   「はい、ここがポイント」
ちるどれん 「「「「めもめもめも」」」」

> アタシがアンタに求める要求項目は全部で5つよ!・・・この要求項目を全て満たした所で、アンタは『責任』を果たした事になるんだからね!」
ミセスA   「要求は少なすぎるのは論外ですが、多すぎるのも宜しくありません。いいですね」
ちるどれん 「「「「めもめもめも」」」」


>「だから・・・抱いて・・・アタシに“思い出”を頂戴」
ミセスA   「この時の視線は相手しだいで選択して下さい。
        ですが、自分の演技力に自信があるのなら、潤んだ目で相手の目をしっかり見るのが効果的。
        口元がにやけるのを我慢できそうもない人は、うつむくのもよし」
ちるどれん 「「「「めもめもめも」」」」


>「いたぁーい!!痛い!!痛いぃぃ・・・!」
ミセスA   「・・・・・・・・・・・」
元祖天然少女 「ごくんぐびぐび」
天然少女   「アスかーさんせんせー。ほんとに痛いんですかぁ?」
ミセスA   「・・・・・・・・・・・そのうち判るわよ」


>一日でいいから、アタシよりも長生きしてね。
天然少女   「アスかーさんせんせー・・・」
ミセスA   「・・・・・・・・・・・うん?」
天然少女   「ん。なんでもないのぉ」
ミセスA   「・・・・・・・・ばぁーか」
くしゃくしゃ
天然少女   「あん。頭なでないでぇ」


>「ユイカ、マイカ・・・これはね、ママがパパを撃墜した時の最終兵器だったのよ♪」
永遠の少年S 「ぽぇーーー」
ちるどれん 「「「「ぱーぱ。最終兵器」」」」
ちらっ
永遠の少年S 「ぷわっ」
ミセスA   「あんたたちぃーー」
ちるどれん 「「「「きゃわきゃわきゃわ」」」」
ダダダダダダダダダ  

  みなさん、是非イイペーコーさんに感想を書いて下さい。




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