親父が好敵手#4









俺は今とっても気分がいい。えっ、どういうことかって。話すと長くなるのだがまあ説明してやろう。アスカちゃんがおれと同居する事になったのはもう知っていると思うが。昨日はアスカちゃんの歓迎会をしたんだ。少しお酒が入って頬を赤らめるアスカちゃんのかわいさったら、そりゃあもう。クラスの女どもがジャガイモに思えるくらいだった。

それで気分がいいのか?おめでたい奴って。

違うんだなこれが、俺もお袋にお酒を飲まされてそうそうにダウンしてしまった。そして目が覚めたのは今日の12時。はっきり言って俺は焦った。今日はアスカちゃんがお買い物をすると言うことを聞いていたからだ。

俺は目が覚めて枕元の目覚まし時計を見たとき、ムンクの『叫び』を実写するとこうなるんではないかと言う顔をして台所へと走っていった。そこで俺が見つけたのは出前のラーメンを啜っているお袋達。数えるまでもなく二人足りない。俺はお袋に聞いたね、『アスカちゃんは』って。帰ってきた答えは絶望その物だった。

『親父と二人で買い物』

その時の俺はダリの絵のようにスライムと化していた。

どうしてそれで気分が良いのかって。この話には続きがあるんだ。

俺が焼け食いを始めて5時間後、アスカちゃんは帰ってきたんだ。その時のアスカちゃんが腹をたてているのは見え見えだった。お袋に聞き出して貰ったんだけどデート(気にいらない表現だなこれは)の最中色々とあったそうだ。まず腕を組んで歩いていたらいきなり警官に職務質問されたそうだ。そりゃあそうだろう。親父の風体ははっきり言ってそのへんの路上生活者に、もう少しスパイスを効かせたものとなっている。あんな美少女と歩いていたら不審者その物だろう。幸い(とは俺は思わないが)マユミさんが飛んでいって事情を話して無罪放免となったらしい。後は街を歩いていたら、無理矢理引き離されて親父が取り押さえられたこと数えきれず。レストランへの入店拒否多数。犬をけしかけられたこと10回。仲間と間違えられて引きずり込まれそうになったこと5回。結局何も買い物が出来なかったそうだ。

俺は笑ったね。お腹の皮がよじれるかと思った。あんまり苦しくてアスカちゃんに睨まれたのに気がつかなかった位だった。

しかし愉快だ。自業自得とも言えるだろう。これで少なくとも親父がアスカちゃんのお買い物のお供になることはないだろう。そうだよアスカちゃん君のお供にはもっとふさわしい人間が近くにいることを忘れないで欲しい。不肖碇アツシが真心を込めてお供しますってね。

そういえば親父は落ち込んで家を飛び出したまま帰ってこないな。お袋は別に心配する必要はないと言って、夕食の準備を始めるし。母さんは…一体どうしたのだろう。お昼からずっと上の空で、心ここにあらずといった風情だ。何かぶつぶつ言っては頬を赤らめている。一体何を考えているのやら…

マユミさんはどこかに電話をしているし…

はっ、そういえばアスカちゃんはどうしたんだ。帰ってきたまま部屋に閉じこもってそれっきりだ。こういうときこそ優しく慰めて点数を稼がねば…

俺はアスカちゃんの部屋の前に行くと、深呼吸をして気を落ち着かせドアをノックした。

コンコンコン

軽やかな音が響く…中から返事がない。もう一度ノックをする

コンコンコン

ノックの音が消えた後、無意味に広がる静寂。俺はドアを叩きながら声を掛けた。

「元気出してよ。親父は見た目はああだけど、とってもいい人なんだ。だからアスカちゃんが気にする必要なんてないんだよ。これからみんな分かってくれるさ」

やっぱりなんの反応もない。

「アッ」
「無駄よアツシ。アスカちゃんならさっき出かけたわよ」

突然後ろからお袋の声が掛かった。

「えっ、いつ」
「あなたが浸っているとき」

くぅ〜しまった。アツシ最大の不覚。アスカちゃんのお供が出来なかった。

「で、どこに出かけたの」
「心配」
「そ、そりゃあ。アスカちゃんはこの街に来て日もまだ浅いし。
 あんなに可愛いからこんな遅がけに出たら危ないし…その…」
「お父様のお迎えよ」
「そんな危ない…」

明るい内でああだったのに、暗くなってからあの親父と出歩いていたりしたら…
最近この辺も治安が悪くなって来たと言うし。

「俺、ちょっと見に行ってくるわ」
「大丈夫よ。すぐに帰ってくるわ」
「でもお袋。親父が心配じゃないのか」
「あの人なら大丈夫。多分アツシもびっくりすると思うわよ」
「!?なんのこと」
「もう少しで分かるわよ」

お袋のその言葉を待っていたかのように、玄関でチャイムが鳴った。

「アツシもいらっしゃい」

そういってお袋に連れられていった先には、俺の知らない男が居た。その男はアスカちゃんをぶら下げるようにして家の中に入ってきた。アスカちゃんの頬が、うっすらと赤く染まっているのは気のせいだろうか。

「ただいま、アツシ、マナ。早く食事にしようか」

そういって玄関をあがって俺の横を通り過ぎた。アスカちゃんはその男にまとわりついたままだ。俺は自分の頬をつねってみた…痛い。夢じゃないようだ。

俺の親父“碇シンジ”は床屋に行って“いい男”に生まれ変わって帰ってきたのだった。

「ほわ〜いっ」

ま、負けるもんか…俺は涙ながらに誓ったのであった。







続く?

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中昭のコメント(感想として・・・)

  トータスさんの『親父が好敵手』第4話です。好評連載中。


【きゃらこめ】でぃーえぬえー
永遠の少年S「照れ照れ」
美少女M  「何してんの?」
ミセスR  「床屋に行ったの」
美少女M  「うぞっ。レイママが3文字以上喋った!!」
ミセスA  「驚くポイントが違うわよ」
永遠の少年S「じぃいいーーーーーーーー」

美少女M  「な、なによ。パパ?」
ミセスR  「・・・・・・・・・・綺麗」
ミセスA  「・・・・・・・・・・ハンサムよ」

永遠の少年S「照れ照れ」

美少女M  「・・・・・なにそれ」
天然少女  「“碇シンジ”は床屋に行って“いい男”に生まれ変わって帰ってきたのだった。
       って書いてあるのぉ」
美少女M  「別に変わってないじゃん」

永遠の少年S「がぁーーん」
ミセスR  「シー」
ミセスA  「バカ」


美少女M  「パパは前からカッコいいよ。アタシの自慢のパパだもん」
永遠の少年S「ミライ」
美少女M  「パパ」

ミセスR  「・・・・・・・・・・ポン」
ミセスA  「・・・・・・・・・・やるわねミライ」

永遠の少年S「お小遣いをあげるよ。
       アスカぁ」
ミセスA  「はいはい。どうせあげるのはアタシなのよね。
       まぁアタシの全てはあんたのものだけど」
美少女M  「へっへへ。ありがとねパパ、アスかーさん」

ミセスR  「・・・・・・・・・・いじいじ」
少年S   「専業主婦なんだからしょうがないよ」
ミセスR  「なでなで」
少年S   「う、うん」
美少女M  「しんやぁースキンシップは禁止だっていったでしょ」

ミセスR  「私には他にないもの」
美少女M  「むぅううう」

永遠の少年S「あはは、ミライ、スキンシップなら僕がやってあげ」どかっ
ミセスA  「あんたが言うとイヤラしいのよ」
ミセスR  「コクコク」




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