明日香 −REGENERATION−

                     by ZUMI


第二話
−こんなことって…−


 あたしと真嗣は並んで学校への道をひたすら走る。

 朝から運動?したので息が切れてちょっとつらい。普段だったらどうってことないんだけど。
 おまけに道はやたらアップダウンが多いし。
 なんでこんな山の中に都市を作ったのかしら。

「車、増えたね」
「そうね。遷都されて二年たつもの。人も車も増えるわよ」

 しばらく黙ったままひたすら走る。
「今日、転校生が来るんだったよね」
「そうね」
「どんな子かなあ…」
「美人だといいわよね」
「そんなこと言ってないだろ」
「あら、そう?」
「どんな子が来たって、明日香ほどかわいくはないよ」
 無理しちゃって。
 でも、以前だったら間違ってもそんなこと言ってくれなかったもの。
 ちょっと嬉しい。

 やだ。顔が火照ってきちゃった。
 やっぱり朝からはまずいわよね。バレバレだもん。
 赤くなった顔を見られないように、あたしはちょっと後ろへ下がる。

 走っているうちにあたしの中から真嗣のものが流れ出してくる。
 ちょっとあせる。
 一応、ナプキン当ててあるけど。あとで替えとかなくちゃ。

 前方に見通しの利かない交差点が見えてくる。
 この角を曲がると学校までは一直線。
 普段だったらゆっくり慎重に曲がるのだけれど、今日はもう遅刻ぎりぎりだしほかに生徒の姿も見えないし。
 真嗣はまったくスピードを落とさないまま曲がり角に入る。

 その瞬間、曲がり角の陰から人影が飛び出してきた。
「きゃっ!?」
「うわっ!?」
 ごっつーん!
 真嗣と人影がもののみごとにぶつかった。

 うわ!いたそー。

 あたしは思わず目をつぶった。
 おそるおそる目を開けると。

「あいててて…」
「いったー」

 真嗣と人影がからみ合って倒れていた。
 あたし達の通う第三新東京市第一高校と同じ制服の女の子。
 光の加減か水色にも光る銀色の髪の毛をした女の子が慎嗣におおいかぶさっている。

 そして二人の顔と顔はぴったりふれ合って。
 むっかー!
 どう見てもそれって女が男を押し倒してキスしてるようにしか見えないじゃないのっ!

「ご、ごめん。だいじょうぶ?」
「あ!?だいじょぶ、だいじょぶ」

 女の子はあわてて身を起こすと真嗣から離れた。
 そうよ、早く離れなさいよ!

「ごめんねえ。マジで急いでたんだ」
 そう言うと女の子はカバンをつかんで立ち上がった。

「?」
 女の子はあたしに気付いたのか、不思議そうに目を向けてきた。
 あたしははっとなった。
 白い肌。
 血の色のように赤い瞳。
 身の裡をぞくぞくっと寒気が走ったような気のする不思議な瞳。

 彼女は興味をなくしたのか、立ち上がってズボンをはたいている真嗣に向かって目を向けた。
「ほんとにごめんねえ」

 そしてかろやかな足取りで駆け出していった。
 あたしと真嗣は呆然とその後ろ姿を見送った。
「いけない!こうしちゃいられないわ」
「そうだ!急がなくちゃ」
 あたしたちも彼女の後を追うように走り出した。

***********


 あたしたちはなんとか予鈴の鳴る前に校門をくぐることができた。
 玄関に入り下駄箱を開けて上履きに履き替える。
 下駄箱の中に一通の封筒。
 あたしはくすっと笑う。
 昔のことを思い出したから。
 昔は毎朝下駄箱いっぱい封筒が入っていたっけ。
 でも、あたしが真嗣と恋人宣言してからめっきり少なくなったわ。
 いっとき、非難と懇願の手紙が殺到したものよね。
 かなりの数の男子生徒が悲嘆をかこったというのはいいとして、ひそかに何人かの女子生徒が落ち込んだというのは意外だったな。
 真嗣も意外や少しはもてていたのね。気落ちした男子生徒も何人かいたそうだけど…。

「どうしたの?」
「珍しくこんなものが入ってたからよ」
 あたしは真嗣にその白い封筒を見せた。
「大方、真嗣とのこと知らない新入生からかなんかでしょうけど」
「そう…」
 もう。
 ちょっとは気にしてよ。

 教室に入ると光が花瓶を持って歩いてるとこだった。
「おはよう、光」
「あ、おはよう。明日香」
 しっかり者の学級委員。中学以来のあたしの親友。

「センセ、また夫婦でご出勤かいな」
「ほんと。毎日よくやるよなあ」
 真嗣が友達の柊児と健輔にかまわれてる。
「別に…、いいじゃないか」
「かーっ!言ってくれるわぁ」
「開き直ったな」
 ほんとね。
 昔だったらむきになって否定するか、照れるかだったのに。
「それより、さっきさ…」
「明日香ぁ」
「え?なに?」
 光だ。どうしたのかな。
「今日の分、予習してきた?あたし良くわかんないとこがあるの」
「えー?どこよ」
「んーと。因数分解で…」
 光、英語や現国は良くできるけど、数学とか苦手なのよね。

「なんやてぇ!ほんまかいなそれわ」
「で、キスしたのか?」
「キスっていうか、くっついただけ」
「かーっ!なんちゅううらやましいやつなんじゃ、おまえは!」
 三馬鹿トリオの大声が耳に入る。
 相変わらずの馬鹿ぶりね。
 でも、内容はちょっと気になる。
「なによ、あれ。ちょっと注意してくる」
 光はずんずんという感じで三人の方へ歩いていく。
 あたしは光が柊児の耳をつまんで叱りつけてるのを眺めている。
 あれはあれでいいカップルなのよね。

「おはよー、みんな」
 ドアを開けて担任の教師が入ってくる。
 加持美里、旧姓葛城。あたし達が中学二年の時にやっぱり担任だった女教師。
 こっちが進学してみれば転勤でまた顔を合わせるようになったという。
 まあ、腐れ縁てやつね。
「よろこべー、男子。今日は噂の転校生を紹介するぅ」
 彼女はドアに向かって声を掛ける。
「入ってー」
 ドアを開けて入ってきたのは水色にも見える銀髪をした少女。
 まさか!?
 おおーっと教室中がどよめく。

「自己紹介、してね」
「綾波 澪です。よろしくね」
 にっこり笑ってあいさつするその子は掛け値なしにかわいかった。
 真っ白い肌。
 大きな瞳。
 形の良い鼻にかわいらしい唇。
 はあーっ、とクラスじゅうから溜息が漏れる。

「あーっ!あんたさっきのキス魔!」
 急に彼女は手を突き出すと大声を上げた。指さす先にはきょとんとした真嗣が。
「え、えっ?」

「ちょっとぉ!あんた何言い出すのよ。あんたが勝手にぶつかってきたんじゃない!」
 あたしは我知らず立ち上がると大声を出していた。
「なによぉ!かばっちゃって。あんたたちできてるわけぇ!?」
「なっ、なによ、いきなり。失礼じゃない!?」
「赤くなっちゃてえ!やっぱりそうなんだ」
「そっ、その通りよ。悪いっ!?」
 彼女はぐっとことばにつまってあたしをにらみつけた。
 赤い瞳。
 やっぱりちょっと恐い。

「ちょっとお!二人ともやめなさいよ」
 光が立ち上がって止めに入ってきた。
 でも、ここまで言われて黙ってるわけにはいかないわよ。
「まあしかたないわよねえ。この二人、全校公認の仲なんだから」
 美里先生がフォローだかなんだかわからないようなことを言う。
「えー?」
 彼女、澪はいかにも意外だという風の声を上げた。

「はい。そのくらいにしといて。
綾波さんの席は、と。
とりあえずあそこの空いているところに座って。あとで正式に決めるから」
「は、はい」
 彼女は指定された席へと向かう。
 でも何でそれが窓際の真嗣の隣なのよー?

「碇君。とりあえず彼女に端末を見せてあげて。明日には新しい端末が届くから」
「はい」
 んもう。事務係りの怠慢じゃないの?ちゃんと用具くらいそろえておきなさいよ。

「今朝はごめん」
「ううん。こっちこそ」
 真嗣と転校生の会話が聞こえる。
 なに、ぶりっこしてるのよー!
 さっきので性格バレバレじゃない。
 真嗣もあやまるなっつーの。
 二人のほうにらんでたら、真嗣が気付いて困ったような笑顔を見せた。
 あたしは思わずそっぽを向いてしまった。
「それじゃ。ホームルームは終わりにするわ」
「起立…礼」
 光が号令をかける。

***********


 一日の授業が始まる。
 退屈な授業。
 真嗣は転校生と頭を寄せ合って端末をのぞき込んでいる。
 あたしはなんかむかむかする。
 二人のほう、見るのやめよう。

 休み時間。真嗣がやってくる。
「あのさ、明日香…」
「なによ!?」
 あたしは思いっきり不機嫌な声。
「綾波さん、転校してきたばかりだろ?だからいろいろ教えてあげなきゃと思って」
「だから?」
「案内とか、いっしょにしてくれるかな?」
「なんで?一人ですればいいじゃない?かわいい子とふたりっきりのほうがいいでしょ?」
「そんなんじゃないって。彼女、まだ友達いないじゃないか。だから…」
「そうよ。仲直りしたら?」
 いつの間にか光が来ていてそう言った。
 あたしは光を見て、それから転校生を見た。
 何人か好奇心旺盛な女生徒が囲んでる。
 でも彼女はこっちを見てる。
 赤い瞳が射すくめるよう。
 でも、あたしは奇妙な違和感に捕らわれた。
 あの子、見たことある、って感じ。
 どういうことかしら?
 あんなに目立つ子だもの、会ったことあれば絶対覚えてるはずなのに。
 でも、そんな記憶はないし。

「どうかな?明日香」
「しょうがないわねえ」
 あたしは真嗣に向き直る。
「ここはあたしの心の広いところを見せてやりますか」
「ありがとう、明日香」
「それがいいわよ、明日香」
 光が嬉しそうに言う。

「じゃ、昼休みに」
 真嗣はそう言って席に戻る。
 席に戻った真嗣が転校生と何か話してる。
 転校生がこっちを見てにこっと笑う。
 あたしはなぜかどぎまぎして、ひきつった笑顔を浮かべてしまった。
 うーっ!自己嫌悪。

 でも、不思議。
 真嗣ってあんなに気軽に女の子と話せたっけ?
 真嗣は女の子と話すときはいつもかちかちに緊張するのに。
 気軽に話しが出来るのはあたしと光だけなのに。
 絶対、変。

 昼休み。
 あたしと光はお弁当を二つづつ持って真嗣の席へ向かう。
 あたしは真嗣の分。光は柊児の分。
 健輔は…、おべんとう作ってくれる娘、いないのよねー。

「綾波さん、お昼どうするの?」
 真嗣が転校生に聞いている。
「あたし今朝忙しくってお弁当つくってる暇なかったの」
 そうよねー。遅刻ぎりぎりだったもの。
「それじゃ、健輔。一緒に買ってきてやったら?」
「そうか。わかった」
 健輔は教室を駆け出していく。健輔も結構気を遣うのよね。
 でも、この時間で買えるかしら。

「…さっきはごめんね」
「あたしこそごめんね。なんかびっくりしちゃって」
 なんだ。いい子じゃない。
「いつもみんなでお昼食べてるんだ。いっしょに食べよ?」
「ありがとう。でも…」
「気にしないで。相田君がたぶんあなたの分も買ってきてくれるから」
「でも、なんか悪いみたい」
「いいのよ。いつもあぶれてたんだから、かえって喜ぶんじゃない?」
 これはあたしの深慮遠謀。
 この転校生は慎嗣以外の男の子にくっつけようという。

「あたし、洞木光。ヒカリって呼んで」
「あたしもレイでいいわ」
 光と転校生が自己紹介しあってる。
 あたしは真嗣にお弁当を渡す。
「はい」
「サンキュー、明日香」
 真嗣はいつものように笑顔を見せてくれる。
「惣流さん?」
「え?」
 あたしはちょっとどきっとする。
「明日香でいいわよ」
「じゃ、あたしも澪(れい)って呼んでね」
 彼女は微笑みながら言う。
 ほんと、かわいい娘。
 でも、やっぱり…。ちょっと違和感。

 健輔が戻ってきて、昼食が始まる。
 しばらく他愛ない話をしていていたけど、急に澪はあたしに顔を向けた。
「碇君てすてきね」
 あたしと真嗣は同時に吹き出してしまった。
「なっ、なに言い出すのよ!?突然」
「あら。思ったことを言っただけよ。
うーん、残念。明日香がいなかったらアタックしたのに」
 な、なんというはっきりした娘なの?
 あたしは何と言っていいかわからなかった。
「そ、それはまあ。ね…」
 思わずどもってしまう。
「あたしが選んだぐらいなんだから」
「そう。そうね…」
 澪はあの赤い瞳であたしを見つめる。
 やっぱりちょっと苦手。あの赤い瞳だけは。

「あーあー。やっとられんわ。もてるなあ、センセ」
「そうだよ。惣流だけで満足しろよ」
「そ、そういうんじゃないって」
 なに赤くなってるのよ、バカ真嗣。

 バカ真嗣。
 懐かしいせりふ。
 中学の頃は一日何度も連発したせりふ。
 でも、もう半年はそんなこと口にしてない。
 気付いたから。
 いつも側にいて気付かなかったけど。
 あたしの一番大事な男の子だったから。
 いつもけんかばかりしてたけど、いつでも本音のあたしを受け入れてくれたから。
 一度、まるっきり口をきかなくなって。
 その時、気付いたから。
 あたしは真嗣がいないと…。
 真嗣もそう言ってくれた。
 真嗣もあたしとの言い合いがないと耐えられないって。
 だから、あたしたちは仲直りした。

***********


 昼休みは校内の主だった場所を案内して終わってしまった。
 あたしと澪が連れだって歩いていると注目されること注目されること。
 いつものことだけど、今日はさらにすごかったみたい。
 あたしたちはいろんな話をしながら歩いた。
 好きな食べ物。
 好きな音楽。
 好きな洋服。
 好きな遊び。
 好きなアーティスト。
 あんまり同じものはなかったけど、いくつかは同じものがあって盛り上がった。
 校内を歩くあたし達の後から真嗣は黙ってついてきた。
 まるでガードマンよろしく。
 あんまりあてにはできないんだけど。
 でもないか。
 真嗣はあれでけっこう…。

 授業が終わり、帰り支度を始める。今日は部活のない日。
 あたしは真嗣に目を向ける。
 真嗣は澪と話してる。
 あたしはカバンを持つと真嗣の席へ向かう。
 まだちょっと気にしてる。
 やっぱり真嗣があの娘と仲良くしてるのを見ると、胸が騒ぐ。

「さ。帰るわよ」
「あ?、明日香」
 真嗣はちらと澪を見る。
「あのさ…」
「なによ?」
「綾波さん、部活に入りたいんだって。それで案内してあげようと思って」
「部活って。音楽部に?」
 真嗣は音楽部でチェロをひいてる。ちなみにあたしは美術部。
「そうなんだ。綾波さん、バイオリンができるんだって。それで…」
「ふーん。そうなんだ。でも、今日は部活はない日でしょう?」
「そうなんだけど、場所くらいはいいと思って」
「いいわ。あたしもいっしょに行く」
「え?」
「なによ?じゃまなわけ?」
「そ、そうじゃないよ。迷惑かと思って」
「別に」
「それならいいけど」
「行きましょ、碇君」
「うん」
 澪は立ち上がると真嗣をせかした。
 あたしはちょっとむっとした。
 ちょっと気安いんじゃないの?

 廊下を歩きながらあたしは真嗣の隣りに並ぶ。
 でも、その向こう側には澪がぴったり寄り添ってる。
 あたしが頭に来るのは、真嗣の顔はもっぱら澪のほうに向いていることよ。
「ねえ、碇君」
 澪が真嗣に話しかけている。
「碇君はいつごろからチェロを習ってたの?」
「うーんと。十才くらいからかな」
「ふーん。あたしは八才からよ。あたしのほうが長いわね」
「じゃあ、上手なんだろうね」
「あんまり上達してないのよねー。さぼってばかりだから」
「そう?」
 えーえー。さすがのあたしも音楽の才能まではありませんでしたよ。
 ちょっとひがみっぽいあたし。

 音楽室は鍵がかかってる。
 真嗣はとりあえず中を見せるために鍵を借りてきていた。
 いつの間に?妙なところはまめなんだから。
「こっちが楽器室なんだ」
 真嗣が澪を案内している。
「碇君のチェロは?」
「あ、ああ。これさ」
「見ていいかしら?」
「いいけど。安物だよ」
「そんなことないと思うけど」
 真嗣はケースを開けるとチェロを出してみせる。
「ねえ。なにかちょっと弾いてみせてくれない?」
「え?そんな…」
「ねえ。ちょとだけでいいから」
 なんかむかつくせりふ。
 真嗣は困った顔をしてあたしを振り向く。
 あたしは断固として首を横に振る。

「あ、あの。また今度じゃだめ?」
 真嗣は必死に断ろうとしてる。
「ええー?なんで。いいじゃない」
「あ、いや。だから。その…」
「澪」
 あたしもとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「真嗣が困ってるじゃない。勝手に演奏するとうるさがられるのよ。
それともあんた、真嗣を困らせるのが面白いわけ!?」
「そんな。そんなつもりじゃ…」
 勝った。
 あたしだって真嗣のチェロは滅多に聞かせてもらえないんだから。
 そう簡単に聞かせてたまりますか。
「また今度。部活の後にでも。ね?」
「わかったわ。ごめんなさい。また今度、ね?」
「う、うん。そうだね」
 結局聞かせるんじゃないの?
 おっもしろくもない。
「明日香…」
 澪があたしをうかがう。
「ごめんね」
「い、いいのよ。別に」
 あたし、素直じゃない。

***********


 帰り道は途中まで澪といっしょに歩いた。
 なんとなくぎこちないあたしたち。
「ね、ねえ。今度、みんなでゲーセン行こうよ」
「あたし、行かない」
「ごめんなさい。うるさいところ苦手なの」
 真嗣がそれなりに取りなそうとしてるけど、失敗して自爆してる。

 今朝、真嗣と澪がぶつかった交差点で別れる。
「じゃ、さよなら」
「うん。またね」
「バイ」
 なんとなくそっけないあたし。

「ねえ明日香。なに怒ってるの?」
「別に!」
「怒ってるよ。僕が綾波さんの相手したからなの?」
「…」
「そうなんだね。でも、思い違いだよ」
「どこが!?言い寄られてでれっとしてたくせに」
「だからそういうんじゃないってば」
「なにがそういうのよ!あたしの前で外の女といちゃつかないでよ!」
「してないよ!そんなこと」
 真嗣はあたしの腕をつかむ。
 振りほどこうとあらがったけど、思いの外強い力でつかまれて振りほどけなかった。
「離してよ!」
「聞いてよ!」
 真嗣はあたしの目をのぞき込む。
 あたしはそれを睨み返す。
 しばらく黙ってにらみ合う帰り道の坂の途中。
 でも、最初に目をそらしたのはあたしだった。

「そりゃあ、綾波さんはかわいいし。いい子だと思うよ。
いっしょにいて楽しいし。
でも、それって女の子といるってこと、あんまり感じないんだ。
明日香や委員長と話してるみたいな…」
「相性が良くてよかったわね」
「そうじゃないよ。
なんていうか…
意識しないですむんだよ、クラスの女子と話してる時みたいには」
「ふん!」
「わかってよ!」
 真嗣はあたしを抱き寄せる。
「僕が好きなのは明日香だよ。
負けん気が強くて意地っぱりだけど、ほんとは優しい明日香だよ」
「ばーか。そんなのフォローになってないわ」
 でも、あたしも真嗣を抱き返す。
 やっぱりあたしは真嗣が好き。

 マンションのエレベータの中で真嗣とキスをした。
 ふたりきりになれる特別の場所。
 ほんとはもっと早くしたかったけど、周りの目もあるし。
 二人の舌が絡みあう。
 まるで二人とも二匹の軟体動物になったみたいに。
 真嗣の腕があたしの腰を抱きしめる。
 真嗣が雄として反応しはじめるのがわかる。
 あたしは真嗣の頭を抱き抱えてそれに応える。

 真嗣の右手があたしの左胸に触る。
 ベストの下にもぐり込んだ真嗣の右手は、ブラウスの上からあたしの胸を揉みしだく。
「うっ…うっ…」
 快感が胸から腰へと広がっていく。
 真嗣の下半身を押しつけられた下腹部がみるみる熱くなっていく。
 このままじゃだめ。
 あたし我慢ができなくなっちゃう。

「だ、だめよ。真嗣」
「明日香…」
「お願い。やめて。あたし、我慢できなくなっちゃう」
「明日香。僕、もう…」
「あたしもしたいわ。でも、今日はだめ。今朝したばかりじゃない。
ちゃんと、今日やることやってからよ。ね?」
「うん。明日香。じゃ、明日は?」
「いいわよ。明日は半日だし」
「きっとだよ」
「や・く・そ・く、するわ」
 あたしはもう一度真嗣を抱き寄せる。
 真嗣はあたしにキスをする。
 そのとたんエレベータのドアが開いて、あわてて二人して飛び離れた。
 外には誰もいなかったからいいようなものの。


     ・・・ to be continued


これでもLAS?
だと作者は思ってるんですが・・・。

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zumi@ma.neweb.ne.jp
ZUMIさんのホームページはここ
Lovely Angels


中昭のコメント(感想として・・・)

  ZUMIさんより頂きました。


一発きゃらこめ
ゲンちゃん 「走っているうちにあたしの中から真嗣のものが流れ出してくる。
       ふん・・・どういう意味だ」
わかおくさま「あらあら意外と匂いがきついから、気を付けなきゃダメよ明日香ちゃん」
ゲンちゃん 「ユイ、わかるのか」
わかおくさま「なにがですか?」
ゲンちゃん 「真嗣のものとやらの正体だ」
わかおくさま「・・・アナタにとって真嗣達は、いつまでたっても子供なのでしょうねぇ」
ゲンちゃん 「人は成長するものだ、それ位はわかっている」
わかおくさま「判っていれば解りそうなものですけれど」
ゲンちゃん 「?」
わかおくさま「例えば高校生の男女交際ってどう思います」
ゲンちゃん 「大いにするべきだな。異性の考え方を学ぶ事は無駄にはならん。
       見聞を広める事ができるのは若いうちだけだ」
わかおくさま「・・・アナタがどういう見聞をしたのか興味がありますわね」
ゲンちゃん 「・・・あ、いや。君と出会う前で・・・浮気ではない・・・と思います」

  みなさん、是非ZUMIさんに感想を書いて下さい。




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