遠い世界…。

 僕の立っている場所…。

 確かに判る、この景色は何度も見ている。

 知っているようで、本当は何も知らない、知ろうとしない…。

 僕の日常だ。

 他でも無い、僕の日常。

 

 机。

 昨日の宿題、全部は終わって無いけど。

 ソファー。

 缶ビールを片手、片腕をソファーに引っ掛けながらミサトさんが寝ている。

 台所。

 アスカが使って刃が毀れてしまった包丁。

 研がないといけないと思いながらも、既に一月程使いつづけている…。

 キッチンテーブル。

 ラップをかけてある昨日の夕食の残りが朝を待っている。

 

 そう、どれもが僕の知っている日常。

 余りにもありふれた日常だった。

 でも、届かない。

 直ぐにでも手が届きそうで、絶対に届かない…。

 それが今の僕の場所…。

 

 

 僕の日常から背を向けたとたん、黒い手が伸びてきた。

 その先には、赤い瞳が爛々と輝いている。

 寒気を感じた…。

 でも、心地よい寒さだった…。

 

 

 

 

泡沫の風
 
二話「曇リノチ」

 

 

 

 

 眼が覚める…。

 時計を見ると朝の五時を指していた。

 ベルが鳴る前に目覚し時計のスイッチを切っておく。

 まだ起きないで、もう一度布団に転がろうと思い、倒れ込む。

 ゴロンと転がり、天井を向いて虚空を凝視する。

 既に眼は冴えていて、今朝はもう眠れないと自分でも判る。

 ガバッと勢いを付けて起きあがると、勢いがあり過ぎ、躓いて出窓に突っ伏した。

 そのまま窓のカーテンを押し広げる。

「…雨…か?」

 空は灰色で、小粒の雨が降っているようだった。

 

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 こんな天気を見ると、何時も思い出す。

 父さんが死んだ日の空に似ている、と…。

 

 そんな下らない過去から返って来る。

 そして、それが思い出しては行けない事だと思い出す。

 絶対に忘れた過去の事。

 記憶から捨て去った筈だった。

 けれども、それが未だに追って来る。

 忘れた筈の過去なのに、何時までも僕の影を追い続けて来る。

 それがとても五月蝿く感じる事であるべきなのに、何故か、それに対して五月蝿く感じる事に妙な違和感あった。

 その答えを突き詰めようとする。

 けれども、直ぐにそんな考えは振り払う。

 答えが出そうに為る所まで来てしまう前に…。

 そんな考えを何処かに飛ばしたかったから、僕はベランダへと続くガラス戸を開ける。

 じっと、灰色の空を見詰める。

 

 

 窓を開けると、ちくちくと肌に刺さる小さな水の粒と、少し肌寒く感じるくらいの風が僕の部屋を一杯にする。

 そして過去の蟠り(わだかまり)を曖昧なままにして蓋をする。

 それが最良の、僕にとっては正しい選択だった。

 中途半端な肌寒さが過去を逆撫でしたと思い込む事で僕は生きていける。

 『そんな事』を自然に考えている自分が…いや『遠い何処か』に閉じ込められたもう一人の僕の考えている事が、何時の頃からか当然の様な存在として僕の中にいる。

 その僕自身も、何処かでそんな自分がいる事を認めている。

 

 

 

 ここで初めて『今日』が動き出す。

 

 

 

 今朝は何時もより一時間程早く家を出る事にした。

 別に深い意味は無い…なんとなくだ。

 別段急ぐ事も無くゆっくりと制服の袖に腕を通す。

 意味も無くつけたテレビの方へ耳を傾ける。

 丁度天気予報をやっていた。

 今日は「曇りのち晴れ」だとテレビ天気予報の女の人が言っている。

 折り畳み傘を持って行こうかと思ったが、午後から晴れると言っているので持って行くのは止めておいた。

 わざわざ荷物を増やす必要は無い。

 

 学校へ行く支度もしたし、アスカとミサトさんの朝食の準備も終わった。

 キッチンに後は暖めるだけのモノを置いておいたし、アスカへの書き置きも残しておいた。

 問題は無いと思う。

 アスカには後で文句を言われるかも知れないが、それは計算の内だ。

 

 僕はテレビを消して、居間を出た。

 スニカーを履いて、玄関の扉を開ける。

 扉を開けるとマンションの廊下では、強い風が吹いていた。

 既に雨は止んでいた。

 最も、雨と呼べる程のモノでは無かったが。

 その隙間から結構強い風が入って来ると、風とドアと玄関と言う一つの空間内で小さな共鳴を起きた。

 ヒューと風の音が、まるで自由意思を手に入れたのかの如くこのちょっと偶然で出来た空間を我が物のように跳ね回っていた。

 暴れる前髪を押さえながら、空を見ると薄曇の色合いが相変わらず空を支配していた。

 

 

 

 何時もの道も、時間が少しずれるだけで違った顔を見せる。

 錆びた郵便受けに新聞が入っているのも、朝のジョギングをしている人も、犬の散歩に付き合っている初老風のお爺さんも、それ以外の何事でも、確かに違った。

 具体的に何処が違うのかと聞かれたら明確には答えられない。

 そんなもんだ。

 けれど、朝と言う時間の持っている力が、何処か違うように見せたのかもしれない。

 活気でも無い、希望でも無い…けれど全てが輝いて見えるように感じた。

 例え、今日が大雨の日でも、朝は、全ての朝は輝いているのかもしれないと、一瞬そう思った。

 僕に取っても『朝』は必要な儀式だから、と…。

 朝早く家を出るのもなかなか良い物だと思った。

 そんな風に、少し興奮気味に歩道橋の階段を上りながら、ふっと気付く。

 今は何時だろうかとふと思った。

 時計を見ると…六時十五分。

 このまま行くと、六時半頃には学校に着いてしまう。

 しかも学校の校門がぎりぎり開いているかいないか微妙なところだった。

 だから今日みたいに余裕があり過ぎる日は、歩調がゆっくりになってくる。

 一寸は止まって朝に浸ろうかとも思ったりする。

 しかし、今日みたいな日に限って、何時もは止まりたく無い信号も青で、僕止める事は無かった。

 以外にもこの街の早朝の車の交通量は少なかった。

 今朝は止まっても良かったのに…、とボヤキながら信号を渡る。

 その後も、何事も無くあっさりと学校に着いてしまった。

 着いた時間はぴったり六時半。

 少し早すぎたかと思ったが、それはそれで良いと思えた。

 

 朝の教室に入っても、別段何もする事は無かった。

 話し相手もいる訳が無く、仕方が無いので机に座ってボーっとしていた。

 今日はテストがある訳でもないし日直と言う訳でもない。

 そんな事を考える。

 

 無駄に早く来ると、こう言う事に為るのか…と、そんな事を思い、時間が経つのを待っていた。

 退屈な授業の始まる前の、それ以上に退屈であるはずの時間。

 日常とは微妙に異なる時間。

 でも、僕には、今のこの時間がとても優しいと思った。

 特別な、そんな朝の教室の空気は綺麗で、雰囲気は洗練された神殿の様に神聖な感じがした。

 掃除用具のロッカーの中に在るモップの埃臭さや、黒板に残った生徒達の放課後の落書きですらも、今、この教室には絶対に必要なモノであると思えた。

 その当たり前なモノのどれかが欠けているだけで、この世界は脆く崩れてしまいそうだった。

 一人でも、例え世界中の人が居なくなって、僕が一人に為ったとしても、この時間が、今日と言うの日の特別な朝がゆっくりと、癒してくれるような感じ…。

 そんな儚い夢のような錯覚が嬉しかった。

 それが他人から見たら、例え独り善がりな考えに見えたとしても、僕にはとても優しかったし、気持ち良かった。

 

 

 

 いや…優しすぎた……。

 それは本当に…。

 自分でも笑ってしまえるぐらい優しかった。

 そして、素直に気持ち良いと思う事を求めている自分を受け止められた。

 

 

 

 その後、三十分程は誰も教室に入って来なかった。

 廊下を歩く用務員の足音を聞いたくらいだった。

 朝の七時丁度、僕の次に来たのはトウジだった。

 彼はバスケ部の朝錬があるとかで、鞄の他に代えのジャージ等の荷物を教室に置きに来ていた。

 そんなトウジと眼が合う。

 流石に驚いている。

 一瞬の沈黙。

 トウジが先に口を開く。

「…………よぉ、シンジ」

「おはよう、トウジ」

 御互いにコレだけ、と言うよりもコレ以上何も言えなかった。

 予想し得ない事柄が起こると大体はこうなるものだと思った。

 

 その後、トウジは時間も無かったのか言葉少なげに教室を出て行った。

 この時間帯、七時を一寸過ぎ辺りからは、トウジと同じように朝錬のある生徒が教室に入ってきた。

 

 七時三十分、アスカが来た。

 と、思ったら直ぐ様、僕の方に向かってきた。

 意味深げに「お・は・よ・う」と言う。

 背中に何かが走ったが、今は気にするのを止めよう。

 

 僕もアスカも何も言わない。

 沈黙。

 

 ……ともかく何か言っておこう。

「…あの、アスカ…」

 自分でもびびっているのが判る。

 語尾が微妙に上がっている。

 勿論、その声は極力控えめに…。

 実際、僕が何かをやったとは思えなかったが、アスカの顔は笑っていない…。

 怒っているのは目に見えて判ったのだが、何で怒っているのかを問う勇気を、僕は持ち合わせていなかった。

「なに!?」

 うっ、なんか怒ってる。

 ……怒っているのは判っている、けど今は誤魔化しておこう。

「お・おはよう」

 結局声を振り絞って出した結果がコレである。

 これが精一杯だった。

 フンっと、言ってから、アスカはそれ以上は何も言わずに退散してくれた。

 ほっと、安堵のため息が漏れる。

 

 

 八時、教室は騒然となってくる。

 朝錬が終わった生徒たちも次々に帰ってくる。

 それ以外の生徒たちも、友達同士で固まって昨日のドラマの事や適当な話等で、皆それぞれで盛り上がっている。

 喧騒…。

 朝…。

 周りが活気付いて、何時ものサイクルが教室内で動き出す。

 何時もの朝。

 僕にとって退屈な、普遍の毎日。

 その何時もは退屈だと思っている朝も、今日だけは優しく感じた。

 自然と顔がニヤケルのが判った様、それを目敏くアスカに見られた。

「…気持ち悪いわね〜」

 朝の『何か』を根に持っているのか、そんな酷い事を悪びれもせずに言う。

 ちょっと悪意を込めて…。

 一寸傷ついたかも。

 

 

 

 午前中の授業がやっと終わった。

 昼休みの時間が始まると同時に急いで教室を出る。

 今日は御弁当を作ってこなかったからだ。

 こう言う事が偶にあるので何時も財布に多少のお金は入れて持って来てはいる。

 よって今朝は学食かパンなのだが、皆と食べる為、学食は滅多に使わない。

 こう言う時は何時もパン。

 隣には何時もパン食のケンスケ、そしてその隣にはアスカも一緒に走っている。

 勿論、僕が御弁当を持っていないと言う事で、アスカがパンを買いに行くのは当然だった。

 途中、アスカに嫌味を言われるがしつこくは無かった。

 アスカも一応は作って貰っているという立場は判っていたようだ。

 こんな事を考えているうちに売店の前まで着いていた。

 休み時間は始まってからまだ五分と経って無かったが既に生徒たちで一杯だった。

 僕らのクラスが売店から遠いと言うのもある。

 コレが後少し遅ければ、今日の昼食は無かったっと言っても過言では無い。

 一応僕はお目当ての、メロンクリームパンとお好みサンドとカップ雑炊は買えた。

 ケンスケもカツサンドとヤキソバパンを買えたようだった。

 アスカは…あんパンと生クリームサンドで、目的のフルーツサンド(生クリーム増量)は買えなかったようだ。

 カップ雑炊にお湯を入れている時に見たアスカはとても不機嫌そうだった。

 

 教室ではトウジと洞木さんが僕らを待っていた。

 中学生の頃はトウジはパン食派だった。

 しかし、中学最後の学期末から洞木さんと付き合い出して、高校に入ってからは彼女の愛妻弁当となった。

 トウジは最初でこそ恥ずかしがったが、今となっては洞木さんとの関係を公言している。

 これによって中学の頃はアスカ優位だったアスカvsトウジの口喧嘩の立場が逆転し、トウジが一方的に強くなった。

 だからってトウジもそんなにアスカをからかわなくったっていいのに…、中学の時にかわかわれた事をよっぽど根に持っているのだろうか?

 ちなみに、僕とアスカは付き合っていると言う訳では無い。

 それでアスカが怒る事も無いのに…。

 

 みんなが揃いそれぞれの机を併せて、昼食を食べ始める。

 みんなが食べ始めようと思った、そんな時、

「あっ!!」

 パンを口に入れようとしたアスカが、何かを思い出したように声を上げた。

 教室中の視線がアスカに集まる。

 無論、一緒に食事を採っている僕らもそうだ。

 アスカは恥ずかしそうに下を向くが、直ぐ様、きっと僕を睨む。

 僕はその時、アスカが何を言おうとしたのかは大体察しがついたので、わざとらしく視線を逸らす。

 隣に座っているケンスケはその視線にビクッと背筋を伸ばしていた。

「し・ん・じ〜!!」

 多分、朝にあった『何か』だ…。

 アスカが捕まえるような、そんな視線を僕に投げつける。

「あんた、今朝私がどんな目に会ったか判ってんでしょうね!」

 アスカがどんな目に会ったかなんて知る由も無いが、大人しく従っておこう。

「えっと、何があったのかは知らないけど…何があったの?」

 しらっと答える。

「…ミサトよ……」

 返って来たアスカの答えは、僕にとって意味がさっぱり判らなかった。

 僕はまた全然別の答えを予想していた。

「へ?ミサトって、……ミサトさん?」

 思わず拍子抜けた声を出してしまった。

「それで、何があったの?」

 僕はそう答えた。

「今朝の朝食はミサトが作ったのよ!あんたがいなかったから!!」

 僕の馬鹿にしたとも取れる声に少し腹が立ったのか、アスカの声は二割増位で大きく感じた。

 洞木さんがとトウジがアスカ一寸離れたように見えるのは……気の所為だと思う。

「で、この落とし前はどう着けてくれるのかな〜?」

 そんな事まで僕が面倒を見なきゃいけないのかと思い、少しカチンと来る。

 そんなアスカに何か言ってやろうかと思い『そりゃあ災難だったね』と言おうとして止める。

 アスカの言っている事は矛盾していたからだ。

 何かがおかしいと思う。

 確かに今朝、僕は朝食の準備をして出て行った筈なのに、それなのにアスカはミサトさんが作ったと言っている…。

「えっと、僕は今日は朝の支度をして出て行ったよ…。アスカのいってるのホント?」

「え?アンタそれホントの事?でも今日のアレは人が食べれるなんてレベルじゃ…」

 アスカが少し首を傾げながら言うのを僕は遮る。

 少し思い当たる節がある。

「一寸待って。今朝のメニューは何だった?」

 確認の為に聞く。

 少しは何かが判るかもしれない。

「…豆腐の味噌汁…でしょ?あれは人外の食べる物ね。それと昨日の残りの肉じゃがでしょ。あ、これは普通に食べれたのよ。後は…」

 アスカが唇に親指を当てながら言う。

 特に、味噌汁の事を言う時は思い出すのも嫌そうに言っていた。

 それよりもこの味噌汁、果たして本当にミサトさんが作ったのだろうか?

 少々疑問に思った。

 何故なら僕が今朝作った味噌汁は豆腐を入れたからである。

 そしてもう一つ、昨日の夕飯の時には僕は味噌汁を作らなかったである。

 後、今朝の味噌汁を作った時に豆腐は使いきってしまったと言うのが最大の疑問点だった。

「アスカ、多分今朝の味噌汁、ミサトさんが温めたでしょ…」

「うん、そうだけど…」

 アスカがそう言った事で判った。

 ミサトさんが重度の料理音痴だと言う事は知っている。

 が、僕はその考えを改めなおした。

 彼女は破滅的な味覚音痴だ。

 以前カップラーメンを作った時、ミサトさんが作ったのだが、あの時の味は変だった事を思い出す。

 あの時は賞味期限切れだと思っていたが、それが間違った事だと知る。

 あれは本当に彼女の料理能力の無さを知らしめた出来事だった、と。

 そして、今日それが確信になった。

 彼女は、ミサトさんは、彼女が料理を温めただけで、いや、触っただけで味が劇的な変化を、または劣化する…と。

「アスカ。御免」

 これは僕のミスだと思って、アスカに謝った。

「…………判れば良いのよ」

 アスカは突然謝った僕にどう答えて良いのか、たじろぎならそんな事を言った。

 そんなアスカに気が回らる訳も無く、僕は事の重大さを知った。

 そして、ミサトさんを台所に入れる事を絶対に禁止しようと心に誓った。

 

 その後、アスカは今朝の事で延々と僕を責め続けていた様だったが、僕にはそんなアスカの声があまり耳に届かなかった。

 結局、ミサトさんの事を考えているだけで、昼休みが終わってしまった。

 せっかくの昼食も、まったく食べた気がしなかった。

 

 

 

 

 午後の授業も既に終わりを告げ、放課後の埃の立つような慌しい匂いが学校中に広まる。

 クラス中の生徒の殆どがそれぞれの目的を持って動き出す。

 クラブに出る者、部活がある者や学校帰りに遊びに連中。

 それぞれが皆、自分の行動を立てて教室を出て行く。

 目立って何もする事の無い僕は、机に突っ伏してそんな様子を見ていた。

 そんな僕の肩を叩く者がいた。

 ふっと後ろへ振り返る。

 僕の視界の中、そこには先ほどまで洞木さんと話をしていた筈のアスカがいた。

「なに?」

 面倒臭そうにアスカに言う。

「ちょっと、偉く冷たい態度ね〜」

 アスカが意地悪っぽく言うが別に僕は気にした風でも無く、

「で、何?何か用?」

 と、少し突き放したように言う。

 ピクっとアスカの眉が動く。

 アスカが、うっ、と怒鳴り声を出そうとして押さえているのが判った。

 ぎゅっと拳が握られている。

 コレ以上の挑発は止めておこうと思った。

「ほぉ〜、キミは朝の事の罪悪感が無い、と、そう言う訳ですか。ふ〜ん」

 こめかみまでがピクピクっと振るえていた。

 ここまで言われればアスカの言いたい事がまるで判る。

 今回の過失は僕にも在ったので、大人しく従おうと思って、

「はいはい、判りました。で、僕は如何すれば良いのでしょうか?お嬢様」

 と言った。

 最後の方は皮肉を込めて言ったつもりだったのだが、アスカはまったく気付かずに、

「よろしい!ではマックのスペシャルてりやきバーガーセットで手を打とうでは無いか〜。良きに計らえ〜」

 なんか悪乗りしてるし…。

 

 

 マックを出た後、僕は難癖をつけるアスカに秋月堂のDXチョコパフェを奢らされる事になる。

 

 喫茶店でアスカのチョコパフェを食べているのを横目で眺めている時、外では雨がぱらぱらと降出していた。

 雨音に気付き外を見る。

 ミサトさんの事や、アスカの事での予定外の出費でいらいらしていたの上に、天気予報をまるっきり信じて傘を持って無い事まで思い出してしまい、思わず、

「今日の天気は、曇り後晴れじゃなかったのか?」

 と、朝と変わらない灰色の曇り空に向かって呟いた。

 アスカは、そんな僕の呟きがちらっと聞こえたのか、

「へ?シンジ?何か言った?」

 と、スプーンを咥え、頬に生クリームを付けながら心底幸せそうに言った。

 僕は頬杖を突きながら、そんなアスカの方は面と向かずに、

「ほっぺにクリーム付いてるよ…」

 と、本当にアスカには聞こえないような小さな声で言った。

 

 口に含んだコーヒーが既に温くなっていて、僕が深くため息を吐いたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

三話に続く


 

 後書き見たいモノII

 

 今回も読んで下さった方、本当にありがとうございました。

 ちょっと中途半端な会話が目立ったりするような気もするんですが…ハハハ、気にしないで下さい(^^;←墓穴?

 ちょっとした補足を一つ。

 一応、この話は学園モノに分類されるのでしょうか?

 ちょっと判断がつきかねますが、展開的には目っ茶ラブラブ〜ってな話には為りにくいと、そう思って書いております(ちょっとなるかもしれないかな〜?)。

 雰囲気は何時もこんな感じで行くんですが、そう言うのが苦手な方、お引き返しの程を…。

 この話、平均以上に暗いと思うんで…(^^;

 えっと、誤字脱字、御意見、感想等がございましたら、メールでも書いて上げてください、お願いしますm(_ _)m

 



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