親父が好敵手#2





目が醒めてから2週間、普通の生活が出来るようになってから1週間。ようやくアタシは“シンジ”の家に来る決心が付いた。細かな事情は色々と聞いている。なぜレイやマナ、マユミがシンジと一緒に住んでいるかと言うことも。結局あの優柔不断男は結論が出せなかったようね。それはそれで腹立たしいけど、今こうしてお互い笑顔で話をしている関係を思うと一番良い方法だったのかもしれないと思っている。それにあの3人が支えてくれなければ、今アタシがこうして元通りに戻っていることもなかったわけだし。でも、まあシンジにそれだけの甲斐性が合ったと言うことかしら。

アタシが“シンジ”の家に来るまで一週間の時間を要した理由、それはアツシの存在。アタシ自身“自分の子供”と言うものに対する心構えがまるでなかったからだ。いきなり目の前に同い年の男の子を持ってこられて『あなたの子よ』と言われても、『はい、そうですか』なんて納得出来るわけがないじゃない。アタシらしくもないけど、一緒にやっていく自信もなかった。だからアタシは赤の他人を装い、転校生として学校でアツシを観察させて貰うことにした。まあ、マナの影響か多少軽い所もあったけど、いい子だと言うことはよく分かったわ。笑顔はどことなくシンジに似ているし。この点はマナに感謝しなくちゃいけないわね。

シンジはどうだったかって。そりゃあ最初は驚いたわよ。治療が終わってアタシが目覚めるとき、何か暖かいものに包まれている感覚があったわ。そして『アスカ』ってアタシを呼ぶ声が聞こえたの。少し声が低くなっていたけど、それがシンジのものだってアタシにはすぐ分かったの。アタシは帰ってきたことが嬉しくて『シンジ』って叫んで目を開けたわ。そしたら目の前にいたのがアレよ。心臓が止まるかと思ったわよ。話によると私はシンジの顔に一発右ストレートをめり込ませてから気絶していたらしいの。そりゃあそうでしょ、何よあの変わり様。普通あのシンジがあんなになるとは想像しないわよ。

でも目が覚めたときにリツコやレイから色々と事情を聞いたわ。全てがアタシを助けるためだってことも。シンジの奴、すがれるものは全てにすがったみたいね。神頼みと言うか願掛けと言うか、要するに断ち物をしたらしいの。その一つの結果があの見た目と言うわけ。シンジが断ち物をしているって聞いたとき『何それ?』だったけど、詳しく説明を聞いて嬉しくなったわ。えっ、何がかって…シンジったら“アレ”も断っていたらしいの。レイ達には悪いけどアタシへの『愛』がひしひしと感じられたの。まあ見た目の方はなれればそれなりに愛嬌があるし、それにあのヒゲ、気持ち良さそうだし…



「それでさあ、アスカ。感動のご対面はどうだったの」

アタシのモノローグが終わるのを待っていたかのように、マナがアタシに聞いてきた。目の前には堆く積み上げられたお菓子の山と清涼飲料水。とことん話そうってことね。

「最悪…、いきなりあの顔が目の前に現れたのよ。予備知識もないまま」
「シンジ君に右ストレートをお見舞いしたんだって」
「仕方ないじゃない、驚いたんだから。でも詳しいことは良く分からないの。
 何しろ心臓が止まるほど驚いたんだから」
「…心臓…止まったわ」
「…」
「アスカったら良く生き返ったわね」
「そりゃあもう、レイさんを含めあの人たちに掛かったら死ぬ方が難しいんですのよ」
「そうなのマユミ」
「だってシンジさんはあの通りの世界的権威でしょ。レイさんだってシンジさんの陰に隠れているけど山のように博士号を持っているし、それに“あの”赤木博士もいたでしょう。伊吹さんなんて魔法陣まで書き出したりして…」
「何よその魔法陣って」
「伊吹さんは、アスカさんが眠りについてから白だったか黒だったか覚えがないけど、そっちの方に走られたの。それで『いざとなったら反魂の法で魂を地獄からでも呼び戻すから』とか言って何かいろいろと動物まで集めていたのよ」
「な、なんかすさまじいわね」
「…人工呼吸と心臓マッサージ」
「やっぱりシンジさんが助けて下さいましたの」
「でも、次に目が覚めたとき、シンジはいなかったじゃない」
「…同じことの繰り返し」
「へっ」
「またシンジさんのドアップを見たら同じことになるでしょ。だから刺激が少ないように赤木博士とレイさんが説明することになったの。シンジさんったら病室の外で泣いていたわ」

そうかそれで2度目にはシンジはいなかったんだ。おかげで心の余裕は出来たけど。

「それにしてもシンジったら汚くなったものね〜」
「それもこれもアスカのためでしょ」
「まあ、それも聞いたけどね…でさあ、本当なの」
「…何」
「あなた達がシンジと『ナニ』をしていないってこと」
「…本当よ」
「あなた達にはも感謝しなくちゃいけないのね」
「いいのよ、アスカ。私たちはそんなことも含めてシンジ君のことを好きになったんだから」
「…そうよ」
「そうですよアスカさん」

あれっ、何か前が良く見えない。あ、アタシ泣いているのかな。

「あ、本当にありがとう。どうやってお礼すればいいのか…」
「そんなこと心配しなくて良いわよ。これからしばらくの間、夜はシンジ君を独占させて貰うから」
「…そう」
「…」

何よ顔を赤くしちゃって…夜って。はっ

「だ、ダメよアタシもスルんだから」
「…子供」
「な、何よ」
「…14歳」
「省略しないで言いなさいよ」
「…16歳まで待つの」
「だからなんなの」
「アスカは今14歳なの。だからシンジ君が今アスカにスルとちょっと法律上厳しいわけ。だから正式な夫婦になれる16歳まで待ってほしいなぁってことよ」
「だって、もうシンジとはシタことがあるわよ」
「あのときはシンジ君も14歳だったでしょ。でも今はシンジ君も29歳なの。色々と法律に縛られているのよ」
「う〜」
「ということで3日間のローテーションで行くわね。最初はレイさん、次は私、最後にマユミ。これで良いわね」
「…いい」
「仕方ないですわ」
「ちょっとぉ〜」
「今夜はアスカさんの歓迎会をするから。明日からね」
「…いいわ」
「はい」
「アタシも順番に入れてよ〜」
「「「だ〜めっ」」」
「けちぃ」

何よアタシだってシタいんだから。な、何よみんなでニヤニヤしてアタシの顔を見たりして。

「ねえアスカ」
「何よマナ」
「私たちはあなたに意地悪するつもりはないの」
「…そう」
「そうですよ」
「でも…」
「アスカの心も体もまだ14歳なの。だからアスカには普通の恋愛をして貰いたいの。
 14歳のあなたの目でシンジ君をちゃんと見て欲しいの。
 あなたの目でちゃんとシンジ君を見て、その上でもう一度関係を結ぶのなら私たちは反対しないわ。
 いいアスカは処女ではないけど経産婦でもないのよ。
 だからあなたは自由に生きればいい。アツシのことだって今まで通り私たちがいる。
 お昼の優先権はあなたに全てあげるから、しっかりとシンジ君を見て、そして考えて。
 その上のことなら16歳まで待てなんて私たちは言わないわ」
「…そう」
「そうですよ」
「…分かったわよ」
「ありがとうアスカ。分かってくれて」
「ううん、礼を言うのはアタシの方よ。そんなにアタシのことを考えていてくれたんだ」
「まあちょっとは分け前を増やそうと言う気も合ったけどね」
「…だめ、ばらしちゃ」
「だめですよ。内緒なんですから」
「こら〜」

楽しい。ファーストも含めて、4人でこんなに楽しく話せる時が来るなんて思っても見なかった。15年の時間を共に過ごせなかったのは残念だけど。今はそれでも良かった気がしてきた。

「ところでさぁアスカ」
「何よマナ」
「教えて欲しいことがあるんだけど」
「良いけど、何よ」
「シンジ君ってウマイの」
「!」
「その、恥ずかしいけど。私たちこの年までまだシテないの。だからやっぱり怖いところもあるし…」
「…教えてあげない」
「どうしてよ」
「…思い出すとシタくなるから」
「…すごいの」
「レイ…知ってるの」
「…52回」
「何よその回数」
「…二号機パイロットがイッタ回数」
「…見てたの」

ちょっとシャレにならないわよ。

「…発令所全員」
「うそっ」
「…碇指令の指示」
「その話聞いたことがありますわ」
「…そう、世界に流れたの」
「戦自の突入を止めたアレね」

じょ、冗談じゃないわ。

「…補完計画」
「何よいきなり」
「…アレも補完計画の一つの選択肢」
「そうなの」
「…だから二人の心が欠けている必要があったの」
「どういうことよ」
「…補姦による補完。あなたの心が満たされるとき人類の補完がなされたの」
「そういえばあの後出生率が増えたわね」
「マナ、同人誌みたいなことを言わないでよ」
「…ゼーレもそれを認めたわ」
「嘘っ」

本当に冗談じゃないわ。アレが仕組まれたことだなんて…でもちょっと待ってよ。

「ねえ、それってアタシたちがシテいる所を世界中の人が見たってこと?」
「…そう。視聴率97%。ワールドカップを越えたわ」
「これじゃあもう、お嫁にいけないじゃない」
「…行くつもりでいたの」
「アスカの行く先は決まっているのよ」
「往生際が悪いですわね」

あんたたちねぇ、さっきと言っていることが違うじゃない。

「…それはそれよ」
「人間あきらめが肝心よ」
「そうですわ」

頭イタ…

「前言撤回。ローテーションは4日にしなさい」
「…ダメ」
「ダメよ」
「ダメですわ16歳まで待って貰います」

いいわよ絶対隠れてヤッてやるんだから。

「ところでさ、アタシとアツシの関係ってどうなるの」
「…今まで通り」
「クラスに来た美人の転校生で良いのよ」
「同居したりして、アツシがアタシを襲ったらどうするの」
「…碇君と一緒」
「どういうことよ」
「…奥手なの」
「でもシンジはアタシを襲ったわよ」
「…追いつめられたから」
「今度は大丈夫ってこと?」
「…そう」
「…せいぜい気をつけることにするわ。母子相姦なんてシャレにならないから」
「…そう、良かったわね」
「良くないわい」

あら、何か外で変な音がしたわね。

「…話が終わったようね」
「またいつもの通りみたいね」
「ホントアスカさんそっくり」
「また話の見えないことを言わないでよ」
「…アツシのこと」
「シンジ君が同居することを話したの」
「だから今の音がそれとどういう関係があるの」
「…アツシが切れたの」
「左のジャブから右ストレート、最後は右アッパーね。
 つぶれたような音は本だなんの下敷きになったのね」

アツシってそんなに乱暴だったっけ。クラスで聞いた話と違うわね。

「シンジ君にだけなの。アツシが暴力を振るうの」
「…あなたに似ているの」
「わ、私はしていないわ」
「…目覚めたときにいきなりしたわ」
「あ、アレはいきなり変なものが現れたから、とっさに」
「そろそろ合流しましょうか。
 適当なところで止めないと、今晩の歓迎会が出来なくなるから」
「そうですわね」

アタシはこうしてレイ達との話を終えた。アタシの失った15年間は大きかった。アタシもいつかは今のレイ達と同じようになれるのだろうか。まあいい、考えることはいつでも出来る。今は沢山の時間を手に入れたんだ。考えることはそれからにしよう。













続く?

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中昭のコメント(感想として・・・)

  トータスさんの『親父が好敵手』第2話です。掲示板で好評連載中。




【きゃらこめ】でぃーえぬえー
ミセスA  「すっごくいいわぁーぐっとよぐっと」
少年S   「なにをあんなに喜んでるんだろ」
美少女M  「自分が若い役だからよ、どうせ」
ミセスA  「ふっふーん。出番のない子は及びじゃないのよーだ」
美少女M  「ムー
       パパ、なんか言ってやってよ」
永遠の少年S「ぴくん オドオドドオドドド」
ミセスA  「なに、怯えてんのよ。自分の娘でしょ」
永遠の少年S「・・・・・・だって・・・・・・アスカの娘でもあるし・・・」
ミセスA  「はーん?」
少年Sjr 「これが原因だと思うよ」
美少女M  「シンジ君にだけなの。アツシが暴力を振るうの・・・」
少年S   「…あなたに似ているの・・・」
ミセスA  「要するにアタシの娘や息子だと、レイに似て乱暴者になるってわけね。
       それで怖がってるんだ」
ミセスR  「・・・何故?」
ミセスA  「だってアンタ、シンジに乱暴するじゃない」
ミセスR  「愛情表現」
ミセスA  「・・・・そ、それじゃアタシも同じ事するわよ。
       アタシだって愛してるんだから」
ミセスR  「駄目」
少年S   「あの、アスかーさんは父さんに愛情表現をしてもらえばいいんじゃないかな
       無理にレイママと同じ事を・・・する事は・・・ない・・・し」
ミセスA  「シンヤ、ちゅーしてあげる・・・ううん
       なんだったら胸までならおさわりOKよ」
ミセスR  「お仕置き」
美少女M  「だめーご褒美もお仕置きもなしよ。これはあたしのなんだから
       ほらここ読んでここ」
ミセスA  「それにあのヒゲ、気持ち良さそうだし…・・・・・」
ミセスR  「スリスリ」
ミセスA  「ザラザラ」
ミセスR  「・・・フフフフフ」
ミセスA  「・・・エヘヘへへ」
永遠の少年S「ぴくん オドオドドオドドド」

少年S   「どっちにしても、父さんの安息の日々は遠いみたいだね」
美少女M  「別にいいじゃん。あたしとシンヤには被害が来ないんだし」
少年S   「・・・・・・・・・・・・やっぱりアスかーさん似だな」



天然少女  「・・・・・・・・パパ、お髭ないけどぉ」



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