親父が好敵手#3





俺の親父は変態である...何、前と言っていることが違う。変人じゃなかったのかって?いや、あれはもう変人などという生やさしいものではない。『変態』でも手ぬるいぐらいだ。何がかって?まあ聞いてくれ、あいつはこともあろうに息子と同い年の『美』少女を自分のハーレム(世間では碇ハーレムと呼ばれているらしい)に加えると言いだしたのだ。変人、変態、鬼畜、外道・・・どんな言葉をあてても足りないぐらいだ。

世間は親父の実績に黙らされているが、俺にはそんなものは通用しない。俺はその話を聞き、写真を見せられた瞬間、親父に対する殺意を止めることができなかったぐらいだ。

糞っ、どうしてアスカちゃんが...許せない...はっ、違うぞ。嫉妬に駆られた訳じゃない。俺は純粋に変態親父の毒牙に掛かるアスカちゃんを可哀相に思ってだな、嫉妬なんて爪の先ほどにも...まあそれなりにはあったが、決して変態親父を亡き者にして、その後に取って代わろうとかと考えていた訳じゃない。


・・・多分




***




「いや、まだ結婚できんのだよ。
 何しろ相手はまだ14なんだ」

そう言って差し出された写真には、微笑んでいるアスカちゃんが映っていた。

メキョ
ヒデブ

俺は黙って右ストレートを繰り出した。親父はいすに座ったまま後ろに倒れ込んだ。ふん良いざまだ。

「まあ黙って話を聞け」

フッ…もう復活したか。ならば…

アタタタタタ
アベシ

今度は百裂拳を親父に叩き込んだ。本棚まで飛ばされる親父。本棚が大きくたわんでいる。

「お願いだから話を聞いてくれ…」

ちっ、もう再生したか…

メキ、ボコ、グシャ

とどめのコークスクリューブロー(ブーメランフックね)で飛んでいく親父。今度は本棚も耐え切れなかったようだ。中身を撒き散らしながら親父を下敷きにした。そのままにしておいても良かったのだが、また復活すると厄介なので俺は本棚の下から引きずり出し、馬乗りになって首を絞めた…とどめだ。

「ぢょづど、じゃでびなっでばい...」

俺が親父に馬乗りになって締め上げているので、親父は床を叩いて何か言っているようだ。もう俺には聞く耳はない。

「うるさい、お前なんかにアスカちゃんは汚させない」

そのまま俺は両手に力を込めた。

「俺はな、俺はな...親父がここまで堕ちているとは思ってもいなかった。
 こんな3人の美人に囲まれて...」
「まあ嬉しい」
「それに飽きたらず、こんな年端もいかない美少女までたらし込むなんて」
「美少女…まあ当然ね」
「人の道に外れている...」
「…うらやましいの」
「かなり…っっって、母さんにお袋、マユミさん…アスカちゃん」

まずい、アスカちゃんの両目が潤んでいる。

「アツシさんがこんな方だとは思いませんでしたわ。
 クラスのみなさんは騙されていたのね」
「いえ、そんな…クラスでの俺が本当の俺です。ハイッ」
「私の命の恩人の碇さんにこんな酷いことをするなんて」

おーおーアスカったら相当に被っているわね。

「見損ないましたわ」

ぷっ、アツシの顔ったら。これ以上もなく青い顔をしているわね。無理もないわね。アツシがアスカさんに気があるのは見え見えだから。ここで嫌われたらと思ったんでしょうね。そろそろ助け船を出しますか。

「アスカちゃん。そのくらいにしておいてあげてね。
 この二人の場合はこれが親子のコミュニケーションなんだから」
「ですがマナさん」
「いいのよ。アツシは本当に優しい子なんだから。
 大方この人が冗談にならないことをアツシに言ったんでしょう」」

大当たり。さすがお袋だ。良く親父のことを分かっている。

「そうだよ。いきなり母親はいらないかって。アスカちゃんの写真を見せるんだ」

あらまあ。相変わらず嘘がつけないと言うか、馬鹿正直と言うか。思春期の子供のことを分かっていないんだから。

「そんなの本当のわけないでしょう」

本当なんだけどね。

「今回はちょっとやりすぎね。アツシ」

多分後10秒で復活すると思うけど。

「細かい話はアスカちゃんに説明して貰いましょうか」

ふふ、アスカ用意は良いわね。もっと猫を被るのよ。

さすがはマナね。うま〜くアタシに振ったわね。大丈夫よ任せておきなさい。このスマートなアタシ、猫なんて何枚でも被ってあげるわよ。

「はい、マナさん。アツシさんも聞いて下さい」

用意は良いわね。さあ泣くのよ。

「実は私、3ヶ月前に両親と旅行中事故にあったんです。
 アウトバーンを走っていて、目の前でスリップしたトラックを避けきれず…
 衝突した車は大破。
 運転席にいたパパと助手席のママは即死だって聞きました。
 死体は見ない方がいいって碇さんが…
 どうしてかは私分かるんです。事故の写真をネットで探しましたから。
 車なんて跡形もないくらいに壊れていたから…」

ここで泣きを入れれば完璧ね。

「ぐすっ、ごめんなさい。
 アタシは奇跡的にここにいるわけだけど。
 碇さんがいなければとても助かる傷ではなかったそうよ。
 アタシの両親と知り合いだった碇さんは、事故の話を聞いてドイツに連絡を取ってくれたの。
 それでアタシの状態を聞いて、すぐ赤木博士をドイツに派遣してくれたの。
 アタシの体は冷凍状態で日本に運ばれて、すぐに日本で蘇生手術が行われたの。
 生体ナノマシーンを神経接続で制御しての手術。
 まだ技術としては開発途上で、場合によっては処置者の命にも関わる難しい手術。
 それを碇さんは私にしてくれたの。
 でもね。私は助けてくれた碇さんを殴ったの。それも2度も」

途中からは本当のことだけどね。

「最初は意識が戻って最初に碇さんの顔を見たとき。
 怖かったわ…本当に。
 次は、私のパパとママのことを聞いたとき。
 何でパパとママを助けてくれなかったんだって。
 何で私を死んだままにしてくれなかったんだって。
 何度も何度も碇さんを叩いたの。
 碇さんはなんにも言わずに私を抱きしめてくれたわ。
 パパとママのことはごめんって。
 でもアタシは生きなくちゃあいけないって。
 私のために泣いてくれたの。
 これからの生活のことも心配しなくても良いって。
 一緒に住まないかって。
 家には同い年の優しい息子もいるって。
 アタシ…嬉しかったのに。アタシは一人じゃないんだって。
 それなのにアツシさんは碇さんにこんなに酷いことを」

さすがアスカね。ちゃんと破綻なく話を作っているわね。アツシもすっかりと騙されているようだし。…まずいわね。シンジが目を覚ましそうだわ。ここで馬鹿なことを口走ったら作り話が水の泡になるわ。仕方ない…

メキョ

「お、お袋…今拳が親父の顔に…」
「ごめんなさい、アスカさんのお話に感動しちゃってつい…」
「…碇君は私たちがベッドに運ぶわ」
「そうしましょう」

ナイス、レイさん。向こうでしっかりと言い聞かせてね。

「アツシさん…お父様と仲良くして下さいますか。
 私のせいで碇さんとアツシさんの間がおかしくなったりしたら…
 アタシ…」

あ〜あっ、アスカって自分の嘘に酔っているわ。あんまり自分の息子を誘惑しないようにね。アスカが猫を被ったら、大抵の男は一発で落ちるんだから…アツシったら、アスカの手を握ったりして。涙まで流しているわね。本当にこんな話を頭から信じて疑わない所なんて、シンジの血を引いているわね。

さあってと、こんな話はこの辺にしておかないとね。いつぼろが出ることか。

「はいはい、暗い話はここまでね。アツシ、ちゃんとお父様に謝っておくのよ。
 それからアスカちゃん、心配だったらシンジさんの看病していても良いわよ。
 分かったわね。それから今晩はアスカちゃんの歓迎会をしますから。
 アツシは荷物持ちをよろしくね」
「はい、お袋」

アタシは嬉しそうに出ていくアスカの耳元にそっとささやいた。

「アタシがいないからってシンジを襲わないでよ。
 それからちょっとやり過ぎ…アツシがのぼせ上がっているわよ」
「大丈夫。任せておきなさい」

一体あの自信はどこから来るものやら。あらあら、アツシはアツシで燃え上がっているわね。暴走しなければ良いけど。シンジ君の子供だし…まあいいか、その時はその時で。生でフランス書院ものが見られるんだから…



***



アタシはベッドで眠っているシンジの頬を撫でてみた。顔一杯に髭がある…髭の中に目や鼻があるって感じかな。髪の毛だってぼさぼさ…でも。

「シンジだから許せるのかな」

全てがアタシのためだと思うと、普段の自分では見るのもいやなはずなのに許せてしまう。むしろそれより愛しく思えてしまう。

「責任とってよね、バカシンジ」

アタシはそういってシンジの髭を一本抜いてみた。ふふっ、くすぐったそうね。でも、もうバカシンジって言えないな。何しろ10を越す分野の世界的権威だもんね。偉くなったものね…喜ばなくちゃあ行けないのよね。全部アタシのために頑張ってくれたんだもの。全ては意識が戻った後リツコに聞かされたわ。シンジがアタシの治療に必要な方法の立案から、理論の構築、開発、オペレーションのほとんどをしたって。嬉しいよシンジ…でもね。

「悔しいなシンジ」

シンジはアタシの知らない15年を過ごしている。ううん、アタシは15年もの間シンジと一緒にいることが出来なかった。一緒に笑い、一緒に怒って、一緒に歳を取る。マナやレイ、マユミはそうする幸せがあった。

「見ない内にこんなにおじさんになっちゃって」

29歳。あの頃の加持さんより若いことは分かっている。加持さんにはミサトが居た。シンジには…

「本当にアタシの入る隙間があるのかな…」

マナやレイ、マユミがどんなにシンジのことを想っているかなんてすぐに分かる。そしてあの三人が今のシンジとの関係にどれだけ自信を持っているかも。

「15年か…」

自分がこれまで生きてきたのより長い時間。眠り姫のように眠っていた時間…

「アタシはここにいても良いの」

アツシだって自分がお腹を痛めた訳じゃない。その権利を主張できるのはレイだ。

「でもアタシには帰るところもない…」

イヤだな涙が出て来ちゃった。

「ここに居させて欲しいの…」
「ここに居て欲しいんだ」

シンジ…アタシを抱きしめてくれるの。同情なのこれは、浦島太郎になった可哀相なアタシへの。

「同情なんかじゃないよアスカ。ボクはアスカが欲しいからアスカを助けたんだ。
 義務でも同情でもなんでもない、単なるボクの心の欲求なんだよ」
「マナやレイやマユミがいるじゃない」
「アスカが欲しいんだ」
「アタシをシンジのものにしてくれるの」
「アスカはボクのものになってくれるの」

シンジはアタシにそっと口付けしてくれた。そしてその唇が静かにうなじを伝って降りてくる…アタシはそっとシンジに体を預けた。アタシを支えていないシンジの右手が、服の上からアタシの胸の膨らみをなぞるように撫でる。シンジに抱かれたことが、ついこの前のことのようによみがえる。

「ねえ、抱いてくれる」
「いいの「……ダメッ」

ちっ、ファーストが嗅ぎつけたか。

「シンジさん。アスカさんの体はまだ子供なんです」
「…病み上がり」
「アタシはもう大丈夫よ」
「…約束」
「何よ、自分で考えてシようとしたんだから良いじゃない」
「…アツシが帰ってくるわ」
「む〜」

向こうではシンジがマユミに説教されているわね。仕方ない、今日の所は諦めるとするか。まあシンジの気持ちも聞けたことだしチャンスはいくらでもあるか…何よファースト怖い顔しちゃって。何見ているのよ…

アタシはレイの視線がアタシにないのに気がついた。レイの視線を追っていくと…いつの間にかマユミが甘い声をあげていた。シンジの手はマユミのスカートの中に入り…

アタシとレイは目で合図をかわした。エヴァに乗っているときよりも息が合っているだろう。

「「こんちくしょう〜」」

アタシとレイのツープラトンに、シンジは完全に沈黙した。

アタシの歓迎会のメインディッシュは、『シンジの吊し』だった。










続く?

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中昭のコメント(感想として・・・)

  トータスさんの『親父が好敵手』第3話です。掲示板で好評連載中。


【きゃらこめ】でぃーえぬえー
永遠の少年S「ポーーーーーーーー」
ミセスR  「羨ましいのね」
永遠の少年S「ポーーーーーーーー」
ミセスA  「今だって二人もいるじゃないの」
永遠の少年S「ポーーーーーーーー」

ミセスR  「・・・・・・・・・・」
ミセスA  「・・・・・・・・・・」

ミセスA  「・・・・・・吊そうか」
ミセスR  「・・・・・・コクン」


永遠の少年S「ポーーーーーーーー」

美少女M  「パパってば、まだホウけてる」
少年S   「なにが父さんをああまでさせてるんだろ」
美少女M  「ん、わかったわ」
少年S   「なにがだい?」
美少女M  「この話にはアツシってのがでてるじゃない。
       アスかーさん似の息子が欲しいのよ。きっと」
ミセスA  「ぴくん」
ミセスR  「ピクン」

美少女M  「ジュニアはレイママそっくりだし、あんたはパパそっくりでしょ」
少年S   「アスかーさん似だったらミライがいるじゃないか」
美少女M  「・・・・・・・・・それってどういう意味かしら
       パパが欲しがってるのは息子なのよ」
少年S   「・・・あ、違う・・・ミライが男みたいとか男より乱暴とか少しは女の子らしくして欲しいとか
       これっぽっちも」
美少女M  「思ってるんでしょ」
少年S   「うん・・・・・・・・・・じゃなくて違うんだぁーーー」


永遠の少年S「ポーーーーーーーーってなんで服を着てないんだろ僕」



ミセスA  「ハァーーできたかなぁ」
ミセスR  「満腹?」





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