いけないよゲンドウくん


第三症 「前哨戦」
                                         (ただの説明会のはずだったんだが……)



昼食時、空腹を満たすためにそれぞれの目的地を目指す人の流れを一つの放送が変えた。


「ミスNERV名器コンテスト参加希望者は、第三会議室までお集まり下さい」

NERV女性職員(一部例外あり)の大移動が始まった。



ロンゲの男が眼鏡の男に話しかける。

「おい、まずいぞ。準備がまだできていないぞ」

「大丈夫だ。とりあえず、これを着よう。サイズも可能な限り直してあるし」

「こ、これは第一中学の制服。まさかお前、ぬす……」

「ひとぎきの悪いことを言うなよ。今は非常時だろ、徴発したんだよ」

同じじゃね〜か





「ねえ、シンジ」

「何?アスカ」

「第三会議室ってそんなに広かったっけ?」

「収容人数は50人ほどのはずよ」


答えたのはシンジの左隣りにいつのまにかいたレイ。



「アンタに聞いてないわよ」

「そう」

「……とにかく、これは急ぐ必要がありそうね」

「どうしてさ?」

「あんたバカァー。まわりを見なさいよ。どうみても200や300じゃきかない人数よ」

「うん」 


溜息とともに何もわかっていないシンジからレイに視線をふる。

「アタシパス。ファースト、アンタが説明してやって」

「300人以上の人々が収容人数50人の会議室を目指すの。会議室は定員になれば扉を閉ざすわ。
私たちは始めの50人にならなければいけないの。命令だから……」

「つまり、会議室にはいることが第一次予選ということよ。いくわよ、シンジ、ファースト」


「何で僕まで」


ぼやくシンジも結局は、亜麻色の髪と空色の髪の少女の後を追って走り出した。 
それを見送る人影三つ。

「なるほどね。マヤ、技術部に連絡して携帯火器と疑似ATフィールード発生装置を持ってこさせて」

「はい、先輩」

「マ〜ヤちゃん、ショコタン同盟にも連絡してね。非常召集よ」

「了解しました、盟主」


「盟主ってなによ」

通信機をひろげて連絡中のマヤを横目にリツコが聞く。

「健全な青少年の成長を暖かい目で見守る組織のまとめ役を仰せつかってるのよ。
 ほら、私って人徳あるから。」

「……まあいいわ、ミサト、作戦部長としての腕をみせてもらうわよ」

「ま〜かせなさい」



  1時間後


あちこちから聞こえる呻き声や助けを求めて泣き叫ぶ声をバックに、破壊された通路に人影が
現れた。瓦礫をふみしめて(下敷きになっている女性の呻き声が高くなる)、無精ヒゲの男が
辺りを見回している。


「はでにやったもんだな。実用化にほど遠いものを平気で実戦に使うのはリッちゃんの悪い癖だ。
 それとも葛城の作戦指揮のせいかな?
 なんにしろ、ここまでハデだと委員会も黙っちゃいませんな。それともこれもシナリオの内ですか、
 碇司令」

いいから、どいて〜

瓦礫の下からの声に気付いたわけではないが、無精ヒゲの男が歩き始める。





【第三会議室】

「遅いわね〜。私をこんなに待たせるなんて」

「ちょっと座ってなさい、ミサト」

「そうよ、ミサト。いらつくならこいつらでも蹴飛ばしてたら」


アスカが靴底で青葉と日向をグリグリしながら言う。
徴発した制服は持ち主に取り返され、二人とも下着姿で縛り上げられている。
マヤが自分もちょっかい出したくてウロウロしていたりするが、誰からも囚われの二人を助けよう
という声があがらない。



「碇君」

「何、綾波」

「私、ミスコンに出るの」

「う、うん(何が言いたいんだろう?)」

「私に勝って欲しい?」

「あ、綾波ならいいせん行くと思うよ。その……、可愛いから」


真っ赤になって俯く二人の間にあわてて入り込むアスカ。

「バカシンジ、アンタはさっきアタシに票入れるって約束したじゃない。
アタシとファーストとどっちを応援する気なの?」

「あ、あの、その」


「そのくらいで許してやるんだな。アスカ」

「「加持さん」」

登場した無精ヒゲの男、加持リョウジがウインクで答えている。

「加〜持〜、何であんたがここにいるのよ?」

「碇司令の命令でね。暇なのはおれくらいらしい」


「司令自らの命令ってことは…」

「結構、期待できそうですね、先輩」

「そうね」


「まあ、とりあえずこれにサインしてくれ」

「何よ?」

「同意書だ。まあ、形式だよ」

「なになに、
 [ミスNERV  コンテストに出場することに同意する。
  ミスNERV  コンテストの実施により生じた事態につき、当局は一切その責を負わないことに
  同意する]
 か」


「(エースの座)」
スラスラッとサインするアスカ

「(碇君)」
スラスラッとサインするレイ

「(シンちゃん)」
スラスラッとサインするミサト

「(碇司令)」
スラスラッとサインするリツコ  

「(先輩)」
スラスラッとサインするマヤ  

「(鈴原)」
スラスラッとサインするヒカリ


「ヒカリ、何でヒカリまでいるのよ」

「加持さんから教えてもらったの」


「パイロット候補生も対象にしろとのご命令でね。
 さあ〜てみんな書いたかな。(しかし、だいぶ減ったな)」

会議室をざっと見渡すと空席ばかりでけが人も多い。自力で動けそうなのは20 人ばかりだった。
すべては一部の人間(主催者側は意図していなかった)が始めた第一次予選の結果であった。

「それでは、ミスNERV名器コンテストの説明を始める。よく聞いといてくれよ」


「名器って何よ?」

ミサトのとがった声。

「なんだ知らないのか?ミミズ千匹とかカズノコ天井とか……」

「そうじゃなくて。ミスコンとどういう関係があるのよ?」

「自分でサインしたろうが」

同意書をヒラヒラさせながら加持が言う。

「ミスコンの出場に同意したのよ」


「アスカ」

「ハ〜イ」

「ここにあるランプを使って、こいつ(同意書)をあぶってくれ」

言われたとおりにするアスカ。

[NERV]と[コンテスト]の間に浮かび上がる[名器]の文字。



「どうだ、ミスNERV名器コンテストと読めるだろう」

あぶりだしですって〜



ひとしきりミサトが暴れた後、少なかった出場希望者がさらに減っていた。
残ったのは……


アスカ 「(エースの座、アタシにはエヴァしかないのよ)」

レイ  「(碇君)」

ミサト 「ちょっとの我慢でシンちゃんが。ムフフ」

リツコ 「声に出てるわよ、ミサト。(碇司令のためならどんな屈辱にも耐え てみせる)」

マヤ  「(先輩)」

ヒカリ 「(ごめんね鈴原、ちょっとだけ目をつぶって)」


「シンジ君」

「はい」

「覚えておくといい。人は何かを得るために、何かを失わなければならない。
 幸福も不幸も一人の人間が持てる量なんてたかがしれてるってことさ。だからこそ人生は
 おもしろいんだけどな」



「出場者はこれだけだな。あ、それから当然SEXしてもらうが、避妊具はつけないからよろしくな」

「なんでよ。妊娠しちゃうじゃない」

「名器を判定するのに無粋なかぶりものを着けるわけにはいかないな。
 ピルかなんかで代用してくれ」


「ハ〜イ、ハ〜イ、アタシ、加持さん相手になら生本番・中出しOKで〜す。
 まあ、バカシンジがどうしてもというなら相手してあげてもいいけど」


「まあ、君らの希望も考慮されるが、審査員はMAGIにより10人選ばれる。君らはその全員と
 SEXしてもらう」

「「「「え〜え」」」」

「不潔」

「本戦は1週間後、18:00から行う。会場は一人分のスペースをパーテーションで仕切って
 いて、それを出場者の数だけ用意している。
 アスカ、シンジ君、モデルになってくれ」

「「はい」」


「アスカ、机に手をついてお尻を突き出して」

「はい」

言われたとおりにするアスカ。

「次はシンジ君、アスカの後ろに立ってくれ」

「はい」


「当日は、左右と背後をパーテーションで仕切られるので、直接、審査員と顔をあわせることは
 ない。ただし、カメラマンが一人、前方から撮影しているからな。
 審査員側にはモニターがあってそこにカメラからの映像を映すことになっている」

「背後が仕切られててどうやってSEXすんのよ?」

「背後のパーテーションには穴を開けておく。お尻が入るぐらいの穴にするから問題なくできるよ。
 シンジ君、アスカのお尻に手を添えて、ペニスをアスカのあそこにあてて腰をふる」


「できません」
「なんでバカシンジと」

二人がほぼ同時に言い放ち、お互いにムッとして顔を向き合わせた。

「誰がバカなんだよ?」
「アタシじゃ不満なの?」

もう一度同時に言い放つ。顔をさらにグッと近づける。

「モデルを頼んだだけだよ、お二人さん。キスなら二人の時にゆっくりやってくれ」

自分達の体制に気付いて真っ赤になって離れるシンジとアスカ。


「これでよくわかってもらえたと思う。それじゃ1週間後にこの場所で会おう。
 じゃ、そういうことで」

同意書を持って加持がでていく。



「シンジ、あのさ…。ちょっと来て」

アスカがシンジの服の裾を引っ張って会議室の隅につれていく。

「何?」

「さっきの続きだけど…。アタシじゃ不満なの?」

「は、恥かしかったんだよ。僕、経験ないし」

「アタシだって処女だよ。その、1週間後には他の人にいっぱいされて、あそこからこぼれ出すほど
 中出しされちゃうんだろうけど…」

「……」

「あの…、その…、アタシの初めてのヒトになってくれる?」

「僕でいいの?」

「バカ。シンジじゃなきゃだめなの」

「ごめん。わかったよ」

「私も」

突然後ろからかかった声にビクッとする二人。


「私も碇君と一つになりたいの」

シンジはおそるおそるアスカの顔色をうかがっている。
こめかみをひくつかせながらアスカがシンジに代わって答える。

「まあいいわ。同じ女としてアンタの気持ちもわかるし。ただし、アタシの後だからね。
 シンジの童貞はアタシがうばうの」



「ミサト、今夜から1週間ファーストを泊めるわ。それから学校も休むから」

「泊めるのはかまわないけど、どうして学校を休むの?」

「決まってるでしょ。経験豊富なミサトやリツコと違ってアタシ達はビギナーなんだから。
 今夜から昼夜を分かたず特訓よ」




「…………」

三人で(ミサトは特訓の邪魔ということでアスカに追い出されている)マンションに帰る途中、
シンジはずっと何事かを考えているようで押し黙っている。
沈黙に耐えられなくなってアスカが声をかけた。ただし、いつもの彼女らしからぬ不安そうな声で、


「シンジ、本当はいやなんじゃない、アタシのこと抱くの」

「そんなことないよ。アスカのことも綾波のことも大好きだし。二人の初めてのヒトになりたいと思うよ」

アスカは、二人ともという所に不満を残しながらも、少しだけ元気を取り戻した。


「だったら何を考えこんでるのよ?」

「いや、たいしたことじゃないんだけど…。同意書のことなんだけどさ。僕もサインしたんだ」

「何でよ?(もしかして、シンジもエースパイロットの座を狙っているの?)」

「用紙を渡されたし、みんながサインしてたから…。あ、さすがに気付いたから提出するつもりなかっ
 たんだよ」

「じゃあいいじゃない。出してないんでしょ?」

「それがないんだよ。確かに机に置いてたのになくなっちゃってて。
 ないことに気が付いた時には加持さんもいなかったし…」

「誰かが捨てちゃったんでしょ。それより買い物していきましょ。精のつくものいっぱい食べて頑張ん
 なきゃ、ね」

「私も頑張るから、碇君」

「うん、ありがとうアスカ、綾波」





【某所】

「これが出場者の同意書です。それから出場者が希望する審査員のリストがこれです」

「出場者の希望はMAGIにインプットしておきたまえ。審査員の選考は君に一任する」

「了解」


出ていこうとする加持を呼び止め、

「ちょっとまちたまえ。この同意書は本人が書いたのかね?」

心底意外そうに冬月が聞く。

「ああ、これですね。説明会にも出てきてましたし、確かにあの子本人が書いた物ですよ」

「ご苦労だった」

若干手の組み方がゆるんでいるし、声が高くなっている。
ゲンドウの声を聞き慣れている冬月しか気付かないだろうが


「それでは失礼します」



「碇、気持ちはわかるがしっかりしろ」

「問題ない。シナリオどおりだ」

「(うそつけ)」



「それにな、冬月。私もユイも女の子が欲しかった。
(今度の事はいいきっかけになるかもしれん。頼んだぞ加持)」

「ユイ君か…。確かにシンジ君は年々ユイ君に似てくるな」




二人の男の脳裏に映る共通の女性、その姿がシンジの姿と重ね合わされていった。





(続く


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