時を駆ける


第8話 −告白−


「ここから逃げる?
 どうして急に?
 必要ないんじゃなかったの?」


あたしはミサトの説明を聞き返した。

「シンジ君が刺されたことで状況が変わったのよ。
 今のシンジ君を何度もエヴァに乗せるわけには行かない。
 だからシンジ君が戦えるうちにここを撤退するの」

「そう、そう言う理由なら仕方ないわね。
 それでいつ決行するの」


あたしはミサトに聞いた。

「今夜よ」

「ずいぶん急ね」

「今のままじゃシンジ君は戦う度に体力をなくしていくわ
 だから早いほうがいいの。
 それにリツコや、冬月司令の準備も間に合ったから」


そう言えばリツコたちの役割を聞いていないことに気づいた。

「リツコはねMAGIを使って、他支部のMAGIにハッキングするの。
 第壱拾壱使徒のこと覚えてる?
 666プロテクトをといて他支部と接続した上
 進化促進プログラムを削除して使徒を活発化させるの
 そうすれば他支部はMAGIごと消滅するはずらしいわ
 念のためリツコ特性のプログラムも送られるみたいだけどね」


「冬月司令は?」

「セントラルドグマの仕掛けの整理よ
 本部の自爆とともに地下にあるものも爆破するそうよ。
 これだけは絶対ゼーレには渡せないものだということだから」


「わかったわ」

あたしはそれだけ言うとシンジのところへ行った。シンジはベッドに寝たままだった。シンジはあたしの顔を見つけると無理に笑い顔を浮かべるとあたしに言った。

「アスカ待っててね。必ずすぐ行くから」

「約束よ」

そう言ってあたしたちは指切りをした。あたしは脱出の準備をするためシンジに口付けをして部屋に戻った。


加持さんの運転するジープにはあたしとレイ、そして青葉さんと日向さんが同乗した。遠ざかっていく第三新東京市に3体の白いエヴァが降りていくのが見えた。しばらくして閃光が第三新東京市を包んだ。

突然体が震え出した。冷や汗も出る。なぜだろういやな予感がする。計画どおりのはずなのに。何を恐れるの。

「ねえ、シンジたちとはどこで落ち合うの?」

あたしは加持さんに聞いた。でも加持さんは何も答えてくれなかった。

「今本部に残った人たちとは二度とあえないわ」

ファーストがいきなり口を開いた。ファーストの顔に浮かんだ表情。それは苦渋に満ちたものだった。

「こんな時につまんない冗談ね」

違う冗談なんかじゃないことを感じている。

「冗談なんかじゃない。碇君達は死んだの」

ファーストはなお続けた。

「何言ってるのあんた」

あたしはファーストにつかみ掛かった。

「碇君は3体のエヴァを道連れに自爆したわ...
 今の碇君はほとんど動けなかったから
 意識を保っているのがやっとの状態だった
 とても戦える状態じゃなかったの
 冬月司令達はぎりぎりまでMAGIを守るために本部に残った
 はじめから脱出する予定はなかったの
 だから人数は最小限に絞られた...」


それを聞いてあたしは車のドアに手をかけた。シンジのところに戻るために。シンジと一緒に逝ってあげるため。でもそれは両側に座っていた日向さんと青葉さんに止められた。そうか、はじめからこうなることがわかっていたんだ。知らなかったのはあたしだけか。

「はなしてよ、あたしもシンジと一緒に死ぬの。
 シンジが居ない世界で生きてくつもりはないわ。
 お願い行かせて。シンジの側に行かせて...
 お願いだから...
 ...死なせてよ...」

錯乱していたあたし頬をファーストがはった。その痛みに正気を取り戻したあたしはファーストを睨み付けた。

「よくあんた平気な顔してられるわね」

その時初めてファーストの表情が崩れた。そして感情の爆発...あのファーストが...あの人形のように感情を表さないファーストが...

「平気なわけないじゃない...
 あたしに初号機が動かせるなら代わっていたわよ
 碇君には生きていて欲しかった。
 やっと会えたお父さんなのに、こんな形で別れたくなかった
 あたし、まだ話してなかったのよ...
 抱きしめて欲しかったのに
 お父さん...」

驚いた...ファーストが声を上げて泣いている。でもお父さんってどういう事?碇司令のこと?

「ファースト。
 お父さんって何よ。
 碇司令があそこに居たの?」

ファーストは涙を拭いてあたしを見た。そして言った。

「あたしの本当の名前は惣流ミライ。
 父親は碇シンジ、母親は惣流アスカ・ラングレー
 今あなたのおなかの中に居るのがあたしよ」

あたし達は言葉を失った。



              (to be continue)


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中昭のコメント(感想として・・・)

  掲示板で好評連載しておりました『時を駆ける』第8話です。


  死んじゃった・・・・・・・・・・

  急転直下の第8話。
  なんとなく重大な結論の割にあっけなく決まった感があってちょっぴり不満。

  それはともかく、意外なレイの告白と共に次回は最終回です。




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