第八話 Jesu, Joy of man's desiring

Who Loves Her....



弐号機の出現と共に手際よく撤退していく戦自の姿はミサトの疑問を確信に変えた。

「やっぱりね」

モニタを見つめながらつぶやいたミサトの言葉に日向マコトが反応した。

「葛城さん、何がやっぱなんですか」

ミサトは日向の方をちらりと眺めた。その目は「こんなことも分からないのか」とも言っているように見えた。

「戦自はここを落とすつもりなんて始めからなかったと言うことよ」

ミサトの冷たい視線に日向は少し怯んだが、このままではと思い言い返した。

「そのことですか...確かに異様に手際が悪かったですね。
 それに...」

日向が続きを言おうとしたとき、MAGIの警報がそれを遮った。慌ててモニタを確認した日向は警報に負けないように大きな声を出した。

「太平洋上に展開しているUN海軍艦船からミサイルの発射を確認。
 MAGIはNN弾頭を搭載していると判断。
 着弾まで後30秒」

日向の報告に負けない大声でミサトも叫ぶ。

「総員、対衝撃準備」

発令所にいた全員が手近なものに縋り付いた瞬間、NN弾頭の炸裂による衝撃がネルフ本部を襲った。NN弾頭の爆発は耐震構造を取っているネルフ本部を揺るがせ、地上に有る全ての迎撃施設並びに今まで本部を護ってきた特殊装甲を含む第三新東京市の地盤を消滅させた。

「日向君、被害の状況は!」

まだ爆発の余波が収まらない中、ミサトは大声で日向に状況の確認を求めた。

「ダメです、地上のセンサー類は全て破壊されています。
 ジオフロントに配置されたセンサーも現在使用不能」

「弐号機の状況は」

ミサトは爪をかんだ。

「アンビリカルケーブルが今ので切れたようです。
 現在モニタ不能。
 NN弾頭による電波擾乱が収まるまで通信不能です」

「本部内の被害の状況は」

「各所で建築物の崩壊が起こっています。
 火災の報告は有りません。
 今のところ本部の被害は軽微です」

ミサトは何も映し出さないディスプレーを睨み付けた。そしてこのまま第二波が来たら防ぎようがないと考えた。しかし第二波は絶対にないという妙な確信も有った。たぶん相手はMAGIやエヴァを欲している。ならばこれ以上のNN爆雷による攻撃はあり得ない...ミサトはそう判断した。ならば考えられることはただ一つ、量産型エヴァの投入。ミサトはアスカとの通信の回復間での時間が永劫にも感じられた。

「外部映像回復します」

爆発の衝撃も収まった中、青葉シゲルから報告が上がった。そして同時に映し出された映像に発令所の人員は思わず息を飲んだ。

「空が見える」

伊吹マヤのつぶやきだろうか、誰もがジオフロントから見えるはずのない青空の映像を呆然と見つめていた。

「弐号機との通信が回復します」

青葉の報告と共に浮かび上がるアスカの姿。その姿にミサトは安堵の息をもらした。そしてアスカに話しかけようとしたとき様子がおかしいのに気づいた。

「どうしたのアスカ...」

ミサトの問いかけにアスカは黙って上空を指さした。そこには翼を広げた破壊の天使...9体の量産型エヴァンゲリオンが白い翼を広げて滑空していた。オペレーター達は信じられないものを見るようにその光景を黙って見つめていた。

指令席にいた冬月も同様にその姿を見つめていた。そして小さくつぶやいた。

「S2機関搭載のエヴァを9機投入か
 老人達め、ここで起こす気か」

その声はあまりにも小さく、発令所の誰の耳にもどくことはなかった。  
 
 
 


 
 
 
 

「あれが敵なんですか」

マヤがつぶやく。

「そうよあれが本命よ」

ミサトはそう言うとマイクをつかんでアスカに話しかけた。

「アスカ状況を報告して」

「見ての通りよ...
 弐号機の損傷はないわ...
 ケーブルが蒸発しただけよ、代わりのケーブルを準備してね...
 それより...」

アスカの躊躇いを感じたミサトは次の言葉を待った。

「あれには誰が乗っているの」

ミサトは答えに詰まった。適格者として保護されていた子供達の消息に不審な点はない。それに急に適格者をそろえることは不可能だ...そうで有れば導き出される結論はただ一つ。・・・ダミープラグ・・・では誰の?綾波レイの存在はネルフのトップシークレットである。たぶんそのダミー達の存在もまたそうだろう。ここの他にレイのダミーがあるとは考えにくい...それならば...

ミサトはそこまで考えついた。しかし自分の導き出した答えは今のアスカには言えないとも。もしそれが本当なら、14歳の子供に背負わせるにはあまりにもむごい現実であるから。

「分からないわ...
 ただ言えることはあなたの友達が乗っていないことだけよ。
 それからもう一つ、あれを倒さない限り私たちに明日がないことも確かよ。
 いいことアスカ...みんなのためなんて言わない。
 あなたとシンジ君のためにもあいつらを倒して...それだけが生き残る道よ」

ミサトは日向に武器の射出の指示を出した。

「いい、アスカ...
 ポジトロンライフルを出すわ。
 有効かどうか分からないけど、上空にいる相手にはそれぐらいしか武器がないの。
 一体でもいいから減らしておいて」

ミサトの言葉にアスカは黙って頷くと射出されたライフルを受け取った。そして自分も切られたケーブルを切り離し、新しいケーブルへとつなぎ変えた。

「いい、アスカ...電源には気をつけてね。
 暴走は当てにしちゃダメよ。一瞬の隙が命取りになるわよ」

アスカは先日の出来事を思い出した。弐号機は自分の問いかけに答えてくれた。だけど今回も同じことが起こる保障はない...ミサトの言うことは正しいと。

「分かってるわミサト...
 それから...シンジはどこ」

「湖の底よ、戦自の突入に備えて射出しておいたわ...
 しんちゃんかなづちだから終わったら迎えに行ってあげて」

ミサトの瞳がいたずらっぽく輝く。

「りょーかい、ミサト...アタシにまかしておきなさい」

アスカも負けずに言い返す。これから起こる絶望的な戦いから気を紛らわせるかのように...  
 
 
 


 
 
 
 

ミサトはアスカとの通信ウインドウが消えると、指令席にいる冬月の方へと向き直った。

「副指令、赤木リツコ博士を釈放して欲しいのですけど」

冬月はその理由は聞かなかった。あまりにも当たり前だったからだ。

「分かった、すぐに手配しよう」

そう言うと冬月は手元の受話器を取った、そして二言三言話すと、困惑の表情を浮かべ電話を切った。ミサトも冬月が浮かべた珍しい表情に、何か事態が動いていることに気がついた。

「葛城君、赤木博士の件だが、キミの要請には応えられん。
 赤木博士はすでに独房からいなくなっている」

ミサトは一瞬何を言われたのか分からなかった。いなくなった...確かに副指令はそう言った。釈放ではない、いなくなった...その言葉の意味するところは...

「リツコが脱走したのですか」

ミサトの問いに冬月は黙って首を横に振った。

「いや、それは不可能だ。
 いかに赤木君とは言え、あの扉を道具もなしに内部から開けることはできん」

「ならば、なぜ」

「それがわからんのだよ」

ミサトは副指令の表情に彼にとっても予想外の自体が起きていることを理解した。そしてこれ以上質問しても何も解決しないことも。

「分かりました。ではもう一つ...
 この状況にここにいらっしゃらない碇指令は、何をなさろうとしているのですか」

この危機的状況に指揮を執らない指令...ミサトは正論を持って冬月から情報を引き出そうと試みた。しかしそれもあっさりとかわされた...当たり前のことではあるが...

「それはキミには関わりのない話だ。その件についてはこれ以上の質問を許さない。
 キミは与えられた敵の殲滅に専念したまえ」

冬月の言葉にミサトは黙るしかなかった。副指令を越える権限は自分にはないのだから。  
 
 
 


 
 
 
 

MAGIのハッキング騒ぎが起こる少し前、綾波レイは自宅アパートを出て本部内にいた。そして自分のカードで赤木リツコの独房のドアを開けた。廊下から漏れ込むかすかな光の中に赤木リツコの姿を認めたレイはそのままリツコのもとに歩み寄った。

「なんの用なの...レイ」

リツコは顔も上げずに闖入者を迎えた。

「赤木博士...お願いがあります」

お願いという言葉にリツコは顔を上げた。

「あたしにお願い?
 あなた、アタシが何をしたか知っているでしょう」

少し興奮したリツコに、レイは何事もなかったかのように答えた。

「はい、知っています」

レイの落ち着きにリツコはだんだん自分が冷静さを失っていくのを感じていた。

「だったら何故、あたしはあなたを殺すかもしれないのよ。
 どうしてそんなに落ち着いていられるの。
 どうしてあたしにものを頼もうなんて考えるの」

リツコのそんな言葉もレイにはなんの影響も与えなかった。レイは相変わらず抑揚のない声でリツコに用件を伝えた。

「赤木博士でなければ出来ないことです。
 それにこれは碇指令にはお願いできないことですから」

碇指令には頼めない...その言葉に興味が引かれたリツコはレイの頼みが何であるか聞いてみたくなった。

「分かったわレイ、それで何をして欲しいの」

リツコは少し落ち着きを取り戻してそう言った。

「二人目の私の記憶を戻して欲しいんです」

リツコはレイの言葉に驚きを覚えた。レイが自発的に自分の要求を出してきたことも意外であったけれども、それ以上に二人目の記憶を欲しがったという事実がリツコを驚かせた。

そしてリツコは考えた、これは自分の復讐に好都合であると...二人目のレイの自爆による消去はある意味でゲンドウに取って好都合だった。レイが人の心を持つことは計画には不都合であると考えられていたからである。レイがこのまま人の心を手に入れた場合、計画遂行のため消去・再生を行うことも予定に入っていた。その先での零号機の自爆である...ある意味で心を痛めることもなく、レイの初期化の機会を得ることが出来た。それを三人目のレイは台無しにしようとしている...この土壇場で...ミサトの情報が正しければまもなく計画は発動されるはずであるこの時期に。

レイの記憶を戻すこと...それはゲンドウの計画を妨害するには格好の手段である。レイを殺すことよりもレイに裏切られること...その方がゲンドウには痛手が大きいだろう。リツコの中の結論はすぐに出た。

「分かったわ、レイ。
 でもどうしてそんなことをする気になったの」

「分かりません。
 ただ、フィフスチルドレンに会って、そして彼の死を見たとき何か私の中で蠢いたのを感じました。
 それが何だかわかりません。
 でも、私の中に誰かの顔が浮かんでくるのです。
 とても優しい顔をした少年の姿が。
 病院でそれがサードチルドレンであることを知りました。
 彼に会って、私は自分の記憶に欠けているものが有ることに気づきました。
 そしてそれがとても大切であることにも。
 だから赤木博士にお願いしようと思いました」

レイの言葉にリツコは自分の考えが正しいことを確信した。レイに記憶を戻すことはゲンドウの計画を妨害することになると。

「分かったわレイ、行きましょう」

リツコはそう言うと、レイを連れてダミープラントの有った場所へと急いでいった。  
 
 
 


 
 
 
 

アスカはアンビリカルケーブルを接続するとポジトロンライフルを構え、狙撃の体勢に入った。エネルギーの充填を示すゲージが赤になり、スコープは6と書かれたエヴァの姿を捕らえ、ロックオンを表示した。その瞬間アスカはライフルのトリガを引き絞った。

「お・ち・ろ・!」

その声とともにライフルから放たれたエネルギーは収束して一条の筋となった。そしてそれはまっすぐに6号機のコアを目指して伸びていった。成功か!アスカがそう思った瞬間、収束したライフルのエネルギーは6号機の前に現れたオレンジ色の壁にその軌跡を変えられ、虚空へと消えていった。

弐号機の上空で舞っていた量産機は地上からの攻撃を受けると、ゆっくりとその高度を下げてきた。

アスカはライフルが大して効果がないのを確認すると小さく舌打ちをして、武器をソニックグレイブに持ち替えた。そして地上に降りようとしている一体のエヴァにめがけて突進していった。目指すは着地の瞬間...アスカは身の内が高揚してくるのを感じていた。

8と書かれた白いエヴァは着地の瞬間羽を畳むと、地響きをあげ不格好に地面へと降り立った。そしてバランスを取り直し顔を上げた瞬間、ATフィールドを中和した弐号機のソニックグレイブによる袈裟懸けを受けた。肩口から入った斬撃はコアをも切り裂き8号機の体を大きく切り裂いた。8号機は断末魔の声を上げることもなくその活動を停止した。

「アーインッ」

アスカはそう数えると、活動を止めた8号機の背後に駆け込み他のエヴァの状況を確認した。ほぼ8号機と同時に着地したエヴァ達はすでに体勢を立て直し、アスカの駆る弐号機を軸に扇形の配置を取っていた。

アスカは白い量産機の姿を見てエンジニアのセンスを疑った。どう考えても人型の体にあの顔は不格好だ。トカゲのような爬虫類的な顔、何故そんな姿をとらなければいけないのか想像がつかなかった。戦いの最中にそんなことを考えているのは不謹慎であると言えばそれまでなのだが。

「きぃーもちぃっわっるぅーい」

アスカは人のセンスも使徒のセンスも大差のないことを実感した。いずれにしても倒さなくてはならない相手であることには変わりはないのだが...

アスカはソニックグレイブを持ち直すと次の目標に狙いを定めた。相手は数が多い、囲まれたら不利だ...そう考えたアスカは端からの個別撃破に徹することにした。幸い時間の制限は今のところない。自分の有利な体勢に持ち込めば後はパイロットの技量次第だと。

白いエヴァ達もようやく弐号機を認めると取り囲む様ににじり寄ってきた。その動きはアスカの目から見てもぎこちなく、人が操っているようには見えなかった。

「機体性能はそっちが上でも〜
 最後はパイロットで決まるのよ〜
 よーく、覚えてお・き・な・さ・い・よ」

アスカはそう言うと弐号機をダッシュさせ、一番はずれに位置していた7号機へと突進した。7号機も弐号機が向かってくるのに合わせ、盾のような大きな武器を振り上げた、しかしその動きはお世辞にも素早いものと言えなかった。

「お・そ・いっ」

弐号機はその攻撃をくぐり抜けると7号機の背後に回り込み、ソニックグレイブを横に薙いだ。空中を舞う7号機の首、そしてアスカはそのまま弐号機の横に追いついてきた12号機の首にソニックグレイブを突き刺した。12号機は大きな武器を振り上げたままその動作を止め、その次には力無く振り上げた両腕を落としていた。

「ツヴァ〜イ ウンド ドラ〜イ」

二体のエヴァを一瞬にして屠ると、アスカは再び量産機から距離を取った。絶好調、負ける気がしない。アスカはこの時そう感じていた。そしてその通りの実力差を見せつけていた。

「後6体ね」

アスカはそう言うと先頭にたっている5号機めがけてダッシュした。  
 
 
 


 
 
 
 
 

弐号機と量産型エヴァンゲリオンが戦闘を開始する中、セントラルドグマのダミープラントでは赤木リツコ博士の手によって綾波レイの記憶のリストア作業が完了していた。これにより完全ではないにしろ、第壱拾六使徒戦の前までの記憶が綾波レイのもとへと帰ってきた。一糸纏わぬ姿でチューブの中に入っていたレイは記憶のリストア作業が完了するとそのままの姿でLCLの中から出た。

「ありがとうございます。赤木博士」

レイは初めてと言って良いぐらいの明るい表情をリツコへと向けた。その無垢な表情にリツコは思わず目をそらした。

「別にいいのよ...これはアタシにとっても利益になるんだから」

そう言った時、リツコは背後のドアに人影があるのを見つけた。

「早速お出ましね」

リツコは冷ややかに笑った。ダミープラントに入ってきた人物は急いできたのか多少息を弾ませていた。そしていつもの彼の表情を作るとリツコに詰め寄った。

「赤木博士...レイに何をした」

ゲンドウは内ポケットから銃を取り出すとその銃口をリツコへと向けた。

「レイに記憶を返してあげただけですわ...
 レイの望み通りに」

リツコの言葉にゲンドウは一瞬驚いたような表情でレイを見つめた。しかしその表情もすぐに消え去り、もとの無表情なゲンドウへと戻った。

「それがどういうことかわからんキミでは有るまい」

「あら、分かっていますわ...
 あなたの補完計画のためには綾波レイは無垢でなければいけない。
 そうでなければ碇ユイのよりしろにも、リリスのよりしろにも成れませんものね」

「アダムを用いればレイとリリスの同化は可能だ」

「それが予測不能の事態を引き起こすこともご存じですよね」

「ロンギヌスの槍もある」

「誰が使うのですか...弐号機パイロットがそんなことに協力するとでも...
 甘いですわね、指令。とてもご自分の息子をお見捨てになった方とは思えませんね」

リツコは勝ち誇ったかのように高らかに笑った。その笑い声の一つ一つがゲンドウの神経を逆撫でした。

「それから指令、もう一つ。
 この設備はもう稼働しませんわ...先ほど壊しておきましたから。
 もう、レイの記憶を消すことも出来ませんから」

ゲンドウは再び銃口をリツコに向けると再び問いかけた。

「赤木博士、今一度問う。
 何故レイの記憶を戻した」

「あなたに抱かれてもうれしくなくなったから...とでもしておきましょうか」

リツコの顔には嘲笑が浮かんでいた。

「キミには失望した」

「あーら、光栄ですわね。アタシを期待していただいたなんて...
 初めて知りましたわアタシは単なる道具かと思っていましたのに...」

その瞬間ゲンドウの指に力がこもり、一発の弾がその銃身から打ち出された。赤木リツコはその瞬間絶命した。しかしその顔には笑いが浮かんでいた。

ゲンドウはその脇でただたっているレイに向かっていらだたしげに声を荒げて言った。

「レイ、来るんだ」

レイは、その深紅の瞳でゲンドウを見つめると、悲しそうに首を振って言った。

「わたしはあなたの人形じゃありません」

「レイ...」

「だめっ、いか...」

ゲンドウが放った首筋への打撃にレイはゲンドウの足下に崩れ落ちた。ゲンドウはレイを抱えるとリリスのあるターミナルドグマへと向かっていった。  
 
 
 


 
 
 
 

発令所にいた全員はただ黙って繰り広げられる戦闘を見つめていた。自分の担当の機器に対する注意は怠っていない...しかし、視線は完全に画面に釘付けになっていた。画面上では弐号機の圧倒的な戦いが繰り広げられていた。

弐号機は10号機を倒す際にソニックグレイブを失っていたため、武器をプログナイフに持ち替えていた。重量のある武器では動きが鈍るというアスカの判断によるものだった。アスカはヒットアンドウエイで固まっている量産機に攻撃をかけ、一体のエヴァが集団から引き離されるのを待った。そして11号機の距離が集団からあいたのを確認すると、攻撃を11号機に集中した。

量産型エヴァの持つ武器は盾のような形をしていた。そして、その威力は空振りした際に地面に作られる跡を見ても、直撃を食らったらただでは済まないことは誰の目にも明らかであった。しかし当たらなければどんな武器も意味を持たない。アスカの駆る弐号機は巧みな操縦で相手の攻撃を避け、確実に相手の戦力を奪っていった。11号機が大きく振りかぶったときに出来た隙をアスカは見逃さなかった。一瞬のうちに11号機の背後を取ると暴れる11号機を押さえつけ、その首をプログナイフで掻き切った。これで5体の量産機がその活動を停止した。

残り4体...決着が見えてきたかと誰もが思った。ただ葛城ミサトだけが渋い顔で目の前で繰り広げられる戦闘を見つめていた。

「分からない...」

ミサトにはどう考えても、こんな戦力でゼーレがネルフを落とせると信じているとは思えなかった。数で押すにしても、敵の攻撃は稚拙すぎる。例え初号機が動かないとしても...。弐号機を操っているアスカはことエヴァの操縦に関しては他の二人を寄せ付けないものを持っていた。いくら数があってもあんなでくの坊ではアスカを捕まえられるわけがない。ゼーレはそれほどまでに弐号機の戦闘力を見くびっていたのだろうか。それとも...

ミサトの思考はマイナスの方へと沈んでいった。  
 
 
 


 
 
 
 
 

「エヴァンゲリオン弐号機、それにセカンドチルドレン...なかなかやるではないか」

「だてに3人のチルドレンの生き残りではないな」

エヴァンゲリオン同士の戦闘を見つめているのはネルフのみではなかった。閉ざされた電脳空間の中、ゼーレの幹部もまた、神のコピーの巨人達の戦闘を見つめていた。そしてそこからは圧倒的かと思われる戦況を覆していく弐号機の活躍にもなんの焦りも見い出せなかった。

「どうする、このままではいたずらにエヴァを損失するぞ」

「S2機関を搭載したエヴァは自己修復が可能だ、あの程度の損害はものの数ではない」

「しかし、このままではラチがあくまい」

「我々は表の世界に現れてしまった」

「不必要に時間をかけると我らの命取りになるやもしれん」

「さよう、弐号機を止める必要が有る」

「あの者達の間には交流があったな」

「ならば、ダミープラグの正体、明かしてやろうではないか」

「面白い」

アスカにとってもっとも残酷な瞬間が幕を開けようとしていた。  
 
 
 


 
 
 
 
 

「敵のエヴァの動きが良くなってきているとは思いませんか」

ディスプレーを見つめていた日向マコトは、隣に立っているミサトにそう言った。

「いきなりの実戦投入でしょテストしてなかったのよ...多分」

「ずいぶんといいかげんですね」

『まるで葛城さんみたいだ』その言葉を日向は飲み込んだ。そのおかげで我々が助かっているのだから。

「でも、あの程度の動きじゃアスカは捕まえられないわ」

ミサトはスクリーンを凝視したままつぶやいた。『後何があるのかと思いながら』

ミサトの懸念に対する答えを出したのは意外にもマヤだった。

「敵エヴァからのアクセス検出...弐号機と映像通信を開こうとしています」

「いけない、通信をカットして」

その意味に気づいたミサトは慌ててマヤに指示を出した...しまった、その手で来たのかと。しかし出された指示はすでに手後れだった。

「駄目です。すでに通信は開いています...」  
 
 
 


 
 
 
 
 

敵のエヴァと対峙しながら、アスカは敵の動きが良くなってきているのを感じていた。しかし今のアスカにとって、それはたいした問題ではなかった。良くなったといっても自分を脅かすほどではないことをアスカはすでに見切っていた。

「後4体...」

アスカはそうつぶやくと、13号機を集団から引き離すための攻撃を敢行した。弐号機のスピードを生かし、4体のエヴァに個別に牽制を与える。押しては引き、引いては押す。そんな攻撃を繰り返しながら敵のエヴァを分断して行く。これまでの攻撃はそれがうまく行っていた。しかし今度はそうは行かなかった。13号機の振り上げた攻撃をかわそうとした瞬間に開いた通信ウィンドウは、アスカの動きを止めるのに十分な効果を示したからだ。

「カヲル...」

4つのウィンドウにはLCLに浮かんだ渚カヲルの姿が映し出されていた。そしてその頭には何本かのケーブルが接続されていた。その姿は瞬間アスカの注意を13号機の攻撃から逸らした。その時間は瞬きをするほどの短い時間だったかもしれない...13号機にはそれで十分だった。

アスカが気づいた時には13号機の攻撃は、すでに自分に向かって振り下ろされていた。とっさの判断で、アスカは弐号機の身をひねりその斬撃をかわした。しかし完全にはかわし切れなかった攻撃は弐号機の左足を捕らえた。弐号機の左足はひざから下が失われていた。

アスカは追撃を転がって避け、何とか量産機から距離をとった。しかしこの瞬間、二号機を優位に保っていた武器を失ったのは誰の目にも明らかだった。

「まだまだ、後4体よ」

高いシンクロ率から来るフィードバックで、アスカは左足に激痛を感じていた。しかし今泣き言を言ったとしても何も事態は好転しない。そのことをアスカは十分理解していた。とにかく相手は後4体だ、絶対何とかして見せる。アスカは不利な状況にも自分を奮い立たせた...  
 
 
 


 
 
 
 
 
 

ディスプレーに渚カヲルの顔が映し出された瞬間、ミサトは手を打つ事が遅れた事に後悔した。ミサトはアスカに余計なことを考えさせないために通信回線をシャットアウトしておくべきだった...それも今となっては手後れとなってしまったが。

「アスカ、スマッシュホークを出すわ」

ミサトはアスカにそう告げた。今となってはスマッシュホークを出したところでどうにかなるとは思えない。羽をもがれた小鳥には空を舞うすべはないのだ。

「これまでなの」

その言葉をミサトは飲み込んだ。アスカがあきらめていない以上、指揮官たる自分が口にしていい言葉ではないから。ミサトはシンジを映し出したディスプレーを見た。LCLの中でシートに身を投げ出している姿を...

「しんちゃん、あなたのアスカが危ないのよ...お願いだから目覚めてよ」

ミサトはディスプレーに向かってそうつぶやいた。

せっかくアスカがここまで頑張ったのに...その思いがミサトの胸を締め付けた。

その時モニタを眺めていたマヤが声を震わせた...

「沈黙していた敵量産機が再起動していきます」

その報告の通り、スクリーンには敵の量産機が自己修復をしながら起動していく姿が映し出されていた。  
 
 
 
 


 
 
 
 
 
 

「どうやら勝負はついたようだな」

「左様、ネルフも良く頑張ったとでも言うべきか」

「敵とはいえ勇敢な戦士には敬意を払わねばなるまい」

「うむ、セカンドチルドレンには名誉の死を与えよう」

「「「「「約束の時は来た」」」」」

「「「「「初号機による補完を」」」」」  
 
 
 


 
 
 
 

碇シンジは思った...ボクは夢を見ているのだろうかと。長い長い夢を...

また同時にそれを奇妙だとも思った。夢を見ながら夢を見ていることを実感するなんて...

シンジはこれまで有ったことを思い出した...

エヴァ初号機の中で母に会ったこと。

初号機に乗り込んだアスカと分かり合えたこと。

アスカを助けるために槍にその身を変え敵を貫いたこと。

違う人の体でアスカの前に現れたこと。

その体にはもう一人別の人格が有ったこと。

アスカに胸を銃で撃たれ殺されたこと

病室でアスカの口づけを受けたこと...

『全部夢なのだろうか...』

『渚カヲルと言ったっけ...彼は』

『ここはどこだろう...』

『やはり夢なのだろうか...』

シンジは夢の中でもう一度目を閉じようとした。次に目覚めるときは現実の世界かもしれないと思いながら。

血にぬれたトウジの姿を思い出した。

『帰ったら辛い現実が待っているのだろうか...』

シンジは自分に微笑みかけてくれたアスカの顔を思い出した。

『現実だったらどんなにかいいのに...』

頬を染めて寝ている自分にキスをするアスカを思い出した。

『アスカの事を大好きだって気づいたのに』

シンジの意識は再び闇に包まれようとしていた。その瞬間何者かの意識がシンジの心に割り込んできた。

「全ては現実だよ」

「!」

深淵に落ちていこうとするシンジの意識をその一声が押しとどめた。

「誰?」

「キミには分かっているはずだ...ボクが誰であるか」

「渚...カヲル...君?」

「カヲルでいいよ、碇シンジ君」

「ボクもシンジでいいよ、カヲル君...
 それより現実って...」

「その通りの意味だよ。キミが夢だと思っている出来事...それは全て実際に起こった出来事なんだ」

「じゃあ、アスカは、そしてカヲル君は」

「そう、全て現実に起こった出来事...」

「何故カヲル君がここに現れたの」

「時間がない、単刀直入に言おう。
 キミはすぐに目覚めなければならない。そうしなければキミの大事なアスカさんを助けることは出来ない」

「アスカを助けるって」

「文字通りの意味だよ。今彼女は生命の危機にある」

シンジの頭の中に左足を切り落とされた弐号機のイメージが現れる。そしてそれを取り囲む白い機体のエヴァンゲリオン達...

「今キミが目覚めないとキミは大切なものを失ってしまう」

苦痛にゆがんだアスカの姿が頭に浮かぶ...

「それでいいのかい、キミは」

カヲルの声が頭に響く...

全ては夢ではなかったのか。ならば今見たイメージも...アスカが危ない?

「それでいいのかい、キミは」

再びカヲルの声が頭に響く...

良くはない!アスカを助けなければ...アスカを助けたい!

カヲルはにっこりと微笑んだ...

「ならばキミは目覚めなければいけない。
 もうお姫様の目覚めの口づけは貰ったのだろう?
 悪い魔法は解けるときだよ」

シンジは顔の温度が高くなってくるのを感じた。シンジの言葉を待たずにカヲルが言葉を続けた。

「シンジ君にはもう一つお願いが有る...
 お願いだ、9人のボクを殺してくれ。
 ボクは許されない存在なんだ。9人のボクを殺してくれればボクも消え去ることが出来る。
 お願いだよシンジ君。それを出来るのはキミだけなんだ」

シンジは黙って頷いた。カヲルの心に有る深い悲しみを知っていたから...

「ありがとうシンジ君。君たちに会えて本当に良かった...」

シンジは、カヲルが消えていくのと同時に自分の周りが白い光で包まれていくのを感じた。目覚めるのか...シンジはそれを理解した。そして消えていくカヲルに向かって小さな声でつぶやいた。

「ボクはカヲル君との約束を一つだけ破る...
 ボクはキミの願いを知っているんだよ」

シンジは1ヶ月を越える眠りからの目覚めの時を迎えた。  
 
 
 


 
 
 
 

次々と再起動していく敵エヴァンゲリオンの姿は、発令所に絶望という陰を落とすには十分だった。最早だれも言葉を発することも出来ず、ただスクリーンを見つめることしかできなかった。

この先何が起こるのかは誰にも分からなかった。ただ一つだけ確実なのは弐号機に乗るアスカが無事ではすまないこと。それは発令所にいるメンバーにも言えることではあるが。

あきらめにも似た雰囲気が発令所を漂っている中、葛城ミサトは伊吹マヤに声をかけた。

「マヤ、シンジ君を無理矢理起こして
 電気ショックでも、心臓マッサージでも、LCLの濃度コントロールでもいい。
 強制的に神経接続して知覚パルスを挿入してもいいわ。
 何でもいいのよ、とにかくシンジ君の目を覚まして...」

悲鳴交じりのその声に答えるものがあった。そう一番待ち望まれた声が...

『そんなことしたら死んじゃいますよ』

ミサトは突然聞こえてきた声に耳を疑った。幻聴が聞こえるようになってしまったのかしら...

『ただいま、ミサトさん...サポートお願いします』

幻聴ではない、現実なのだ...一番待ちこがれた声が、顔がスクリーンに映し出される。そこにはインダクションレバーを握りしめたシンジの姿が映し出されていた。

「シンジ君、アスカを助けて!」

何故シンジが目覚めたのか...そんなことはどうでもいい、今はアスカを助けなければ...ミサトはマイクに向かって大声を出した。シンジはその言葉に力強く頷くときっと前方を見つめた。

「エヴァンゲリオン初号機発進します」

紫の魔人は双眼に光を宿し、己の主の力になるべく力強い一歩を踏み出した。  
 
 
 


 
 
 
 
 

倒したはずの量産機が再起動していく様は、弐号機のモニタからも見ることが出来た。アスカはただそれを現実として見ていることしか出来なかった。何故再起動できるのか...そんなことはもうどうでも良い。量産機が再起動した結果、自分にはもうどうにも出来なくなってしまったことだけが事実だからだ。

「これで終わりなの」

アスカは小さくつぶやいた。残り4機なら自爆してでも殲滅することが出来た。でも8機のエヴァとなると撃ち漏らす可能性の方が高い。そうなってしまったらもうネルフには敵を防ぐ方法がない...だからといってこのままでいても、どうにかなるわけではないのも一つの真実では有るのだが。

「くそっ」

アスカはそうつぶやくとスマッシュホークを杖代わりに弐号機を立ち上がらせた。片足を失い、立っているだけで精一杯の状態...それに切断された左足からの激痛が絶え間なくアスカを襲う。最早8体のエヴァ相手に戦える状態ではないことは誰の目にも明らかだった。

「なぶり殺しにはならないわよ」

アスカはそう決意するとスマッシュホークを振り上げ、量産機の攻撃に備えた。しかしそれは来なかった...

「何よ」

アスカは量産機がこれまでのように自分に襲いかかってくるものと思っていた。しかし、8体の量産機は逆に弐号機を取り囲むように距離を取ると、手に持っていた盾のような武器を投擲する構えを取った。

「!」

量産機の手の中で変貌していくそれは、最後には赤黒い色をした禍々しい槍の形を取った。

「ロンギヌスの槍」

その瞬間アスカは敵の意図を悟った。そして自分の命がここで尽きることも...

「やだなここまでなの」

アスカはそうつぶやくと静かに目を閉じた。もはや自分に何も出来ることはない...アスカはすぐにでも訪れる最後の時を待った...  
 

しかしその時は来なかった。いつまでたっても運命を決める攻撃が来ないのを訝ったアスカは、その目を開いた。その時最初に目に入ったのは、コアを手刀で貫かれた7号機の姿だった。アスカは自分の目を疑った。7号機の背後に立つ紫の巨人の姿が未だに信じられなかった。

「シンジなの...」

初号機が7号機のエントリープラグを握りつぶす様子を目にして、アスカはおそるおそる初号機への回線を開いた。

アスカはディスプレーに現れた姿がぼやけているのを感じていた。

「あれ、おかしいな...何ではっきりと見えないんだろう」

アスカは不思議に思った。ディスプレーに映るシンジの姿だけでなく、自分の周りの景色もぼやけている。なんで...

「シンジィ〜」

自分の声が震えているのも分かる。シンジはそれに答える替わりに、7号機の持っていた槍をすばやく弐号機の方へ投擲した。初号機の投げた槍は弐号機の脇をかすめると反対側に位置した5号機のコアを貫いた。そしてシンジは初号機を走らせ、立てなくなった弐号機を抱えると崩れ落ちた5号機の所を駆け抜けた。その時しっかりと5号機のエントリープラグを踏み潰していく事を忘れていなかった。

「二つ」

シンジは小さくつぶやいた。そして初号機の顔を弐号機に向けると優しく微笑んだ。

「ゴメン、アスカ...遅くなって」

アスカにとって待ち焦がれていたもの...アスカは溢れてくる涙を止めることが出来なかった。

「バカ、遅刻よ...
 このアタシを待たせるなんて...埋め合わせは高くつくからね」

「ははは、お手柔らかに頼むね」

シンジはアスカの涙に気づかない振りをして、情けない声でそう答えた。

「だーめ、デートの1回や2回じゃ許してあげないから...」

アスカはそう言うと自分の瞳に浮かんだ涙を手で拭った。

「お帰り...シンジ」

「ただいまアスカ」

二人の間で失われた時間が今ここでつながったような気がした。

「あたしがここで見ていてあげるから、さっさと敵を何とかしてきなさい」

「わかったよ。ちょっと待っててね」

シンジは弐号機を残していくことには不安があった。しかし、敵を目の前にしては撤退もままならない。シンジは不安を隠し、アスカに向かって微笑むと残り6体の量産機に向かって駆け出していった。  
 
 
 
 


 
 
 
 
 

漆黒の闇に浮かぶモノリス達にも予想外の事態に焦りの色が浮かぶ...

「エヴァンゲリオン初号機...何故動ける」

「サードチルドレンが目覚めたのか」

「いずれにしても初号機を止めねばなるまい」

「サードチルドレンは精神的に弱いと聞く」

「奴に人は殺せん」

「ならばダミーの正体、今一度見せてやればよい」

「それでもダメならばどうする」

「再生可能な量産機を当てているのだ、負けるとは考えられん」

「それにコピーとはいえロンギヌスの槍もある」

「しかしすでに3機を失っているぞ」

「UNを投入してはどうか」

「やつらは日和見だ、弱みを見せるわけにはいかん」

「6対1だぞ何を恐れる」  
 
 


 
 
 
 
 
 

シンジは初号機をすでに活動を停止している8号機のところへ移動させた。そして、エントリープラグのあるあたりを踏みつぶした。ぐしゃりとする変な感覚...シンジはプラグをつぶしていくたびに心に針を刺されるような感覚を覚えていた。

「これで3つ」

残る敵のエヴァは6体、必ず殲滅しないと生き残れない。シンジは赤い巨体を駆る少女のことを思い浮かべ、くじけそうになる心を奮い立たせた。

「必ずみんなを守る...行くよ母さん」

シンジはそうつぶやくと槍を構える量産機達と対峙した。  
 
 
 


 
 
 
 

「シンジ君...どうしてそんなに動けるの」

ミサトは目の前に展開された光景がにわかには信じられなかった。いかに初号機の力が大きいとはいえ、しばらく意識すらなかったシンジが操縦しているのだ。あんなに動けるはずがない。

それにシンジはエントリープラグをためらいなくつぶして行っている。そのこともミサトには信じられなかった。

その時ミサトは伊吹マヤが端末を忙しく叩いているのに気づいた。「何?」ミサトはその行動を疑問に思った。

「マヤ、どうしたの」

マヤは表示される数値から目を離さず、ミサトの問いに答えた。

「いえ、シンジ君が目覚める前に、初号機に対して量産機からアクセスがあったみたいなんです。
 何が起こったのか、そのログを調べているんですが良く分からないんです」

意識のないシンジに対してアクセスしたところで何の意味があるのだろうか。ミサトはますます訳が分からなくなった。

そのミサトの思考をマヤの声が遮った。

「再び量産機から初号機へのアクセス検出。映像通信です」

「何ですって。遮断してなかったの」

「いえ、遮断できないんです。
 初号機自身が受け入れています」

傍観者とならざるを得ない状況をミサトは呪った。  
 
 
 


 
 
 
 

シンジは初号機の通信ウィンドウが開いて行くのに気づいた。そこに映し出される6つの同じ顔。シンジはあらかじめ知っていたかのように何の動揺も示さなかった。

「カヲル君...約束を果たすよ」

シンジの心に答えるように初号機が咆哮をあげた。その叫びは発令所を揺るがし、地下のドグマへも届いた。

「ユイなのか」

ゲンドウは聞こえて来た初号機の咆哮に一人呟いた。

「我らの願いが叶うまでもうすぐだ...待っていてくれ」

ゲンドウは意識のないレイを小脇に抱え、リリスの所へ向かって行った。  
 
 
 


 
 
 
 
 

シンジの心に答えた初号機は咆哮をあげると、9号機へと向かって行った。9号機は初号機の突進を察知するとすかさず槍で待ち構えた。しかし初号機はあっさりと槍での攻撃を躱すと、拳を9号機のコアめがけて叩き込んだ。

コアを貫かれ崩れ落ちていく9号機の姿は敵にも、味方にも戦慄を与えた。強すぎると...そして9号機のプラグを握り潰す姿はゼーレのメンバーの肝を冷やすのに十分だった。  

「あれは本当にサードチルドレンなのか」

「何故あやつに人の乗っているプラグを潰せる」

「我々は考え違いをしているのではないか」

「何としても初号機を止めねばならん」

「補完どころではない、我々の存在すら危ないぞ」

「弐号機を盾に取れ、初号機の動きを止めろ」  
 

シンジは量産機の動きが変わったのに気づいた。初号機の方を見ていない...その視線の先にあるのは...

「アスカいけない!」

量産機が槍を振りかぶるのと同時に、シンジは倒れている弐号機のところへと駆けつけた。5体の量産機が投げつけた槍が二人の乗ったエヴァに迫る。とっさにシンジは弐号機も包み込むようにATフィールドを展開した。

圧倒的な初号機のATフィールド、しかしまがい物とは言えロンギヌスの槍を模した槍は少しずつ侵食していく。槍から伝わる害意がひしひしと初号機を動かすシンジに伝わってくる。シンジの視線を赤い巨体がかすめる。

「負けるわけにはいかない」

シンジはインダクションレバーを握る腕にさらに力を込めた。

「もう逃げないって誓ったんだ...」

さらに跳ね上がるシンクロ率、強化されるATフィールド...それにも関わらずATフィールドは侵食を受ける...だめなのか...その思いがシンジの頭をかすめる。

『そこまでなのかい、君の想いは』

シンジは誰かが自分の心に触れた気がした。よける事は初めから頭にない、よけてしまえば弐号機がただではすまない...

インダクションレバーを握る手にもはや感触はない。シンジは目を閉じると更に集中した...大切なものを守りたいと...

「うおおおおっー」

シンジの口からほとばしる叫び声...

「アスカを、そしてみんなを守りたい」

心の絶叫...それに二つのものが答えた。初号機はATフィールドを更に強化し、侵食しようとしていた5本の槍をはじき返した。そしてもう一つ...  
 
 
 
 


 
 
 
 

初号機のATフィールドと敵の槍の力比べを見守っていたミサトは、初号機が咆哮をあげた瞬間、足元から爆発的な力が迫ってくるのを感じた。そしてそれは大きな振動として発令所を揺るがした。

「なんなの」

ミサトのせっぱ詰まった声に日向マコトが答えた。

「わかりません...
 セントラルドグマの隔壁を何者かが高速で破った模様です」

そこにいたものには何が起こっているのか答えを出せるものがいなかった。ただ冬月一人を除いては...

「槍か...」

その冬月の言葉に答えるかのように、ディスプレーには槍を構えて咆哮する初号機の姿が映し出された。

「勝ったな」

冬月はそうつぶやいた。  
 
 
 
 


 
 
 
 

槍を構える初号機の姿はゼーレのメンバーにも衝撃を与えた。

「ばかな、何故槍がある」

「碇にはめられたのか」

「初号機の力、ロンギヌスの槍...もはやこれまでか」

「碇のシナリオが遂行されるのか」

「口惜しいことだ...」

前面には量産機が初号機の駆る槍によって文字どおり消滅させられて行く光景が映し出されていた。  
 
 
 
 


 
 
 
 

初号機の駆る槍はたちどころに6,10,11,12号機をエントリープラグごと消滅させた。残るは13号機、誰もがそのままシンジが13号機も殲滅させるものと考えた。しかしシンジはそれをしなかった。

シンジは構えていた槍をおろすと、開いたままになっていた通信ウィンドウから13号機に呼びかけた。

「もう良いだろう...カヲル君」

シンジに呼びかけられたカヲルは静かに目を開いた。

「気づいていたのかい」

カヲルの言葉にシンジは頷いた。

「ボクの心に呼びかけてくれたのはカヲル君だよ。
 カヲル君の心が最後の一人に戻ることぐらい知っていたよ」

カヲルはシンジの言葉に再び目を閉じた。

「ならば、ボクの頼みも覚えているだろう...
 お願いだボクを消してくれ」

黙って二人のやり取りを聞いていたアスカの唇から言葉が漏れる。

「カヲル...」

シンジは一瞬アスカの映っているウィンドウを見た。そして視線を再びカヲルの方へ戻し、カヲルに告げた。

「だめだよ、カヲル君。
 君はボクやアスカに再び悲しい思いをさせるのかい。
 もしカヲル君が生まれのことを気にしているのなら、ボク達のためにも忘れて欲しい。
 それはボク達には選ぶことはできないんだよ。
 大切なのはこれからどう生きて行くか...
 カヲル君...ボク達と一緒に生きて行こうよ。
 そうだよね、アスカ...」

シンジの言葉を受け、アスカはカヲルに話しかけた。

「シンジの言う通りよ。
 アンタが良いやつだってことはアタシが一番知っているわ。
 お願いだからアタシ達と一緒に生きて。
 もうあんな悲しい思いをさせないで」

「カヲル君、君はアスカにあんな思いをもう一度させるのかい。
 それにね、ボクは知っているだよ...カヲル君の本当の願いを」

アスカとシンジの言葉は確かにカヲルの心を動かした。

「本当にいいのかい、こんなボクで」

「ばかね、あんただから良いのよ」

アスカはカヲルに向かって微笑んだ。

そのやり取りに満足したシンジは発令所にいるミサトに声を掛けた。

「ミサトさん、聞いての通り13号機は投降しました。
 あとの処理はよろしくお願いします」

ウィンドウに映ったミサトは黙って親指を上に向けて合図した。  
 
 
 


 
 
 
 
 

これで終わった、みんながそう思った時、発令所を小さな振動が襲った。そして同時に全員が頭の中に狂ったような思念が流れ込んでくるのを感じた。

割れるような頭痛と嘔吐感の中、青葉シゲルの報告が響く。

「ターミナルドグマ内にて、ATフィールドの発生を確認...
 いえアンチATフィールドの発生...
 ATフィールド、アンチATフィールド交互に発生しながら強度を増して行っています。
 このままアンチATフィールドが増大して行くと5分後には自我境界を保てなくなります」

「暴走したのか」

シゲルの報告ではなく、冬月の放った一言が全員の注目を浴びた。

「どういうことでしょう...副司令。
 説明していただけますでしょうか」

ミサトの質問に冬月はまるで明日の天気を答えるかのように答えを返した。

「失敗したのだよ...補完計画は
 人類は終わりだよ」

冬月は目をスクリーンに移した。そしてそこに初号機がいないのを確認すると再び口を開いた。

「いや、まだ望みはあるかな...
 いずれにしても碇の息子に道は委ねられたが...」  
 
 
 
 


 
 
 
 
 

碇ゲンドウはいまだに意識のない綾波レイを連れ、ターミナルドグマの奥に位置するリリスの下へと辿り着いた。下半身のなかったリリスも初号機の呼びかけに槍が答え、その場を去った瞬間にその下半身を再生していた。醜く膨らんだ腹を持つ白い巨人の前でゲンドウはレイを地面に降ろした。

「我らの願いを妨げるロンギヌスの槍もない。
 もうすぐだよユイ...」

その瞳はもはや正気の輝きを失っていた。

ゲンドウはポケットからベークライトを取り除かれたアダムを取り出すとレイの腹部に押し当てた。

アダムを押し当てられたレイの腹部はまるで粘土か何かでできているようにゲンドウの手ごとアダムをその中に取り込んだ。ゲンドウはレイの子宮を探り当てるとその中にアダムを押し込んだ。そして腕を引きぬくともう一度レイを抱き上げ、リリスの下へと歩み出した。

「レイをよりしろに...
 アダムとリリスの禁じられた融合を果たす...」

ゲンドウはそのままリリスへと歩み寄った。それを迎えるようにリリスから白い触手が伸び、二人を包み込んだ。碇ゲンドウ、綾波レイ...二人の存在はこの瞬間この世界から消え去った。

リリスの顔を隠していた仮面は落ち、そこには人の顔が現れようとしていた...  
 
 
 
 


 
 
 
 

リリスの暴走の影響はエヴァに乗る三人のところにも届いていた。沸き上がる不快感の中、シンジは悲しい目をして空を見あげた。

「弱い人なんだね...父さん」

シンジはそう呟くとディスプレーに映るカヲルの顔を見た。カヲルはシンジの瞳に映る決意を知ると小さく一つ肯いた。

「行くんだね...シンジ君」

シンジも小さく肯くとその目をアスカの方に転じた。何が起こっているのか、シンジが何を決意したのか分からないアスカはその瞳に不安を浮かべシンジの顔をじっと見詰めた。

「シンジ、何をするつもりなの」

アスカは思った。どうしてこんなに弱くなってしまったのだろうと。シンジが自分の目の前からいなくなってしまうことが不安で堪らない。このまま二度とあえないのではないか...その思いがアスカの心をかき乱した。

「決着を付けに行くんだ...父さんとボクの。
 これはボクと初号機にしか出来ないことなんだ」

アスカの瞳に映るシンジの表情がやけに透明に見える。その表情がますますアスカの不安を掻きたてた。

「アタシも連れてって」

シンジは黙って首を振るとセントラルドグマに開いた穴へと飛び降りた。アスカは弐号機でその後を追おうとしたが、それをカヲルの13号機が押しとめた。

「邪魔しないでカヲル」

アスカの瞳に炎が宿る。

「シンジ君のためにも君を行かせるわけには行かない」

カヲルも譲らなかった。

しばらく二人はそのまま睨み合ったが、片足のない弐号機が体勢を支えられなくなり、その場に崩れ落ちた。

「どうして行かせてくれないのよ...連れて行ってくれないのよぉ」

13号機を押しのけて行く力がないことはアスカにも分かっていた。アスカはシンジが自分を連れて行かなかったことが悲しかった。

「シンジ君を信じて待とう...
 彼がアスカを独り残して居なくなるわけがないだろう」

カヲルには分かっていた。独り立ち向かっていくシンジの心が...この戦いは絶望的だ...奇跡でも起こらない限りシンジ君は無事ではすまないだろうと。

「奇跡を起こしてくれ...シンジ君」

カヲルは何も映し出さなくなったウィンドウに向かってそう一人呟いた。  
 
 
 
 


 
 
 
 

シンジはドグマを降下しながら体に感じる違和感の正体を探っていた。どこかで感じたことのある雰囲気...

「綾波なのか」

シンジはそう呟いた。それと同時に最終目的地へと初号機は到着した。LCLの海を渡り、ヘブンズドアを通り抜けたところでシンジの視界に入ったのは、ドグマの天井に届こうかという白い巨人の姿だった。そしてその巨人の顔を見た時、思わずシンジは叫び声を上げてしまった。

「綾波!」

その叫び声に答えるかのようにしろい巨人の顔が初号機の方へ向いた。うつろに光る赤い瞳が初号機を認めた瞬間に正気の光が宿った。

「碇君なの...」

直接シンジの頭に響いてくるレイの言葉、シンジはその言葉に答えた。

「そうだよ、綾波...迎えに来たんだ。
 一緒に帰ろう」

その言葉に白い巨人は首を横に振った。

「もうだめなの...元には戻れない。
 お願い碇君...私を殺して...
 そうしなければみんなが死んでしまう...」

「そんなことが出来るわけないだろう。
 ボクに綾波が殺せるわけないじゃないか」

シンジの悲鳴にも似た叫びがレイの耳朶を打つ。

「ありがとう碇君...その言葉だけでもうれしいわ。
 でもあなたたちには未来が必要なの...
 私がリリスを押さえられるのも後少し...
 私の意識がリリスに飲み込まれた時、暴走したリリスを止めることが出来なくなるわ。
 だから...」

シンジの心をレイの悲しみの心が切裂く。

「だから...」

みんなと一緒に生きたかった...レイの願いがシンジの心に届く

「だからそうなる前に...」

悲しみ、絶望...押しつぶされていくレイの心...

「私を殺してぇ」

シンジは槍を構えたがすぐにそれを降ろし、ATフィールドをリリスを包み込むように展開した。

「碇君...どうして」

シンジはウィンドウに映るレイの姿に微笑みを返した。

「綾波を独りにしないよ」

レイはシンジの心がうれしかった。心の底で望んでいたもの、シンジと一つになること...それをシンジが叶えてくれると言ってくれた。

「ありがとう、碇君。
 でもアスカさんがあなたのことを待っているわ。
 さようなら、碇君の言葉はうれしかった」

一瞬アスカの顔がシンジの頭の中をよぎった。自分に着いてくるといった時のアスカの泣き出しそうな表情が。

「でも、ボクは綾波を独りにするわけにはいかないんだ。
 ボクにはアスカと同じぐらい綾波も大切なんだ...だから」

シンジは二人を包むように張ったATフィールドを強化した。

「さようならなんて悲しいことを言うなよ。
 二人で奇跡を起こそうよ」

初号機の背中から羽のように広がったATフィールドはリリスと初号機を包み込むと収縮を始めた。

「手伝ってくれるよね...かあさん」

シンジにはユイが微笑む姿が見えたような気がした。

初号機は収縮したリリスを抱き留めるとその背中にロンギヌスの槍をあてがった。そして一息に槍を突き立てリリスと初号機を貫いた。

「綾波...奇跡を起こそう」

光に包まれていくエントリープラグの中、シンジはレイの姿が光の向こうに見えた気がした。そしてシンジがレイの方に手を伸ばした瞬間シンジの姿も光に包まれて消えていった。

初号機とリリスは白い光に包まれた。破壊する力を持たない純粋なる光...そしてその光が収まった時、そこには初号機の姿もリリスの姿も、ロンギヌスの槍も消え去っていた。  
 
 
 


 
 
 
 
 

「ターミナルドグマで新たなATフィールドの発生を確認
 強度どんどん上昇していきます」

青葉シゲルの報告が上がる。

「始まったのね...シンジ君」

ミサトは胸のクロスを握り締めると祈るように呟いた。

「奇跡を起こして...シンジ君」

ミサトの祈りに答えるかのように事態は収束していく。

「ドグマ内のATフィールドが消えていきます...
 いえ、完全に消滅...ドグマ内すべての熱、電磁波等の反応はありません」

シゲルの報告が上がる。

「終わったな」

冬月はそう呟くと伊吹マヤに指示を出した。

「伊吹君、MAGIのデータバンクのA8番をアクセスしてくれ。
 パスワードは『未来』だ。
 そしてもう一つA21番もたのむ。こいつのパスワードは『贖罪』だ。
 A21を鍵にしてA8の暗号を解いてくれ。
 F1番にプログラムがある。パスワードは『希望』だよ」

マヤは冬月の指示に従ってデータのアクセスをしていく。そして暗号が解かれたデータを見て息を飲んだ。

「これは...」

冬月はそれに答えず次の指示を出した。

「MAGIの外部との接続を回復。
 データを全世界に発信しろ」

放心していたミサトが目の前を流れていくデータに我を取り戻した。

「副司令...これは」

「セカンドインパクト、人類補完計画、ゼーレのすべてだよ」

冬月はミサトを見詰めると更に言葉を続けた。

「子供たちは良くやってくれた。
 ここからは大人の仕事だよ」

冬月のその言葉にミサトも肯いた。そうまだすべてが終わったわけではないのだから。  
 
 
 


 
 
 
 

ドグマの中で光が消えていく瞬間、アスカは自分の心を誰かが触れた気がした。

「シンジ、レイ...」

アスカの瞳から涙があふれ出る。

「あの馬鹿...」

そこから先はもう言葉にならなかった。

カヲルは泣き崩れるアスカの姿にため息を一つ吐くと、崩れ落ちている弐号機を抱きかかえるようにして立ち上がらせた。そしてセントラルドグマの穴に向かって歩き出した。

「何をするつもりなのよ...カヲル」

カヲルはウィンドウに映ったアスカに向かってにっこりと微笑むとこう言った。

「迎えに行くんだよ...二人を。
 いろいろといいたいことがあるんだろ」

アスカは一瞬カヲルが何を言っているのか理解できなかった。しかしその言葉を理解するとカヲルに微笑み返した。

「そうね...アタシをほっぽっといてレイとデートしているような奴はとっちめてやらないとね」

その言葉を合図に2体のエヴァンゲリオンはターミナルドグマへ通じる穴へとその巨体を躍らせた。大切な仲間を迎えに行くために...  
 
 
 
 

ende
   
 
 
 
 
 

トータスさんのメールアドレスはここ
tortoise@kw.NetLaputa.or.jp


中昭のコメント(感想として・・・)

  Who Loves Her....堂々の完結です。
  密度のこゆい連載でした。


  しかし、しかし・・・・・・・・ゲンちゃんがぁーー(割とゲンドウの事が好きなんです)
  この連載では当初からゲドウでしたけど。
  最後どうなったのか・・・リリスの中で家族会議かな。

  なんとなく四角関係になりそうで、恋愛関係そのものについてはこれから波風があるような気も
  まぁ中学生ならグループ交際ってのもありかな。
  あうううずれたコメント。

  今回の戦闘シーン。良かったです。
  初号機がかっちょいい。

  エントリプラグを潰すシンジとレイを迎えに行くシンジ。
  本当に強くなったなぁ。カヲル君のおかげでしょうか。
  槍もレイも出てきて大円炎を予感させるラスト。面白かったです。


  みなさんも、是非トータスさんに感想を書いて下さい。
  メールアドレスをお持ちでない方は、掲示板に書いて下さい。





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